2005/09/03 追加, 2014/03/02 更新
erudition-0004
父称……ロシアにおける、ミドルネームの法則
ロシア人のミドルネームは、「父称」といい、お父さんの名前にちなんだものがつけられます。かように↓。

むかしむかし。

あるところ(といったほうがよさそうなところ)に、 「ヤハウェはわが神」という意味の男の人・預言者(エリヤ、英名イライジャ)が おりました。

さらに時代は下って、イェシュア(ラテン名イェスス、英名ジーザス)という人は、お付きの人の一人に「ケパ」というあだ名をつけました。
日本語では「岩」、ラテン語・ギリシャ語では「ペトルス/ペトロス」という意味です。

少し時代が下って、チャイコフスキー家に、預言者エリヤにあやかったロシア名がイリヤ という男の人が結婚しました。
男の子が生まれました。
お父さんのイリヤは、子供に「天国の鍵の番人」ケパすなわちペトルスにあやかって、英語でいえば「ピーター」にあたる名をつけました。
ロシア語では Петр とも書きます。アクセントは…… е だけ。
 е(イェ) と怒鳴るのも「しんどい」のか、 ё(ヨ) と発音します。

つまりロシア語では、「一目瞭然な ё は、 е と書くことがある」
ということです。

発音は ヨ 、なんだよなぁ……。
ということで、ロシア・キリル文字からラテンなABCに変換するとき、  Pyotr などと、よく書きます。

 Pyotr ? ピュオトル? それがPeterと同一人物とは、どうしても思えない。
でもでも。 Петр と書くこともありうる、ということから
Pietr
と書いてあげれば? おお、なんとなく、「 ペーター 」と読めそうですね?

ということで、当サイトでは、彼のファーストネームを「 Pietr 」と書いてあげています(でもでも「 ピョートル 」と読んであげてください)。

#今も生きていれば「ワタクシのことなんかほっといてくれ!」とか
#ピョートル・イリイチに怒られそうですがw。


さて……と。 彼のミドルネーム、ですが。
ほかのロシア人と同じくотчество(オーチェストヴォ、父親から受け継がれるもの、「父称」)になっています。
「父称」とは何かというと、「お父さんだれ?」という情報です。ここでいうと、「イリイチ」すなわち「父イリヤの息子」という意味のものです。

もしも「イリヤの子供」、「ピョートル・イリイチ」が結婚して(離婚しましたが)
男の子イワンと女の子ソフィヤが生まれたならば?

架空の息子イワンのフルネームは
イワン・ペトロヴィチ・チャイコフスキー(男性形)
架空の娘ソフィヤのフルネームは
ソフィヤ・ペトロヴナ・チャイコフスカヤ(女性形)
となるでしょう。

さて。さらに時代がくだって、ソフィヤセルゲイと結婚、ミハイルが生まれたら?

父親セルゲイの息子ミハイルの名は、「ミハイル・セルゲイヴィチ」となります。つまり、
ミハイル・セルゲイヴィチ・ゴルバチョフのお父さんの名は、『セルゲイ』だ」
ということになります。

さて……。われらがピョートル・イリイチには、ヴラジミールという甥がいましたホント
もしもヴラジミールの息子の名前もヴラジミールだったならば?

その子の名前は、「ヴラジミール・ヴラジミーロヴィチ」となります。つまり、
ヴラジミール・ヴラジミーロヴィチ・プーチンのお父さんの名も、『ヴラジミール』だ」
ということになります。