即興呪文

即興呪文の概略

 即興呪文とは、不安定で不確実であった即席呪文を学術的・技術的に体系立て、整備したものです。通常の個別呪文と比べると手間が掛かる、安定性が無いといった欠点がありますが、即席呪文と比べて優れた特徴を幾つか有しています。
 Apocalypse-300-では、即興呪文は正教会広教会に所属する専門の魔術師のみが修得できる「秘儀」となっています。イフェリア教団や他の組織の人間は魔法を扱えるとは言え、二大教会のそれと比べれば体系的には素朴なものであり、即興呪文を扱うには至っていません。

使うための手続き

PLによる効果の宣言

 即興呪文を使う意思のあるPLが、GMに「どのような効果を引き起こしたいか」を説明します。この説明を行う際には、「呪文の対象となるのは何か」「ゲームデータ上、どのような変化を引き起こすのか」「ゲーム世界内部ではその変化がどのように観察されるのか」を明確にするとスムーズに理解してもらえると思います。

GMによる実行可能性の判断

 PLから効果の説明を受けて理解した後に、GMはその呪文は実行可能なものであるか否かを決定することになります。魔法と言う体系が極めて柔軟性に富んだものであるため、殆どの効果は実現する事が可能ではありますが、もしもGMがシナリオ進行に支障をきたすと思えばそれを理由に呪文の実行を認めないことにしても構いません。

呪文の動詞技能と名詞技能の決定

 GMが実行可能であると判断すれば、その呪文の名詞技能と動詞技能(品詞技能と総称します)を決定する段階に入ります。名詞技能は「何を」、動詞技能は「どうするのか」に当たるもので、引き起こそうとする効果を解釈できる組み合わせであれば何でも構いません。術者は解釈が成立する限りにおいて、自分の修得している名詞技能と動詞技能の中から最も上手に扱える組み合わせを選ぶ事ができます。この「名詞技能と動詞技能の組み合わせ」を「呪文の表現」と呼びます。
 名詞技能や動詞技能の数は、呪文の効果を解釈するのに必要最低限の数にとどめるべきです。然しただ一つではどうしても解釈に無理がある場合もあり、その場合には同時に複数の品詞技能を指定しても構いません。

呪文の技能レベル算出

 名詞技能と動詞技能が決定が終わったら、その技能レベルから呪文自体の技能レベルを算出します。呪文の技能レベルは、それを表現している名詞技能と動詞技能の中で最も技能レベルが低いものの値と同じになります。

 例えば、「物体を加熱する」という効果の呪文《加熱》を表現するために、名詞技能として《熱/光》-16、動詞技能として《作成/修復》-15を指定したとすると、この《加熱》の技能レベルは15になります。

呪文の詳細なデータの決定

 技能レベルの算出が終わったら、PLとGMが協議を行い呪文の詳細なゲームデータを決定する段階に入ります。此処では、GURPS Magicに記載されている呪文のデータを考慮しながら、「呪文のタイプ」「持続時間」「消費エネルギー」「準備時間」を決定することになります。この時、GURPS Magicの諸呪文と比べて明らかに強過ぎるデータにならないようにしてください。
 また、普通の呪文と同様に技能レベルによる消費エネルギーと準備時間の減少も適用されますが、消費エネルギーは1点、準備時間は1秒が下限になります。

発動判定

 全てのデータが決定されたら、呪文の発動判定に移ります。先ず、名詞技能と動詞技能から算出された技能レベルに、呪文のタイプやGMの判断による修正を課して、最終的な発動目標値を計算します。次に、その発動目標値を目標値として通常通りの成功判定を行い、成功すれば呪文が機能し、失敗すれば機能しなかったことになります。
 即興呪文の発動目標値は、計算した値が15を超えていたとしても最大で15にしかなりませんし、成功度もそこから計算しなければなりません。

即興呪文に関連する追加技能

即興呪文(/種別)  精神(知力)/至難  技能なし:なし

「己の思うがままに呪文を組み立てる。気ままな魔法を扱うには相応しいやり方だと思わんかね」

 即興呪文を行使するにあたって必要となる技術と知識を表します。品詞技能(名詞技能と動詞技能)の基準値となります。〈即興呪文〉の技能レベルには「魔法の素質」のレベルが加算されます。
 〈即興呪文〉の技能レベルは、「知力+魔法の素質のレベル」が上限になります。「呪文知識」を持っていれば、技能レベルの現在値と上限値にそれぞれ+1することができます。
 Apocalypse-300-では、「シェール=フェルム正教会(正教会)」「シェリル=フェルム教会(広教会)」のどちらかに専門化する必要がありますが、実質的な効力に優劣はありません。また、正教会か広教会で然るべき訓練を受けた者、つまり即興呪文を行使することができると取得している「呪文修得方式」の中で明記されている者でなければ、この技能を修得する事は出来ません。

