【今週の「犬夜叉」!】…毎週更新。
ここでは週刊少年サンデーに連載中の『犬夜叉』について、毎週1回、主な内容と展開を追跡し、コメントをつけていきます。
週刊少年サンデー4&5合併号掲載・第535話「奈落の闇」
虚ろな目で歩く犬夜叉の脳裏には、奈落の罠によって引き裂かれた桔梗との仲とその後の経緯が繰り返されていた。そして聞こえてくるかごめの声…命を賭けてお前を守るという自らの決意と、傷付けられて落ちていったかごめ。元の半妖に戻った途端、犬夜叉は自分の爪にかごめの血の匂いがついているのに気付く。周囲の壁から浮き出る奈落の顔が、お前が引き裂いたことを覚えていないのかと嘲笑う。桔梗もかごめもお前の弱い心の犠牲になったのだという声に激昂した犬夜叉は奈落の顔という顔を引き裂いて回る。しかしまた奈落の闇が迫る。女のことも人の心も忘れろ、獲物を引き裂く喜びだけを知れ、それが四魂の玉が望むことだという誘いによって、再び犬夜叉の顔は妖怪化していく。
かごめが目を覚まして腕の痛みに顔を歪めつつ起きあがると、集まってくる妖怪を黙々と素手ではらい落とす殺生丸がいた。腕の傷が犬夜叉の仕業と見抜き、奈落の闇に飲まれたかと指摘する殺生丸。かごめは犬夜叉が自分を見失う前に私を逃がしたのだと信じつつその後を追う。
襲いかかる触手を薙ぎ払いつつ走る弥勒と珊瑚だが、砕いても砕いてもその数だけ増殖する触手に大苦戦。雲母の背に飛び乗り、逃げなければ弥勒が風穴を使って父のようになると苦悩する珊瑚。周囲から一斉に延びてきた触手が雲母の足を捕らえ、珊瑚は投げ出されて叩き付けられる。その身を狙って延びる触手を見た弥勒は、珊瑚が飛来骨に手を伸ばすのが間に合わないと判断して右手の数珠を外す。いけないと叫ぶ珊瑚…以下次号。
真黒の四魂の玉と一体化した奈落は、とことん犬夜叉の抱える苦悩をつつきまくる。四魂の玉の闇の部分が言葉を放ち、半妖で人間の心を持つゆえに苦しむのだからそれを捨てて残虐なだけの妖怪になれと…以前桔梗は、私達を引き裂いたのは奈落の嫉妬の心だと指摘していたのですが、闇の半妖である奈落は既にそういう人間の心を四魂の玉によって消し去られているとしか思えない。二重の意味でこの展開は原作ファンにとって苦痛です。
兄上の言葉はやはり簡潔でかつ必要最小限でした。『その傷…犬夜叉の爪にやられたな。半妖が…奈落の闇に飲み込まれたか。』かごめが気絶している間は妖怪を追い払ってやり、起きあがったのを確認したらさっさと歩き出すあたりが正に大妖怪としての風格に満ちています。手厳しい言葉の裏にある叱咤になんとか応えたいところ。ミロサンへの心理攻撃の次はすかさず物理攻撃。風穴を使わせてはならないと苦悩する珊瑚の目が痛々しい。珊瑚を守るためには反射的に風穴の封印を解いてしまう弥勒も、それに『法師さまいけない!』と叫ぶ珊瑚も、互いを想い合うがゆえの行動で苦しみです。奈落=四魂の玉は、珊瑚の心にも相手への想いを弱点として攻めるのか腹立たしい。
かごめ贔屓としては、今週は殺生丸の言葉に『ち、違う…犬夜叉は…』の返答とその後の独白です。犬夜叉はかごめを突き落としたのではなく、左手を開いて押すことで逃がしたのだと。『そうよね? 犬夜叉…』の横顔が辛いけれど、これだけ長くの間自分を守り続けてくれた彼への信頼と想いはそんなヤワなものじゃない。次週もお休みですが、奈落が何度犬夜叉を妖怪化しようが、ある意味“鉄砕牙の化身”でもあるヒロインが必ず彼を元に戻してくれる。最終回まで、あと連載6回か?
週刊少年サンデー2&3合併号掲載・第534話「瘴気の矢」
かごめは犬夜叉にしっかりしてと懇願するが、妖怪化した犬夜叉は爪で襲いかかる。右肩をかすって傷を負うかごめ。霊力を封じられたままでは浄化も出来ぬかと奈落の声が響く。玉から離れれば正気に戻るのではとかごめは走り出るが、眼前の地面から奈落の顔が浮かび上がり、妖怪化した犬夜叉はお前を殺すことしか考えないと喋ると宙に一本の矢を浮かべる。この瘴気を満載に含んだ矢で犬夜叉を射抜けば助かるというのだ。近づいてくる犬夜叉から逃げるかごめの前には深い窪みが現れる。執拗に瘴気の矢を間近に浮かべてこのまま殺されたいかと嘲笑する奈落に怒りの言葉をぶつけるかごめだが、犬夜叉の次の突きで窪みの中に落ちていく。
犬夜叉達を探そうと歩き続ける弥勒と珊瑚。弥勒の右手からは風穴の音が漏れ聞こえてきて、珊瑚は次に風穴を開いたら…と危惧する。奇妙な霧がたちこめるとその先には弥勒の育ての親である夢心和尚の寺が出現。幻? 奈落は何を見せる気だと警戒する弥勒。目に映ったのは幼い弥勒を夢心に預け、去っていく弥勒の父の最期の姿だった。右手の風穴が裂け、弥勒の父の体は右腕からそこに飲み込まれて消えていく…父上と絶叫する幼い弥勒、必死に行ってはならんと止める夢心…弥勒の父の体は円形の窪みを残して消え失せる。いやだと泣き叫び、弥勒にしがみつく珊瑚。幻に惑わされるなと語りかける弥勒だが、珊瑚は震えるばかり。珊瑚にこの光景を見せたのかと歯軋りする弥勒の前に、地から棘の触手がわき出てくる。そして倒れ伏して気絶したかごめを殺生丸が見つけるが…以下次号。
真黒の四魂の玉の毒気はあまりに強力で、かごめの声はまるで届かず犬夜叉には攻撃目標としか認識できないのか。ご丁寧に瘴気の矢まで用意して殺し合えと促す奈落。憎々しげな舞台設定で二人の絆を引き裂く…信じ合う者同士が殺し合えばその憎悪と絶望が無限の闇を深めて永遠に繰り替えさせる。正直言ってこれは散々神経を逆撫でされた劇場版アニメの展開であり、原作ファンとしては決して見たくなかった光景です。
しかし見たくなかった光景は珊瑚にも突き付けられる。風穴が広がる音に不安が高まっているところに、弥勒の父の最期の日の残酷な光景。横顔だけでどんな顔だったのかはわからないまま、今の弥勒と同じ法師の姿の男が自らの風穴に吸われて消えていく…『いや! いやだ!』と叫ぶ珊瑚はガタガタと震え出す。いかに鍛え抜かれた退治屋であっても、愛する婚約者があんなことになるという恐怖を見せつけられては飛来骨を正確に操れなくなりかねない。どこまでも陰湿な奈落の心理攻撃はジリジリと皆を追い詰めていきます。弥勒はこの危機をどう乗り切るのか。
かごめ贔屓としては、今週は自分を殺そうとするだけの犬夜叉を哀しげに見つめる表情が猛烈に切ない。『奈落あんた…バカじゃないの? 私が犬夜叉を撃てるわけないでしょ! 犬夜叉だって私を…』の叫びが苦しげに響きます。右肩を傷付けられたのでは弓を引くのもままならなくなる。気を失ったヒロインの前に殺生丸登場。今、奈落の体内においてもっとも平然としているのは彼だけでしょう。次週はお休みですが、私的にはここは兄上にヒロインと主人公を痛烈に叱咤する一言をお願いしたい。“お前は鉄砕牙を抜いた娘だろう。半端な半妖ごとき正気に戻せないでどうする”みたいなのが希望です。最終回まで、あと連載7回か?
週刊少年サンデー1号掲載・第533話「玉の気配」
鎧甲の奈落は首も強固で鉄砕牙で斬ろうとしても犬夜叉の手が痺れるばかり。腕の一撃で吹っ飛ばされた犬夜叉に刀では歯が立たないと奈落の声が響く。珊瑚が投げた飛来骨が鎧甲の奈落の首を刎ね飛ばし、邪気を砕く飛来骨は効くのかと弥勒が叫ぶものの、千切れた首と胴体からそれぞれ体が再生され、二体に分裂して再び襲ってくる。犬夜叉は金剛槍破で迎撃して粉砕するが、壁に刺さった槍をこぼして新たな体が再生されるばかり。犬夜叉が黒い刃を発動させて冥道残月破を撃とうとすると、壁の向こうが透けてりんの姿が浮かび上がる。小娘が目を覚ましたかと呟く奈落の顔。まやかしだと怒鳴る犬夜叉に、そう思うならその幻ごと冥道に葬ってみろと嘯く奈落。歯軋りする犬夜叉は、壁から飛び出す触手の攻撃からかごめを庇って移動。自分とは関わりのない小娘でも斬れないらしいが、自分の仲間と自分を助けるためにいずれ斬りたくなると奈落が独白。
かごめは四魂の玉の気配を感じ取り、捜し出して壊すしかないと叫ぶ。玉は奈落に吸収されて溶け込んでいるのではなく、そのままの形で残っているというのだ。弥勒と珊瑚もその言葉に目を見張る。かごめを抱えて跳んだ犬夜叉の足が着地時に滑って、二人は奈落の体の窪地に落ちていく。駆け寄ろうとした弥勒と珊瑚の眼前は触手で塞がれ、分断する気かと悔しがる珊瑚。かごめの感じる四魂の玉の気配は一層強まり、方向は明確になる。自分の体内なら自在に操れるはずの奈落が、なぜわざわざ玉の近くに行かせようとするのかを疑問に思ったかごめの前で、犬夜叉の体に異変が生じる。顔は妖怪化して爪の一撃がかごめに向かう。驚いて飛び退いたかごめに、壁の奈落の目から汚された玉に近づけば半妖の心は毒気に簡単に喰われるとの声が響き…以下次号。
邪気を巻き込んで倒す飛来骨は鉄砕牙よりも強力な武器に成長していたようです。しかしここは奈落の体内、現れる奈落は分身だらけでキリがない。冥道残月破は一部分だけを斬り抜いて冥道に葬ることが可能な技ですが、これを封じるためにりんを人質にしているあたりが抜け目のないところ。自分と仲間を助けるために犬夜叉がりんを犠牲にすれば、黒く染まった四魂の玉の闇は永遠に続くということなのか。ラスボスにそこまで計算づくの行動を取らせる玉の意志恐るべし。
かごめ贔屓としては、今週はやはり玉を壊すしかないと気付いたところが秀逸でしたが、奈落は人間の心を喰って犬夜叉にかごめを襲わせる手に出てきたか。連載中期にはこの二人を引き離さねば自分の命に関わると恐れを抱きながらも、結局明確にはそういう行動に出ていなかったラスボス。以前、罠によって誘い込まれた鬼の体内でも同じことが起こり、あの時は妖怪化した犬夜叉に抱きついて必死にその心を呼び覚ましたヒロイン。今度は真黒の四魂の玉を持つ奈落自身の体内であり、はるかに邪気は格上です。しかし今のかごめには、梓山の弓を桔梗の遺志とともに受け継いだ成長があるはず。時を越えて出会った半妖の少年との約一年の日々が、数々の名場面を生んできました。かごめと犬夜叉の“絆”は何百年も続く玉の闇の部分に勝てるのか。物語のクライマックスであることはもちろんですが、これは同時に原作の原作たる所以を示す局面でもあるのです。原作の犬かごとはどういう仲であるか、どんな間柄であるか。高橋留美子という稀代の少年漫画家が描く主人公とヒロイン像とは何であるか。かごめにしかできないこと、かごめだからできること、犬夜叉だからそれに反応できること。次週からそれを必ず見ることができるでしょう。最終回まで、あと連載8回か?
