【今週の「犬夜叉」!】…毎週更新。

 ここでは週刊少年サンデーに連載中の『犬夜叉』について、毎週1回、主な内容と展開を追跡し、コメントをつけていきます。

 拙サイトを読んでくださっている閲覧者の皆さん、ありがとうございます。不定期に考察のページを更新していきます」と言いながら放置のままで誠に申し訳ありませんでした。コミックス最終巻は年明けの1月に発売されるということで、とりあえず犬夜叉回顧録その1【なぜ犬かごのキスシーンは最後まで描かれなかったのか】をギリギリ「年内に」アップしましたが、「基礎データ」がまるで未整理という恥ずかしさ…でもよろしければご一読ください。
週刊少年サンデー29号掲載・最終話「明日」
 あれから三年。りんにせかされて出産に立ち会うため急ぐ楓。夫は仕事場にいた。お札一枚米一俵という暴利の妖怪退治。それを三枚貼って飛び出てきた妖怪を、弥勒の一言で犬夜叉が斬る。アコギだなと言いつつ俵をかつぐ犬夜叉に、弥勒は今は色々と物要りだと返す。赤子の泣き声が響く楓の屋敷。弥勒が帰宅すると元気な男の子が産まれていた。双子の娘に囲まれた赤子を抱える珊瑚。妻を労いつつ弥勒はこの三年を語る。骨喰いの井戸が消えてから三日目、光の柱とともに再び井戸が現れ、犬夜叉が一人で戻ってきた…かごめは無事だという言葉とともに。それ以来、弥勒達の前にかごめは姿を見せていなかった。かごめを愛し必要としている者は他にもいる、というのがこの三年に一度だけ犬夜叉が語った言葉だという。寂しくないんだろうかと気遣う珊瑚。犬夜叉は夜空を見つめる。
 現代。高校の卒業式で級友達が皆大学に進学したことを母に告げるかごめの姿があった。かごめの独白によれば、三年前のあの日、現代にも光の柱とともに骨喰いの井戸が現れ、かごめは犬夜叉に連れられて戻ってきた。大泣きでこれを迎えた母と草太と祖父。涙の再会で犬夜叉に礼を言おうとした刹那、犬夜叉の姿が消えてそれきり井戸が戦国時代と繋がらなくなったのだ。戦国時代では犬夜叉が楓に語る。かごめを送り届けて安堵した途端にこちらに戻されていた、かごめの母達の涙を目の当たりにした犬夜叉は、彼女を大切に思うのは自分だけではないと自覚したのだ。物分かりがよくなったものだと話す楓に、七宝が三日に一度は井戸に入っているぞと告げ口。狐妖術の試験で正七位上に昇級した七宝だが、これで犬夜叉に蹴飛ばされる。それだけの未練がありながらかごめに会えない…四魂の玉とともに現れ、玉の消滅とともに去ったかごめのこの世界での役割は終わってしまったのだろうか。かごめは井戸を覗き込みつつ思う。自分の気持ちのために繋がらないのか。三日間も井戸と共に消えていたと家族から聞かされ、闇の中で震えていた自分と同じ怖さと悲しみを家族に与えていたことに強い後悔の念を抱いたかごめ。現代に無事に戻れた喜び。閉じてしまった井戸。自分が戦国時代に行った理由と、四魂の玉が消えて井戸も閉じた理由…自分のすべき事は終わって、犬夜叉のいないこの世界で生きていくのか。会いたい、と想った時、井戸の底から風が吹いてくる。何かを悟った表情でどうしたのと声をかける母。かごめの肩を抱いて底を除くと、そこには空が映っていた。かごめは母に何かを話そうとする。
 弥勒と珊瑚の娘二人に耳を玩具にされる犬夜叉。その鼻にかけがえのない匂いが届く。双子を七宝に押し付けて犬夜叉は駆ける。骨喰いの井戸を覗き込んで手を差し伸べると、私服のかごめがその手を握って戻ってくる…待っててくれたと問うかごめ。今まで何をやってたと答えつつ抱きしめる犬夜叉。かごめの姿を見つけて驚く七宝と弥勒と珊瑚。かごめは再びここに来た。
 現代では中学生になった草太がクラスメートに、姉は高校出てすぐ嫁に行ったと話す。病院帰りの祖父を気遣いつつ帰宅する草太。戦国時代ではかごめが述懐する。この三年間に色々なことが変わっていた。七宝は狐妖怪の修行で村の外に出ていくことが増えた。琥珀は雲母を連れて退治屋の修行の旅に出た。刀々斎に鍛えてもらった武器を受け取り、たまには珊瑚に顔を見せてるかと問われて、あの家は狭いからと苦笑いの琥珀。ノミの冥加は刀々斎の肩に住み着いたらしい。かごめは楓に薬草の煎じ方やお祓いを教わりながら巫女の修行を始めた。りんは楓に預けられ、人里に戻す訓練に入った。話す犬夜叉とかごめの上空を影が横切る。殺生丸の飛行だ。付き従う邪見がかごめの姿に気付く。お義兄さーんと声をかけると、なぜか殺生丸も犬夜叉も嫌な顔…楓にまた何か持ってきたのかと聞かれて、新しい着物ですと答えるりん。これからも少しずつ色々なことが変わっていくが、自分はここで犬夜叉と一緒に毎日を積み重ねていく。私と犬夜叉は明日に繋がっていくというかごめの独白で…

 これが映画の試写会ならば「ブラボー! ブラボー!」でスタンディングオベーションの心境です。感無量! 鮮やかにヒロインは主人公のところに“ごく自然に、日常として”戻ってきた。これぞ高橋留美子スタイル。【うる星】とも【らんま】とも違ったフィナーレは“素晴らしき日常化”の光景でした。原作者は戦国側と現代側と、どちらのキャラ達も決してないがしろにはしなかった。これだけの長期連載を支えた登場人物達一人一人に、優しく暖かい目を注いでくれました。
 まずはミロサン。さすがこの二人、三年間で子供三人かあ。最初は双子の女の子。犬夜叉の耳を引っ張って『いーぬー。いーぬー』。七宝に対しては『しっぽー。たいじー』が可愛い可愛い(*^_^*)。珊瑚も退治屋は引退したのか、すっかり主婦の顔になっちゃって平和そのもの。弥勒は弥勒でもっぱら犬夜叉に仕事させてマネージャー的立場でめざとく稼ぐ。ブツクサ言いつつもちゃんとそれに付き合ってる犬夜叉がまたいい。男の子が産まれて、弥勒はどう育てるかな。プロポーズの時は10人でも20人でも産んでくれの言葉、生活感あふれるこの夫婦、これから何人作るんだろう(人の事は言えないが、現代人は少し見習うべきですな^^;)。
 次に七宝。相変わらず変身がお笑い風船玉ながら正七位上に昇級。長く女性には化けてないけど、きっと上達してるんでしょう。今の外見は何年くらい続くのかな。彼が大人になった時、どんな妖怪に育つのかも興味深い。次に琥珀。着実に腕力がついて強化された武器を扱えるようになってます。まだまだ背も伸びるだろうし、珊瑚の主婦業専念は姉離れの一人立ちのいいきっかけになった模様。立派な退治屋になれよ。刀々斎も冥加も、この作品を盛り上げた貴重なバイプレーヤーでした。飄々とした風貌で、これからも犬夜叉達の良きアドバイザーであり続けてくれそうです。楓もまた、悲劇の巫女だった姉・桔梗の代わりに皆を見守ってくれる“日常の象徴”として描かれました。楓宅はいつのまにか犬夜叉達が戻ってくる“家”になっていたのです。弥勒も珊瑚もりんも犬夜叉もかごめもね。現代側ではかごめの母、高校三年間で立派に家族への償いを果たした娘が彼を想う心を悟り、その肩を抱いて井戸の底を見る目がなんともいえない。この子は自分の元を去るだろう。それをよーくわかってるからこそ、きっと背中を押してくれたのです。出番こそ少なかったものの、草太は短い一言で鮮やかにヒロインの選択を読者に告げる役割を担いました。18歳でお嫁入り…これからの祖父の世話は、弟が引き継ぐのです。
 そして殺生丸。今や威厳絶大な兄上も、定期的にりんに物を持ってくるようでその間柄はまるでお姫様と近衛隊長みたいな…りんは「どっちでも選べるように」人里に戻る訓練中とのことですが、これから思春期まっさかりのこの少女、やっぱり殺生丸との間柄は微妙なままでもまだまだ続くでしょう。恋愛感情とか義務感とか、そういう概念で括れない不思議な殺りんの関係はこの作品の隠れたメインテーマにも思えます。邪見の方が先にかごめを名前で呼んでるあたりがまた楽しかったりする。この小妖怪とも色々あったからなあ…。
 かごめ贔屓としては密かに想い描いていた光景とそんなに違わなかったラストに涙涙。心配をかけた親兄弟とクラスメートには三年間で立派に恩返し。犬夜叉と過ごした一年間を忘れられるわけもなく、高校を卒業して一区切りついたことが“会いたい”の気持ちを繋げさせたのか。骨喰いの井戸は、彼女にとってのウァージンロードになりました。高橋先生は、主人公とヒロインに優しく“道”を開いてくれました。あれだけの熱愛体験、三年間で忘れられるものじゃないよ。少女は大人になり、セーラー服は再会の時の私服を経て巫女の着物に変わりました。なんといっても最終回はこれですこれ。『お義兄さーん!…あれっ、なんかすごくイヤな顔した。って犬夜叉あんたも。』『すげーヤな響きだった。』あははははははは(^o^)! まあまあそう言ってやるな犬夜叉。そのうち慣れるようになる。かごめ、君のこれからの人生の大目標の一つは“殺生丸に義妹としてちゃんと名前で呼んでもらうこと”だ。甥っ子か姪っ子ができた時がチャンスだぞ。いろんな意味で頑張れ(*^_^*)。
 連載初期、かごめが巫女の服を着た時に犬夜叉が『脱げ』と言ってぶん殴られた光景がありましたね。桔梗の復活と天への帰還を経て、犬かごは本当に穏やかな顔になりました。時々、桔梗のことをふと思い出すかもしれない。一抹の寂しさが過ぎっても、きっとそれを受け入れてあげられるでしょう。犬夜叉とかごめは一緒に生きていく。互いがかけがえのない存在だから。最終回のサブタイトルが「明日」だから。見つめ合うアングルでなく、並んで同じ方向を見つめるアングルのラストが嬉しかった。偉大なる作品【犬夜叉】に出会えたことを心から感謝します。ありがとう高橋先生!
週刊少年サンデー28号掲載・第557話「会いたい」
 犬夜叉はかごめに懸命に呼びかける。自分が行くまで何も願うな、待っていろと。聞こえるわと答えるかごめ。犬夜叉を取り巻く妖怪達は、お前達が会えるのはかごめが闇の恐怖に負け、堕ちた巫女として四魂の玉に取り込まれた時だと嘲笑う。そのためにお前の声を聞かせた、犬夜叉に会いたいと願った時が取り込まれる時だというのだ。犬夜叉は罠だと伝えようと声を張り上げるが、これは遮断される。目を閉じて佇むかごめ。犬夜叉は妖怪群を斬りながら前進するが出口が見えない。
 四魂の玉は再びかごめに問いかける。犬夜叉に会いたいかと。闘いつつ何も願うなと叫ぶ犬夜叉。かごめは答える。私は何も願わない、犬夜叉は必ず来てくれると信じていると…犬夜叉の眼前に小さく浮かび上がる光。そこにうっすらと切れ目が浮かび、鉄砕牙が黒く変化する。斬れという合図だ。かごめが顔を上げて見つめる。冥道残月破で闇を斬り裂く犬夜叉。闇の中の裂け目に飛び込んだ犬夜叉のすぐ前にかごめはいた。幻ではない…涙ぐんで犬夜叉に抱きつくかごめ。犬夜叉の左腕に抱かれながら、かごめは四魂の玉に目を向ける。そばに犬夜叉がいる。もう怖くはない…『四魂の玉、消えなさい!』この言葉で玉にはヒビが入り、閃光を放って粉々に砕ける。消えていく玉の欠片を、終わったと独白しながら見つめるかごめと犬夜叉…次号、ついに最終回!

