英単語には(少々マイナーではあるが)lallation(ま、カタカナで考えるならラレーションか)という語がある。
……の意である。わざわざ日本人をバカにするためにアメ公どもがそんな語を作った、とでもいうのだろうか。否。
- Rの子音をLと混同して発音すること。
- RあるいはLを不明瞭に発音すること
Leninという筆名の人物がいる。そう、あのレーニン。ソビエト国歌で「偉大なレーニンは我らに道を示した」「レーニンの党、人民の力」と歌われる、あのレーニン、である。
彼のトラウマになりそうなりそうな単語……それは「グラスノスチ (情報公開、原意は「おおっぴらに述べる」)」である。
ГЛАСНОСТЬ(GLASNOST')……と書く。ラテンアルファベットで「I」「J」を書かなかったことにお気づきだろうか?
(2006/07 注)「論文作法」のウンベルト・エコ大先生によれば、「書かなくてよい」「ロシヤ語は、一般に『解りにくい』とみなされている」……らしい(このヒトはポルトガル人)。
アポストロフィで表現される記号「Ь」は、省略ではなく、「軟子音記号」という。
詳しい話は(このあたりは)枝葉末節なので割愛するが、発音するのはカンタンなはずである。
ТЬを発音するには……
レーニンは、軟子音の発音がニガテで、おまけに、RとL(キリル文字のРとЛ)の発音を、よく混同したという。……少しは気が晴れたであろうか? まだ? レーニン本名ニコライ・ウリヤノフはカルムイク出身、だからアジア系だから、できなくても当然?
では、20世紀初頭からさらに古代ローマにさかのぼる。とある文献によれば、
「あの者(ライバル)は、まるで犬が唸るように、上手にRの発音をする」などと褒めているのか貶しているのか解らない文章が残っている、という。
70歳の日本の老人男性に、アメリカ人(英語で)、「総選挙(election)には行っておられないのですか?」日本の老人男性、悲しそうに首を横にふる、この20年来erectionは、訪れていない
……そうなると、一国で世界的な多民族・多宗教を誇るインド古語サンスクリットは(ヒンドゥー語も)品が良いといえようか。サンスクリットの文字デーヴァナーガリでは流音(R・L・N)の文字が似ていて、微妙に違う……つまり、もし間違えて書いたり言ったりしたら「RではなくL、Nだよ」と教えてくれるに相違ない
実際、KとHを間違えて書いた(←これもデーヴァナーガリでは似ている)ら、「違うよ」と教えてくれた。
これで気が晴れたであろうか? まだ?
では英語・ロシヤ語・フランス語のRLの相違の覚え方、および(日本語のわかる)ドイツ人にラレーションで「からかわれた」時に復讐する方法を述べて、しめくくるとしよう。
発音を覚えろ。……それは正論ではある。しかし、欧米人ですら間違うものを正確に、とは成しがたい。そこで、英語教師直伝の覚え方。
幸い、ロシヤ語・英語(他)も、RとLの文字の形が異なる。
そこで、単語のシルエットを、映像として頭に焼き付けておくのである。
上のジョークの例でRの言葉とLの言葉の違いをよーーーく見てみよう。
すると、「選挙」の語は「いきなり勃起している」が、「勃起」の語は勃起していないことに気づくであろう。そのシルエットを瞬時に読み取って、発音する、というのである。「爪にツメなし、瓜にツメあり」ならぬ「勃起に勃起なし」である。
ちなみに、ロシヤ語の場合はRがラテンのPの形をしており、Lのほうは上に出てこない。
カタカナは厳禁である。日本語にRの子音もLの子音もなく、RとLの混じった子音が「ら行」だからである。蛇足を追加すれば、日本語本来の単語に「ら行」で始まるものはない。ちなみにフランス語では、上記のほかに、禁じ手の覚え方がある。フランス語のRはガーグル音といって、「ごろごろ喉を鳴らす」Rとなる(ことが多い)。
chambre(正しい?カナ書きならば「シャンブル」)……部屋という語をフランス語の知らない者が聞けば「シャンボグァ」に聞こえる(仲*かすみ相手に小学館が「フランス語講座」についてインタビューしたとき、そのようにカナ書きしていた)。
つまり、いっそ全部Rをガ行で発音しちまえば、意外とフランス人に通じてしまう(旅行者の談)、ということである。
最後に、ラレーションをドイツ人(日本語教室の生徒)に「からかわれた」場合の復讐wの仕方である。下記の文章を発音させ、「ひらかな」で書かせるのである:
「私は、暑中に、しょっちゅう、焼酎を飲みます」ドイツ人が何をニガテとしているか、ピンと来たであろうか?
ヨカッタね、一矢ムクイルことが出来て……。