週刊少年サンデー52号掲載・第532話「奈落の体内」
巨大蜘蛛が空けた口の中に殺生丸は即座に飛び込んでいく。小娘を救うためかとの白夜の言葉でりんが中にいることを知った犬夜叉達も後を追う。弥勒はへらず口を叩く白夜を一睨みするが、風穴はもう限界に近く、あと一、二回開けば裂けて自分自身が消える…生き延びるために奈落を滅すると独白。必ず奈落を倒そうと言う珊瑚に、終わって帰ったら祝言だと返す弥勒を乗せて雲母も蜘蛛の口の中へ。冷めた目で見送る白夜。
巨大蜘蛛と化した奈落の体内は糸の束が何重にも続く闇。奥に浮かび上がった奈落の上半身を見た犬夜叉は鉄砕牙で一撃するがこれはダミー。自分の体内だから全てが自分の体だと奈落の声が響く。腸の重なりのような壁から奈落の頭部が出ると、珊瑚が飛来骨で粉砕。裂けた部分から瘴気が液体と共に吹き出すが、別の壁に浮き出た奈落の顔が言う。犬夜叉達がこの体内に入った時から瘴気を浴びているのに生きているのは、四魂の玉が皆の魂を望んでいるからなのだと。自分を憎む心、怒りと絶望だと呟く奈落に、犬夜は薄汚い因縁を断ち切りに来たのだと怒鳴る。何百年と続く四魂の玉の因縁を断ち切れると思うか、との言葉とともに、全身が鎧甲に覆われた奈落の姿が現れる。巨大蜘蛛は足を曲げて体を丸めて行く。まるで玉だなと呟く白夜。鎧甲の奈落の腕に鉄砕牙を振り下ろす犬夜叉だが、恐るべき堅さで手が痺れる。この体内で永遠に闘おうと奈落の謎の言葉が響く…以下次号。
殺生丸がりんという少女に対して示す行動は、まるで“主君への忠義”のようです。弥勒が風穴を開けるのは今回が最後、奈落を滅するか自分が消えるかの極限状況で、帰ったら祝言をあげようと珊瑚の背中に囁くところが渋い。『おれなら人質の小娘ひとり犠牲にしたって、外から奈落を壊すがね』と語る白夜。一体こいつはどういう分身なのでしょうか。
奈落は四魂の玉を取り込んだつもりが、実は玉に取り込まれたのでは? 今週の連載中で語っている言葉は明らかに玉自身の意志です。奈落を憎む心、怒り、そして絶望…因縁を断ち切るために来たとわめく犬夜叉ですが、憎しみと怒りは無限の戦いを繰り返すのみ。四魂の玉は翠子と妖怪集団の血みどろの戦いから生まれた存在、その生誕からして翠子を狙った妖怪集団とそっくりな奈落が、自らを玉と化して永遠の戦いに誘おうとしている。珊瑚やかごめはそれに気付くはずですが、どうすれば輪廻を絶てるのか。かつて桔梗は玉ごと奈落を浄化すると語っていました。本当の体など存在しない奈落を倒すということは、魂ごと消すということだと。玉の中に入った彼らがそれを成し遂げる方法とは何なのか。ラストバトルはそれを見つけるための苦闘になります。
かごめ贔屓としては、今週は大半のコマで犬夜叉の左腕に抱きかかえられてましたね。この体内に出現する奈落はすべてがダミーにすぎない。玉を浄化し消滅させる唯一の正しい願いを見つけるのは、間違いなくヒロインの役目です。最終回まで、あと連載9回か?
週刊少年サンデー51号掲載・第531話「邪気の雲海」
気絶していた七宝が目を覚ますと脳天にコブ。枕元には楓と琥珀がいた。最後の戦いに赴く前、自分を連れていけないという犬夜叉に反発した七宝は、仲間だからこそ俺達が戻ってこなかった時は大妖怪になって後を継げとの言葉の後、ゲンコツで眠らされたのだ。桔梗からもらった命を粗末にしないためにも楓につけ、との指示を珊瑚から受けた琥珀も小屋に留まっていた。七宝は怒って外に飛び出すが、空は邪気まみれの真っ黒な雲に覆われていた。
犬夜叉とかごめは妖怪の背に、弥勒と珊瑚は雲母に乗って雲海に向かう。犬夜叉にしては気弱な発言だったなと指摘する弥勒。かごめの霊力は殺生丸が天生牙で曲霊を完全に葬らない限り戻らない。その殺生丸は一足先に雲海の中にいたが、奈落の体は巨大な化け蜘蛛に変化していた。襲いかかる配下の妖怪達は爆砕牙の一閃で破壊を繰り返しながら落ちていく。その威力を見守る白夜は、それで斬られれば今の奈落でもひとたまりもない、と笑みを浮かべる。曲霊に憑かれて眠ったままのりんが奈落の体の中に囚われていることを伝えてだ。蜘蛛の尻から吹き出た毒の糸が舞い降り、配下の妖怪達ごと溶かしていく。飛び込んできた犬夜叉らが乗っていた妖怪の体も溶かされ、犬夜叉はかごめを抱えて跳躍。その真下で巨大蜘蛛の前頭部が左右に開く…以下次号。
最後の戦いには七宝を連れていけないという犬夜叉。自分は仲間ではないのかと涙ぐむ七宝に、『おまえはおれたちの仲間だ七宝。だから万が一おれたちが戻ってこなかったら、おまえが後を継ぐんだ。おまえが大人になって…大妖怪になってからでいい。わかるな? 七宝。わかるよなっ!』でゴツン。口下手の彼にしてはよくこれだけ言いましたよ。小さい体ながらも連載初期の頃、弥勒や珊瑚よりずっと前から一緒に行動してきた七宝を、守るだけの余裕がないことを理由に置いていくことは、犬夜叉にとっても決して本意ではなかったでしょう。子ギツネ妖怪である七宝が大妖怪に成長するには何年かかるんでしょうか。ドアホとわめきつつも、真っ黒な雲海を見上げて七宝が独白したのはかごめではなく犬夜叉の名前でした。ここに彼の本心があるのです。
奈落の最終変化体は化け蜘蛛だったか。人間だった時の通り名が鬼蜘蛛であることから来るものなのか、それともそれだけの理由があってのことなのか。分身の白夜は外にいる。りんが奈落の体の中にいることを伝えるためです。『遠慮なく斬ったらどうだい?』とはいけしゃしゃあと…。犬夜叉の足場を溶かして大口を開ける奈落の狙いは何か。因縁の相手を体の中に誘い込んで、何を見せる気なのでしょうか。今の自分の体がこうである理由をあえて伝えるつもりなのか、ラスボス。
かごめ贔屓としては、今週は『あーでも言わなきゃ七宝の気が収まらねーだろ』と悪態をつく犬夜叉に『結局殴っちゃったけどね』の表情ですね。これは歳の離れた弟を気遣いつつ精一杯の誠意を示した兄に微笑む母の顔です。ヒロインの渾身の一撃は、曲霊が完全に息の根を止められた直後の一瞬だと思われます。犬夜叉に抱きかかえられた状態で奈落の体内に飛び込むかごめが見るものは、自らがこの時代にやってきたことの意味なのかもしれません。最終回まで、あと連載10回くらいか!