 唯一の正しい願いとは“四魂の玉の存在そのものを否定すること”でした。『消えなさい! 永遠に…』単純明快、野球で言えばど真ん中ストレートで打者のバットをヘシ折ったようなもの。そう、これほど単純明快だからこそ、数百年の間、誰もが思いつかず、願うことができなかった正解だった。これを安易だと批判する読者がいるとすれば、その人は不幸です。12年間に渡る長期連載の価値と奥深さをいつまでたっても理解できないでしょうから。
 四魂の玉は翠子にあさましい想いを抱いた男のエゴを繋ぎにして集まった妖怪群と翠子の死闘の末に生まれ、手にした者がどんなささやかな願いをかけても、それをすべて闇のエネルギーに変えて存在し続けてきた。なぜなら願いはすべてかける者のエゴだからです。桔梗は犬夜叉を人間にしてくれという願いをかければ浄化されると考えたけれども、これもまた彼と人間同士として一緒に生きたいというエゴから無縁ではなかった。同時期に誕生した闇の半妖・奈落の嫉妬心によって、互いに裏切られたと憎しみ合わされ、自らの手で犬夜叉を撃った桔梗は玉を自らとともに消し去るべく亡骸を燃やさせた。しかしもう一度犬夜叉に会いたいという願いに反応した四魂の玉は、桔梗の魂とともにかごめの体内に転生、闘いがまたしても繰り返されてきたわけです。だからその桔梗の魂が分離され、数ヶ月間の復活で結果的に犬夜叉と仲間達の奮闘に接し、犬夜叉が来てくれたことで救われて天に還ったことがきっかけをもたらした。梓山の弓とともに桔梗の使命を受け継いだかごめは、生前の桔梗が時間不足で得ることのできなかった“犬夜叉との心の絆”を造り上げた。かごめが抜いて、犬夜叉とともに成長し、いつしか彼の分身のようになり、兄である殺生丸から受け継いだ冥道残月破を斬る刃として最終進化させた鉄砕牙は、四魂の玉が仕掛けた最後の罠を斬り裂き、犬夜叉とかごめを再会させる…練りに練った伏線の妙味。見事、素晴らしいストーリー展開でしたよ。四魂の玉は、犬夜叉とかごめと鉄砕牙と彼らの絆を造り上げた仲間達の奮闘とによってついに敗れ去り浄化され、翠子と妖怪達の魂は苦しみの輪廻から解放されたのです。
 かごめ贔屓としても感無量(/_;)…サイトを立ち上げてはや5年、この作品を応援し続けてきたことが報われた今週でした(いや勿論、後悔したことなど一度もなかったです、ハイ)。最終回では二人が、弥勒達の待つ戦国時代とかごめの母達が待つ現代のどちらを選ぶのかが焦点になりますが、そのどちらであっても、いずれでもない第三の時代に行ったとしても筆者は納得します。犬かごの絆は“願いとは無縁”なのだから。殺生丸、弥勒、珊瑚、琥珀、りん、七宝、楓、邪見、(鋼牙の登場はもうないかな)、かごめの母、祖父、草太、北条君にクラスメート…大長期連載を彩ってきたサブキャラ達の最後のセリフは、どんな光景を描いてくれるでしょうか。最後のサブタイトルはもしかすると「由来」?
週刊少年サンデー27号掲載・第556話「運命」
 かごめと犬夜叉を心配して井戸があった場に佇む七宝。弥勒と珊瑚は見張りを変わろうと申し出るが、四魂の玉の因縁が切れていなかったことを悔やむ。泣き伏すかごめにお前は戦国の世にいるべき存在ではなかった、いるべき場所に帰れと言い放つ四魂の玉。そう願えば帰ることができるのか? 無数の妖怪群を斬り祓いつつ、犬夜叉は懸命にかごめの名を呼ぶ。妖怪達の群れの中に一人の人間が混じっており、その手にした剣が光を放ちつつ渦を巻く。四魂の玉を生みだした巫女・翠子だ。犬夜叉の背後で妖怪群は、この玉が生まれて以来何百年もああして闘い続けていると語る。犬夜叉の眼前に蜘蛛の糸が広がり、その中心には奈落の顔が浮かぶ。生きていたのかと驚く犬夜叉。妖怪達は語る。死んではいるが、かごめが闇の恐怖に負けて元の世界に戻ることを玉に願えばここに取り込まれ、奈落は目覚めて永遠に終わらない魂の闘いが始まる…四魂の玉を戦国の世に運んだ時からかごめの運命は決まっていた、玉の一部となり玉の中で闘い続けるためにかごめは生まれてきたというのだ。
 激怒してかごめはそんなことのために生まれてきたのではないと怒鳴る犬夜叉。笑顔、人を信じる心、仲間に頼ること、人のために流す涙、本当の強さと優しさ…みなかごめが自分に教えてくれた。かごめは犬夜叉に会うために生まれてきてくれたのだ。しかし四魂の玉はかごめに問う。元の世界に戻りたいと願わず、この闇の中で永遠の孤独を選ぶのかと。赤らんだ目を向けてかごめは呟く。桔梗はもう一度犬夜叉に会いたいと願っただけ、奈落の願いももっとささやかなものだった、四魂の玉は本当の願いを叶えてはくれない…最後に四魂の玉を手にした者が唯一の正しい願いを選んだ時に玉は浄化されてこの世から消え去るという祖父の言葉。その正しい願いが何なのか、かごめにはわかった。しかしそれを口にしたは自分はどうなるのか、怖い…と呆然とするかごめの耳に、必死に自分の名を呼ぶ犬夜叉の声が届く。彼の名を呼び返すかごめ。四魂の玉にわずかに甦る光…以下次号。

 珊瑚が普段着に戻っている。戦国の世では数日が過ぎたのでしょうか。奈落が倒されても四魂の玉は消えない。玉が生まれて以来数百年、やはり翠子の魂はずっと妖怪達と戦い続けていた。死んだ奈落もまた玉の一部に取り込まれ、かごめがここにやってくれば同じことを繰り返す…永遠の苦しみの輪廻だというのか。四魂の玉がかごめの体に転生して、戦国の世に舞い戻った時からそうなるのがかごめの運命だというのか。
 これに主人公が敢然と反論する。よくぞ言ってくれた! 筆者が下手な補足をする必要などないです。この激白を最初に読んだ時、心中で握り拳のガッツポーズをしました。四魂の玉は人間と妖怪との延々と繰り返される闘い、苦しみの権化。どんなささやかな願いであっても、それがエゴである限り玉によって闘いの輪廻に取り込まれてしまう。ならばその輪廻を断ちきることができるのは、人間と妖怪の血を引いた半妖の少年と、その彼と互いにかけがえのない存在になった少女の仲であるはず。玉に何かを願うことがすべてエゴであるのなら、唯一の正しい願いとは“すべての願いを忘れよ”なのか? もしもそうなら、かごめにそれを言う勇気をくれるのは、命懸けでかごめを守ると誓った彼の存在です。
 犬夜叉、四魂の玉を内側から突き破れっ! もう一度君がかごめの手を取り、彼女を背中に乗せた時、長かったこの物語の根幹をなすテーマに決着がつくはずだ。かごめは泣き顔も可愛いけれど、やっぱり最終回では微笑んでいてほしい。それは犬夜叉の隣だからこそ可能になる。単行本コミックスに換算すると次週は第56巻の9話目。残るは2話? いやまだ1巻分続くのか。コミックスの背表紙に交互に描かれてきた犬かご、最終巻は奇数の犬夜叉か、偶数のかごめか。どちらであっても二人が離ればなれになることはない!
週刊少年サンデー26号掲載・第555話「闇」
 かごめを追って冥道の中を進む犬夜叉の耳に、かごめの母、草太、クラスメート達の声が届く。戻っていないのか、と怒鳴った犬夜叉の声を聞いた一同は一斉に反応。骨喰いの井戸が消えたのだと答えるかごめの祖父。必ず俺が捜し出すと大声で返した犬夜叉は踵を帰して突き進む。
 矢に貫かれた四魂の玉に、この場はどこで自分になにをしたのかと問うかごめ。四魂の玉は冷徹に答える。かごめはずっとここにいたにすぎず、高校に通っていた生活は幻であり、過ごせたはずのこれからの日々なのだ。あの世界に戻りたいならばそう玉に願え、そうでなければ闇の中に永遠に一人のままだと。犬夜叉の前には無数の妖怪が現れる。風の傷で粉砕するが、分散してまた復元するだけの妖怪達は、捜さずとも巫女はここに来ると語る。闇におびえるかごめの心は妖怪達に伝わっているのだ。
 家族と犬夜叉と仲間達の名前を連呼するかごめ。誰も来ないと答える四魂の玉。果てしない孤独感と寂しさにかごめは涙ぐむ。闇の恐怖に負け、助かりたい、平安な世界に戻りたいと願ったら最後、この四魂の玉の中に取り込まれて永遠に我らと闘い続けるのだと言う妖怪達。四魂の玉はまだ生きている…歯軋りした犬夜叉は眼前の妖怪達を切り刻み、かごめに負けるな、待ってろと必死に呼びかける。顔を覆い泣き伏すかごめ…以下次号。

