2011/02/05 追加
erudition-0087
誤記論……その楽しみかた(2)
「誤るは人の常」ぢつは「赦すは神の(御業)」と続く↓。

誤記論(1)のページでの「著者自身が雰囲気に流され(誤記に)気づかずにリリース」する事を仮に「ハイネセン・バグ」と名づけよう。
私とてハイネセン・バグをしでかさないわけではない。拙著『ひきこもりのおうじさま』には私自身未検出であるが、 拙著『熱情王(デト・トネドラ)の生涯』(2011/03刊行予定)には、いくつかハイネセン・バグが存在する。
ただし、デト・トネドラの中のハイネセン・バグについては、いずれも理由がある。

  • 伯爵のルビが残る
    P.91下段
    「彼(皇太子)の作戦はノ・キテン伯爵(ハクシヤク)のようでもあり、レモール元帥のようでもあった」
    実は、これは誤りではない。「はくしゃく?」との誤解を容易に生む。
    そこは、織り込み済みである。というのは、ノ・キテンなるジペニア人の爵位はジペニア語で「ハクシャク」だからである。
    日本語のルビではなく、ジペニア語の発音をルビにしただけである。
    #いや、実は「ハクシヤク」のルビを削ろうかどうか、かなり迷ったのだわwww(たっぷり数年間w)。 なお、P.113上段のルビは、実は誤りである:
    後年コニギアを吹き荒れた「グラプラント伯爵(ヅラフ・ノフ・グラプラント)事件」は異なる様相を呈したであろうが。
    ここのエクスード語は「ヅラフ」ではなく「ファルグ」のはずである……。ということを、いったい何人が気づくかな?
    と思い、放置しているw。
    ちなみにその伯爵のフルネームは「イリウス・ゲレスティス・グラプラント」のはず(?)なので、「ヅラフ」が固有名詞ではなさそうである。
  • リース修飾問題、修正漏れ(?)1個
    P.192下段〜P.193上段
    リースの語は「旦那」という呼びかけの意味がある(姓ではなく名を修飾する)。
    (中略)
    彼は、「へい旦那」と下卑た口調で道をゆずり、「ソムソルの旦那」と続けた。そして最後に「無礼者めが」という口調で「キャシス」と続けた。
    さて……。ここの登場人物は「キャシス・ソムソル」という名前である(オデュプサイ・セボンでの『ありふれた』名前)。
    名はキャシス、姓はソムソルである。すると何か変と思わないだろうか?
    これまた、数年悩んだ部分である。
    ネタバレになってしまうが、「リース」の語は英語の「Sir(サー)」を語源としている。サーは名を修飾する……。ということを執筆当初 (20世紀……)全く失念していた。ところが21世紀になるかならないかの頃になって、
    うん……? サーは姓につけるのではなく、名前に付けたよな?
    と思いだす。
    さあ、私は困った。「キャシス・ソムソル」では解りにくいので英語風に「アイザック・ローズマン」とその人物を呼ぶことにしよう。
    英語ならば「Sir...Isac...Roseman!」となろう。下卑た口調で「Sir」と言い、「Isac」と続け、「Roseman!」とさらに続けた、ということである。
    ここ日本語で、どう翻訳する??
    たっぷり悩んだ。
    今度は「キャシス・ソムソル」こと「アイザック・ローズマン」を「藤原功(ふじわら・いさお)」と和風に呼ぶこととしよう。……すると?
    「へい旦那、藤原の旦那、藤原功の旦那」とかになってしまう。
    うーーーん。不可能w。
    ということで説明文をつけてみたのであるが。
    うん? この「ソムソルの旦那」「キャシスと続けた」って、実は「キャシスの旦那」「ソムソル」と続けたの間違いじゃね?
    そのとおり!
    でも……日本人の発想として「功の旦那」ってどうよ? そこは普通「藤原の旦那」あるいは「藤原功の旦那」だろう?
    いや、この場面自体、台詞が下記のように変わるはず。
    「へい、解りましたよ、そんなにつんけん言わないでくださいな、藤原家の功ぼっちゃんよ!」
    ……とか? けれども、「Yes, Sir Isac Roseman!」の簡潔さと比較して、どうよ?
    たっぷりたっぷり悩んだ。悩みぬいたまま校正した。再校正した。結論は出ない。
    #いや、実は、デト・トネドラ自体を「英語で出そうか?」とかいう話を私はしたのだが……。
    「そのまま行っちゃえ!」……という誤り(?)である。
  • Priestは司祭か?