週刊少年サンデー50号掲載・第530話「卒業」
完成した四魂の玉を手にした奈落は自らの生誕の経緯を述懐する。身動きできぬ人間の野盗・鬼蜘蛛が夢見た桔梗をさらって逃げるというあさましくもささやかな夢。そのために数多の妖怪に体を喰らわせ、鬼蜘蛛の体を依り代にして半妖・奈落が生まれた。桔梗が自らの亡骸とともに焼かせた四魂の玉は、抜け出した曲霊が再び入り込む隙さえなくなるほど汚れに満ちて真っ黒となり奈落の手の中にある。曲霊の邪気に覆われて眠り込んだままのりんが横たわる。玉を使って何をするという白夜の問い掛けに、することなどなにもないと返す奈落だが、犬夜叉達との因縁、その怒りや憎しみを喰って自らが変化を繰り返し、玉が完成したなら戦いの行き着く先は犬夜叉達を闇で喰い尽くす事だと語る。
かごめをまた井戸の向こうに返したのか、と犬夜叉に訊く楓。この日だけはという前からの約束だったと答える犬夜叉。実家でかごめは入試の結果が補欠合格だったと聞いて大喜び。中学の卒業式に出向いて級友達と合格を祝い、卒業証書を受け取り記念撮影。別クラスの北条は男子校に進学で高校が別になるが友人関係の継続を望む。快諾するかごめの後ろで級友達は彼氏の存在を知らない北条を気の毒がる。
四魂の玉は奈落の掌の中に潜り込んで行き、奈落の体は闇の力により分散する。巨大な触手が白夜とりんの周囲を取り巻く…。家族に挨拶して再び戦国に向かうかごめに、竜の尾の干物と天狗の髭をプレゼントする祖父。普通に嬉しいのを欲しがるかごめを母は抱き寄せ、髪を撫でつつ卒業を祝う。数多の妖怪達は黒い雲に続々と集まり始める。見上げる弥勒、珊瑚、楓、七宝、琥珀達。犬夜叉は奈落が四魂の玉を使ったなと一言。決着をつける時が来たのだ。桔梗の光は琥珀の命になり、もう奈落と闘うことはない。だから俺達が奈落を倒す。戻ってきたかごめが合流し、皆は奈落との最後の戦いに出向く…以下次号。
ラスボス奈落には結局目的という概念がなかったのか…これには驚きでした。【うしおととら】の白面の者のように全ての妖怪を皆殺しにして君臨・支配することでもなければ、【からくりサーカス】のフェイスレスのように一人の女性の心を永遠に自分のものにすることでもなかった。犬夜叉、弥勒、珊瑚らの怒りと憎しみを喰い、変化を繰り返して汚れた玉が完成。彼らを闇で食い尽くしたその先に何があるのかは奈落にもわからないとは。この作品の膨大なテーマの一つ、四魂の玉を浄化消滅させる唯一の正しい願いとは、もしかするとこの迷走する闇の半妖・奈落を「人間と妖怪に分離して意味のない戦いを終わらせること」なのかもしれません。翠子と妖怪軍団との死闘の末に誕生した四魂の玉は、人間と妖怪との血みどろの戦いの結晶。ならば玉の存在は人間と妖怪の和解もしくは互いの存在を忘れる別離共存によって消え失せる…というのは荒唐無稽でしょうか。そしてその鍵を握るのは、妖怪と人間の混血児である犬夜叉なのだと。奈落はどんな姿で登場するのか。最終回までのカウントダウンが始まりました。
かごめ贔屓としては、今週はなんといっても高校合格と中学卒業おめでとう。連載第一回で15歳になってから苦節11年(^_^;)、漫画のヒロインは年をとらないからいいなあと言われつつも、本人は妖怪退治と命懸けの恋と学業と受験勉強を掛け持ちで駆け抜けたんですからこれは大偉業です。『友達でいてくれる?』『もちろん! ずーっとお友達でいようね』あのお〜それって、想いを寄せる異性にとっては凄く残酷なリアクションだって知ってます?って北条君の性格じゃ全然傷つかないのかもしれないが(^^;)。しかし母に『よくがんばったわね。卒業おめでとう』と髪を撫でられたこのコマが、もしかすると家族との今生の別れになるかもしれないのです。闇の半妖・奈落を滅して四魂の玉を浄化するという大変な役割を任せられた本作品のヒロインが、連載中で最後になるであろう“現代の普通の中学生”の側面を見せた今週は原作者の心遣いでしょう。仲間と共に最後の戦いに向かうかごめ。クライマックスは連載何回分で描かれるでしょうか。
週刊少年サンデー49号掲載・第529話「玉の完成」
弥勒と楓にりんがさらわれたとを詰る邪見。弥勒の体から染み出た邪気だとわめく邪見の責任を七宝が咎めるが、ビクビクする邪見の背後に立った殺生丸は曲霊が生き残っていたかと一言だけ残し、皆に目もくれずに飛び去る。りんが連れて行かれる先は奈落の元で、目的は自分の刀を封じることだと独白する殺生丸。
倒れ伏し、生気を失った目の琥珀の喉から四魂の欠片がなくなっていることに気付いた珊瑚は絶叫し、泣きじゃくりながら弟を抱きしめる。激昂した犬夜叉は奈落はどこだと怒鳴り、涙目で黒雲を睨んだかごめが矢を放った方向に冥道残月破をぶち込むが、黒雲は一瞬で分散。琥珀の命も救えなかったな、桔梗の光も死に絶え四魂の玉は汚れで満ちたと嘲笑する奈落の声が響く。かごめの目に映る玉の中に桔梗の一点の光が見えない。拳で地を殴りつける犬夜叉。桔梗に続いて琥珀までも…かごめは涙を流して琥珀に詫びる。しかし琥珀の項に光が宿り、次第に膨らんでいく。心臓の鼓動が始まり、琥珀は目を覚ます。泣きはらした目を見張る珊瑚とかごめ。桔梗の光は欠片を離れ、琥珀の体に戻ったのだ。桔梗の遺志は奈落を滅することよりも琥珀を救うことを選んだのである。渦巻く黒雲の中で最後の欠片が四魂の玉に繋がり、真っ黒の玉が完成する…以下次号。
目の前でりんをさらわれたことを咎められ『言うなっ!』と逆ギレの邪見。主人に知られれば殺される、今の内に逃げようかと算段している矢先に背後に立たれりゃ腰を抜かすのも無理はない。『曲霊は生き残っていた…か…』の一言だけで弥勒と楓の問いには無言で去る殺生丸は、奈落がりんを人質にして自分の刀を使わせない気だと百も承知で平然として戦いに赴く…うーむ、つくづく凄い兄貴だ。
『どうして…!』と泣きじゃくる姉。物凄い歯軋りで『奈落は…奈落はどこにいる!』と激怒する犬夜叉。無敵の冥道残月破も空振りでは嘲笑されるばかりで、ここぞと『救えなかったな、琥珀一匹の命すら…』と挑発してくる奈落の憎々しげな態度はまさにラスボス。救えなかった…桔梗の時も…琥珀も…地を殴りつけ体を震わせる犬夜叉は確かに悔し涙を流していた。琥珀の復活に顔を上げた時に目尻を赤くしていましたからね。ここに兄とは異なる激情型の弟の本性がある。どんなにレベルアップしてもこの性格は変わっていません。だからこその主人公です。
奈落を滅するために戦い続けた桔梗の遺志は琥珀の命を選んだ。彼の成長を認め、犬夜叉達の仲間として共に生きよと。そして奈落を倒すことを皆に託したのです。天に還ってからも絶大な存在感を示すもう一人のヒロインは、私の想像以上に素晴らしいキャラでした(/_;)。真っ黒に汚れた玉は最後の欠片を取り込んで完成。妖怪達の邪念の集合体・曲霊もまた奈落に従わざるをえない。ラスボスは妖力を最大限に増幅させどんな最終形となるのか。弥勒も全快状態で参戦、ついに最終局面です
かごめ贔屓としては、今週は黒い玉をめがけ犬夜叉の一撃を導くべく涙目で放った矢、呆然と立ち尽くし、ごめんなさいと琥珀に詫びる泣き顔、『桔梗は…奈落を滅することより、琥珀くんの命を救うことを選んでくれた』の独白と感激のシーンが続きました。今週ページ柱の煽り文句とシンクロして締めます。…最後の戦いが、始まる!
週刊少年サンデー48号掲載・第528話「これから」
琥珀が突き刺したかごめの矢が、奈落の鎧甲にヒビを入れる。かごめは矢から光が四魂の玉に向かって流れ込むのを見た。琥珀の欠片の中の桔梗の光なのだ。奈落はこのままでは浄化の光に喰われると焦り、結界と体を自ら分解。琥珀は宙に投げ出され、奈落の頭部はかごめを甲殻で捕らえたまま逃亡を図る。跳躍した犬夜叉は金剛槍破で奈落の頭部を粉砕してかごめを救出したが、その隙に奈落の本体は黒雲の中に逃げ込む。珊瑚は崖に刀を突き刺してぶら下がる琥珀を発見。労いの言葉をかける姉に、生きていていいですかと問う弟。生きて乗り越えていくのだと手を取り合う姉弟。
楓の物置小屋では弥勒が起きあがっていた。体から立ち上って抜けていった禍々しい気のことを問う楓に、風穴で吸った曲霊の一部かもしれないと答える弥勒の体は、ウソのように気分がよくなっていた。邪見に説教されつつ並んで歩くりんも元の元気な顔に戻っていたが、その後ろ姿を黒い気が取り巻くと一陣の風とともに妖怪が出現し、りんはその背に乗って飛び去ってしまう。呆然とする邪見。
琥珀の一撃はかなり奈落にもこたえたと語る犬夜叉と、礼を述べるかごめに一緒に闘えたことを喜ぶ琥珀。自分の罪が消えたわけではないが、逃げずに向かい合ってこれから生きていく、と琥珀が独白した瞬間、奈落の崩れた触手の肉片がふわりと浮き上がり、一直線に飛んで琥珀の喉を背後から貫く。肉片は最後のかけらを奪って黒雲の中に飛び込み、一瞬の出来事に皆は呆然となる。倒れ伏した琥珀の名を叫んで駆け寄る珊瑚…以下次号。
闘鬼神でも鉄砕牙でも砕けなかった鎧甲は、桔梗が遺した浄化の光と琥珀の勇気によって破壊寸前まで追い詰められ、さしもの奈落も恐怖にかられて撤退に走らせた。奈落の体には本体という概念が存在しないようで、いわばいらない部分だらけらしい。その頭部を粉砕してかごめを抱き留めた犬夜叉、どうにか主人公の面目を維持。奈落が逃げ込んだ黒雲とは、瘴気の渦で作った根城なんでしょうか。『生きなくちゃいけないよ、琥珀』と語りかける珊瑚の表情は、見事に独り立ちした弟の成長を認める優しさに満ちています。
曲霊の残留思念が狙ったのは、弥勒ではなくてりんだったのか。邪念退治の修行を積んだ法師の体よりは、幼い少女の体の方が操りやすかったことと、殺生丸の力に対する怖れがりんを人質にする姑息さに表れたわけです。留守の間になにかあったら自分の立場が、とブツクサの邪見、こりゃまた次週は下手な弁明に終始するハメになりそう。犬夜叉、かごめ、珊瑚共に琥珀の心を讃える雰囲気の中、奈落の肉片が隙をついて最後の欠片を奪い取る…これから、という独白の先が言葉にならず、貫かれた軌道に喉元から血が連なるコマが衝撃的でした。馬鹿な…琥珀はこれで死んでしまうのか!?