 なぜ冥道の中に飛び込んだ犬夜叉が、現代の日暮神社にいるかごめの母達と会話できたのか。それは骨喰いの井戸の真上で消えた四魂の玉の中が冥道とつながっていたからだった。井戸を消した四魂の玉はかごめに“これから平穏に過ごせたはずの日々”の幻を見せ、戻りたければそう願えと罠をかける…願わなければ永遠に闇の中に一人…これほど狡猾でえぐい脅迫はないでしょう。邪念の集合体だった曲霊が出ていった後も、玉の中には無数の妖怪群が残っていたのか。我が身可愛さに戻りたいと願った先が、彼らとの永遠の闘い…昔、翠子と妖怪群の壮絶な戦いが決着しないままに誕生した四魂の玉は、やはり妖怪と人間・巫女の永遠の確執を繰り返すことで存在し続けるのです。『四魂の玉が滅びることは決してない。玉の中で闘いは続き、また次の世、何者かの手に渡りあさましい願いとともに生き、永遠に繰り返す。因縁は断ち切れない』…そういうことか。
 ならば鉄砕牙が斬るべきはその強大な因縁だ。一人ぼっちの孤独の恐怖を打ち負かせるのは半妖の少年とまっすぐな少女の絆だ。人間と妖怪の無限の闘いが繰り返される元凶になっているのが、翠子にあさましい想いを抱いていた男の邪念ならば、人間と妖怪の闘いを終わらせて四魂の玉を浄化し消滅させるのは、自らを顧みずに互いの身を懸命に守ろうとし合う男女の想いなのだ。
 かごめ、負けるな! 君が数え切れないものをあげて成長した犬夜叉は、絶対に玉の壁を砕いて君のところにやって来る。君が最初に手にして、人間を護るために犬夜叉と共に戦い、進化してきた鉄砕牙は必ず道を開いてくれる。もう一度弓を引け! 犬かごの絆が邪念を砕き、翠子と妖怪達の苦しみを消す光景を待ってるぞ! 大河ロマンはクライマックスを迎えました。原作者が12年かけて描きたかった集大成がまもなく見られます。
週刊少年サンデー25号掲載・第554話「高校生活」
 校庭でかごめはクラスメートから声をかけられる。買い物につきあってハンバーガーショップで雑談。友人が交際の申し込みを断った話で、その相手が入学式で声をかけてきたと聞き、かごめは自分が高校の入学式に出ていたことを思い出す。自宅の夕食では、祖父から入学祝いに貰った竜の尾の干物と天狗のヒゲを飼い猫のブヨに食べさせたという話。部活はテニス部に入部。一年生は基礎練習でランニング中、弓道部の練習を見て不思議な顔をするかごめ。帰宅して草太に会った時、見覚えのない物置に違和感を感じる。ここに祠がなかったか…? しかし草太も祖父も祠のことなど知らない。自分はちょっと変ではないか。携帯にメールが入って北条から日曜日に映画の誘い。出向いて話すと北条は男子校に進学していた。成り行きに興味津々の友人達には映画とゲームセンターと食事でおしまい、と語るかごめ。中学時代から好かれているのに付き合わないのかと追求されても、単なる友達とそっけない。他に好きな男はいないのだろう…この言葉がご神木の下を通った時に一陣の風と共に響く。
 この違和感。ご神木には跡があった…何の? かごめは唐突に犬夜叉と出会った日のことを思い出す。五百年前に自分はここで彼と出会ったのだ。最後に四魂の玉を手にした者が唯一の正しい願いを選んだ時、玉は浄化されこの世から消え去る…この祖父の言葉が脳裏に走り、かごめの眼前には祠の中で消えた井戸に必死に呼びかける祖父、母、草太、クラスメート達が現れる。自分はここにいると大声で主張しても、皆自分が見えていない。高校には一度も来ていないという友人の言葉…気付くとかごめは弓を持ったまま、冥道の中にいた。井戸は閉ざされた、もうおまえに行き場はない…と語るのは背後の四魂の玉…以下次号。

 こ、これは…“日暮神社には元々祠も骨喰いの井戸もなく、かごめは戦国時代になど行かず、犬夜叉とも出会うことがなく、普通の中学生として暮らし普通に高校に進学した場合”の世界だ。そりゃないだろうと思いつつ、ちょ、ちょっと待てかごめ。その容姿でテニス部に入る? そんなことをしたら担任の先生を好きになって周囲の反対を押し切って結婚して先立たれて未亡人になってオンボロアパートの管理人になって…それもいいかもしんない…いやいやいや(^^;)! しかし北条君、かごめに想いを寄せつつ男子校進学かよ。デートに応じてくれたのに映画観てゲーセンで遊んでごはん食べて帰宅? なんという奥ゆかしい健全な関係だろう。だけど『他に好きな男いないんでしょ?』の言葉が胸を妙に突き上げる…そうだよ。かごめが彼のことを忘れられるわけないのだ。
 四魂の玉はかごめにわざわざそんな“場合の世界”を見せたのか。玉をめぐる因縁に関わりのない存在であってくれないと迷惑だというのか。行き場がないとは言ってくれるじゃないか。矢に貫かれながらもかごめを冥界に閉じ込め、自らの存在を保とうとするなら、これは喧嘩を売ってるんだぞコラ(怒)。犬かごの絆をナメるなよ。大河ロマンは最終局面において、四魂の玉vs鉄砕牙の様相を呈するのでしょうか。
 いくらかごめ贔屓でも、彼女のテニスウェア姿なんぞ、テニスウェア姿なんぞ…見たいかも…違う違う! やっぱりかごめはセーラー服が一番似合う。そして犬夜叉の背中が一番サマになる。玉を浄化する“正しい願い”は、たとえ現代の世界を諦めるリスクを背負っていても、出会って共に命懸けで歩んできた犬夜叉との仲と絆あればこそ叶うものであってほしい。奈落が欲しても叶えられなかった願いは、自己中の対極にあるはずです。
週刊少年サンデー24号掲載・第553話「井戸の異変」
 かごめは背後に開いた冥道に引き寄せられ、懸命に手を伸ばした犬夜叉の眼前で冥道に飲み込まれてしまう。後を追おうとした犬夜叉だが冥道の穴は消失。呆然とする犬夜叉に、七宝は白夜が冥道残月破の能力を盗むところを見たと語る。奈落の最期の言葉を反芻し、かごめの行方を必死に考える犬夜叉。楓の一言で皆は骨喰いの井戸が消えていることに気付く。奈落は白夜がかごめの背後から冥道残月破のコピー刃を振るった際にその効力を発揮させず、わざわざ楓の村まで移動して骨喰いの井戸の真上で息絶えたのだ。かごめは井戸の向こうの世界に帰ったのか、と呟く七宝。
 現代の日暮神社には、クラスメート達が高校の入学式にも出てこなかったかごめを心配して訪ねてきていた。入学式までには戻るはずだった姉の身を案ずる草太。井戸を奉納している祠に地響きが起きて、皆が中を覗くとこちらでも井戸が消えていた。かごめは…と戸惑うばかりの母と祖父。
 犬夜叉は弥勒達に奈落が最期に望んだものは何だと問う。弥勒は黙って右手の掌を開くと、風穴もまた消えていた。呪いが解けたんだと涙ぐむ珊瑚。奈落がもういないのは間違いない、しかし四魂の玉はどうなった、と言う弥勒。犬夜叉はそれを聞くなり鉄砕牙を抜いて冥道残月破の体勢に入ると、自分をかごめの所に導けと念じて井戸のあった付近に振り下ろす。巨大な切れ目が発生し、犬夜叉は自らその中に飛び込む。驚く皆の中で殺生丸だけは無言で見つめる。四魂の玉が生き残ろうとしているならかごめは邪魔なのだ。真っ黒な冥界の中を、かごめを捜し出すために犬夜叉は突き進む…そのかごめが目を覚ました時、高校の制服を着て校庭に立っていた…以下次号。

 ラスボスは死しても物語は終わらなかった…四魂の玉が奈落を操って、骨喰いの井戸の間近で開かせた冥道はかごめをどこに連れて行ったのか。弥勒の寿命を縮め続けた呪いの風穴は奈落とともに消失。自らが生き延びたことを自覚しつつも四魂の玉の行方を問う弥勒は、この状態では珊瑚と喜び合うこともできない。骨喰いの井戸が消えたとなれば、かごめが向こうの世界に生きて帰還したと考えることもできるものの、行方をくらました四魂の玉が何をやろうとしているかを考えれば、これは当然犬夜叉が追いかけなきゃならない。一方の出口である現代の井戸まで消えたなら、ヒロインの行き先はどこなんだ? 鉄砕牙はアイテム版のかごめである、と筆者は何度も書きました。その鉄砕牙が、犬夜叉がかごめを追う道を開くという展開が嬉しい。二人の絆は四魂の玉が引き裂けるもんじゃない! 自ら冥道に飛び込んだ弟を見て兄は何を想う。今の殺生丸にはその行動の理由が誰よりもよくわかっているでしょう。
 かごめ贔屓としては、今週はラストのコマでうーん、高校の制服も可愛いけどやっぱり彼女はセーラー服の方がいいなあ…てな呑気なことを言ってる場合ではない。ここは一体どこなんだ? 戦国でも現代でもない、玉が創り出した世界なのか? なんのために…。一番怖いのはヒロインが彼と仲間に関する記憶を奪われているという展開です。それだけは勘弁してほしい。それとも四魂の玉はここでかごめに選択を迫るのか。生まれ育った世界と犬夜叉のいる戦国時代と、彼女がどちらを選ぶかで四魂の玉の存在と浄化・消失も決まるというのでしょうか? “正しい願い”はその先にある…大河ロマンはラストスパートに入り、残りあとわずかです。
週刊少年サンデー23号掲載・第552話「奈落の死」
 かごめは四魂の玉を狙って矢を放つ。瞳子の時、奈落の体内の時に続き、三度矢は消える。奈落はかごめの言葉を反芻。玉は本当の望みをかなえてくれなかった…奈落の真の望みとは、桔梗の心を欲することだったのだ。光と共に飛んできた矢尻に、奈落はあの世でも桔梗と同じ所には行けそうもないな、と自嘲。渦巻く瘴気は内部から光を放ち、楓の村に散っていた瘴気は次々と浄化されて消滅していく。かごめの矢が奈落を仕留めたのかと感じる琥珀達。巨大な瘴気の渦は地上に落下する。犬夜叉が咄嗟にかごめを抱きかかえてかわした跡に落ちて砕けた瘴気の中から、元の若殿の顔に戻った奈落の首と少々の背骨が浮かび上がる。そこは骨喰いの井戸の場所だった。
 奈落の視線には、かごめの矢が貫き刺さった四魂の玉があった。小さく火花を散らしつつ、半分が浄化された玉…殺生丸や弥勒達が近づく。かすかな声で奈落は告げる。無幻の白夜がかごめを背後から斬った瞬間、自分は四魂の玉に願をかけた。自分の死と同時にその望みがかなうと。白夜に斬られただと、と焦る七宝。玉が自分に願わせた玉自身の望み…という独白と共に奈落の首は消滅していく。皆が厳しい目でそれを見つめる中、突如としてかごめの背後に巨大な冥道が開く。驚愕して振り返る犬夜叉…以下次号。

 コミックス第6巻第6話=連載第54話で初登場以来通算498話にわたり、主人公とその仲間達と戦い続けてきたラスボス、闇の半妖・奈落ついに死す! その最期は不思議なことに、分身である神楽が殺生丸に看取られつつ消えていったあの光景を連想させるものでした。「本当の…望みだと…? そうだ…わしはただ、桔梗の心が欲しかった…」「ふっ…あの世でも、桔梗−おまえと同じ所には行けそうもないな−」…何を間違ったんだろうかね。数多の妖怪達に体を喰らわせた鬼蜘蛛の望みは、桔梗を奪う動く体だった。しかし手に入れたはずの体は自分の思うように動かない。嫉妬ゆえに桔梗と犬夜叉の仲を互いの姿に化けて引き裂き、自分の女にしようとしたはずの桔梗を爪で引き裂いて殺してしまう。裏陶の邪念と術によって死人の身でこの世に舞い戻った桔梗とは四魂の玉をめぐり対立を繰り返し、結果的にはまたしても自らの手で二度、三度と手に掛けて死においやった。そしてその桔梗の心は、常に犬夜叉から離れることがなかった…こう考えると奈落は、ただの女として恋をすることが許されなかった桔梗同様に苦しみ続けていたのかもしれない。たとえそれが究極の自己中で、平然として数多の人間と妖怪を利用し、殺害し、犬夜叉と仲間達の心を痛ぶり続けてきた冷酷非道の悪役であったとしても。最期の場をなぜ骨喰いの井戸の上に選んだのか。それは結局のところ、これまで自分が他の妖怪や人間を利用しまくってきたように、四魂の玉に利用されて滅びていく者の運命だったのか。
 自ら言葉を発することのない四魂の玉は、その奈落を使って何をやろうとしているのでしょうか。常に光と闇が拮抗していた玉が奈落によって真っ黒に汚された時、バランスは崩れていた。かごめが桔梗から受け継いだ霊力によって梓山の弓矢で貫いた今、玉の中では再び光と闇が拮抗した。しかし元々桔梗が持ったままその身を焼かせ、かごめの体に転生したのが四魂の玉。争いをひたすら繰り返させるのが玉の意志ならば、それを断ちきって玉を浄化できるのは誰なのか。
 そしてかごめ贔屓としては、今週はなんといっても天敵・奈落を仕留めた冒頭見開きの一撃でした。『私の矢は四魂の玉を撃ち抜く!』これ以上なく格好良かった。矢は見事に玉を貫き、ついに奈落は滅された…のだけれど、白夜が冥道残月破の能力をコピーしてかごめに振るっていたその効力を、奈落は自らが死ぬ瞬間まで“停止”させていたというのか。かごめの生まれ故郷とこの世界とを繋ぐ骨喰いの井戸の真上で冥道が開く。冗談じゃない! こんな形で犬夜叉と仲間達との間を引き裂かれるなど…一度は相棒・鉄砕牙の助力で冥界から舞い戻った犬夜叉、絶対にかごめを手放すな!
週刊少年サンデー21&22合併号掲載・第551話「落下」
 崩壊が進行する奈落の球体。外に脱出した琥珀達は、それが楓の村の方向に向かっていることに気付く。内部では奈落が発射する瘴気の塊を犬夜叉達が次々と砕き続ける。抵抗しても体が削り取られるだけだと怒鳴る犬夜叉に、村一つ消すくらいの体は残っていると言い返す奈落。球体からは瘴気の塊が地上に降り注ぎ、村の建物を破壊し始める。皆に避難しろと命じつつ、奈落は村を巻き添えにする気かと焦る楓。
 自分を殺せば瘴気まみれの亡骸が村に降り注ぐのだと言う奈落の真正面に踏み込んだ殺生丸は、それがどうしたの一言で爆砕牙を振り下ろし奈落の顔面から胸板を真っ二つに切り下げる。四散した奈落の顔面が破壊を始めて球体が崩れるかに見えたが、かごめは四魂の玉がまだ生きていて奈落の意思で落下していると感じ取り、足場を担う風船玉の七宝に外に出てと懇願。珊瑚も弥勒の声で雲母を外へ。殺生丸は爆砕牙でも四魂の玉が斬れないかと舌打ち。村人に襲いかかる瘴気の塊を風穴で吸って防護する弥勒。地上に降り立った犬夜叉は、冥道残月破の刃で球体を切り刻む。中身が削られてどんどん空洞化していく球体。かごめは渦巻いて希薄になっていく瘴気の中についに四魂の玉を見つけ、今なら撃てると弓を引き絞る…以下次号。