名詞技能と動詞技能

 ある体系の即興呪文でどのような名詞技能と動詞技能が使われているかということは、魔法の体系の構造に深く関わっています。名詞技能と動詞技能は、魔法という現象が「何が」「どうなって」引き起こされるのかについて、その体系がどのような解釈を持っているかを表しているのです。Apocalypse-300-の場合は、二大教会がイフェリア教団を始めとして様々な他の体系の知識を取り入れつつ、独自の研究を積み重ねた結果として現在の形に仕上げられたという事になっています。
 名詞技能と動詞技能の技能レベルは、〈即興呪文〉を基準にして算出します。
 それぞれの技能には「技能なし値」と「難易度」が設定されており、難易度に応じたCPを個別に支払う事によって、一つの動詞技能ないし名詞技能の技能レベルを上昇させる事が出来ます。(これは格闘動作と同様の方法です)
技能修正
+10.5CP1CP
+21CP2CP
+32CP4CP
+44CP6CP
以降+1ごとに+2CP+2CP

名詞技能:「何を」

《水/液体》(難)   技能なし:〈即興呪文〉-6

 「水」に代表される、液体としての物質を扱う名詞です。物体を構成している物が何であれ、液体であればこの名詞を用います。泥やガラスに関しては、後述する《土/固体》と併用して操作を行います。

《土/固体》(難)   技能なし:〈即興呪文〉-6

 「土」に代表される、固体としての物質を扱う名詞です。やはり物体を構成してる物が何であったとしても、固体であればこの名詞を用いる事になります。

《風/気体》(難)   技能なし:〈即興呪文〉-6

 「空気」に代表される、気体としての物質を扱う名詞です。物体がどのような物で構成されていたとしても、期待であればこの名詞を用いて操作を行います。

《生命/精神》(難)  技能なし:〈即興呪文〉-6

 生命体の肉体、及び精神に影響を及ぼす際に用いられる名詞です。魔法生物に関しては、この名詞と《魔法》を併用して操作を行う事になります。

《時間/空間》(難)  技能なし:〈即興呪文〉-6

 時間や空間を操作する際に用いられる名詞です。この時代には未だ明確な「空間」という概念は存在しませんが、魔術師達は多くを感覚と経験に頼って空間に関する呪文を扱っています。

《熱/炎》(並)     技能なし:〈即興呪文〉-5

 熱と、それを生み出すものの象徴である炎を扱う名詞です。この時代には「温度」という定量的な概念は存在しておらず、「温かさ」と「冷たさ」は分けて考えられています。従って「熱」という一つの名詞で全ての熱現象を扱う事はできず、向き付けられた温度変化のみが扱われます。

《冷気/氷》(並)   技能なし:〈即興呪文〉-5

 冷気と、それを生み出すものの象徴である氷を扱う名詞です。

《光/闇》(並)   技能なし:〈即興呪文〉-5

 光とそれが創り出す闇を扱う名詞です。光や闇を扱う呪文にはこの名詞が用いられます。

《音/言語》(並)   技能なし:〈即興呪文〉-5

 音そのものと、音の形で発せられる言葉を扱う名詞です。音や言葉を扱う呪文に用いられます。聴覚を扱う場合には、《生命/精神》を併用します。

《呪文》(難)      技能なし:〈即興呪文〉-6

 呪文そのものを対象とする時に用いられる名詞です。呪文や魔法生物についての操作を行う際に使います。
 《呪文》の技能レベルは、他の名詞技能の中で最もレベルの低いものの値が上限です。

動詞技能:「どうするのか」

《変化/変形》(並)  技能なし:〈即興呪文〉-5

 名詞で指定されたものの、性質や形質を変化させる際に用いられる動詞です。例えば、岩石の形を変化させたり、、動物を別の動物に変えたり、水を油に変化させたりする呪文に用いられます。生命体の行動パターンを変化させたり、呪文の目標を変えると言った操作は《変化》ではなく、後述する《制御》で行う事になります。

《破壊/消去》(並)  技能なし:〈即興呪文〉-5

 名詞で指定されたものを破壊したり、消去する際に用いられる動詞です。物体を破壊したり、生き物を傷つけたり、呪文を掻き消したりと言った呪文に用いられます。

《作成/修復》(並)  技能なし:〈即興呪文〉-6

 名詞で指定されたものを作り出したり、修復したりする際に用いられる動詞です。物体を作り出す呪文や、傷を癒す呪文に用いられます。

《感知》(難)  技能なし:〈即興呪文〉-6

 名詞で指定されたものに対して、何らかの情報を得るために用いられる動詞です。情報呪文に当たる呪文に用いられます。

《移送》(難)  技能なし:〈即興呪文〉-6

 何かをある場所からある場所へと移動させたり、何かをある場所から動かす際の用いられる動詞です。情報を伝えたり、物体を手を触れずに動かしたり、瞬間移動したりと言った呪文はこの動詞を用います。

《制御》(難)  技能なし:〈即興呪文〉-8

 名詞で指定された対象を操作する際に用いる動詞です。全ての呪文は、ある意味で対象を制御する呪文であり、殆ど全ての呪文はこの動詞を用いて再現することが出来ます。然し他にもっと適した動詞が既に存在するのであれば、そちらを用いる方が良いでしょう。
 《制御》の技能レベルは、他の動詞技能の中で最も低いものの値が上限です。

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