30 Minutes NetWorking
No.RT28

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BSCI

第28回Integrated IS-IS(6) ルーティングプロセス

■ IS-ISのルーティングテーブル

スーパーインター博士

Integrated IS-ISとは、OSIプロトコル以外に、IPをルーティング対象としたプロトコルだ。

ハイパーネット助手

マルチプロトコルルーティングプロトコルっていうんでしたっけ。
EIGRPがそうですよね。

スーパーインター博士

うむ。今回はIntegrated IS-ISを使ったIPルーティングを説明するが。
その前にIS-ISのルーティングプロセスについて説明しておこう。

ハイパーネット助手

はぁ、IS-ISのルーティングプロセス。

スーパーインター博士

さて、OSPFのルーティングテーブル作成の手順はこうだったな。

[FigureRT08-01:OSPFルーティングプロセス]

ハイパーネット助手

でした。SPFツリーの構築ルーティングテーブルの作成でしたよね。

スーパーインター博士

そう。基本的な動きはIS-ISもOSPFも変わらない
LSPによりデータベースを更新し、SPFツリーを作成する。

ハイパーネット助手

ふむふむ。リンクステートルーティングな感じですね。

スーパーインター博士

どんな感じだ、それは。
違いがあるのは、まずレベル1とレベル2が完全に別のツリーを作成すること

SPFツリー

[FigureRT28-01:SPFツリー]

ハイパーネット助手

あ〜。別のデータベースを持つって話なんですから、別のツリーを持つんですね。

スーパーインター博士

うむ。アドバタイズも別、データベースも別、ツリーも別だからルーティングテーブルも別だな。
そしてもう1つのポイントは、PRCだ。

ハイパーネット助手

ぴーあるしー? ぱーしゃるるーとかりきゅれーしょん?

スーパーインター博士

IS-ISのLSPにはESの情報も含まれる。これはいいな?

ハイパーネット助手

そうみたいですね。OSPFとかだと、ネットワークの情報しかアドバタイズしないのに。

スーパーインター博士

この情報を使って、各ESへの到達性を計算する。これがPRCだ。

ハイパーネット助手


ルーティングの段階で、各ESへ届くかどうかも計算するってことですか?

スーパーインター博士

そうだなSPFツリーの末端(葉)にESの情報が入るとでも考えればいい。

ハイパーネット助手

なんでそんな面倒なことになってるんですかね。

スーパーインター博士

それは次のルーティングプロセスと合わせて話そう。

ハイパーネット助手

あ、はい。

スーパーインター博士

ともかく、各ESへのパスを計算し、それをCLNS転送データベースに載せる、これがIS-ISのルーティングテーブル作成だな。

ハイパーネット助手

なんか、OSPFと似てるようで、似てないようでややこしいですね。

■ IS-ISのルーティングプロセス

スーパーインター博士

OSPFよりも階層構造がはっきりとしているのが、IS-ISだ。
まず、レベル1。レベル1は自エリア内のISとESを知るが他エリアは全く知らない。

ハイパーネット助手

エリア1ルータはOSPFでいうところのTSA内のインターナルルータでしたっけ。
自分のところしか知らないっていう。

スーパーインター博士

そうだ。エリア1は自エリア内はNSAPのシステムIDだけを見てルーティングする

ハイパーネット助手

システムIDだけ?
え〜っと、システムIDってIPアドレスでいうところのホスト部ですよね。ホスト部って階層構造になってないような気が…。

スーパーインター博士

うむ、なってない。
つまりMACアドレスのみでルーティングするようなものだ。

ハイパーネット助手

うわ、なんか無茶だ。

スーパーインター博士

NSAPのところで話したとおり、システムIDはエリア内でユニークだからな。
一方で、もし他エリアへのCLNSパケットだった場合。

ハイパーネット助手

場合?

スーパーインター博士

もっとも近いL2ルータをデフォルトルートに設定しておき、そこへパケットを送る。

ハイパーネット助手

もっとも近い?
最適ではなく?

スーパーインター博士

もっとも近い、だ。
つまり、レベル1ルーティングとはこうなる。

[FigureRT28-02:レベル1ルーティング]

ハイパーネット助手

あ〜、なるほど。だからESの情報をSPFツリーに記載する必要があるんですね。

スーパーインター博士

そうだ。
考えかたとしてはOSPFのエリアはサブネットの集合体だが、IS-ISのエリアはサブネット1つ分なのだよ。

ハイパーネット助手

だからシステムIDだけでエリア内をルーティングする、と。なるほど。

スーパーインター博士

さて、レベル2ルーティングだが、こちらはエリアIDを見てのルーティングだ。

ハイパーネット助手

ということは、ルーティングテーブルはエリアIDのみ

スーパーインター博士

事実上、そうなる。
レベル2ルーティングは宛先エリアまでバックボーンパスで転送し、あとはレベル1、レベル0におまかせという形だな。

ハイパーネット助手

ふむふむ、これは普通のルーティングっぽいですよね。

スーパーインター博士

そうだな。そう言われれば確かに。
さて、このレベル1・レベル2のルーティングプロセスだが、ポイントは先ほどのネット君の科白だ。

ハイパーネット助手

「これは普通のルーティングっぽいですよね」?

スーパーインター博士

もっと前。

ハイパーネット助手

「ふむふむ」?

スーパーインター博士

面白じゃないか、ネット君。
あぁ、面白い面白い。これで満足か?

ハイパーネット助手

う、うぅぅ。

スーパーインター博士

「もっとも近い?最適ではなく?」だ。
つまり、こういうことが起きる。

[FigureRT28-03:アシンメトリックルーティング]

ハイパーネット助手

あら〜。最短パスじゃないパスを使っちゃうんですか。

スーパーインター博士

うむ、このようなルーティングをアシンメトリックルーティングという。
必ずしも悪いルーティングではない。

ハイパーネット助手

そうなんですか?