 破れかぶれの村巻き添えだけが奈落の意思なのか? そうだとすると少々拍子抜けですが、白夜が斬ったもののことを考えるとまだ罠がありそうだ。村が消えるぞと脅されると歯軋りする犬夜叉達。それにしても殺生丸『それがどうした』が強烈至極。災いの元である四魂の玉ごとぶった斬ったつもりだったようですが、つくづくしぶとく手強い…もしかすると真のラスボスは奈落でなく玉の方だったか。決着の場は物語の発端である桔梗の村に移りました。楓は因縁の結末を見届けることができるか。これだけ体を切り刻まれて冥界に送られればさすがに残り少なくなったはずの奈落。次に言葉を発するのは仕掛けた罠が発動した時?
 かごめ贔屓としては、今週は薄らいでいく奈落の球体をじっと見る表情でしょう。鉄砕牙でも爆砕牙でも斬れない四魂の玉は、桔梗から受け継いだ霊力と矢で浄化する以外ない。『見えた! 今なら撃てる!』足場は万全、もう邪魔するものはない…はずが、白夜に“斬られたもの”が気になる。矢が玉に命中した時、浄化が始まるのか闇の罠が発動するのか。ヒロイン・かごめがこの世界とこれまでの人生を過ごしてきた世界のいずれかを選ぶことになるという展開は、どんな形で現出するのでしょうか。万一それが「犬夜叉と仲間達と過ごす日々」と「桔梗の村の命運」の選択だったなら…彼女がどっちを取るかは明白だけに辛すぎる。というところで次週はお休み。えーい気になるところで!
週刊少年サンデー20号掲載・第550話「崩壊」
 奈落は自分が四魂の玉と一体だと称し、玉の中で闇が押し戻されると奈落の顔が変わる。ついに玉に心を喰わせたかと歯軋りする犬夜叉は、飛んでくる瘴気の塊を冥道残月破の刃で打ち砕くものの、何度体を砕かれても奈落が死なないのは四魂の玉がこの世にへばりついているからだと吐き捨てる。殺生丸は下から飛んでくる瘴気の塊を爆砕牙で破壊しつつ、その肉片が放つ瘴気が強化されていることを察知して邪見達に奈落の体内から出ろと指示。外に向かう邪見、りん、琥珀を襲った瘴気の塊は珊瑚の飛来骨が粉砕。りんは珊瑚に礼を言って防毒面を返し、琥珀は同じく弥勒に防毒面を渡して姉の身を託す。脱出した邪見達が外から見ると、奈落の球体はヒビ割れ中身が空洞化しつつ降下していた。
 闘いつつも無尽蔵に湧き出す瘴気に、珊瑚はかごめの身を危惧する。かごめは自分の周囲の瘴気だけは浄化できているらしいと感じるが、矢を撃とうとすると奈落の妨害にあうことを残念がる。その奈落はまだ撃たせないと謎の独白。犬夜叉の冥道残月破で何度首部分を粉砕されても、もう少しだ、と何かを狙う。地上では球体がジリジリと村に接近してくることを楓が危惧し…以下次号。

 瀕死状態の奈落はとうとう長期連載で慣れ親しんだ若殿の顔を捨て去り、白目を向いた悪鬼の顔に…この執念は何に起因するのでしょうか。くだらんと言いつつも邪見達の身を気遣う殺生丸は、りんが珊瑚にありがとうと言うのも見逃さない。うーん、まさに大妖怪の風格です。『法師さま、これを…お使いください。姉上を頼みます。』短い言葉に弥勒への挨拶を込めた琥珀。平和になれば良き義兄弟になるのは間違いないですね。かごめが自らの身を浄化の霊力で瘴気から守れるのは納得するとして、犬夜叉とかごめを乗せている七宝の方もなんだかんだ言って充満する瘴気の中でよく奮戦してます。『打たせはせん。まだな…』という奈落は、一体何を狙っているのか。楓の村は桔梗に匿われていた鬼蜘蛛が妖怪達に体を喰らわせて闇の半妖・奈落が生誕した場でもある。村人らを巻き添えにするのが目的なのか。この期に及んでまだ四魂の玉の闇の力を増幅させる源が楓の村にあるというのか。それとも桔梗と犬夜叉の仲を引き裂いた謀略の再現でも企んでいるのか。
 かごめ贔屓としては、今週は『打ちさえすれば当たるのに…』の独白でしょう。思えば連載初期に四魂の玉を粉々に砕いたかごめの矢が、るーみっくわーるど最大の大河長期連載となったこの作品のプロローグでした。ラスボスはその欠片を一つに戻して玉と一体化。すべての因縁に決着の時が迫る。犬かごと仲間の絆が、必ず勝つ!
週刊少年サンデー19号掲載・第549話「集結」
 奈落がまだ生きていることに弟の手間取りを感じる殺生丸。犬夜叉はかごめを背負って跳躍し、冥道の刃で奈落の頭部の周囲を切り裂いてかごめの矢で仕留めようとするが、奈落は瘴気の塊を隕石のように飛ばして矢を撃たせない。歯軋りする犬夜叉の背後に飛んできた瘴気の塊は、駆けつけた珊瑚の飛来骨が粉砕。雲母の背中から飛び上がった七宝は風船玉に変化して自ら犬夜叉とかごめの足場になる。珊瑚の背後から弥勒は風穴を開いて瘴気の塊を吸い込み、風穴の傷が塞がり始めていることから、奈落がかけた呪いが解けかけていると叫ぶ。そこへ下方の肉塊を突き破って殺生丸と琥珀達も到着。姉が無事だったことを知って安堵する琥珀。爆砕牙の破壊が伝達するのを見た奈落は途中で体を切り離すが、殺生丸は無駄なことをと呟く。
 残った黒い体を背後に、頭部だけの奈落の前に皆が集結。既に破壊された体は消失して一行は宙に浮かんでいた。仲間とかいうくだらん連中か、と嘯く奈落。誰一人欠けてはいないと言い返す犬夜叉。四魂の玉に再び光が甦るのを見るかごめ…以下次号。

 白夜が斬ったものはまだ不明。既に瀕死状態ながらも最後の抵抗をする奈落の周りに犬夜叉の仲間達が次々と集まってくるこの流れは、まさに最終章の盛り上がりになってきました。『七宝、おまえどうして…』『感謝せい、駆けつけてやったのじゃ!』…ユーモラスな風船玉の姿でも、今週の七宝はカッコいい。弥勒の風穴はもともと奈落がかけた呪いによって発動するもの、その傷が塞がっていくことは奈落の生命力の減少を示す。既に顔面がヒビまみれの奈落は、それでも冷めた物言いを変えない…集結して奈落を睨みつける殺生丸、珊瑚、弥勒、犬夜叉、かごめの表情は皆一様に凛々しい。『誰ひとり欠けちゃいねえぜ』という犬夜叉の言葉は、半妖としての生き方の違いを奈落にぶつけた凄味があります。奈落がいう“魂の闘い”とは、ここにいる犬夜叉の仲間達を呼び寄せ、犬夜叉との繋ぎ役を果たしてきたかごめを異世界の存在と知ったうえで、四魂の玉の光もろとも消し去るための最終挑戦か。
 かごめ贔屓としては、今週はやっぱり犬夜叉の背中が本っ当によく似合うことと、彼と並んで奈落を睨む表情でしょう。仲間と同じ戦士の顔をしています。人の絆を蔑み、弄んできた奈落への怒りと、この作品を貫いてきたポリシーを象徴している爽快な表情でした。四魂の玉における光と闇の闘いは、ヒロインとラスボスの対決に絞られた。以前、彼女が独白した“二つの世界のどちらかを選ばなければならなくなる”時が間近に迫っています。
週刊少年サンデー18号掲載・第548話「白夜の刃」
 破壊が続く奈落の体内。珊瑚を抱きかかえた弥勒は風穴が裂けて自らが飲み込まれても、充満する一方の瘴気を除去して珊瑚の命を救おうと考えるが、右手から発していた風穴の音は消えていた。背後から破壊が追いかけてくる格好の七宝も必死に走っていると、落ちてきた雲母とぶつかり、飛来骨と錫杖に続いて弥勒と珊瑚まで落ちてきてパニック状態。殺生丸は行く手を阻もうとする触手を爆砕牙で粉砕しつつ前進を続け、琥珀、りん、邪見が後に従う。
 再生が止まった奈落に終わりだと告げる犬夜叉。奈落は鉄砕牙でも爆砕牙でも斬れぬものがあると言い返す。それが魂だというなら、それを浄化するために自分がいると叫ぶかごめ。不意にその背後に忍び寄った白夜が刀をかざす。犬夜叉がその刃が黒くなっているのに気付くと、奈落の四魂の玉が脈打ち、白夜は即座に刀を振る。咄嗟に犬夜叉が鉄砕牙を一閃し、白夜の体は冥道の刃に斬られる。奈落と生死が同じ分身なら未練はない、と呟く白夜は、役目は果たしたと独白して消えていく。座り込んだかごめに駆け寄る犬夜叉。外傷は見当たらないが白夜の意図がわからず戸惑う犬夜叉と、今自分は斬られたのかと焦るかごめ。風船玉に変化した七宝は弥勒、珊瑚、雲母を乗せ飛来骨を持って懸命に上昇。目を覚ました珊瑚に、弥勒は風穴の音が収まったと話す。奈落の呪いの力は弱まっている…犬夜叉らが決定的な痛手を与えたのは間違いない。奈落との因縁を断ちきるため、皆は中心に向かう…以下次号。