かごめ贔屓としては、琥珀の気迫によって助けられたとはいえ、弓だけは離さなかったことにまず拍手。抱き留めて『ケガはねえか!?』の彼に『うん』と返す二人の顔は、以前の現代のかごめの部屋の時以上に接近しとりました(*^_^*)。しかし『ありがとう琥珀くん、おかげで助かったわ』の優しい目が、一瞬で暗転…最後の欠片を奪われたことに真っ先に気付いたヒロイン、親友の弟の命はもう救えないのか!? 四魂の玉を浄化消滅させる唯一の“正しい願い”とは、彼の命だと思ったのにっ…。
週刊少年サンデー47号掲載・第527話「なかった命」
捕まったかごめを巻き込む鉄砕牙の攻撃は封じられたが、珊瑚は飛来骨を構える。奈落はこれを見て自ら結界を解く。珊瑚は雲母に乗って奈落の右肩を飛来骨で粉砕したが、奈落は余裕の笑みで触手を延ばして珊瑚を突き落とす。慌ててその身を拾う犬夜叉。奈落の右肩の中には冥王獣の鎧甲があった。魍魎丸が取り込んでそれを再度奈落が吸収したこの鎧甲は以前殺生丸の闘鬼神も折り、鉄砕牙も通じない。体内の四魂の玉はこの鎧甲で防御され、無駄であるとわからせるために飛来骨を受けてやったと奈落は余裕綽々で語る。琥珀の最後の欠片を差し出さない限りかごめを殺すと脅迫する奈落。かごめの霊力を怖れる奈落は欠片を手に入れた瞬間にかごめを殺す気だと歯軋りする珊瑚と犬夜叉。
琥珀は奈落に捕まった際にかごめが落とした矢に気付く。矢身が光って見え、自らの首の欠片と呼応する。琥珀に向かう奈落の触手を犬夜叉が切断するが、奈落はかごめの体を吸収し始める。意識を取り戻したかごめが悲鳴をあげ、地に降り立った琥珀は自分の欠片を渡したらかごめを無事に返すと約束しろと怒鳴る。ニヤつきながら肯定する奈落。来てはダメだと叫ぶかごめ。奈落は甲殻触手で琥珀の体を捕らえ、どうせもともとなかった命だと言う。父親と仲間を自らの手で殺したあの日に心も体も死んだのだという奈落の言葉を、そのまま死んでいた方が楽だったと何度も思った、毎日死ぬことばかり考えていたと返す琥珀。しかし皆の生きて立ち向かえという言葉を独白し、琥珀は懐からかごめが落とした矢を取り出して奈落の右肩の鎧甲に全力で突き刺す…以下次号。
四魂の玉は冥王獣の鎧甲で防御されていたか。自らの心臓とは別に四魂の玉が急所にもなっているだけに、奈落は二重三重にガードしている。このあたりはさすが狡猾なラスボス。わざわざかごめを気付かせて、琥珀の欠片を渡さなければ吸い殺すと脅迫するあたりも憎々しいまでに念が入っている。琥珀は自ら身を差し出すものの『今、おれの欠片の中には桔梗さまの一点の光がある』。なかった命…毎日死ぬことばかり考えていたこの少年は、自らの意識を取り戻し、自らの罪に想像を絶する苦悩を重ねつつも、桔梗と出会い殺生丸に付き従い、姉と仲間の想いを受けて闇を振りはらった。『桔梗さまの光とかごめ様の矢はおれの手でつながっている! 奈落お前を倒す! おれは死なない!』入魂の破魔の矢の一撃は、奈落の鎧甲を突き破れるか。桔梗が仕掛けた爆弾を誘発させる光は四魂の玉まで届くのか。思わぬ攻撃に顔色を変えた奈落、今週のラストのコマは迫力満点でした。
かごめ贔屓としては、連載一回分をその体に一番触れてはならん奴に捕まったままというのが怒怒怒怒怒(>_<)。あげくの果てには吸い込むだとこの外道!!…けどその感触に気付いて『い、犬夜叉!』と叫んだ時の表情は連載初期の少女っぽい可愛さがあったりして思わず萌えてしまったお恥ずかしい。『来ちゃダメよ琥珀くん! 奈落が私を助けるはずはないわ! それに命をつなぐ四魂のかけらを取られたら、あなたは死んでしまうのよ!』の叫び声はヒロインの王道を行ってます。ラストのコマは主人公級の気迫を見せた琥珀と驚愕の奈落との3ショットになって鮮やかな名場面になりました。次週こそ奈落の汚らわしい体から離れ、お返しの一撃をくらわせてやれ!
週刊少年サンデー46号掲載・第526話「戻らない霊力」
奈落の触手が標的を殺生丸に変えて襲いかかるが、爆砕牙の一振りで全滅。投げ出された琥珀を珊瑚が救出し、殺生丸は曲霊に最後通告。これを見つめるかごめは曲霊が天生牙で滅せられれば自分の封印が解けると独白。なおも強がる曲霊を、殺生丸は誰に殺されるかを認識させるためだ、と天生牙を振るって両断する。消えゆく間際に曲霊は終わったと思うなと言葉を残す。はったりだと吐き捨てる犬夜叉だが、珊瑚は嫌な予感。楓の物置小屋で眠る弥勒の全身から毒気がわき出し始める。珊瑚が殺生丸に、弥勒が曲霊の一部を風穴で吸ったこととりんがその毒気で気絶していることを伝えると、殺生丸は踵を返して楓の村へ向かう。
犬夜叉達が後を追おうとした途端、奈落がかごめの背後に出現して腹部の甲殻手でその体を捕らえる。居所がわからなかったとは霊力が戻っていないようだなとニヤつく奈落に犬夜叉は激怒して刃を向けるが、かごめが捕まっていては手が出せない。背中からは無数の触手が伸びて琥珀を遅う。珊瑚が飛来骨で切り刻むが、そんなものは不要の部分で自分の体は無限だと奈落は余裕綽々。かごめは四魂の玉の気配を必死に探り、右肩だと叫んだ瞬間、甲殻手に首を絞められて気を失う。玉を見つける霊力は残っていたかと嘯く奈落の右肩に鉄砕牙を振り下ろす犬夜叉だが、結界ごと上に移動した奈落はかごめの命より琥珀の欠片を守るかと脅迫。犬夜叉と珊瑚が歯軋りする中、琥珀の欠片が脈打ち…以下次号。
『仕留めなかったのだ。貴様が誰に殺されるかはっきりとわからせるために。』…さすが兄上、誇りを傷つけられた相手には倍々返しの凄み。しかし曲霊の一部はよりによって弥勒の体内で復活する気かうざったい。ラスボス奈落の前座のくせにこのしぶとさは相当なものです。りんの危機を耳にした途端に飛び去る兄上、いやはやもう何も申すことはありませぬ。その殺生丸がいなくなったところで出てきてかごめを人質に取る奈落がこれまたラスボス面目躍如の狡猾さ。「いらない部分」など幾らでも出てくるこいつの体は、結局のところ物理攻撃では倒せない。やはり桔梗が仕掛けた爆弾を誘発させる光がどうしても必要なのです。手出しできずに犬夜叉が歯がみするところで琥珀の欠片に桔梗の光が何かを伝えようとしている。琥珀は身代わりになると自ら言い出してヒロインの解放を持ちかけるのでしょうか。しかし自ら欠片に触れられない奈落は、琥珀の身柄だけで素直に退くかどうか。
かごめ贔屓としては、今週はその体に一番触れてはならん奴が触れたことで怒怒怒(>_<)。不覚とはいえ密着されたら矢も撃てない。しかし玉の気配だけは見抜く精神力がある。『犬夜叉! 珊瑚ちゃん! 四魂の玉は奈落の右肩に…』この懸命の言葉と表情が今回の見せ場でしたが、琥珀に身代わりになられるのは悔しい。反撃の機会を切望です。
週刊少年サンデー45号掲載・第525話「解放」
かごめは琥珀の欠片に戻った桔梗の光を認識。姉と呼び合う琥珀に、曲霊はなぜ心が壊れなかったと悔しがる。かごめが桔梗の浄めの術が効いているのだと指摘し、琥珀はその光が過去から今に自分を連れ戻してくれたと自覚する。珊瑚に今からでも間に合いますかと問い掛け、頷いた姉に、琥珀は曲霊を道連れに飛び降りると言い出す。たとえ体が砕け散っても、欠片を取り巻く肉片を操ることなどたやすいと嘯く曲霊。しかし琥珀は臆することなく、お前が逃げる前に姉と仲間が欠片を取ると叫んで触手と貸した鎖鎌から手を離す。落下する琥珀の体から徐々に押し出されていく曲霊。あわてて雲母で琥珀の体を追う珊瑚。琥珀の欠片に残った桔梗の光が力を与え、曲霊は追い出される。
崖に飛び移って駆け下りる犬夜叉を奈落の巨大な触手が追い越して再度琥珀の足を捕らえる。触手を斬ってと叫ぶ琥珀。触手の出所である黒雲を見上げた犬夜叉は、この場で仕留めるべく黒の鉄砕牙で冥道残月破を飛ばす。雲に真円の大穴が空き、斬られた触手が落下。しかしかごめは汚れた四魂の玉の気配がまだ充満していることを感じ取り、奈落は生きていてまだここにいると犬夜叉に告げる。琥珀を捕らえた触手の他に新手の触手が犬夜叉と珊瑚を攻撃。琥珀の体に再度近づいて貴様らの負けだと曲霊が口走った瞬間、背後から飛び込んできた殺生丸の天生牙が一閃して曲霊を斬る…以下次号。
桔梗の光は珊瑚の姿を借りて琥珀の心を現実に呼び戻す。目覚めた琥珀は武器がなくとも自らの意志によって啖呵を切る。『まわりを見ろ曲霊。お前が逃げおおせる前に、犬夜叉さまと姉上が欠片を取る。絶対にお前の手には入らない!!』この覚悟が身投げの落下で曲霊を追い出していく。逃がすかとばかりに触手で琥珀を捕らえた奈落の触手。犬夜叉はついに兄から譲り受けた冥道残月破を行使。これをくらえば冥界から戻る術は鉄砕牙と天生牙以外に存在しない…はずですが奈落もさるもので黒雲の中にはいなかった。この場にまだ姿を現していないラスボスはどこから触手を操っているのか。思念体である曲霊に玉は持てない。琥珀の欠片を除く四魂の玉のほとんどを持っている以上、姿を現すことなしに玉を完成させることはできないはず。神速でUターンしてきた殺生丸が天生牙で曲霊の顔面を両断した。さあ出てこい奈落。今後こそラストバトルだ!
かごめ贔屓としては、今週は見開きカラーで久々に緑色のセーラー服を拝めました。『曲霊! あんた桔梗の浄めの術は自分には効かないと言っていたけど…少しは効いてるみたいね!』は亡き桔梗へのリスペクト。『犬夜叉気をつけて! 奈落は生きてる! まだここにいる!』は彼への必死の警告。兄上の手で曲霊が斬られ、ヒロインの浄化の力が戻るか。梓山の弓の真価が発揮される時が来た。光の矢で奈落を貫け、かごめ!