スーパーインター博士

例えば、エリア1からエリア2へのパケットが多い場合、ルータB−C間が混むわけだ。
ここに返送パケットまでもルータB-C間を使うとなると、輻輳必至になってしまう。

ハイパーネット助手

まぁ、そうなりますね。

スーパーインター博士

で、アシンメトリックルーティングなら、違うパスを使うこともある。
多少は輻輳の軽減に役立つ、となるわけだな。

ハイパーネット助手

ははぁ。なるほど。

スーパーインター博士

だが、もちろん最短パスを使った方がいいこともある。
ま、場合によるな。基本的には最短パスがベストだけどな。

ハイパーネット助手

べストではないけれども、悪いわけではないこともある、ってことですね。

■ Integrated IS-IS

スーパーインター博士

さて、IS-ISでIPルーティングも可能とするIntegrate IS-ISの話をしよう。

ハイパーネット助手

ようやっと登場ですね。

スーパーインター博士

Integrated IS-ISは3種類のルーティングを行うことができる。

  • CLNSのみ
  • IPとCLNS(Dual IS-IS)
  • IPのみ
ハイパーネット助手

あ〜、IPのみも可能なんだ。

スーパーインター博士

そうだ。この「IPのみが可能」という点を踏まえて、Integrated IS-ISを説明するが。
Integrated IS-ISのルーティングプロセスはIS-ISと同じだ。

ハイパーネット助手

はい。

スーパーインター博士

「はい」?
ここで疑問はわかないのかね?

ハイパーネット助手

疑問?
いや、Integrated「IS-IS」って言うんだから、IS-ISと同じってのも別に変じゃない気がしますけど。

スーパーインター博士

ふむ。では聞こう。
IS-ISのルーテッドプロトコルは?

ハイパーネット助手

OSIプロトコル。CLNSですよね。

スーパーインター博士

そのアドレスは?

ハイパーネット助手

NSAP。なんですか突然?

スーパーインター博士

では、IS-ISのデータベースとSPFツリーの元となる情報のプロトコルは?

ハイパーネット助手

元となる情報のプロトコルは?
それもCLNSですよね。

スーパーインター博士

そう、つまりIntegraed IS-ISでもCLNSの情報が元となるのだよ。
そこでさっきのことを聞こう。「IPのみが可能」と言ったな。この場合はどうなる?

ハイパーネット助手

「IPのみが可能」の場合。
IPのみしか使わなくても、CLNSが必要ってことですか?

スーパーインター博士

その通り。隣接関係を結ぶため、データベースの作成、SPFツリーの作成、すべてにおいてIntegrated IS-ISはCLNSを必要とするのだよ。

ハイパーネット助手

ははぁ。IS-ISはCNLSによって動くってことですね。

スーパーインター博士

そういうことだ。実際のところをいうと、Integreted IS-ISにおけるIPネットワークのアドバタイズはCLNSのおまけと言ってもいいぐらいだ。

ハイパーネット助手

おまけ……。
そんな扱いなんですか?

スーパーインター博士

うむ。Integrated IS-ISではSPFツリーはCLNSを元として作成される
IPネットワークはESと同じ扱いでSPFツリーの中にある。

ハイパーネット助手

ということは、SPFツリーの葉?

スーパーインター博士

そう。CLNSのナローメトリックによりSPFツリーが構成され、ESの到達性を確認する段階のPRCでIPネットワークの計算が行われることとなる。簡略化した例を示そう。

[FigureRT28-04:Integrated IS-IS]

ハイパーネット助手

ははぁ。なんか、普通と言えば普通なんですけど。

スーパーインター博士

そうか。
では、レベル2を組み合わせてみよう。

[FigureRT28-05:Integrated IS-IS・複数エリア]

ハイパーネット助手

…はい。わかりますけど。

スーパーインター博士

ふむ。わかってもらえたか。
IPのネットワークからSPFツリーを構築するのではなく、CNLSのSPFツリーがあってからIPルーティングという流れだな。

ハイパーネット助手

CLNSのSPFツリーがあくまでもメインってことですね。

スーパーインター博士

そうだ。なので逆に言えばIPネットワークの障害の結果、SPFツリーが更新されないこともありうる。
その場合、単純にIPネットワークへの計算(PRC)だけが行われるわけだな。

ハイパーネット助手

IPネットワークは「おまけ」に近い立場なんですね。

スーパーインター博士

そういうことだ。
では今回はここまでにしよう。ではまた次回。

ハイパーネット助手

はい。
30分間ネットワーキングでした〜♪

PRC
[Partical Route Calculation]
部分的ルート計算
CLNS転送データベース
OSIのCLNS用ルーティングテーブルのこと。
アシンメトリックルーティング
[Asymmetric Routing]
非対称ルーティング。
方向によって経路が変わるルーティング。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • ルータはレベル毎のSPFツリーを持つ。
  • 各ESへのパスの計算を行う。これをPRCという。
  • レベル1はシステムIDのみを見てルーティングを行う。
  • レベル1はもっとも近いエリア1-2ルータをデフォルトルートとする。
  • レベル2はエリアIDのみを見てルーティングを行う。
  • 場合によってはアシンメトリックルーティングになる。
  • Integrated IS-ISはIPのみ、CLNSのみ、両方の3種類可能である。
  • IPルーティングでもCLNSは必要である。
  • IS-ISのSPFツリーはCLNSを元として作成されるので、IPネットワークの情報はその葉として扱われる。

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