 白夜、貴様は何を斬った!? 無幻の異名を名乗ってきたこのキャラは幻を創り出す能力を持っていた。その一度だけしか使えない刀が冥道残月破の能力を写し取って、かごめに振るったというのがなんとも意味深げ。まさか、かごめの存在を幻に変えるつもりなのか? 奈落にとってかごめの存在がもらたしてきたのは脅威以外の何者でもなかった。瀕死状態ながらも『そうだかごめ…最後は魂の闘いだ』と再び含み笑いを取り戻して呟いたラスボスの最後の反撃とは、犬夜叉と仲間達の繋がりを担ってきたヒロインを“消す”ことだというのか?
 弥勒の風穴は弱まりつつある。明らかに奈落も消えかけているわけで、弥勒と珊瑚には勇気が戻ってきた。絶妙のタイミングで彼らと再会して救援する七宝は、ユーモラスな風船玉の姿で大活躍。このあたりに高橋先生の巧さと優しさがあるのです。『やはり殺生丸さまの爆砕牙は格が違うっ!』と大声でゴマすりの邪見もしっかりと自己PR。そんな中で一風変わったスタンスを保っていた白夜が、犬夜叉の一振りであの世行き…この分身には神楽とも神無とも違う精神が宿っていたようですが、末期の言葉は『未練はないね。役目は…果たしたぜ…』。もしも主人公とヒロインの絆を“斬った”というのならばそれこそ脇役冥利ということか。
 かごめ贔屓としては、今週は奈落に啖呵を切った『それは…あんたの魂でしょ!? そのために私がいるのよ! 奈落! あんたの魂を浄化するために!』の凛々しい表情でしょう。ラスボスが自らの死と引き替えに、主人公とヒロインの仲を道連れにしようとタイマンを仕掛けてきたのなら、魂の闘いに挑む時が来たのです。闇の半妖・奈落を浄化するキーワードは何なのか。答えを見つけられるのは、異世界からやってきたかごめのまっすぐな心と仲間への想い。決着の時はすぐそこだ!
週刊少年サンデー17号掲載・第547話「斬る冥道」
 刃と化した冥道が奈落の触手を切断。四魂の玉を見つけたかごめが弓を引くと、奈落はその足場を瘴気の棘で崩して妨害。かごめを抱きかかえた犬夜叉は、自分は何度でも再生すると嘯く奈落に、何度でもたたっ斬ると言い返す。地上では刀々斎が冥道残月破の変化を冥加に語る。殺生丸の資質が巨大な冥道を開くとすれば、それを犬夜叉と鉄砕牙が技として一つにする時、冥道は刃となり敵を切り裂く…再生しようとする奈落を冥道の刃が再び粉砕。体内の四魂の玉が脈打つと肉塊の節々から瘴気が次々と吹き出す。弥勒は珊瑚の体を抱き上げ、生きてくれと願いつつ走る。この異変を犬夜叉の一撃かと悟った殺生丸は、眼前の封鎖された肉塊を爆砕牙で両断。斬られた部分から壮絶な破壊が始まり、白夜や地上の楓は奈落が壊れ始めたことを知る。
 大破壊の最中、殺生丸を見つけて喜びのあまり抱きつこうとした邪見は足蹴にされて琥珀とりんのところに落ちてくる。犬夜叉とかごめは爆砕牙の破壊の音が近づいてくるのを聞く。奈落にお前はもう再生できないと怒鳴る犬夜叉。奈落は自分が滅びても四魂の玉はなくならないとの独白を繰り返す。無言でその場に向かう白夜…以下次号。

 斬る刀・鉄砕牙は冥道残月破を刀の軌道の形の刃に変えたのか。切り裂かれた部分はそのまま冥界へ消えていく。いかに強がっても、これに殺生丸の爆砕牙で追い打ちされたのでは、さすがのラスボスも瀕死が近づく。『てめえがこの世にしがみついてるその蜘蛛の糸みてえな触手も、執念も、四魂の玉との因縁もすべて、断ちきってやる!』との犬夜叉の一喝は、巡りに巡った長い物語の流れをスパイラルに巻き込んで炸裂する。これ以上瘴気を浴びさせたら珊瑚の命はない…『おまえだけは…おまえだけは生きてくれ!』の弥勒は最後の力を振り絞って走る。こんな非常事態下でもしっかりと主に蹴飛ばされて笑いをとってくれる邪見、まさに偉大なサブキャラです。奈落同様、顔面にヒビが入った白夜は自らの生死にこだわりがないのか。その刀に写し取った冥道残月破を何に使う。破れかぶれの道連れの一撃か、最後の仕返しか。自らが滅びても四魂の玉がなくならなければ何度でも自分のような存在は出現するというつもりか、奈落。
 かごめ贔屓としては、今週はとどめの一矢が阻止されたものの、犬夜叉との密着度がクライマックスらしくどのコマも熱々(*^_^*)。真っ黒になった四魂の玉を連載第3話のように矢で砕くのではなく、唯一の“正しい願い”を見つけだすために、白夜の最後の攻撃に対して今一度、ヒロインの言葉が必要な気がします。犬兄弟の力技で葬ることはできなくても、かごめの心の光によってラスボスは浄化される…まもなくその光景を目にすることができそうです。
週刊少年サンデー16号掲載・第546話「奈落の望み」
 奈落は弥勒と珊瑚がまもなく風穴に飲み込まれ、四魂の玉の闇に飲み込まれると語る。そうはさせないと犬夜叉は冥道残月破を放つが、奈落の眼前に浮かぶ四魂の玉が奈落の胸に入り込んで一つになると、奈落の体から巨大な蜘蛛の巣が表れて真円の冥道以上に広がり、冥道に飲み込まれるのを防ぐ。奈落はこれが四魂の玉の力だと語り続ける。桔梗の亡骸と共に燃やされてこの世から消えかけつつも、桔梗の犬夜叉への未練を利用してかごめの体に転生した後、この世に舞い戻る。粉々に砕かれても災いを振りまきつつ再結集し、時空すら越える存在。奈落が滅びても四魂の玉は絶対になくならないというのだ。
 これを聞いたかごめは、本当は何をしたかったのかと問いかける。犬夜叉と桔梗の仲を引き裂き、珊瑚と琥珀の姉弟を闘わせ、弥勒と珊瑚の想いを利用して追い詰める…仲間同士の絆を嘲り、愛し合う心を呪って引き裂くのが望みだったのかと。嘯く奈落に、人の心、絆の大切さを知っているからこそそれを失う苦しみがわかると続けるかごめ。四魂の玉は、奈落の本当の望みを叶えてはくれなかったのだと。玉を吸収した者の心も体も化け物に変えてしまうゆえに、今まで玉を吸収しようとしなかった奈落は迷っていたのだと。激昂した奈落は瘴気の槍を無数に飛ばす。犬夜叉は冥道残月破でこれを冥界に消し去ると、奈落を怒鳴りつける。自分達は生まれが違っても、人間の心と妖怪の心を持った同じ半妖だと。どちらでも選べる存在が、人間の心を持っていながら人を傷付け、呪い、その心に背を向けて妖怪の生き方を選んだ奴に、自分の仲間を傷付けさせてたまるかと。次の犬夜叉の一撃は、刀の軌道を描いた冥道を無数に飛ばし、奈落の蜘蛛の巣とその腹部を切り裂く。犬夜叉自身がこれに戸惑い…以下次号。

 今週は心底唸らされました。奈落とかごめと犬夜叉。ラスボスとヒロインと主人公がこの長い物語の根幹を鮮やかに言葉で語ったのです。闇の半妖・奈落は既に自らの生死や存在の価値よりも四魂の玉の闇の能力に同化することで開き直っているものの、その迷いをかごめに見抜かれる。奈落が本当に望んでいたこととは、前身である鬼蜘蛛が桔梗を自分の女にしたいがために望んだ体が、妖怪達の邪念ゆえに思い通りにならなかったことへの苦悩を消すことだったのか? 化け物になりたいわけではなかった。自分の意志で動ける体が欲しかったのか? 『そんな言霊ごときで、この奈落の心を浄化できるとでも思っているのか!』と激怒した奈落。常に含み笑いを絶やさず、人間も妖怪も自分の分身さえも使い捨てにして冷笑してきたこのラスボスが、ここまで感情を露わにするとは驚きの一言でした。
 そしてこれに主人公が強烈にやり返す。『俺とお前は生まれ方が違っても同じ半妖だ! 人間の心と妖怪の心を持った同じ半妖だ! だからこそ許せねえ!』『人を傷付け、呪い、人間の心に背を向けて…そんな野郎にこれ以上、俺の大切な仲間を傷付けさせてたまるか!』。これこそ人間と妖怪の混血ゆえに“境界線”にいる犬夜叉が、桔梗と出会い、かごめと出会って目覚めた本性なのです。闇を切り裂くのは、共に成長して兄から譲り受けた冥道残月破を刀の軌道形で打ち出した鉄砕牙。人間を護るために父が自らの牙から作らせた妖刀が、使い手とその兄の生き様を受け継いで闇の力を粉砕する。自らの存在を捨てた奈落の最期の時が迫る。この闘いの先にあるものは、果たして…。
 かごめ贔屓としては、今週は『人の心を知っていなければできないことよ。絆の大切さを知っているからこそ、それを失う苦しみがわかる。四魂の玉は…あんたの本当の望みをかなえてはくれなかったのね』これは強烈な一撃でした。天敵であった奈落は、この言葉で怒りを露わにした。奈落を滅ぼす光とは、もしかすると“憐れみ”なのか。怒りや憎しみではなく、憐れみを向けられることが皮肉にも大ダメージを与えるのか。ならばヒロインの役割は、四魂の玉を浄化し消滅させる唯一の“正しい願い”を見つけだすこと。それはやはり、人間と妖怪の分離共存なのでしょうか。最終回までのカウントダウン、あと「3」じゃすみそうにありません。高橋先生がこの答えを描いてくれるまで、とことんこの大作を見つめていきます。
週刊少年サンデー15号掲載・第545話「絶望」
 防毒面をりんに譲った珊瑚は濃くなる瘴気の中を苦しみつつも前進。後を追う殺生丸達の前を肉塊が棘と化して封鎖する。珊瑚を乗せた雲母は奈落本体のいる場へ到達。足場の肉塊が揺らいで苦戦する犬夜叉とかごめの側に弥勒もいた。弥勒がまだ生きていることを見て涙ぐみながらも、珊瑚は奈落に飛来骨を投げる。奈落は瘴気を竜巻状にして迎撃。飛来骨は邪気ごと奈落の体を砕くが、珊瑚のところに戻ってきた時にまとわりついてきた瘴気が珊瑚の顔を直撃する。咄嗟にかごめが浄化の矢を撃つが、もう遅いと奈落の嘲り声が響く。防毒面をりんに譲ったことを揶揄する奈落の声の中、子猫サイズに戻って落下する雲母と珊瑚。必死にそれを受け止めようとした弥勒の足元が裂けて、その体は珊瑚らと共に落ちていく。犬夜叉とかごめの眼前で肉塊が塞がり、再び皆は分断される。
 瀕死状態の珊瑚の元へ寄る弥勒。その右拳から発する風穴の音が珊瑚の耳に届く。一人にしたことを詫びる弥勒の袖を握り、私も連れて行ってと願う珊瑚。四魂の玉は再び黒に染まり、奈落の左半身は復元していく。弥勒と珊瑚の悲しみが闇に力を与えるというのだ。思いあえば思うほど絶望も深い、という奈落の言葉に激怒する犬夜叉。地上では刀々斎と冥加が奈落の球体を見上げていた。殺生丸から譲り受けた冥道残月破を真実自分の物にできればおまえは勝てる、と犬夜叉に呼びかける刀々斎。鉄砕牙が脈打つ…以下次号。