週刊少年サンデー44号掲載・第524話「目覚め」
犬夜叉は琥珀に目を覚ませと怒鳴るが、曲霊は汚れた四魂の欠片が琥珀の心にひたすらあの悪夢の日…奈落に操られて父と仲間を殺した大罪を反復して体験させ続けているのだと告げる。しかも眠っていた間はその繰り返しで、琥珀の心は壊れかけているというのだ。琥珀の目からは血の涙がにじみ出し、かごめは顔を歪める、しかしこの場に雲母で駆けつけた珊瑚は、それでも目を覚ませ、今闘えと叱咤する。上空の黒雲から伸びてくる触手の元に一つの光を見たかごめは、桔梗が四魂の玉に残して琥珀の最後の欠片を浄化する光だと気付く。しかし触手の先が琥珀の首に触れても浄化されず、斬ってとかごめが叫ぶと珊瑚が飛来骨で切断。犬夜叉は自分の身を阻む曲霊の触手を引きちぎって黒雲に金剛槍破を飛ばすが、琥珀の口を使って曲霊は桔梗の術が奈落にしか効かずわしには効かないと勝ち誇る。曲霊が汚した欠片が奈落の持つ玉と一つになれば、桔梗の残した一点の光は曲霊の闇で塗り潰されるという言葉に、桔梗が負けるわけがないと叫ぶかごめ。琥珀にしっかりしろと怒鳴る珊瑚。
琥珀の心の中では、自分が殺した父と仲間の無惨な姿に泣き崩れ、闇の中で苦しむ琥珀が怖い、助けてと繰り返していた。弱い光が浮かび上がり、ふらふらとそこへ寄ると眠る弥勒の元に寄り添う姉がいた。無事だったのかと安心しかけたが、やはりまたしても自分が鎌で姉に深手を負わせ、弥勒もまた自分を救おうとして毒を吸い込み倒れたことが頭に入り込んでくる。姉が想いを寄せる弥勒にまで自分が…しかしその珊瑚がこの男と私を助けてと声をかける。おれにできるのと問いかける琥珀。できるよ、間に合うよと答える姉…琥珀の目が開き、自分の名を呼び続ける現実の姉の姿が見えてくる。曲霊は何を見たと戸惑う。琥珀の首の欠片にわずかな光が射すのを見たかごめは…以下次号。
琥珀の心の中で戦う闇と光。心優しい少年が初めて退治屋の実戦に出向いた日に起こった悪夢を永遠に繰り返して見せ続け、心を壊そうとする曲霊の闇に、姉との絆・人間の持つ誇りと希望を示し、心を守ろうとする桔梗の浄化の光が立ち向かう。唸らせる展開です。この作品が描くテーマは実に多種多様なのですが、琥珀の心の中に現れた珊瑚の『できるよ、間に合うよ琥珀』と話す表情がジーンとさせます。自らの罪から目を逸らさずに向き合い、自分の意志で先へ進もうとする勇気を呼び覚ます。それこそが琥珀の目覚めであり、曲霊のドス黒さに対抗する力なのです。奈落は桔梗が仕掛けた“爆弾”によって触れられない最後の四魂の欠片を手に入れるために曲霊を呼び出し、曲霊は黒い四魂の玉を完成させて自らの闇ですべてを塗りつぶそうとしているわけか。人間をナメるなよ曲霊。自らの欲望や浅ましさに溺れ、闇に染まりきる連中ばかりではないのだ。人と妖怪の間に生まれた半妖なればこそ、犬夜叉は人の弱さにつけ込む者共への怒りをパワーに変える主人公。琥珀もまたこれまでの経緯で戦士として立派に独り立ちしているはず。優しさは弱さじゃない。邪悪な者に立ち向かう強さなのだ。姉の叱咤のとおりに、曲霊の思惑を打ち砕き、闘え琥珀! お前は負けない!
かごめ贔屓としては、今週は琥珀の血の涙を見た時の苦悩の顔と『桔梗が負ける…!? そんなわけないわ!』と叫んだ表情でしょう。優しさは弱さではなく強さであることを示すヒロインが、琥珀の目覚めとともに欠片に一点の光を見いだす。曲霊によって封じられた潜在力は、桔梗の遺した光を増幅する形で必ず覚醒するはずです。
週刊少年サンデー43号掲載・第523話「珊瑚の願い」
犬夜叉に背負われて琥珀を追うかごめは、琥珀の四魂の欠片が曲霊の憑依のために真っ黒に汚れていると話す。殺生丸と対峙する白夜は最後の欠片が奈落の元に向かっていると語るが、足止めのため包囲した数千の妖怪達は爆砕牙一閃で瞬殺される。楓の村では半壊した家を村人が取り巻き、珊瑚は肩の傷の痛みに耐えつつ戦闘服に着替える。楓と村人らのところに逃れていた七宝は弥勒の身を気遣う。悪霊の毒で倒れた弥勒は物置小屋に移されていたが、りんもまた曲霊の毒気に触れたために気絶したままで、邪見は主人の怒りを怖れてビクビクの心境。楓は弥勒の状態を薬老毒仙の薬によって苦しんではいないが眠ったままだと語る。珊瑚は弥勒が苦痛を感じていれば風穴が裂け始めるまで戦うことにはならなかったと辛い表情を見せつつも、琥珀の欠片を取るために必ず姿を現す奈落を倒せば風穴は消せると決意を示す。珊瑚の望みでりんを抱えて小屋を出た楓は、邪見にぶつくさ言われながらも悪霊祓いの薬湯を作ってやろうと話す。珊瑚は自分と弟のために命を削ってきた弥勒に、涙を流しつつ接吻。
配下の妖怪の背に乗って進む琥珀の上空に黒雲が現れ、犬夜叉は奈落の臭いだと叫ぶ。雲の中から出てきた触手が琥珀に近づこうとすると、犬夜叉は金剛槍破で琥珀を乗せた妖怪の体を粉砕。落ちかけた琥珀だが、その体を操る曲霊は鎖鎌を伸縮自在の触手に変えて攻撃してくる。欠片を取り戻したいならその入れ物であるこの体を粉々にしてみろ、と琥珀の口を借りて嘯く曲霊に犬夜叉は歯軋り。かごめは汚された欠片を浄化すれば琥珀は目を覚ますと考えて矢を放つが、届く前に砕かれる。琥珀の背後に浮かび上がる曲霊のもやけた目が、貴様の霊力は封じていると勝ち誇る。破魔の矢の力も封じられていたことに愕然とするかごめ。琥珀の体は奈落の触手にどんどん接近。四魂の玉は黒く汚されて完成するのか。犬夜叉はなんとしても阻止しようと踏み出すが…以下次号。
白夜も殺生丸の最終進化については知らなかったために、千匹単位の妖怪瞬殺に唖然。しかし居合い抜きの要領により右腕で爆砕牙を振るった殺生丸、利き腕はやはり右なんでしょうか。私的には爆砕牙は復元した左腕の化身であってほしいという気もしたりして。弥勒の覚悟のほどを知った珊瑚は、彼を救うためにも奈落を倒すしかないと健気に語る。婚約者を想う娘の顔と、戦う退治屋の顔がどちらも秀逸です。『なんでわしらまで追い出されにゃならんのだっ』って邪見、無粋なことを言うでない。珊瑚が弥勒の唇を奪…いやいや、神聖な誓いの口づけを交わすためなのだ。弥勒のことだから眠りつつもきっとこの感触を覚えているでしょう。ここ一番で必ずキーポイントとなる働きをしてくれるはず。主人公の盟友はそれでなくては。
半妖と見下す割には奈落の四魂の玉の完成にしっかりと協力している形の曲霊。何らかの密約でもあるのか、それとも玉が完成すればすべて思いのままにできるという狙いがあるのか。この世で実体を持たない曲霊は何が目的なんでしょうか。癪に触るのはいちいち琥珀の武器と体と口を使って反撃してくることで、犬夜叉らが琥珀の身に手出しできないことを承知のうえで挑発。かくなるうえは奈落の触手を片っ端から切断するしか玉の完成を阻止する手段はない。兄が戻ってくるまで鉄砕牙を振りまくれ犬夜叉!
かごめ贔屓としては、今週は琥珀を救うべく撃った破魔の矢も瞬間に出る霊力を封じられていたのでは効果なしとあってこれは悔しい。曲霊がやりたい放題の中で、直霊は何をやっているんだと言いたくなりますが他力本願じゃいけないよなあ。犬夜叉が必死に奈落と斬り合っている間に、ヒロインの仲間への想いが潜在力を呼び覚ますのを期待します。きっかけは邪悪なるものへの怒りの心。四魂の玉を浄化する唯一の“正しい願い”とは、おそらく大切な者の命を救うこと。
週刊少年サンデー42号掲載・第522話「憑依」
珊瑚は琥珀に憑依した曲霊に奈落のところに行く気かと叫ぶ。用が済んだら亡骸でこの体を返してやるとせせら笑う曲霊は、四魂の欠片で命を繋ぐ琥珀の身の上に気付いていた。ここで阻止しなければと感じた珊瑚だが、小屋の屋根を突き破って妖怪達が飛び込んでくる。これに乗った琥珀を前に右手の封印を解く弥勒。小僧を吸い殺す気かとニヤつく曲霊に、吸われるのは貴様だけだと琥珀の体を脇に抱えて風穴を開く弥勒。しかし抱え込んだ琥珀の口が無駄だと言い、風穴の縁がピシと音を立てる。弥勒は咄嗟に封印を戻すが、琥珀の首の欠片の中から再び曲霊が湧き出てくる。お前は人が吸ってはならない悪霊の毒を吸ったと琥珀の口を借りて語る曲霊。歯軋りする弥勒は吐血。曲霊は琥珀の鎖鎌を変化させて珊瑚を攻撃。飛来骨で跳ね返すものの、触手と貸した鎌は反転して珊瑚の脇腹を突く。邪見が戻れと叫ぶのを聞かず、やめてと叫んで駆け寄ったりんは琥珀の背後に浮かぶ曲霊に触れて気を失い、曲霊はそのまま琥珀の体を妖怪の背に乗せて飛び去る。
骨喰いの井戸の脇に立つ犬夜叉とかごめは、様子がおかしいことに気付く。犬夜叉の鼻には血と毒の臭いが楓の家から来るのを察する。駆けつけてみると楓の家は半壊し、弥勒も珊瑚も倒れていた。詫びる弥勒の上半身は、瘴気の傷が胸にまで達していた。亡き桔梗が語った、傷が心臓に達した時に弥勒の命は尽きるという言葉…やりすぎたらしいと自嘲する弥勒の右手からは風の音が次第に大きくなり、珊瑚とかごめの耳にも聞こえていた。瘴気の傷が心臓に達するのと風穴が裂けるのとどちらが先なのか。弥勒の命はもう長くもたない。白夜が作り出した偽の曲霊と対峙する殺生丸は、眼前の様子を怪しんで折鶴に乗った白夜を攻撃。砕けた瓢箪の中には曲霊の肉片が入っていた。前の戦いで逃げ切れなかった魂の臭いがしみついていたこの肉片が、白夜の幻術によって幻を作っていたのだ。からくりを悟った殺生丸は…以下次号。
