狂った歯車

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狂い出した歯車を止められる術は無い。




「…本当に初めてだったんだね」

不二に問い掛けられても、リョーマは全く反応を示さない。
着衣はここにいる男達から全て取り除かれ、胸元や身体のあちらこちらに赤い華が咲き乱れ、虚ろな視線は天井に向けているだけでその瞳には誰も映さない。
「じゃ、手塚って本当におチビに手を出してないんだ。うわ〜、いっがーい」
乱れたシャツを直し、部室の床に横たわるリョーマの傍に座り込む。
少し汗で濡れた髪を指に絡めてみる。
「…ふむ、意外と奥手なんだな」
壁に寄り掛かるようにして立っている乾は、惜しげもなく晒されたリョーマのしなやかな肢体を満足気に見つめている。

リョーマはこの男達の手によって、乱暴されてしまった。

嫌がる身体を無理矢理床に押し付けて、着ていた服を脱がせて、象牙のように美しく、柔らかい肌に触れた。

座り込んだ乾の膝の上に座らされ、背中から乾の腕によって羽交い絞めにされた。
懸命に閉じていた脚を両側から不二と菊丸に開かされて、自分すら見ることの無い秘部の全てをこの男達の目に映させた。
悔しさと恥ずかしさから、ぎゅっと唇を噛めば、口の中は鉄の味がした。

それからは…。



「手塚もよく我慢してたもんだね」
汗や体液で汚れた身体を清潔なタオルで拭いていても、リョーマはピクリと動かない。
「ホントだよにゃ〜、人生の半分を無駄にしてるよ」
リョーマの内部に入った瞬間、背筋がゾクゾクした。
女の子との経験は数回ある菊丸にとって男を相手にするのは初めてだったが、ちょっと癖になりそうなほど強烈な快感だった。
「菊丸の言うとおりだな」
乾も多少は恋愛の経験がある。
身体の関係も少しだけあるが、その時とは比べようにならないほどの刺激だった。
触れる肌はもぎたての果実のように瑞々しく滑らかで、手の平に吸い付いてくるような錯覚に陥る。
快感に慣れていない身体を自分達の手で開拓させようと、3人は己のテクニックを全て使ってリョーマを快感の淵へと引きずり出そうとしていた。
リョーマが望んで快感に溺れる事は最後まで無かったが、1回すればまたしたくなり、乾も不二も菊丸同様、リョーマの身体に夢中になっていた。
初めは自分達の快感よりもリョーマの快感を優先していたが、そのうちに自分達の快感を最優先し始めた。
どんなにリョーマが泣いても叫んでも、3人は快感だけを追っていた。
声がうるさくなれば口の中にタオルを突っ込んで音を出させないようにし、暴れる身体を持て余せば、両腕を縛って自由を無くした。
これが乱暴でなくて何と言うのだろう。


リョーマはただ只管ここにいない恋人に助けを求めたが、その願いも空しくリョーマは長い間、この男達によって陵辱を受けていた。



部活の後で乱暴を受けた身体は思うように動かなく、3人の手によって服を着せられ、ベンチに移動させられた。
早く家に帰ってこの穢れた身体を洗い流したいのに、腰から下がまるで鉛が乗っているように動かない。

「越前君、家まで送って行こうか?」
「おチビ、身体辛くない?」
ようやく自分で起き上がれるようになれば、不二と菊丸が傍らに寄る。
乾はポケットから取り出したスペアキーで部室の鍵を掛けている。
普段ならここで「何時の間にそんな物作ったんだろう?」と、疑問が沸くが今日は全くそんな気にならない。
あんな事をしたとは思えないほど、普通にリョーマに接しているこの男達の存在が溜まらなく嫌だった。
「……」
リョーマは肩に乗っている不二の手を残っていた力で叩き落し、3人を全く見ずに自分の力だけで歩き始めた。
あらぬところがじくじくと痛むが、今は早くこの場所から立ち去りたかった。


早く確かめたくて…。


本当にあの人がこんな事を頼んだのか…。





何も言うまい。
早く終わらせましょう。