 殺生丸の行く手を阻み、珊瑚を挑発して飛来骨を投げさせ、瘴気をまぶして瀕死に追い込んで弥勒との間に絶望心を醸し出し、それをエネルギーにして体を復元する…とことん狡猾でしぶといラスボス奈落。仲間や想いを寄せる相手への心は弱点であり攻撃材料でしかないというのが、この闇の半妖の絶対的な定義なのか。『最期の時くらい二人きりですごさせてやったらどうだ』とはよくも言ったもの。風穴の音は消えていない…自分は彼を救えなかったのかと悟って一緒に死にたいと願う珊瑚はあまりに悲痛。置いていかれたくない、一緒にいたいという心が“絶望”だと? これは心底激怒するのが主人公。孤独であることがどれだけ辛いかを身をもって知る半妖の犬夜叉にとって、奈落の行動原理は凄まじい怒りの対象になる。人間のために怒る心に反応する鉄砕牙に最後の進化が起こるとすれば、それはおそらく闇を切り裂く光の能力。冥道残月破は人間との混血である犬夜叉の腕の中で、どんな形になって表れるのでしょうか。
 かごめ贔屓としては、今週は『珊瑚ちゃん防毒面をつけて!』の必死の叫びと浄化の矢の一撃、そして犬夜叉に抱えられつつも二人の名を呼ぶひたむきさです。奈落を睨みつけるその表情は、見事に主人公とシンクロするヒロイン。その化身でもある鉄砕牙が象徴である光を放つ。二人が出会ったその意味を、邪悪に叩き付けろ! 最終回までのカウントダウン、あと「4」?
週刊少年サンデー14号掲載・第544話「中心」
 珊瑚と殺生丸がいる空間の上部肉塊が砕けて光が射す。臭いが変わったと察知した殺生丸は光の方向へ飛ぶ。琥珀に促されてその後を追う珊瑚。弥勒を連れた犬夜叉とかごめがたどりついた先に、左半身を失った奈落の姿が見える。奈落の間近に漂う四魂の玉には光が戻っていた。殺すなら今だぞと言う奈落に冥道残月破を放つ犬夜叉だが、鉄砕牙が振り下ろされる寸前に足場が大きく揺れて冥道は狙いを外れる。光の方向に向かって必死に進む七宝の真横に冥道が開く。心臓バクバクでいると白夜が出現して背中の刀を抜くが、柄だけで刀身がない。訝しむ七宝はやがて黒い刀身がその刀に宿るのを見る。声をかける白夜に何をしたと怒鳴る七宝。冥道残月破の妖力をいただいたのさと答える白夜。犬夜叉兄弟があれだけ苦労した技がそんなに簡単に盗めるかとわめく七宝に、だから一度きりしか使えない刀なのだと独白する白夜は、逃げるなら今だとだけ伝えて姿を消す。
 光と闇が拮抗していても、この場を支配するのは自分だと豪語する奈落。かごめが矢を撃とうと構えると、横の弥勒の間近に強烈な瘴気が発生。犬夜叉が飛び込んで鉄砕牙でガードするが、人間なら瞬殺できる瘴気だと奈落が告げる。歯軋りの犬夜叉だが、弥勒もかごめも奈落の焦りを感じる。移動中の琥珀に抱えられていたりんが目を覚ますと、その横ににも瘴気が発生。背後からりんに自分の防毒面をかけた珊瑚は、ごめんねと一言をかけて直進。命懸けか、と独白する殺生丸…以下次号。

 状況の変化で即座に次の行動に移った殺生丸を見て、奈落を倒すまで私を殺すのは待ってくれるのかと解釈する珊瑚…まだ生きているなら、もう一度弥勒に会いたいというひたむきな彼女の心。やっぱりこの娘は不幸せにしたくない。かごめの一撃は奈落の左半身を吹き飛ばし、四魂の玉にも強い光を甦らせていた。犬夜叉の『かごめ! おまえの矢が当たっていたんだ!』の言葉を待つまでもなく、一目でわかるこの状況です。奈落はまだ余裕の発言を続けるものの、挑発して冥道残月破を撃たせ、狙いをそらして白夜にその妖力を奪わせる。白夜によると一度きりしか使えないその刀は最後の切り札になるのか。それにしてもすぐ眼前に冥道が開く七宝は運がいいのか悪いのか。でも『デタラメぬかすなっ! 冥道残月破は殺生丸と犬夜叉が苦労してつかんだ技じゃぞ! それをそんな簡単に…』の叫びには、彼の犬兄弟への深い尊敬の念がある。彼もまた熱いキャラなのです。なりふりかまわず攻撃に出る奈落もさすがに必死のようですが、白夜にこの刀をどう使わせるのでしょうか。りんにごめんねと詫びる珊瑚の表情の切なさは、人間の覚悟を殺生丸に確かに伝えたはず。彼がこの先、珊瑚にどういう言葉をかけるかに注目です。
 かごめ贔屓としては、今週は『奈落は私の矢を恐れている。撃たせたくないんだ!』の独白でしょう。たしかに今度視認できる距離から矢を当てられたら御陀仏と思っているだろうし、かごめが矢を撃つ足場やタイミングを全力で妨害するはず。となれば犬夜叉と仲間がヒロインのために足場を作ってくれさえすれば…最後の戦いも佳境に入り、次週は全員集合間違いなし。最終回までのカウントダウン、あと「5」?
週刊少年サンデー13号掲載・第543話「消える矢」
 飛来骨がりんの命を絶った時に四魂の玉は闇で満たされる…ほくそ笑む奈落。かごめは何を撃ったと独白する犬夜叉。矢は途中で消える。瞳子に教わった事を思い出すかごめ。矢は奈落の眼前に出現し、その左半身を貫き破壊する。同時に白夜の左腕が吹き飛び、りんの体を抱えていた奈落の幻は衝撃音とともに消滅。飛来骨は一瞬の差でりんの体をそれて背後の肉塊を切り刻む。あわててりんの身を救いに飛び込む琥珀。珊瑚は呆然と弟の姿を見やる。幻の奈落と一緒にりんを狙ったろう、と珊瑚にささやく白夜。弥勒を救うためにはりんが死んでもかまわないと思ったろう、となおも続ける白夜のところに飛来骨が凄い勢いで投げ返される。投げたのは殺生丸だった。おかど違いだと冷笑して去る白夜だが、本体のやられ具合はひどいものだが、分身の自分がこうしている以上、奈落も四魂の玉も生きていると独白する。
 珊瑚は殺生丸に、私を引き裂くならそれでいいと告げる。驚いた琥珀はりんが無事であることを叫ぶが、自分はりんを殺そうとしたのだと珊瑚は言葉を続ける。姉は幻に惑わされていたのだと必死に釈明する琥珀に構わず、りんを犠牲にしようとしたことには変わりがないと強調する珊瑚。命乞いをする気ははない、ただ奈落を倒し、弥勒の風穴の呪いが解けるまで待ってほしいと涙目で頼む珊瑚を、殺生丸は無言で見つめる。
 弥勒を肩に抱えて走る犬夜叉。いつ裂けるかわからない風穴が二人を巻き込むことを危惧して自分を置いていけと言う弥勒に、かごめは背中から珊瑚も一緒にいたいはずだと言葉をかける。生きてみんなで帰るんだと叫ぶ犬夜叉…以下次号。

 かごめのサイドワインダーが奈落を貫いた! 見事なカタルシスでした。奈落は声も発せず大ダメージを受けたようで、白夜が作った幻が一斉に消滅…本体と同じ箇所が消失するあたり、こいつの分身としてのスタンスは神無や神楽とはかなり異なるんですね。タッチの差で飛来骨はりんの体をそれましたが、弥勒を助けるためにりんを犠牲にしようとしたことを、珊瑚は一切隠さずに殺生丸に告げる。今週、殺生丸は言葉を発しなかった。鋭い眼光は白夜に向けてのものなのか、りんを殺すところだった珊瑚にも向けられているのか。大妖怪として覚醒した風格を持つ殺生丸に、珊瑚の涙はどう映ったのでしょうか。弥勒が生き延びるところだけは見届けたいという珊瑚の悲痛な心は、退治屋としてのプライドと人間としての苦悩と女としての心情との間で揺れ動いています。
 私を置いていけ、と犬夜叉に言う弥勒の苦しげな表情は珊瑚と被ります。『風穴がこわくておまえなんかとつきあってられっか!』というのがいかにも犬夜叉らしい憎まれ口なんですが、この猛烈な熱さが皆を引っ張る。このダメージは奈落にとっても強大なはずで、いよいよ最後の手段を講じざるをえないところに追い込まれたのでは…。
 かごめ贔屓としては、今週は見事に大役を果たして大満足。『私の矢は必ず…奈落に届く!』撃った後の思念が矢を標的に当てるという霊力の覚醒が成せる技でした。弥勒の背中から珊瑚の女心を伝えるところもいい。壊れ始めた奈落の体内は、あと一押しで砕くことができますかどうか。最終回までのカウントダウン、あと「6」?
週刊少年サンデー12号掲載・第542話「飲み込まれる光」
 弥勒を止めようと走る犬夜叉とかごめ。対峙する弥勒と奈落を見つけてかごめが幻よと叫び、犬夜叉が金剛槍破を放つがいずれも素通り。奈落の体は弥勒を挑発しながら犬夜叉とかごめの前に移動する。弥勒の目には奈落の姿しか映っておらず、犬夜叉は弥勒の風邪穴に自分達を吸い込ませるつもりだと悟る。弥勒は珊瑚に詫びつつ幻の奈落と四魂の玉めがけて風穴の封印である数珠を外す。開かせるかとその右拳を鷲掴みにして押し倒す犬夜叉。かごめが数珠を取って弥勒の右手にかぶせるが、奈落の挑発はなおも続く。眼前に犬夜叉とかごめがいても弥勒の目には映らない。かごめが幻を消すべく矢を撃つがこれまた素通り。弥勒と珊瑚の行為を見届けるまでは消えぬと嘯く奈落。
 七宝、邪見とはぐれて進む琥珀の目にも光が見え、駆けつけると奈落と対峙する珊瑚がいた。りんの体を抱く奈落に対して飛来骨を投げようとする姉に懸命に呼びかける琥珀だが、真上から白夜がそんな声は届かないと言い放つ。人の心は弱い…死にかけの弥勒を救うことで頭が一杯の珊瑚の恐れが、四魂の玉の闇に飲み込まれているのだ。りんを犠牲にしても奈落を倒すしかない、との珊瑚の心が四魂の玉に表れた浄化の光を押し戻す。珊瑚は堕ちたと笑う奈落。光が飲み込まれる前に自分が撃つべきものは、と集中するかごめ。浮かび上がったのは玉と奈落本体の姿。これに向かってかごめが梓山の弓で矢を撃つと同時に、珊瑚が飛来骨を投げる。叫ぶ琥珀…以下次号。