曲霊は妖怪達を操って琥珀の体ごと四魂の欠片を奪う手に出た。弥勒は琥珀の体を庇いつつ曲霊だけを風穴で葬ろうとするものの、薬老毒仙の薬で痛みを感じなくなった体は、既に瘴気の傷を右胸の深くまで延ばしていた。それに加えて悪霊の毒を吸えば進行がますます加速してしまううえに、風穴そのものまでも裂けかけている…土壇場に来て二重の危機が弥勒の身に迫る。彼を助けるには、曲霊よりも奈落を滅する以外にない。珊瑚とかごめもこれに気付いた今、主人公の肩に盟友の命もかかってきました。地味ですが『戻れりんっ! それは琥珀ではないっ! 琥珀の体を借りた曲霊…』と必死にりんを止めようとする邪見にも、すっかり保護者役がなじんでいます。今週は七宝の姿がありませんでしたが、邪見もまた傍観者で終わるのではなく、この二人も最終決戦ではそれぞれ奮闘してほしいところ。弥勒がこのまま戦闘不能で離脱するのは個人的にも悔しいので、彼の生き様と意地にももう一踏ん張りをつい求めてしまいます。過酷な読者だなあ(>_<)。
兄の方は白夜の幻術を察したものの、効きすぎる鼻が肉片のかすかな臭いに騙されていたとは大屈辱。ラストのコマでの殺生丸の表情は、本物の曲霊の狙いを悟って不覚の色が満面に出ています。こうなれば神速リターンと最終戦なだれ込みしかなさそうだ。次に爆砕牙が唸るのは、連載第何話目でしょうか。
かごめ贔屓としては、受験を終えて戻ってくるなり修羅場に遭遇。タイミング的にも物語の流れ的にも、今度という今度はラストバトルと思われます。半妖の主人公と出会い、様々な出来事と戦いを経て今に至ったヒロインの存在感と真の力は、この時代でできた大切な仲間を救い、何百年にも渡る四魂の玉を巡る因果に決着をつけて浄化することができるでしょうか。それが“加護女”の役目を担う、現代での普通の中学生なのです。
週刊少年サンデー41号掲載・第521話「影」
骨喰いの井戸を覗いてかごめの帰りを待つ七宝。依然として飲まず食わずで眠り続ける琥珀に邪見でさえ呆れ顔。見守る珊瑚は、目覚めなくても離れているより心が安まる感覚を皮肉に思う。外では弥勒が村童達に「女」の字を含む文字を教えていたが、空に現れた妖怪集団の黒い影が地を這う。童達を逃がして戦闘態勢に入る弥勒。これは曲霊か奈落の手先か。
その曲霊の臭いを嗅ぎつけた殺生丸の前に白夜が登場。左腕が蘇生していることを不思議がる白夜に失せろと一言の殺生丸だが、背後には曲霊の巨大な顔が浮かぶ。咄嗟に天生牙を抜いて横薙ぎにしたが斬れない。俺が作った幻を相手に存分闘うがいいとほくそ笑む白夜。襲いかかる妖怪集団を風穴で迎撃する弥勒。弥勒の傷の広がりを案ずる珊瑚が飛び出してきて飛来骨で援護。しかし倒したはずの妖怪らが地に作る影が消えない。妖しげな風が楓の住居に吹くのを感じた弥勒は、妖怪どもは目くらましだと叫んで駆け寄る。屋内にいたりんが地面がおかしいと口に出すと、曲霊の巨大な顔が現れて琥珀に憑依し、その体を立ち上がらせる。駆け込んだ弥勒と珊瑚が体を乗っ取られたのかと叫ぶと、琥珀の口を借りた曲霊が得意気に語る。殺生丸に斬られた傷が癒えるまで時間がかかったが、この小僧の最後の欠片で四魂の玉は完成すると…以下次号。
琥珀がこれだけ長く側にいるのは久しぶりだと感じる珊瑚。思えば初めて妖怪退治に参加して奈落に操られ、父と仲間を殺めてしまい姉との仲を引き裂かれたあの日から、作中では半年以上くらいが過ぎたでしょう。村童に教える文字は娘、姫、姉、妹、嫁…女のことばっかと指摘される弥勒、十日も村に釘付けだと色々溜まるものがあるのか(^^;)。しかし敵が現れれば即座に戦闘モードにシフトするあたりは流石。
左腕を復活させて単独行動の殺生丸を白夜が挑発。曲霊の幻を作り出すことなど無幻の異名をとるこいつには造作もないわけか。臭いまで再現できるあたりがふてぶてしい。殺生丸のことだからこれは囮だとすぐ気付くでしょうが、本物の曲霊は妖怪群の影で弥勒と珊瑚を誘い出し、琥珀に憑依する狡猾さ。前々回に書いた「四魂の玉の起源である木乃伊の復活で体を得る」なんて私の予想よりずっとストレートだった。琥珀の体を動かせば皆は手を出せない。このまま四魂の玉を完成させるのが目的か。さあ弥勒はどうする。琥珀の体を傷付けずに曲霊を足止めする手段はあるのか?
かごめ贔屓としては、不在であっても物語の鍵を握る存在であることを改めて実感。次週は弥勒の知能と曲霊の鍔迫り合いでしょうが、珊瑚と琥珀の姉弟の絆にも注目します。どのタイミングで主人公とヒロインが飛び込んでくるか、今度こそクライマックス編に突入するか大河ロマン!
週刊少年サンデー40号掲載・第520話「人生の一大事」
番号337の受験票、筆記用具、参考書を確認するかごめ。今日は高校受験当日。家族に見送られて自宅を出る。戦国では十日が経過し、琥珀は眠ったままであったが弥勒らの理解で現代に戻っていたかごめは、珍しく邪魔しに来なかった犬夜叉のことを不思議に思いつつも駅で待つ友人達の元へ。その犬夜叉は十日の約束だとかごめの家族の所に現れ、今日はかごめの人生の一大事だという祖父の言葉を聞きもせずに飛び出す。快速電車に乗車しかけた背後の頭上からいきなり帰るぞと声をかけた犬夜叉をおすわりで潰し、彼氏ではないのかと言う友人に幻覚だと強弁するかごめは、妖怪退治と追試や補修の繰り返しだった苦難の日々を思い起こし、今日だけは邪魔させないと決意する。しかし犬夜叉は電車の屋根に乗って追いかける。
ラッシュの最中で降車した際、手にしたリュックがスシ詰め状態の人並みに引っ張られてかごめの眼前で手から離れ、そのままドアが閉じて発車されてしまう。中には受験票が…真っ青になって震えるかごめを、駅員に連絡してと必死に諭す友人達。その様子を後ろから伺う犬夜叉に気付くと、背中に飛び乗って電車を追いかけてと叫ぶかごめ。飛ぶように走る彼氏だとあっけにとられる友人達を残し、命より大切なものを取り戻すのだとかごめがわめき、盗られたのかと応ずる犬夜叉が走る。次の駅で停車したところで鉄砕牙を抜いた犬夜叉を再びおすわりで潰して車内に飛び込み、自分のバックを知りませんかと必死に叫ぶかごめ。怒って顔を上げた犬夜叉の鼻がひくつき、ホームの路面を嗅ぎ回る。発車ベルが鳴る中、懸命に車両の中を探すかごめは背後から犬夜叉に引き出され、電車はそのまま発車。なぜ降ろすんだとわめくと、リュックを持った犬夜叉が立っていて匂いがしたと一言。長い息をしてリュックを抱いたかごめは、涙ぐんで犬夜叉に抱きつく。高校の前でリュックの中から受験票を出そうとすると肝心のそれが入っていない。またまた大ショックで闇の中に落ちそうになった時、母が現れて机の上に置き忘れていた受験票を差し出す。大波に揺られたようなドタバタを経て、かごめはようやく受験会場へ入る。犬夜叉の耳を今頃マフラーで隠すかごめの母…以下次号。
いやいや今週はサプライズだらけでした。かごめの高校受験が連載中に描かれたことにまず驚いた。十日間も眠ったままという琥珀に驚いた。「妖怪。追試。妖怪。補修。」というかごめの回想に笑いながらも驚いた。電車が猛スピードで走る現代に戸惑いもせずに順応している犬夜叉に驚いた。リュックを電車内に奪われた時の茫然自失のかごめの表情とリアクションに驚いた。ラッシュ時の猛烈な人波の中で、かごめのリュックの匂いを嗅ぎ分けた犬夜叉の鼻に驚いた。そのリュックの中にあれだけ大騒ぎした受験票を入れ忘れていたかごめにも驚いた。慌てず騒がず、おっとりとしつつ犬夜叉の耳を隠しましょうかと言う母にも驚いた。
人生の一大事の日にこれだけトラブルが続くと普通は受験できる精神状態が保てないでしょうけど(^^;)、そこはそれ、妖怪軍団と生死の境で接し続けてきたヒロインにとっては耐性もできてるということですか。必死に記憶した公式とか英単語とか歴史年号とか、ぶっ飛んでないかと心配するのは杞憂かな。ホームで潰された犬夜叉の『何見てんだ!』に『ガラの悪いコスプレイヤーだ』と呟いて目をそむけるサラリーマンと学生に笑った。でもこのコスプレイヤー、超人的な身体能力を持ってるから半端じゃない。娘一人背負って快速電車を走って追いかけるという、ドーピング五輪選手も真っ青な離れ技。今の鉄砕牙は現代の鉄だって簡単に斬れそうで怖い。『斬らない! おすわりっ!』は必要最小限の叫び声。なんだかんだいって、最終頁の煽り文句にもありますが、ヒロインがピンチの時は必ず助けてくれる主人公。『ありがとうっ!犬夜叉がいてくれて本当に良かった!』『お…おう。やっとわかったか』…コミカルに笑わせながらも小さな感動を与えてくれる手法は、やっぱりちょっと他の漫画家には真似できない技術です。母の登場で九死に一生のかごめ、『なんか知らねえが、がんばって行ってこい』『うんっ』で遂に高校受験。物語は確実に現代での節目を終えました。合格発表日まで描かれることはないでしょう。曲霊と奈落一派との最終戦は、おそらくかごめが高校生になる前に終わります。って、それも彼女が戦国を去って現代に戻ればの話ですが…今週もまた、ヒロインがごく普通の現代の娘であることがさりげに強調されたエピソードだったのです。
週刊少年サンデー39号掲載・第519話「曲霊の影」
高校の合格発表の場に立つかごめ。友人達に促され、掲示されている合格者の受験番号の中に自分の番号を探すが見当たらない。落ちたというショックで悲鳴をあげて起きあがると、驚いた顔の犬夜叉と楓達が見つめていた。曲霊に睨まれて気を失ったことを覚えているかと弥勒に問われ、かごめはやっと状況を思い出す。すぐ側ではやはり気絶したままの琥珀が珊瑚の膝枕を借りていた。まだ目を覚まさないと聞いて浄化しようと乗り出すかごめ。弥勒と犬夜叉は曲霊が琥珀の四魂の欠片を汚すことができた理由を議論。桔梗が四魂の玉の中に残した一点の光が琥珀の欠片に触れることで増幅し、奈落の体では触れられないという仕掛けは、曲霊が奈落の体を使っている以上有効だったはず…しかし楓は、姉である桔梗が残した浄化力が敵である奈落に念を集中させていたため、奈落以外には効かないのだと語る。面倒な敵だと呟く弥勒に、今度来たら斬ると強がる犬夜叉。かごめは琥珀の首に手をかざしていたが、以前のように浄化ができずショックを受ける。皆が戸惑い、犬夜叉は曲霊がかごめの力を封じたのかと独白。
