コミュニケーション（言語）と法―テーマとサブ・テーマについて
コミュニケーションという現象は多種多彩である。たとえば、物や人の交換がコミュニケーションの一つであることに留意するならば、財産法や家族法がコミュニケーションを規律する（その基盤となる）法であることが容易に理解される。
他方、コミュニケーション現象の典型として想起されるのは言語であるが、法もまたコミュニケーション現象の一つであると言える。言語と法の間には、強制や自然修得という点など相違点があるものの、規範性・慣習性など重要な共通点もある。
2012年度の演習「コミュニケーション（言語）と法」では、様々なコミュニケーション現象の検討を通じて、一方で「コミュニケーションの法」につき、他方で「コミュニケーションとしての法」につき、考えていきたい。その過程を通じて、コミュニケーションとは何かについての理解も深まることが期待される。
ここでは、具体的にとりあげる小テーマを掲げるとともに、それらを整理するための軸を提示しておくに止める。
小テーマ（第１次）―言語、外国語、コンピューター、ネット社会、神話と教典、印刷・書物、電話・郵便、自閉症、セクハラ、手話・モールス信号、動物社会、意味と解釈
小テーマ（第２次）―言語学、認知、文学作品、キャラクター、インターネット、他者・集団、近隣・職場、ハラスメント・いじめ、差別(化)、影響力、ジャーナリズム、宗教、医療・看護・介護、動物
＊第１次の小テーマは選書の前に仮に設定したものであり、第２次の小実際の選書の後に再設定されたものである。実際の演習では、第２次の小テーマ14件のうち、参加者の希望により選択された11件が扱われた。
整理のための軸
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��言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション
��ミクロな（個人間の）問題とマクロな（社会的な）問題
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「コミュニケーション（言語）と法」文献表
１ 言語学
◎鈴木孝夫・教養としての言語学（岩波新書新赤版460）1996
○風間喜代三・言語学の誕生（岩波新書黄版69）1978
○中島文雄・日本語の構造（岩波新書黄版373）1987
○泉井久之助・ヨーロッパの言語（岩波新書青版C103）1968
○白井恭弘・外国語学習の科学（岩波新書新赤版1150）2008
○末延岑生・ニホン英語は世界で通じる（平凡社新書535）2010
２ 認知
◎今井むつみ・ことばと思考（岩波新書新赤版1278）2010
○川本茂雄・ことばとイメージ（岩波新書黄版331）1986
○渡辺慧・認識とパタン（岩波新書黄版36）1978
○三中信宏・分類思考の世界（講談社現代新書2014）2009
○安西祐一郎・問題解決の心理学（中公新書757）1985
○瀬戸賢一・メタファー思考（講談社現代新書1247）1995
３ 文学作品
◎小森陽一・村上春樹論（平凡書新書321）2005
○高橋哲雄・ミステリーの社会学（中公新書940）1989
○工藤庸子・フランス恋愛小説論（岩波新書新赤版573）1998
○布施英利・マンガを解剖する（ちくま新書506）2004
○烏賀陽弘道・Ｊポップの心象風景（文春新書432）2005
○山田永・日本神話とアンパンマン（集英社新書0352F）2006
４ キャラクター
◎東浩紀・ゲーム的リアリズムの誕生（講談社現代新書1883）2007
○大塚英志・物語消滅論（角川ONEテーマ21新書C-83）2004
○秋山孝・キャラクター・コミュニケーション入門（角川ONEテーマ新書C-42）2002
○能登路雅子・ディズニーランドという聖地（岩波新書新赤版132）1990
○桝山寛・テレビゲーム文化論（講談社現代新書1573）2001
○霜月たかなか・コミックマーケット創世記（朝日新書150）2008
５ インターネット
◎橋元良明・メディアと日本人（岩波新書新赤版1298）2011
○梅田望夫＝飯吉透・ウェブで学ぶ（ちくま新書862）2010
○岡嶋裕史・郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ（集英社新書0333G）2006
○菊池良生・ハプスブルク帝国の情報メディア革命（集英社新書0425D）2008
○ひろゆき・僕が２ちゃんねるを捨てた理由（扶桑社新書054）2009
○神田敏晶・Twitter革命（ソフトバンク新書118）2009
６ 他者・集団
◎綾屋紗月＝熊谷晋一郎・つながりの作法（NHK生活人新書335）2010
○土井隆義・友だち地獄（ちくま新書710）2008
○菅原健介・羞恥心はどこへ消えた？（光文社新書230）2005
○荒木博之・日本人の行動様式（講談社現代新書320）1973
○久保田裕之・他人と暮らす若者たち（集英社新書0518B）2009
○辛酸なめ子・女子校育ち（ちうまプリマー新書156）2011