 犬夜叉とかごめが弥勒のところに駆けつけても、その目には二人の姿が見えず声も聞こえないとは。これは相当念の入った幻、というよりは弥勒の目前に迫った死への恐れを四魂の玉が増幅させているからなのでしょうか。盟友の自爆を阻止せんと真正面から挑むあたりが主人公の面目躍如。その犬夜叉に右手を掴まれているのに、弥勒本人には単に自分がこの世に未練があるために風穴を開けないでいるとしか感じないようで、奈落の挑発に『黙れ!』と言い返す形相が哀しい。琥珀にも眼前で姉がりんの命を犠牲にしようとする光景を見せつけるえげつなさ。白夜の幻術は珊瑚自身の恐れによって強力になる。これを人の心の“弱さ”だという奈落と白夜にはムカつきますが、玉の闇にそれがなじんで浄化の光を飲み込もうとする。これを打ち破るのはやはりヒロインの役目。ここで成長の証を見せてこそ、るーみっく最大の長期連載の価値というものです。
 そこでかごめ贔屓としては、今週は『今、私が撃つべきものは…よく見て…見えた!』の一連のコマでしょう。瞳子の教えは、曲霊の消滅によって復活したヒロインの霊気によって活かされる。行けっ、邪悪を貫くサイドワインダー! しかし同時に投げられた珊瑚の飛来骨を止めることができるのか。琥珀、鎖鎌を使え! 最終回までのカウントダウン、あと「7」?
週刊少年サンデー11号掲載・第541話「光の罠」
 犬夜叉は鉄砕牙で眼前の鎧甲を砕こうと試みるが、強固で歯が立たない。かごめは弥勒を捜そうと提案。奈落は弥勒が珊瑚を風穴の犠牲にするのを怖れて一人で行動していると告げる。誰も巻き込まない状況なら、自分が吸い込まれるのを承知で風穴を開くかもしれないと危惧するかごめ。弥勒は一筋の光を目指して進み、珊瑚は必死に弥勒の名を呼びつつ歩く。その先に指す四魂の玉の光。奈落を倒して呪いが解ければ風穴は消える…珊瑚は自分が奈落を倒せば弥勒の命を救えると雲母で光の元に飛び込む。元の姿の奈落がその前に表れるが、珊瑚が飛来骨を振りかざすと奈落の胸からりんの体が出てくる。その身を抱きかかえつつ、四魂の玉ごと自分を打ち砕くがいいと奈落が嘯く。りんを放せと叫ぶ珊瑚に、りんの身を案ずる優しさが弥勒を殺すぞと挑発する奈落。偽りの光に引き寄せられている弥勒はまもなく、風穴を開くというのだ。その弥勒もまた、眼前に現れた奈落にお前が一番乗りだと同じ言葉をかけられていた。
 弥勒の匂いが近いと走る犬夜叉。背中でかごめは本物の四魂の玉から離れていると叫ぶ。早まるな弥勒、と願う犬夜叉とかごめ。奈落はこのりんという娘が弥勒の命を犠牲にするような存在なのかと挑発し、珊瑚は歯軋り。だが実は珊瑚の前の奈落も弥勒の前の奈落も無幻の白夜が創り出した幻で、本物なのはりんの身柄のみ。弥勒の死だけは嫌だと珊瑚は飛来骨を構える。そのままりんを殺せとほくそ笑む奈落…以下次号。

 仲間を想う心を逆用して絆の分解を図る奈落は、とことん狡猾で姑息。しかし犬夜叉とかごめの前面を鎧甲で閉ざしたのは、本体に通じる方向だったからでしょうか。『一人で…死ぬつもりなの? 法師さまが死んだら、私だって…』とやりきれない顔で跪く珊瑚の前にも偽りの光が向けられる。戦いに明け暮れていた彼女の前に表れた女好きの法師は、一緒に旅をする内に人生を捧げると決めた男になった。互いに相手の死は自分の死より辛いと感じる二人の想いが利用されるのが歯がゆい。幻の奈落の前に浮かぶ四魂の玉とりん…ご丁寧にも弥勒とりんの命を天秤にかけさせる所業は、どっちに転んでも絶望の連鎖に繋がるというのか。幻覚を創り出すのは分身・白夜の役目だったとは。弥勒は眼前の奈落が幻だと見抜けなければ挑発に乗りかねない。犬夜叉とかごめは間に合うのか。白夜の幻術を祓うことができる者がいれば…。そして珊瑚を止めることができるのは誰か。弟・琥珀は今どこに?
 かごめ贔屓としては、今週はすぐに弥勒を捜そうと提案したところでしょう。犬夜叉の背中にいると本当にしっくりくるヒロインは、仲間の危機には犬夜叉と同じ顔になるんです。弥勒が風穴を向ける前に、梓山の弓を引き幻を消し去る一撃を見舞ってほしい。最終回までのカウントダウン、あと「8」?
週刊少年サンデー10号掲載・第540話「よみがえった光」
 かごめは封印されていた霊力が復元するのを感じる。突然空間が振動してかごめの体が投げ出されると、犬夜叉は飛び出して抱き留める。接近した犬夜叉の顔から妖怪の目が薄れ、元の半妖に戻る。涙ぐむかごめ。浄化の力だと言う犬夜叉に、殺生丸が曲霊を斬ってくれたからと返して礼を言おうとかごめが振り返ると、その殺生丸はりんの匂いを嗅ぎとって走り出していた。かごめの霊力が邪気を祓っているのか。襲いかかる無数の触手を次々と爪で砕きつつ、なりふりかまっていられなくなったかと独白する殺生丸。
 振動は琥珀達のところにも波及し、邪見と七宝は飛び出してくる触手に飛ばされて離ればなれになる。四魂の玉の場所を目指して走る犬夜叉とかごめ。この振動は奈落からの仕掛けだ。四魂の玉は背中から無数の触手を出している奈落の目の前にあった。玉の一点に光が戻ってきたのを見て、曲霊の消滅とかごめの浄化力の復元を知り、この犬夜叉らの希望を絶望に変えてやろうとほくそ笑む奈落。犬夜叉とかごめの前に光が指す。肉壁から浮き出した奈落の顔が、玉に戻った光だとわざわざ解説。仲間もこの光を見るが何を思うかと問いかけつつ、弥勒の風穴はもう限界であと一度開けば最期だと伝える奈落。弥勒は一人であおむけに倒れ、奈落の体内にいながら致命傷を与えることもできないかと自嘲。しかし清浄な光を見て、かごめの霊力が戻って四魂の玉に光が戻ったのならあの光の先に玉と奈落がいると確信する弥勒。奈落は弥勒が目指す光が自分につながる保証はないと嘲笑する。騙して風穴を開かせるつもりかと怒鳴るかごめ。犬夜叉とかごめの周囲は棘と化す触手に固められる。かごめの光が仲間を殺すのだと響く奈落の声…以下次号。

 復元したかごめの浄化力は、その体を抱き留めた犬夜叉を半妖に戻す。まさに奈落と対極の能力なわけです。隠されていたりんの匂いも殺生丸の鼻に届く。さすがに奈落も焦らざるをえなくなったようで、りんを奪い返されれば殺生丸の爆砕牙が怖い。おそらく琥珀、邪見、七宝もいざという時に“人質”にするために分散させたんでしょう。焦るなと見栄をはっても、眼前を触手で封鎖されるとたちまち気弱になって泣き出すあたりがやっぱり七宝。この巨大な蜘蛛の体のどこかに、従来の姿のまま奈落はいた。四魂の玉を眼前に浮かべて、自らの背中から出す膨大な触手で巨大な空間を創り出しているわけか。復元したかごめの霊力とその光を逆用し、仲間を陥れてやろうと企むあたりがとことん狡猾なラスボス。この空間内で幻覚を創り出すことなどたやすいらしい。弥勒はいっそこの場で風穴を開いて奈落に傷を与えて果てるかと弱気の独白。そこへ奈落が玉から繋げた光が指す。その先には風穴を開かせるだけの何かを見せる気なのか。騙されるな弥勒!
 かごめ贔屓としては、今週はなんといっても『犬夜叉…顔…よく見せて。』の一コマでしょう。この顔の接近ぶりもさることながら、ひたすら元に戻ったことに安堵する涙がいい。すぐに礼を言えなかった兄には、いずれ話す機会もあるはず。殺生丸の独白に“かごめ”という単語が出てきたのにも注目。最終回までに彼がヒロインを名前で呼んでくれることがあるでしょうか。犬夜叉とかごめを足止めして弥勒を陥れようとする奈落の姑息な罠を、ヒロインの矢が打ち砕く!…という展開が希望ですが、ここは鉄砕牙・犬夜叉との連携プレーが見たい。この二人だからこそできることが、です。最終回までのカウントダウン、改めてあと「9」くらいか。
週刊少年サンデー9号掲載・第539話「捕らえる」
 かごめを命懸けで守ると誓った自分を思い出し、落下するかごめを抱き留める犬夜叉。鉄砕牙の力なしで曲霊の呪縛から逃れたのかと独白する殺生丸。目を開けたかごめは私がわかるのと問い掛け、犬夜叉は妖怪化した顔のまま、声が聞こえたと答える。殺生丸は曲霊を、その半妖は操りにくいようだなと皮肉る。曲霊が犬夜叉の体から出るとすれば次に取り憑く先はかごめ…殺生丸とかごめが同じことを考えた途端、曲霊の妖気がかごめの体を縛る。意図を感じた犬夜叉は咄嗟にかごめから離れて飛び降り、殺生丸は天生牙を抜くが、曲霊は一部が移動済みでもう遅いと嘲笑。天生牙で自分を斬る気なら、犬夜叉もかごめも引き裂いて肉体を消滅させるしかないというのだ。犬夜叉の意識がまた薄らぎかけた時、下から鉄砕牙が飛んできて左手に渡る。瞬間、竜鱗が発動して脈打つ犬夜叉の体。入りかけていた曲霊が出ていくのを感じるかごめ。曲霊の体は同時に犬夜叉の体からも押し出され、しかも離れることもできず固定されてしまう。隠れるのを止めたのかと問う殺生丸。動けないと戸惑う曲霊の体は、犬夜叉の巨大な妖穴によって捕らえられていたのだ。乗り移った相手が悪かったなと呟き、殺生丸は天生牙で曲霊の体を斬り裂く。半妖ごときの妖気に負けるなど、との言葉を最期に曲霊は消滅していく。かごめの体内でも脈打ちが起こり、霧が晴れていくような感じを受ける…以下次号。

 妖怪化していても『かごめの…声が…聞こえた…』。これが二人の絆なのです。数多の危機を乗り越えてきた二人だからこそ、曲霊の魔力をもってしてもその思い通りにはいかない。殺生丸は曲霊が犬夜叉からかごめに移ろうとする一瞬が狙いと即座に定める。ここは流石の判断力。曲霊は曲霊で乗り移る体が無くならない限り自分は不滅だと嘯くものの、もう一つの絆・鉄砕牙と犬夜叉の関係がそれを打ち砕く。まさにナイスアシスト。以前、冥道の中で自らの妖穴を斬ることで使い手の妖力を自己増幅させた竜鱗の鉄砕牙は、殺生丸に犬夜叉の後継者としての証を示し、認めさせていたのです。この伏線がここで見事に発揮される。唸る展開でした。驚きの表情のまま妖穴に捕らえられた曲霊は、殺生丸と天生牙によって介錯され葬り去られる。痛快痛快。“半妖ごときの妖力”だと? 違うな。“人間との混血であるがゆえの強さ”なのだ。あの世でよく考えろ、曲霊!
 かごめ贔屓としては、今週はまず『助けてくれたの…? 私がわかるの…?』の表情ですね。で、すぐに鉄砕牙のことを聞くあたりがこのヒロインの素晴らしいところ。その鉄砕牙はもはやかごめの化身であって犬夜叉の相棒。アイテムでありながら自らの意志で使い手の手に戻ってくる。これぞ犬かごの絆の象徴ですよ。元凶が消え去って封じられていた霊力が復活するヒロインが最初に見るものは何でしょうか。四魂の玉の場所、捕らえられているりん、離ればなれになった弥勒と珊瑚…いよいよ最終回までのカウントダウン開始です。
週刊少年サンデー8号掲載・第538話「かごめの血の匂い」
 曲霊と犬夜叉の臭いを追って肉塊の中を掘り進む殺生丸。後につくかごめは、奈落=四魂の玉が怒りと絶望・負の心を望んでいると告げ、兄弟で傷付け合えば思うツボだと懇願する。殺生丸が壁を突き抜くと、斜め上から曲霊が操る犬夜叉が飛びかかる。殺生丸はかごめにここにいろと怒鳴って、犬夜叉を右の拳で殴り飛ばす。奈落の体内の肉塊の間の空間で戦う兄弟。妖怪化している犬夜叉の力を感じ取り、かごめの危惧には長引かせずにカタを付けるしかないと判断した殺生丸は天生牙を抜く。その刃を素手で掴む犬夜叉。この世のものは斬れぬ刀だから、犬夜叉の体に入っていれば自分を斬ることはできぬと嘯く曲霊。天生牙をこのまま折る気なのだ。殺生丸は突進して肉塊の壁に犬夜叉をぶつける。かごめは鉄砕牙を渡そうと降りようとするが、ぬめった肉塊で滑って落下しかける。殺生丸が舌打ち。咄嗟に鉄砕牙を壁に突き刺して身を支え、犬夜叉に接近するかごめ。曲霊は犬夜叉の心は隅まで支配した、鉄砕牙でも元には戻らないと勝ち誇る。かごめの負けないでという叫び声が響き、犬夜叉の意識にはその血の匂いが届く。奈落は肉塊の壁を分解してかごめと鉄砕牙が宙に飛ばされる。殺生丸の前から飛び出してかごめのところに走る犬夜叉。かごめは生きている、という独白とともに…以下次号。