楓の家の外では刀々斎が殺生丸に爆砕牙の鞘を作って手渡していた。殺生丸は刀を鞘に収めるとそのまま立ち去ろうとする。飛び出してきたりんが、琥珀が目を覚まさないから待ってほしいと懇願するが、琥珀もりんも置いていくとの答えが返ってくる。嫌だとすねるりんを戸惑いつつも叱りつける邪見だったが、殺生丸の次の言葉は邪見もここに残れ、だった。犬夜叉は曲霊を追うのかと問いかける。私の獲物だと呟き、その臭いは覚えた、必ず仕留めると独白して殺生丸は一人飛び立つ。この世のものでない曲霊を斬れるのは殺生丸だけだと助言する刀々斎。りんは邪見も残されたことでいつもの留守番だと安堵する。弥勒は改めて、曲霊が四魂の玉の邪な部分であり、かごめの浄化の力を封印した元凶だと語る。かごめの封印は、殺生丸が曲霊を斬ることで解けると期待するしかないのか。無力感で落ち込むかごめを励ます犬夜叉は、それだけ奈落や曲霊がお前を怖がっているんだと話す。一方、白夜は曲霊が戻ってこないと呟く。貸した体はすべて死んだが、曲霊が次にやることは想像がつくと余裕の奈落…以下次号。
一行は楓の村へ撤退。桔梗の仕掛けが奈落の本体にのみ有効となると、それを見抜いた奈落が四魂の玉から曲霊を呼び出した可能性がある。しかもかごめの浄化力は封じられ、当面琥珀は動けない。形勢は犬夜叉達に不利になってます。殺生丸は単身で曲霊を仕留めるため発つ。本体が霊魂である曲霊は殺生丸にしか斬れない…真の大妖怪として覚醒した彼に縋るしかない犬夜叉一行ですが、りんも邪見も人里に預ける殺生丸の姿勢には大きな変化がある。『もともと殺生丸さまは闘いに生きるおかた。むしろ今まできさまらガキどもを連れ歩いていたことの方がおかしいのだっ!』と邪見。その直後に『やだっ、一緒に行くっ!』とりんと同じセリフを吐くところが笑える。楓にも小妖怪と呼ばれて『邪見さまと呼べっ!』が彼なりのプライドか。
奈落が想像がつくという曲霊の次の行動。この世で行動するには体が必要なので、爆砕牙で壊された奈落からの借り物に代わるものとなるとやはり、四魂の玉の誕生元・翠子と妖怪群のあの木乃伊か。曲霊は四魂の玉の中に封じられていた妖怪達の邪念ですから、いわばそれは先祖還り。そうなると翠子の体はどうなるのでしょう。巫女と妖怪の壮絶な闘いは、決着に向けて動き出すのか。
さてかごめ贔屓としては、正直浄化能力を失った程度で異変と煽らないでくれという気分ながらも、見る悪夢があくまで受験の不合格という「現代人の次元」で描かれているところに安堵してたりします。このヒロインはこの作品の中で極めて重要な位置を占めているのですが、一方で“境界人”というか普通の現代人の側面を失いません。一部にそれを批判する読者もいますがそれは筋違いでしょう。『私…くやしい。なにもできなくて…』という普通の感覚こそがかごめの魅力。たとえその肩に数百年間にわたる巫女の重い宿命が背負わされようとも、普通の娘の普通の優しさと怒りの感情で受け止めてほしいと思います。それがおそらく、現代で育ったヒロインが半妖の主人公と出会った意味なのです。
週刊少年サンデー38号掲載・第518話「爆砕牙」
無数の妖怪の体の塊を内側から切り裂いた光に、曲霊が操る頭部は戸惑う。起きあがって左腕から放たれ続ける光に脈打つ感覚を覚える殺生丸。上空には雲とともに刀々斎が姿を現す。曲霊が妖怪の胴体を動かし再度攻撃するが、殺生丸の左腕の光が一閃して胴体を切り裂く。光の中に浮かび上がったのは失っていた左腕と、それに握られた新たな刀だった。お前自身の刀、爆砕牙だと呟く刀々斎。殺生丸を囲んでいた妖怪群の胴体がボトボトと落下する。いくら斬り刻んでも無駄だと嘯く曲霊は、新たな妖怪群をそこに集めて残骸を再生しようとするが、無傷の妖怪達の胴体もまた砕けていく。斬った後も効果が続き、触れた体にその効果が移る…爆砕牙で斬られた妖怪を吸収すれば奈落の体も打撃を受けるのかと独白する弥勒。とんだ余興に付き合わされたと悔しがる曲霊の頭部だが、所詮は借り物で痛くも痒くもないと言い終わらない内に殺生丸の左腕が一閃して打ち砕かれる。ざまをみろと勝ち誇る邪見。犬夜叉は曲霊の本体の気配を探るが、逃げ去ったことを殺生丸は嗅ぎとっていた。
地に降り立った刀々斎は爆砕牙の刀身を眺めながら語る。殺生丸は元々自分の中に刀を持っていたが、それを手にするには真の大妖怪として独り立ちする必要があった。それは父の形見・鉄砕牙への未練を断ち切ること…鉄砕牙を奪おうとして左腕を失ったが、今真の己の刀とともに新しい腕を得た。それが父を越え、鉄砕牙から解放された証だったのだ。黙って聞き入る殺生丸と犬夜叉。気を失っていたかごめが目を覚ますが…以下次号。
殺生丸のサイコガン、その名は爆砕牙。斬られた敵の体は再生不能となり触れたら最後破砕が伝播する。これほどの威力だからこそ、冷酷だった性格を変え、自分以外の者のために怒り、大切な者を失う悲しみと怖れを知り、冥道残月破を弟に譲り、自分以外の者のために身を投げ出す心を持った時に初めて発動し、覚醒したのです。思えば人間の血が混じっている半妖の犬夜叉でも、重症の傷が数日で治ってしまう回復力を持っている。妖刀の鉄砕牙とはいえ、完全な妖怪である殺生丸の斬り落とされた左腕がこれほど長い間復元しなかったのも、兄が父の形見・鉄砕牙への未練を断ち切るための試練だったのでしょう。なんと深い設定であることか。『私の刀…爆砕牙』と呟き、新しい左手を見つめる殺生丸は、なんともいえない穏やかな目をしています。長かった闘いと葛藤の末に悟った真の大妖怪の器。『昔から立派に独り立ちしておられたわいっ!』とわめく邪見はこの際おいといて(^^;)、もう彼は犬夜叉に対しても複雑な感情を抱くことはないでしょう。和解することまではなくとも、それぞれの道を認め、歩んでいけるはずです。
刀々斎が爆砕牙という名を知っていたことからすれば、この刀もまた彼が打ち出したのでしょうか。個人的にはそうであってほしくはありません。爆砕牙とは殺生丸の絶大な潜在妖力が、彼の体内で刀というイメージで具現化したものだと解釈したいですね。左腕には無敵の抹殺力を持ち、右腕には命を繋ぐ慈悲の蘇生力を持つ大妖怪。うーん、こりゃ主人公が務まるキャラですよ。連載終了後も殺生丸外伝描いてほしいくらいだ。さてこの偉大な兄も最終進化を終え、ケリをつけるべき標的は奈落か曲霊か。
かごめ贔屓としては、今週は最後のコマでお目覚めも柱の「次週、かごめに異変が」の煽り文句が気がかりです。まさか記憶を奪われてたりしないよな(>_<)? 曲霊が外に出てきたのなら、対極の存在である直霊がヒロインを依り代として選ぶことは大いにありえるのですが、さて…。
週刊少年サンデー36&37合併号掲載・第517話「曲霊の本体」
犬夜叉の戻れという叫び声に耳をかさず、殺生丸は曲霊の頭部目がけて突進。その鼻は奈落とかすかに違う邪悪な魂の臭いをとらえていた。天生牙を抜いた殺生丸に邪見はなぜと口走るが、横薙ぎに空を払った剣は別の顔を浮かび上がらせる。曲霊は四魂の玉に封じ込まれていた妖怪の霊魂でありこの世のものではないと叫ぶ弥勒。曲霊の頭部は歯軋りすると殺生丸の前に無数の奈落の体を集めて本体である霊魂をガード。天生牙は奈落の体を斬れず、殺生丸は曲霊が動かす鋭い触手によって胸を貫かれてしまう。声にならない叫びをあげる犬夜叉。悲鳴をあげるりんと邪見。もう一度言う、おまえは弱いとニヤついた曲霊は、無数の妖怪の胴でそのままに殺生丸の体を巻き込み、音を立てて締め込んでいく。雲母の背を借りて飛び込んだ犬夜叉は鉄砕牙で曲霊の頭部を真っ二つにすると、妖怪の胴体に飛び乗り懸命に砕こうとする。兄の名を怒鳴り、死んだら許さないと叫ぶ犬夜叉。負けると分かっていても闘って死を選ばれたのだ、と涙ぐむ邪見。
復元した曲霊は犬夜叉の体の周囲にも触手を伸ばす。抵抗する犬夜叉に、中の奴なら粉々になっても奈落の体の一部として甦る、とせせら笑う曲霊。激怒する犬夜叉の手足は触手に捕まるが、妖怪の胴体が内側から裂け、凄まじい光が放たれる。稲妻のように散る火花の中から殺生丸の体が浮かび上がる。光はその左腕から発せられて…以下次号。
弟よりもきく鼻を持つ兄は、曲霊の本体を嗅ぎわけていた。さすがの発想でこの世のものでない魂を斬る殺生丸でしたが、苦し紛れのガードには無念にも歯が立たない。言葉を発している頭部はまやかしで、曲霊の本体はやはり霊魂であり思念体。殺生丸が胸を貫かれた時の犬夜叉の表情は壮絶です。横薙ぎに曲霊の頭部を斬り払うと、『殺生丸てめえ…こんなことでくたばりやがったら承知しねえぞ!』とわめきつつ何度も何度も鉄砕牙を振り下ろすその姿には、まぎれもない彼の本心が表れています。死んだ妖怪は奈落の体の一部になると嘯く曲霊の憎々しげな面は、借り物で闘う悪役の汚さまみれ。『てめえ…なめるな!』と叫んだ弟の言葉は、兄貴が貴様や奈落に屈するものかという怒りと誇りそのものです。
遂に覚醒した殺生丸自身の武器。今週ラストのコマを見た時、私はあの名作をつい連想しました。使い手の桁外れの精神エネルギーを集約し、失った左腕の代わりに名博が造り上げて備えた細身の砲身から光波として連射し、敵を撃ち抜く唯一無二の必殺兵器…寺沢武一氏の名作【コブラ】の主人公の片腕“サイコガン”。連載の初期、人間の血が混じる半妖の弟をひたすら蔑んでいた頃の殺生丸の毒華爪は、冷酷で残虐なだけの技でした。しかしりんとの出会い、神楽の死、天生牙の改造、哀しみと怖れの自覚、そして冥道残月破の由来と弟への禅譲を経て、兄は偉大なる父の領域に到達しました。この光は天生牙の変化なのか、それとも彼自身に備わっていたDNAの覚醒なのか。次週はお休みで残念ですが、気絶したままのかごめ贔屓としても、殺生丸のサイコガンがどんな名の技となるのか、それを待ちます。
