魔法使いの王子様


第7話 最終試験の前夜






「リョーマは魔法を使えるようになったか?」
「はい。もう海堂や桃城を超えているようです」
「ふむふむ…」
ある日、手塚は王である南次郎の呼び出しを受け、王の間に足を踏み入れた。
そこで、リョーマの様子を聞き出していた。
「ま、そろそろいいか…。おう、手塚」
「はい」
「お前、リョーマとイイ仲なんだろ?」
「はい…えっ?」
「いいってことよ。俺は別に構わねぇし」
「すみません…」
「だから、いいんだよ」
南次郎は、手塚とリョーマが付き合う事に賛成だった。
人を思う気持ちは魔力に反映する。
誰かを守ろうとする気持ち。
誰かを愛そうとする気持ち。
その思いが魔力を強くする。

「…お前等が本気だったら、それでいい」
最後に南次郎はそう呟いた。


「リョーマ」
リョーマがベッド上で、習ったばかりの魔法を試していると、ドアの外から手塚の声がした。
その声にくるんと指を回すと、ドアが開いた。
「入っていいよ?」
「…魔法か」
「うん、スゴイでしょ」
手塚が室内には入ると、再び指を回してドアを閉めた。
室内には、見事な花が咲き乱れていた。
「これも魔法か?」
「うん。メタモルフォーゼだよ」
変化魔法。
ある物体を形から全て変えてしまう。
「自分も変えられるのか」
「うん。もちろん」
リョーマは呪文を唱えると、八賢者の1人に変化した。
「不二か…」
「そうだよ。どう似てる?」
リョーマは呪文によって不二へと変化した。
身体つきから声まで、全てが不二だった。
「…あぁ、凄いな」
エヘ、と笑う不二の姿には少し苦笑いを浮かべた。
「…さてと」
呪文を唱え、自分も室内も元に戻す。
「…何か用だった?」
「明日から学校へ行かなくてもいい」
「…え?」
「もう卒業させろ、との王からの命令だ」
「卒業なの?俺」
「そうだ。良く頑張ったな」
口元に優しく微笑を浮かべ、リョーマの頬をゆっくり撫でる。
「…でも、最終試験があるんだよね?」
その手を受け止め、リョーマはウットリとした表情でその先の事を尋ねる。
「うむ…」
「何するの?」
「それは…明日話す」
だから今日はこの話は終わりだ。
頬を撫でていた手を止め、そのまま顔を寄せる。
「リョーマ…」
「…ん」
手塚が何をするのか気が付いたリョーマは、そっと瞼を閉じた。
口付け。
時には生命力を分け合う行為として使われる。
命の息吹を感じるのに、手っ取り早い行為だ。
しかし今の2人は、そのような事は頭に無い。あるのは“互いを感じる”それだけ。
「好きだ、リョーマ」
「…好き…好きだよ。国光」
口付けの合間に想いを紡ぐ。
手塚はリョーマの髪を掻き乱しながら、荒々しい口付けを贈る。
リョーマは手塚の背に手をまわし、その口付けに酔う。
「…ん…」
「…リョーマ」
口付けだけは日常的に交わしていた。
まだその次の行為には進んでいない。
もっと互いを感じ合う行為は、リョーマが一人前だと認められてからと決めている。
「ね…?」
「どうした」
「俺が一人前の魔法使いになったら…」
「なったら?」
「俺を貰ってくれる?…わー、言っちゃった」
恥ずかしそうに、顔を赤らめるリョーマは、本当に愛らしいと思う。
「いいのか?」
反対に手塚は真剣な表情でリョーマに確認をする。
「…うん、いいよ」
「ありがとう」
「お礼って……ん……」
再び口付けに没頭する2人。


一人前の魔法使いに認められる。

その為に行われる最終試験。


一体何が行われるのか?






魔法使いの王子様 第7話です。
ちょっぴりラブ〜な感じの閑話です。