 確かに奈落は自らの体内で怒り、絶望、憎しみに孤独といった負のエネルギーをシェイクして増幅させようとしているかのような展開です。妖怪化しても一己の人格を残す犬夜叉を操って、殺生丸を襲う曲霊は怖い天生牙を折ろうとする。この局面下でも氷のように平静な兄上は、『いつもよりは歯ごたえがあるな』と憎まれ口を叩きながらも弟に手心を加えるのは長引かせて奈落を利するだけと即座に判断。兄弟の鍔迫り合いは拮抗状態になるかと思われ、キーマンならぬキーガールとして、ヒロインの出番が来ました。
 かごめ贔屓としては、今週はまず『あんたならできるでしょ! 犬夜叉を傷付けないで曲霊を倒して!』との懇願ですね。これはムシのいい願いではなくて、負の心を望む四魂の玉=奈落の狙いに乗らないための言葉。兄上も背中で聞き流してたのでなく、しっかり主旨を理解してる。『鉄砕牙を渡さなきゃ。犬夜叉のそばに…』と手を滑らせても肉塊の壁に刃を突き刺してジリジリ接近、『お願い鉄砕牙…私を支えて!』の独白はまさにこのアイテムとの強い絆を感じます。『犬夜叉、負けないで! 犬夜叉ーっ!』の懸命の叫び声が、右肩の血の匂いを彼の鼻に届ける。肉壁の分解で飛ばされたヒロイン、その身を追って飛ぶ犬夜叉の意識には明確に心が復元する。命懸けで守るべき存在を、彼が忘れ去ることは決してない。『かごめが生きている!』兄上、曲霊を斬るチャンスだ。鉄砕牙がかごめの霊力を呼び覚ますことは叶わずとも、犬夜叉がかごめを抱えて鉄砕牙を再び手にした時、ヒロインの封じられていた霊力が覚醒する!
週刊少年サンデー7号掲載・第537話「最後の理性」
 殺生丸の鼻がりんの匂いを察知。近いと呟いた殺生丸は急速跳躍。その尾(?)にしがみついてかごめも同行。妖怪化した犬夜叉が側にいると聞いたかごめは、もし犬夜叉がりんを傷つけてしまったら、と危惧。りんと対峙する犬夜叉は爪を鳴らして接近。異常な雰囲気に背を向けて逃げようとするりんだが正面に曲霊が顔を突き出す。尻餅をついたりんの背後から飛び込んだ犬夜叉は、動くなとかすかな声を発して曲霊の顔面に爪の一撃を加えるが、肉体のない曲霊を素通りして空振り。まだ人の心が残っているとは驚きだと呟きつつも、曲霊はかすり傷すらつけられぬと嘯き、そのまま犬夜叉の体に入り込んで操ろうとする。琥珀の時と同じだとおびえるりんが、飛び込んできた殺生丸に気付いて名を呼ぼうとした途端、その体が奈落の腸により飲み込まれるように姿を消す。曲霊が取り憑いた犬夜叉が、りんが消えた上を跨いで殺生丸と対峙。犬夜叉の頭上に曲霊の巨大な目が浮かび、取り憑かれているとかごめは焦る。相手を間違えたな、と天生牙を抜いた殺生丸が踏み込むが、犬夜叉が抜いた鉄砕牙が黒く変化。冥道残月破を撃つ気なのか。かごめはやめてと叫ぶ。
 琥珀、七宝、邪見は普段りんが乗っている双頭獣で奈落に接近していた。乗り物ならこれがあったのにとツッコむ七宝。なぜ自分一人で乗り込まねばならんと開き直る邪見。しかし近寄ってみるとその巨大さにびびる二人。その眼前で球体の一部が円形に裂け、暗闇が見える。犬夜叉が冥道残月破を撃ったのだと知った琥珀は、穴が閉じかける前に双頭獣の手綱を引いて敢然と奈落の体内に飛び込む。
 冥道残月破があらぬ方向に撃たれたのを見た殺生丸は、鉄砕牙が犬夜叉の最後の理性を支えているのかと独白。しかし奈落の腸が触手と化して犬夜叉の体を捕らえ、鉄砕牙はその手を離れてしまう。そのまま犬夜叉の体は別の腸の中へ突き込まれるが、殺生丸はかごめに鉄砕牙を拾えと叫ぶ。ボロ刀に戻って突き立った鉄砕牙を掴むかごめ…以下次号。

 妖怪化しつつも犬夜叉にはわずかに人間としての理性が残っています。思うように体が動かなくとも、敵と味方を懸命に分別しようとする意志こそ主人公のプライドなのか。いまいましくも曲霊は、その体を乗っ取って操ろうとする。りんは重要な人質で、体内のどこにいるかがわからない状況では殺生丸も爆砕牙が使えない。従って奈落は殺生丸を犬夜叉と対峙させ、曲霊によって鉄砕牙で葬らせようとする。とことん狡猾な連中だ。しかし天生牙を抜いて『犬夜叉ごとたたき斬ってくれる!』の兄は徹底してクールでありつつハードボイルド。
 奈落の外では琥珀が、子供の七宝を遠回しに誘ったのですかと邪見にさりげなく抗議。子供扱いがちと癪な七宝は『おまえに言われたくないのう。しかし琥珀おまえこそ、あれほど珊瑚に来るなと言われたのに…』。皆それぞれの性格どおりの言動で、これだけ切迫した展開なのに妙に微笑ましかったりするから面白い。冥道残月破が空けた穴に迷わず飛び込む琥珀。あわてて『ま、待て。やはりわれわれは足手まといでは…』と本音炸裂の邪見、諦めよ。これもサブキャラの定めなのだ。
 殺生丸は鉄砕牙が使い手の理性を支えていると見抜く。『鉄砕牙を拾え! 犬夜叉と曲霊を追う!』さすがの凛々しい横顔は、この連載の男っぽさを支えてきた絶大な存在感です。かごめ贔屓としては、今週はその兄上の尻尾(?)にしがみついての飛行、羨ましがる女性読者が多そうですなあ。『やめて犬夜叉!』と叫んだ表情も、彼の手から離れた鉄砕牙を案じる表情も可愛い。思えばヒロインが鉄砕牙を手にする意味は、連載初期に父上の体の中で初めてそれを抜いて以来、自らの化身のようなアイテムであることをこの最終決戦の場で改めて示されているようで嬉しい。最終回までまだ10回は続きそうですが、次週は「鉄砕牙がかごめの霊力を復元すること」に期待したい、これはぜひとも!
週刊少年サンデー6号掲載・第536話「風穴の限界」
 弥勒は珊瑚の叫び声にもひるまず風穴を開くが、右手の掌は激しい音を立てて右腕が脈打つ。悲鳴をあげる珊瑚。触手の一部を吸い込んだところで咄嗟に右手を握り数珠で封印した弥勒だったが、駆け寄ろうとする珊瑚に来るなと叫ぶその顔には風穴が裂けて自らがその中に吸い込まれる恐怖が浮かぶ。右手の疼きは収まったかのように思えたが、もう後がないと悟った弥勒は、珊瑚に別れを告げて背を向け、走り去る。戸惑いと哀しみを浮かべ、雲母を呼んで懸命にその後を追う珊瑚。走る弥勒はまもなく風穴が裂けると感じていた。珊瑚が側にいれば巻き込んでしまう…それは自らの死より辛いのだ。
 楓と村人達は、空に浮かぶ不気味な球体が奈落の変化した姿だと噂し合っていた。その姿はまさに汚れきった四魂の玉だ。立ち尽くしてそれを見上げる七宝は、犬夜叉の言葉を反芻する。いつのまにか横に来ていた邪見と言い訳やら言い争いやらをしているところへ、退治屋の戦闘服に着替えた琥珀が歩み寄ってくる。
 殺生丸について歩くかごめは、りんの匂いは鼻でわからないのと尋ねる。斜め上の球体状の細胞にりんの姿が映るが、殺生丸は即座に幻だと一言。匂いのしないりんの姿を映すのは奈落のからかいなのか。本物のりんはようやく目を覚ましたが、間近に曲霊の巨大な顔が迫る。驚いて殺生丸の名を呼びながら逃げようとするりんの前に犬夜叉の姿が。しかしちかづいてみるとその目は妖怪化していた。思わず立ち尽くすりん…以下次号。

 毎週熱心に閲覧してくださっていた皆さん(って、一体何人いるのだろうか^^;)、サイト開設以来5年強、とうとう連載一回分をサボってしまったことをお詫び申し上げます<(_ _)>。珊瑚を守るため反射的に風穴を開いたものの、これがもう最後の発動になることが弥勒本人の体で証明されてしまいましたね。薬老毒仙の毒薬を飲み干し、風穴を使う激痛を麻痺させてまで珊瑚を守るために戦ってきた彼が、自らその珊瑚に別れを告げることがどれほど辛かったことか。弥勒が去っていく…離れるのは嫌と必死に雲母を呼ぶ珊瑚の表情が悲痛。この二人は互いを想う心があまりに強いが故に苦しむのです。
 そうした修羅場の一方で、地上では七宝と邪見が掛け合い漫才。『わしが物陰で身のふりかたについて深く静かに考えている間に犬夜叉どもがわしに無断で突入してしまいおって、結果、出遅れたかのように…』『言い訳が長いわっ!』。しかしまあそれでも、やはり主人の側に出向くというあたりは邪見の邪見たる所以。風船玉に変化して奈落のところに行こうとする七宝も、琥珀もまた、考えることは同じだった。彼らもこの物語の貴重なキャラ達、最終戦からつまはじきではちょっと寂しいですからね。
 目覚めたりんは妖怪化した犬夜叉と遭遇、多方面で展開は次々と進みます。かごめ贔屓としては、今週は『それでも…りんちゃんの居場所がわからないの?』の表情です。成り行きで兄上につき従う形になったヒロイン、早く二人の所へたどり着かねば…最終回まで、あと連載5回…いやいや、こりゃまだまだ続きそうです。
 さて2007年連載分も読みたいという方はこちらをどうぞ。
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