７ 近隣・職場
◎斎藤孝・あなたの隣の〈モンスター〉（NHK生活人新書253）2008
○関根真一・となりのクレーマー（中公新書ラクレ244）2007
○橋本典久・２階で子どもを走らせるなっ！（光文社新書360）2008
○小笠原祐子・ＯＬたちの〈レジスタンス〉（中公新書1401）1998
○高橋克徳・職場は感情で変わる（講談社現代新書2016）2009
○速水敏彦・他人を見下す若者たち（講談社現代新書1827）2006
８ ハラスメント・いじめ
◎内藤朝雄・いじめの構造（講談社現代新書1984）2009
○安富歩＝本條晴一郎・ハラスメントは連鎖する（光文社新書299）2007
○西澤哲・子ども虐待（講談社現代新書2078）2010
○熊谷早智子・家庭モラル・ハラスメント（講談社＋α新書400-1A）2008
○豊田正義・ＤＶ―殴らずにはいられない男たち（光文社新書010）2001
○金子雅臣・壊れる男たち（岩波新書新赤版996）2006
９ 差別（化）
◎好井裕明・差別原論（平凡社新書367）2007
○角岡伸彦・はじめての部落問題（文春新書478）2005
○田中宏・在日外国人（岩波新書新赤版171）1991
○越智道雄・ワスプ（WASP）（中公新書1435）1998
○吉川徹・学歴分断社会（ちくま新書772）2009
○山田登世子・ブランドの条件（岩波新書新赤版1034）2006
１０ 影響力
◎今井芳昭・影響力（光文社新書457）2010
○櫻井義秀・「カルト」を問い直す（中公新書ラクレ201）2006
○佐藤尚之・明日の広告（アスキー新書045）2008
○大山真人・悪徳商法（文春新書322）2003
○下條伸輔・サブリミナル・マインド（中公新書1324）1996
○今村仁司・群衆―モンスターの誕生（ちくま新書056）1996
１１ ジャーナリズム
◎武田徹・原発報道とメディア（講談社現代新書2110）2011
○田村秀・データの罠―世論はこうしてつくられる（集英社新書0360B）2006
○荻上チキ・検証 東日本大震災の流言・デマ（光文社新書518）2011
○奧武則・スキャンダルの明治（ちくま新書095）1997
○梓澤和幸・報道被害（岩波新書新赤版1060）2007
○謝花直美・証言 沖縄「集団自決」（岩波新書新赤版1114）2008
１２ 宗教
◎本村浚二・多神教と一神教（岩波新書新赤版967）2005
○井上正一・キリスト教と日本人（講談社現代新書1551）2001
○なだいなだ・神、この人間的なもの（岩波新書新赤版806）2002
○島田裕巳・創価学会（新潮新書072）2004
○五木寛之・蓮如（岩波新書新赤版343）1994
○工藤庸子・宗教vs.国家（講談社現代新書1874）2007
１３ 医療・看護・介護
◎水野肇・インフォームド・コンセント（中公新書958）1990
○増田れい子・看護―ベッドサイドの光景（岩波新書新赤版430）1996
○三好春樹・元気がでる介護術（岩波アクティブ新書10）2002
○小澤勲・痴呆を生きるということ（岩波新書新赤版847）2003
○南俊秀・モンスター・ペイシェント―崩壊する医療現場（角川SSC新書053）2008
○大川弥生・新しいリハビリテーション（講談社現代新書1706）2004
１４ 動物と人間
◎小山慶太・犬と人のいる文学史（中公新書1996）2009
○山内昶・ヒトはなぜペットを食べないか（文春新書439）2005
○池上俊一・動物裁判（講談社現代新書1019）1990
○竹内薫・もしあなたが猫だったら？（中公新書1924）2007
○野澤延行・ネコと暮らせば（集英社新書0246H）2004
○小菅正夫・〈旭山動物園〉革命（角川ONEテーマ新書A-46）2006
参考 読書・書籍
◎永嶺重敏・東大生はどんな本を読んできたか（平凡社新書394）2007
○鹿野政直・岩波新書の歴史（岩波新書新赤版別冊9）2006
○小飼弾・新書がベスト（ベスト新書284）2010
○池澤夏樹編・本は、これから（岩波新書新赤版460）2010
○福田和也・悪の読書術（講談社現代新書1684）2003
○平野啓一郎・本の読み方―スロー・リーディングの実践（PHP新書415）2006
補講
◎バルト『エクリチュールの零度』（ちくま学芸文庫）、19-30頁
○ソシュール『一般言語学講義』（岩波書店）
○デリダ『声と現象』（ちくま学芸文庫）
※各回の報告の見方
課題図書の紹介
上掲の各テーマの文献6冊から1冊を除き、5冊が実際に課題図書として扱われた。参加者全員が読むメイン・テクストには報告者二人の400字程度の書評、他の4冊のサブ・テクストには報告者一人の200字程度の書評がある。課題図書それぞれにつき、序（内容）、破（ひろがり）、急（法との関連）について三ツ星で評価が付されている。
コメント��
5冊の課題本を総括して、各文献の分類や連関等についてまとめたもの。
コメント��
課題本を踏まえ、その回のテーマを「法」に関連付けて論じたもの。
ディスカッションの概要
ゼミでなされた議論を後でまとめたもの。
