「リョーマは魔法を使えるようになったか?」
「はい。もう海堂や桃城を超えているようです」
「ふむふむ…」
ある日、手塚は王である南次郎の呼び出しを受け、王の間に足を踏み入れた。
そこで、リョーマの様子を聞き出していた。
「ま、そろそろいいか…。おう、手塚」
「はい」
「お前、リョーマとイイ仲なんだろ?」
「はい…えっ?」
「いいってことよ。俺は別に構わねぇし」
「すみません…」
「だから、いいんだよ」
南次郎は、手塚とリョーマが付き合う事に賛成だった。
人を思う気持ちは魔力に反映する。
誰かを守ろうとする気持ち。
誰かを愛そうとする気持ち。
その思いが魔力を強くする。
「…お前等が本気だったら、それでいい」
最後に南次郎はそう呟いた。
「リョーマ」
リョーマがベッド上で、習ったばかりの魔法を試していると、ドアの外から手塚の声がした。
その声にくるんと指を回すと、ドアが開いた。
「入っていいよ?」
「…魔法か」
「うん、スゴイでしょ」
手塚が室内には入ると、再び指を回してドアを閉めた。
室内には、見事な花が咲き乱れていた。
「これも魔法か?」
「うん。メタモルフォーゼだよ」
変化魔法。
ある物体を形から全て変えてしまう。
「自分も変えられるのか」
「うん。もちろん」
リョーマは呪文を唱えると、八賢者の1人に変化した。
「不二か…」
「そうだよ。どう似てる?」
リョーマは呪文によって不二へと変化した。
身体つきから声まで、全てが不二だった。
「…あぁ、凄いな」
エヘ、と笑う不二の姿には少し苦笑いを浮かべた。
「…さてと」
呪文を唱え、自分も室内も元に戻す。
「…何か用だった?」
「明日から学校へ行かなくてもいい」
「…え?」
「もう卒業させろ、との王からの命令だ」
「卒業なの?俺」
「そうだ。良く頑張ったな」
口元に優しく微笑を浮かべ、リョーマの頬をゆっくり撫でる。
「…でも、最終試験があるんだよね?」
その手を受け止め、リョーマはウットリとした表情でその先の事を尋ねる。
「うむ…」
「何するの?」
「それは…明日話す」
だから今日はこの話は終わりだ。
頬を撫でていた手を止め、そのまま顔を寄せる。
「リョーマ…」
「…ん」
手塚が何をするのか気が付いたリョーマは、そっと瞼を閉じた。
口付け。
時には生命力を分け合う行為として使われる。
命の息吹を感じるのに、手っ取り早い行為だ。
しかし今の2人は、そのような事は頭に無い。あるのは“互いを感じる”それだけ。
「好きだ、リョーマ」
「…好き…好きだよ。国光」
口付けの合間に想いを紡ぐ。
手塚はリョーマの髪を掻き乱しながら、荒々しい口付けを贈る。
リョーマは手塚の背に手をまわし、その口付けに酔う。
「…ん…」
「…リョーマ」
口付けだけは日常的に交わしていた。
まだその次の行為には進んでいない。
もっと互いを感じ合う行為は、リョーマが一人前だと認められてからと決めている。
「ね…?」
「どうした」
「俺が一人前の魔法使いになったら…」
「なったら?」
「俺を貰ってくれる?…わー、言っちゃった」
恥ずかしそうに、顔を赤らめるリョーマは、本当に愛らしいと思う。
「いいのか?」
反対に手塚は真剣な表情でリョーマに確認をする。
「…うん、いいよ」
「ありがとう」
「お礼って……ん……」
再び口付けに没頭する2人。
一人前の魔法使いに認められる。
その為に行われる最終試験。
一体何が行われるのか?
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