    P.219上段〜下段
    あらかじめ「イリウス」と刻まれた匙を司祭に手渡したのである。
    (中略)
    「では、次にお持ちになる匙は、曇りのない匙にしてくだされ」と司祭。司祭は、「ライラ」の洗礼名を黙認し、かつ「アーリア」の名も認めたのである。
    ここは教会(?)のPriestと主人公のやりとりの場面である。困った事に日本語ではPriestの和訳が宗派によって異なる
    • 神主……神道系
    • 神官……古代世界?
    • 僧正……仏教系?
    • 司教・司祭……カトリック
    • 主教・教父……キリスト教(東方)正道教会
    • 牧師……プロテスタント
    #どれか一つにしやがれよ?
    これまた和訳にたっぷり悩みぬいた。
    執筆当初、僧侶・僧正を用いていた。が、これは仏教系。
    僧正カット!
    とカットしていった(著作にないはずである(僧侶は残した))。
    かなり悩んだ挙句、ビショップ(僧正・主教・司教)を「祭司」とし、アークビショップを「大祭司」とした……。
    ところ、かえって「教会(?)」の権威・「アークビショップ」の権威が、伝わりにくくなった、ねえ。
    悩んだまま、見切り発車した。
    ところがところが。ボルストン教教会は「東方派」と「中央派」に分かれていがみ合っている。 ネタバレになってしまうが、「ボルストン」の語は「クリスチャン」のアナグラムだったりするw。
    つまり、「イエス・キリストの存在しないキリスト教」をモデルとして「フロイディアン・ボルストン教」を 作ってある、のである。 すなわち、「ボルストン教東方派」は「キリスト教東方正教会」を、「ボルストン教中央派」は 「カトリック・プロテスタント・英国国教会もろもろ」をモデルとしているのである。
    #裏設定であるが、マルチン・ルターに該当する人物が古代世界において提唱したのが古代ボルストン教ということになっている。
    ということは、「東方派」のPriestは「教父」でも良い。では中央派は?
    上述に列挙したとおり、どれでも良い、あるいは、どれでも不可能。
    「でも……キリスト教っぽい語感が欲しい、なあ」ということで当初、「司教・司祭」を使用していた。すると。
    「では枢機卿(カーディナル)は? 法王は?」
    いや、そんな者いないのだよ、なあ。ということで「大祭司・祭司」を採用した。「大祭司」ならば、どうやら、「さらに上」という聖職者が いそうにない。 ところが、「祭司」は宗教的な感覚はあるが、キリスト教っぽさからは程遠い……。
    と悩み抜いて結論も出ないまま「司祭」に修正し損ねて放置したのが、上記の「匙」云々の記述である
    #この場面、もどきキリスト教っぽさが欲しかった、という意味でもある。
  • 「悲しむ者よ、幸福は汝のためのものなり……」か?
    P.238上段
    たまらず大公は、合唱隊の座す踊り場をにらみ返す、「母は、このマハルバスよりも、ルアーフェスが作曲した鎮魂歌を好んだものであったが」
    この場面で流れるアノイ・マハルバス作曲「鎮魂歌」は、その出だしから明らかに、ヨハネス・ブラームスの「ドイツ・レクイエム」を想定している。
    本書の「マハルバス」が間違えているわけではない。近年の私がマハルバスを「マハルボス」とよく書き間違えているからである。
    ブラームスの語は、アブラハムに由来する。……ならば、マハルボスではなく「マハルバス」、だろう。
    ちなみに、「ルアーフェス」は「ガブリエル・フォーレ」を想定している。
    ブラームスはプロテスタントであるが、おそらくフランス人フォーレはカトリックだろう。
    上述のとおり、ボルストン教自身にプロテスタントが存在しなかったため、分かれるとすれば、「中央派」と「東方派」ということになる。
    で、少々不本意ではあるが、ルアーフェスには「東方派」になっていただき、マハルバスには「中央派」になっていただいた、という次第である。
  • EG"10"?
    P.38上段他
    『多目的支援戦闘機EG10開発秘史』
    一見何も問題ないかのように見える。問題は、EGなるものが何か、という所にある。
    コニギア人のエゲレム(E)とグレッグ(G)のナムツィール兄弟による航空機メーカーがEGという設定である。
    コニギアは陸軍国。つまり、空軍は後手に回っていた。さらに後年、コニギアはラルテニアに併合される。……EGは?
