2011/04/02 追加
erudition-0088
「ルイちゃん」……敬愛の現れ
私が敬愛する「ルイちゃん」についてのページです……。↓

 ヨーロッパの人名は、いろいろいろいろ制限がある。また、同じ名前であっても、国が違うと全然別のカタカナになったりする。かように:

  • ケパ……イエス・キリストがシモンにつけた、あだ名。
  • ペトロス……上記のギリシャ語訳。
  • ペトルス……上記のラテン語訳。
  • ピエトロ……イタリア語。
  • ピエール……フランス語。
  • ピョートル……ロシア語。
  • ペドロ……スペイン語。
  • ペーター……ドイツ語。
  • ピーター……英語。
 ……どれかひとつにしやがれよ? と思うのは無理な話であろうか?
 #という思いで、「フロイディア」の世界では全部「オルテップ」に統一させていただいたw。
 ……という話が、ほぼ全部の名前について言えるのである。で、「ルイ」であるが。
  • ルイ……フランス語(ex:ルイ14世)
  • ルイージ……イタリア語(ex:マリオ・ブラザーズの相棒)
  • ルードヴィッヒ……ドイツ語(ex:ルードヴィッヒ2世)
 ちなみに、某映画でイタリア出身と思しき女性がルードヴィッヒのことを「ルイージ」と呼んでいた。またまたちなみに、ノイシュヴァンシュタイン城をミュンヘン郊外に建てさせたバイエルン王ルードヴィッヒ2世は自身をルイ14世と同一視した、という。
 となると、だ。私が「ルイちゃん」と呼ぶ人の見当もつこうか。そう、交響曲の父・楽聖「ルードヴィッヒ・ファン・ベートーベン」である。
 #ちなみに、「フロイディア」の世界では、ベートーベンに該当する人として「カフドル・ナフ・オヘテベノフ」という人物が言及される。
 ##ちなみにちなみに、「ファン」はオランダ語圏の姓に由来する。また、ルードヴィッヒをオランダ語では「ルードヴァック(?)」と言う。

   非常に不遜な呼びかけである、というのは重々承知している。また、「ルイちゃん」ことベートーベンが、モーツァルトほど諧謔心に富んでいないのも承知している。
 #同じく、「フロイディアの世界」ではモーツァルトに該当する人として「トラーソム」という人物が言及される。が、モーツァルト本人が手紙で「TRAZOM」とサインしてくれているのである! いやいや、私など凡人がENGLISHからシルニェ語(HSILGNE)語をでっちあげるン百年前に、モーツァルトは同じネタを楽しんでおられたということである(ん? 私みたいに「熱情王の生涯」を一冊+α本にするほど遊んではいないって?ww)。
 ルイちゃんの曲は、ぼんやり聞いていると、「なんか怖そう」に感じるかもしれない。だが。私のあまり好きでないアメリカ漫画、チャールズ・シュルツの「ピーナッツ」にはシュレーダーなる人物が登場する。シュレーダーは、かなりのベートーベンおたくである。
  • プラカードを高く掲げ持つ:「ベートーベンの誕生日まであとX日!」
  • おもちゃのピアノのキーを叩いて天を仰ぐ、「ベートーベン!」
 作者シュルツに言わせると、「(そのような事をするのは)他の作曲家に対してするよりもベートーベンに対してするほうがふさわしい」そうである。
 「でも、なあ……」
 釈然としない思いがある。
 このようなエピソードがある。私と両親がウィーンに観光旅行に行った時のこと。ベートーベンのシンフォニーを聴きにいった。父の隣席にいたドイツ人、父に英語で尋ねる。  「ベートーベン好きか?」
 父、答えていわく、「私の息子が好きである。ベートーベン好きか?」
 そのドイツ人答えていわく、「おれはドイツ人だ」
 ドイツ人ならばベートーベンが好きなのは当然だと言わんばかりであった(その対極におられるのが、ネルケ無方氏であろう)。
 また、このようなエピソードもある。指揮者朝比奈隆がドイツのオーケストラを鍛えていた時のこと。ベートーベン交響曲第5番(通称「運命」)の練習中、あるバイオリン奏者が第4楽章で「手を抜いた弾き方」をしていた(ちなみに朝比奈隆は「専門の音楽教育を受けていない」などと卑下しているが、大学のアマチュアオーケストラで弦楽器を受け持っていたはずである)。即刻、朝比奈隆は演奏を中止させ、当該奏者をドイツ語で叱りつける、「君たちの国の作曲家の作品だろう。君はそのような弾き方をしていて恥ずかしくないのかね?」これを聞いた古参楽団員は「ブラヴォー」と言って朝比奈を称えたという。
 まだまだ釈然としない思いがある。
 またまた、このようなエピソードもある。1970年代のことであろうか。あるコンサートでベートーベンのシンフォニー演奏終了後、朝比奈の耳に幼い少女の叫びが聞こえた、「私、大きくなったら、ベートーベンになりたい」……朝比奈は「その少女にベートーベンが分かったとは思えない。ただ、ベートーベンの旋律に神を見たのであろう」と回想していた。
 まだまだまだまだ、釈然としない思いがある。あの偏屈で、引っ越し魔で、ハシにも棒にもかからぬ甥を溺愛した(それゆえ彼の実子という説まである)、あいつが楽聖? 九つの交響曲を作ったけれどもハイドン・モーツァルトを差し置いて「交響曲の父」?
 シド・マイヤーの「シヴィライゼーション」というゲームシリーズでは、「バッハの教会」を作ると、その大陸の各都市の「不幸な人」を減らすことができる。いや、むしろその効果は「ベートーベンの第9」こそが相応しいのであるが。それにしても、「楽聖」? 「交響曲の父」?  「うーーーーん。いまひとつ、しっくりこないなあ」
 というのも、スコアの細部を点検すると(後世の?)書き間違いとか、「あっ、かわいい!」とか思える箇所が、けっこう発見できたりするのだよ、ねえ。
 ということで、敬愛の念をこめて、私はベートーベンを「ルイちゃん」と呼びたい。
 #ルードヴィッヒ本人は「…………」と無言で、肖像画で名高いしかめっ面を返してくれるかもしれないがwww。