――― 2人目
「海堂先輩いいですか?」
「…俺か…」
「はい、お願いします」
次に選んだのは海堂だった。
海堂は常に自分の強さを求めて鍛錬に余念が無い。
なかなかの苦労人なのだ。
リョーマが海堂を2人目に選んだのは、こういうタイプは後にするよりも先に済ませた方がいい。
ただそれだけの理由。
「わかった…」
渋々なから了解しているが、本心はどうなのか?
海堂はとても照れ屋でも有名だった。
「で、方法は?」
「これだ」
海堂は空中で手を握り、その手を開くと一つの石が現れた。
「石?」
「おい、姿を見せろ…」
海堂がその石を投げて呪文を唱えると、石は見る間に人の形になっていく。
次第に大きくなっていくその石は、怪物の姿になった。
「…ゴーレム?」
「そいつを倒せたら認めてやる…」
このゴーレムは海堂が瀕死の状態に陥ってまで封印したモンスターなのだ。
幻獣とは違う生き物で、こちらは手懐ける事が不可能。
「倒すって…」
リョーマを見つけたゴーレムは大きな腕を振り上げて、真っ直ぐ突進してくる。
腕力は高いが、知能はかなり低い。
「…岩…それなら、ファイヤーボール」
リョーマは炎系の魔法を唱えた。
ぐるぐると回転しながら炎の塊が飛び、ゴーレムを攻撃する。
「グオオオオー」
熱に苦しみながらも、まだ向かってくる。
「アイスボール!これで終わりだよ」
次に水系の魔法を唱えた。
炎に熱せられた岩は、水を掛ければ脆いものだ。
「ちっ、終わったな…」
海堂はガラガラと崩れ始めたゴーレムを見ながら「ふしゅ〜」と息を吐いた。
ゴーレムはリョーマの身体に触れる寸前で粉々に砕け散った。
あまりにも呆気ない最後だった。
「おい…」
「はい」
「お前のモンだ」
ぽいっと投げられた物は、緑色の宝玉だった。
新緑の色をしたそれを杖にはめ込む。
これで2つだ。
2人目も簡単に終わった。
その調子で、次々にクリアしていった。
桃城はリョーマと魔法の威力比べで負けて、素直に宝玉を渡した。
「おい、越前。お前マジで強いな」
「先輩もね」
少しだけお互いに傷付いたが、魔法ですぐに治した。
桃城の宝玉は晴れた空のような澄んだ青色だった。
菊丸は、どちらが先に幻獣を手懐けられるか?だった。
これには流石に数日掛かった。
「希少な一角獣を捕まえるなんて、俺が勝てる訳ないにゃ〜」
結局はリョーマが美しい角を持った一角獣を手懐け、菊丸に勝利した。
菊丸の宝玉は真っ赤に燃える太陽のような赤色だった。
河村の場合は、何も無かった。
「実力は自分よりも上だからな。頑張れよ」
その言葉とともに、宝玉を渡した。
河村の宝玉はキレイな黄色だった。
不二の場合は、「1日を一緒に過ごして欲しい」だった。
この試験の意味を解っていないのか?と思ったが、不二には不二のやり方があった。
一緒にいる事で、その魔力を感じ取り、正しく使用しているのかを確認していた。
「君は本当に良い魔法使いになれるよ」
そう言って、他の6人同様にリョーマに宝玉を渡してくれた。
不二の宝玉は銀色だった。
これで残りは後…2人。
最後は手塚と決まっているので、残りは乾だけだ。
この人物はかなりの情報収集能力を持ち、魔法薬については達人なのだ。
しかし乾との試験は、今までに無いほどのダメージをリョーマに与えるとは、この時は思いもしなかった。
それもリョーマだけでなく、手塚までも…。
|