    解散も合併もされずに、休止したのである。
    後にネアーレンスに拾われ、ネアーレンスの国策会社となっていく。そこで、EG"10"ノホテュプが開発されたのであるが。
    EGのモデルは何か、を再度考えてみよう。
    ナムツィール:
    ……。実はアメリカの「ライト兄弟」がベースになっている。という事は、複葉機の時代である。
    「エゲレムとグレッグ」:
    ……。「ミハイル」と「グレゴル」の語感は、実は「ミコヤン&グレゴヴィッチ」すなわちソヴィエト・ロシアの 「MiG」がベースとなっている。
    コニギア:
    ……。オーストリア・プロイセン・バイエルン・ドイツをごちゃまぜにしてデタラメに止揚した国。
    ……かなり設定に無理があるのがお分かりいただけたであろうか。
    さらに問題は、これのみにとどまらない。EG"10"以外の各EG飛行機を検討してみよう。
    • EG1ネザリエグ:
      ……「デト・トネドラ〜」には登場しない、このEG初のジェット戦闘機、実は1960年代後半にソヴィエトに配備された スホーイ21フラゴンあたりをモデルとしている。オデュプサイ・セボンでも非常に旧式な要撃戦闘機。
    • EG2戦闘攻撃機:
      ……「デト・トネドラ〜」には登場しない。スホーイ7あるいはスホーイ17フィッターあたりを想定。
    • EG6垂直離着陸支援戦闘機レグローフ:
      ……本文記述から、ヤコブレフ38フォージャーを想定している事は明らか。
    • EG7要撃機ゴルフェン:
      ……「デト・トネドラ〜」には登場しない。名前や「旧式」というところから、これもまたフラゴンと思われる。
    肝心のMiGが一つもない事にお気づきだろうか?
    #一応、設定上、EG9というのがMiG25/31をモデルとしているが。
    ##ちなみに、設定上、リファノイ19のモデルがF104スターファイターで、リファノイ21のモデルがMiG29ファルクラム。

    ……。じゃあ、MiG21・23・27は?
    確かに当初、EG"10"を「ノホテュプ」に想定していた。
    ところが、「デト・トネドラ〜」「砂賊」等々を構想・シミュレーションゲームでシミュレーションするうちに、「EG10では足りない」 状況となった。そして、手元の資料では、EG"20"ノホテュプとなっていたのである!
    し、しまったぁ!!
    しかも、EG18→EG19と実験を重ねて、→EG20となったかのように書いてある。
    うーーーーん。その設定(EG20)、ボツ! EG10で行こう!
    ちなみに、EG18・19はスエーデンのビゲン・グリペンあたりを想定していた。
    EG"10"(20?)のスペック的には、フランスのラファールっぽいが「ノホテュプ」という名前(元は「ノホピュト」)がモロに、 「EFA2000タイフーン」だったりしたのである!(当サイト・ビデオリスト欄の「ユーロファイター」項目にも「EG20」と書いてある……)
    小学生が授業時間中に、「落書き」で、ユーロファイター・タイフーンの設計をしてしまう!(笑) デト・トネドラさん、あんた、どんだけ凄いんだよ!
    あんた、本当にオレがモデルか?(爆)
    #いや、アレクサンドル1世とかルードヴィヒ2世(!)とか、他にも色々思いっきり混ぜてはいるのだがw。
    ああ……。ちなみに。P.104下段:
    ラルテニア工学製S9低空支援攻撃機ドガルオ
    これは間違いではない。
    執筆時に割愛したのだが、これは「ソイディア工学S9」だったのである。ソイディア工学はラルテニア工学に吸収合併されてしまう。
    その後「ラルテニア工学S9」となる。設定当時では「ソイディア工学」、後に「ラルテニア工学」では「わけわからん」とかなってしまう。
    そこで、そのものズバリ「ラルテニア工学」とのみ記述した。ちなみにドガルオ(神のフクロウ、ミネルヴァ/アテナの使者)の語に意味はない。
    S9のモデルはA10サンダーボルトだったりするからである。
    後の「雷帝」が「サンダーボルトから降りてくる」では、あまりにも作り過ぎ。だもんで、「サンダーボルト」の語は避けたのである。