週刊少年サンデー35号掲載・第516話「曲霊」
曲霊と名乗った敵。珊瑚は四魂の玉の邪念の事だと呟き、弥勒は正しい霊を宿す直霊に対して、邪悪に汚れた霊の名だと話す。この敵は四魂の玉の邪な魂そのものなのだ。犬夜叉は、体が奈落の寄せ集めならば斬るまでだと叫ぶが、巻き付いた化け犬ごと斬ってみろと曲霊は嘯く。歯軋りの犬夜叉。犬の体でも逃れられないのか、変化を解いて人間型になれば逃れられると気付かないのかと思案する邪見。曲霊は殺生丸の犬の体を無数の妖怪の体によって締め上げ圧殺にかかる。潰されるぞと皆が固唾を飲んだ瞬間、人間の姿に戻った殺生丸が脱出。邪見は一睨みされてあわてて弁解。俺がやると怒鳴る犬夜叉だが、殺生丸は無言で突進に触手の中へ。犬夜叉はその前に飛び込むと黒い鉄砕牙を発動させ冥道残月破を撃とうとする。
曲霊はこれを見るなり体を無数に四散させ、弥勒らを一斉に襲う。珊瑚は飛来骨で応戦し、奈落の邪気を巻き込む能力で曲霊の体を砕いていくものの、数が多すぎて埒があかない。弥勒は風穴を開こうとするが、今度は琥珀の汚された欠片が脈打って琥珀を操り、弥勒の右腕を封じる。弥勒の前に立ち塞がった殺生丸が触手を爪で砕く。その刀を使えば、飛び散った体のどこを斬っても仲間が巻き添えになるとせせら笑う曲霊。殺生丸はついて来いと弥勒に言い、珊瑚と雲母の方向に飛ぶ。意図を図りかねる邪見に体を集めるためだと怒鳴り、犬夜叉と仲間が一箇所に固まる。これを取り巻く曲霊の体。いつまでもつかなと笑う曲霊の頭部に対して、殺生丸は犬夜叉達に自分で身を守れと声をかけると単身で飛び出す。こいつをこの手で殺すのが自分の誇りだ、と独白する殺生丸…以下次号。
連載が長く続いていると設定を忘れてしまってました不覚不覚。犬夜叉達が珊瑚と出会った頃に、四魂の玉の由来を説明するため翠子の洞窟に入った際、弥勒は霊の数々の名を説明していた。曲霊(まがつひ)とは邪な霊。四魂の玉の邪悪な部分そのもの。そいつが奈落の体を通り抜けて妖怪の集合体であるその体を借り受け、動かしているわけか。通り抜けた時に犬夜叉と殺生丸らの闘い方や武器、そして弱味までを情報として取り込んでいるのは明らかです。黒い鉄砕牙を見たら体を飛散させて仲間を盾にし、風穴を琥珀を操って封じるという狡猾さ。これでは切り札の冥道残月破も撃てない。『あのお姿では手も足も出ぬのでは!? 犬だし。あまり賢そうではないし。変化を解けば小さくなってすり抜けられそうなものだが…お気づきにならぬのか!? 犬だから。』邪見のこの心の言葉に、脱出直後にジロリと睨んだ殺生丸。『私はなにも考えてはおりませんっ!』『邪見さま、なにかを考えてたんだな。』とりん。『心が通じ合っている感じですね』と弥勒。命を削る闘いの最中に交わされる笑いのツボが凄い(^^;)。でもやっぱこれは側近の発想をテレパシーで感じ取ったとしか思えん。いいコンビですよほんと。
殺生丸はかつて父の墓で奈落と対峙した時、犬夜叉と仲間らに瘴気が降りかかることをまったく気にかけずに闘鬼神を振るいました。ところが今は弥勒と珊瑚らを一箇所に集め、巻き添えを避けさせようとする。『あとは…自分達で身を守れ』と背中で語ったコマが猛烈にカッコいい。これぞ偉大な父の遺伝子。大妖怪のDNA。主人公の兄たる威厳。コケにされた敵は絶対に仕留めるという強靱な意志は、ほとんど特攻に等しい行為を起こす。この兄が連載途中で桔梗の後を追うことになるとは考えたくない!
かごめ贔屓としては、今週も眠り込んだまま状態継続。もしも曲霊に対抗できるとすれば、その対極の存在である直霊が拠り所となりうる人間、すなわち巫女の体ではないのか。かごめがそれだと気付いたからこそ曲霊は真っ先に眠らせたに違いない。目を覚ませヒロイン、皆を救うために!
週刊少年サンデー34号掲載・第515話「借り物の体」
倒れたかごめは意識を失う。何をしたと叫ぶ犬夜叉。奈落の分身ならば琥珀の欠片に触れられず、それを汚すことはできないはずだと当惑する弥勒。琥珀を連れて去れと言い、数歩踏み出す殺生丸。その右腕が派手に傷付けられているのを見た犬夜叉は怪我人は引っ込んでいろと怒鳴る。邪見が冥道残月破を貴様に譲ったからだとわめくと、それを理解しているゆえに犬夜叉は苦悩。見くびられたものだと呟いた殺生丸の目の色が変わり、右腕の傷が塞がっていく。再度妖怪の腹に爪で攻撃、と見せて犬の姿に変化した殺生丸は妖怪の首を食いちぎる。しかし倒れかけた妖怪の胴体から猛烈な瘴気が吹き出し、犬夜叉は仲間に遠くに逃げろと叫ぶ。弥勒と珊瑚はかごめと琥珀を連れて上空に脱出。邪見はその場に残る。妖怪の胴体から出てきた太い触手が琥珀の欠片を狙って伸びるが犬夜叉が切断。
首を狩られても生きているのは奈落と同じか、と歯噛みする犬夜叉。弥勒は闘い方も生命力も奈落と同じだが明らかに違うと感じ、気絶したままのかごめを気遣う珊瑚に、瞳子の遺言と楓の考えが気がかりだと話す。四魂の玉の一部が封印したとされるかごめの霊力…あの妖怪が玉の一部なのか。妖怪の首は殺生丸の口の中でいくらでも壊せと嘯く。借り物の体だと言うその首に、奈落の分身ではないのかと質す犬夜叉。あんな半妖と一緒にするなと言い返した妖怪の胴体は宙に舞い上がり、瘴気をばらまきながら無数の触手を伸ばす。金剛槍破で撃退する犬夜叉だが、触手は殺生丸の体に巻き付き締め上げにかかる。一匹ずつ片付けてやると笑う妖怪に何者だと怒鳴る犬夜叉。聞くなら答えてやると妖怪が名乗った名前は曲霊…以下次号。
かごめを卒倒させた敵。しかしやられっ放しで引き下がる殺生丸ではない。傷付けられた兄の右腕を見た犬夜叉の苦痛の表情が印象的です。『武器さえあれば殺生丸がこうまでやられるわけは…』連載中、一度も彼を名前以外の呼び方で呼んだことのない犬夜叉が、その言葉を発する時は来るのでしょうか。人間型の変化を解けば、絶大な妖力を持つ殺生丸の復元力と戦闘力は飛躍的に高まるようですが、この方法を取るのはそれだけ追い詰められている証でもある。
あくまで執拗に琥珀の欠片を狙う妖怪。戦い方はまさに奈落の分身なのですが、それは玉から出てきた邪念が奈落の体を通り抜けたからであって、この妖怪には実体がなく、思念だけの存在なのかもしれません。だからいくら借り物の体を壊されても平然としていて、無限に復元できるのでしょう。奈落を半妖と見下すくらいだから元は妖怪なのは間違いないのかとも思えますが、もしかすると妖怪以上の存在だと自負しているのか。名乗った名前は曲霊(まがつひ)。殺生丸以上の毒素を持つのも瘴気を発するのも、自らの意志によって勝って気ままに妖怪の能力を奪い取れる厄介な敵です。
かごめ贔屓としては、今週は眠り込んだまま状態。以前桔梗は、奈落には本当の体が存在せず、それを倒すということは魂ごと消すことだと語っていましたが、曲霊という存在はその魂さえ持っていないように感じます。こいつを退治できるとすれば、真っ先に眠らされたヒロインの封印された能力のみではないのでしょうか。
週刊少年サンデー33号掲載・第514話「危機」
殺生丸は妖怪の右刃を切断するなり一直線に突進して胸部を爪で貫く。勝ち誇る邪見だったが、琥珀は殺生丸の右手の方が飲み込まれているかのように感じる。妖怪の両脇から六つの刃が現れ、包み込むように刺そうとする。飛び退いた殺生丸の右腕は火傷を負っていた。毒華爪よりも強い毒を体内に持った妖怪なのかと驚く邪見。再び妖怪の刃が伸びて殺生丸の右肩を突く。右腕を奪い取ろうとしていると叫んだ琥珀は、上空から鎖鎌を飛ばして妖怪の顔面を刺す。妖怪は上を睨んで刃を向け、舌打ちした殺生丸との間に琥珀は飛び降りる。奈落の分身なら自分の四魂の欠片には触れられないはずと考えた琥珀だったが、刃の先が欠片に触れると一瞬で欠片が汚され体を捕らえられる。救出しようとした殺生丸の右腕も棘状に変化した妖怪の刃に貫かれ、動きを封じられてしまう。終わりかと呟いた妖怪の左肩に犬夜叉が飛び込み、鉄砕牙の一撃で伸びた触手ごと豪快に切断。
落下した琥珀のところにかごめと珊瑚達が駆け寄る。無言で妖怪を睨む殺生丸の右手を見て、冥道残月破を犬夜叉に譲ったためかと七宝と弥勒がひそひそ話。かごめは汚された琥珀の欠片を浄化しようとするが、奈落の分身にしては何かが違うと妖怪の方を見た途端、妖怪の不気味な視線を浴びて力が抜け失神して倒れる。妖怪と対峙した犬夜叉が驚き…以下次号。
名前があるのかないのか不明の“四魂の玉の邪念”妖怪ですがコイツは強い。以前、奈落が体内に取り込もうとして失敗した殺生丸の毒を上回る毒素を持っている模様。四魂の欠片に限らず、力のある妖怪の体であれば奪い取れるだけの能力を有するのでしょうか。乱入した琥珀にバカがと歯軋りして助けにいくんだから殺生丸は本当に変わりました。しかし桔梗が施していた琥珀の四魂の欠片への浄化ガードまで一瞬で崩してしまうんだから、玉の邪念恐るべし。痛みを顔に出さない殺生丸の威厳も凄いが、ここで乱入してきて敵の腕をぶった斬るのはやはり主人公でなくちゃなりません。
りんが代わりに受け取った天生牙は、どういう反応だったのかわかりませんが殺生丸の腰に戻っています。しかしこの火傷では戦闘の続行は難しそう。『殺生丸がやられとる』と弥勒の肩でひそひその七宝、最近は必ずしも怖れだけではなく尊敬の念が混じってるように見えます。刀々斎がいう“殺生丸自身の武器”の覚醒が待たれるところです。
かごめ贔屓としては、今週は妖怪と目があっただけで失神させられちょいとショック…(>_<)。おそらくヒロインの霊力を封印した張本人がこの玉の邪念であり、一瞬でそれに気付いて真っ先に眠らせたということか。邪念は何のために今外に出てきて何をしようとしているのかがまだ見えません。ここは犬夜叉、まだ使いこなせていなくても冥道残月破を撃て!
週刊少年サンデー32号掲載・第513話「玉の邪念」
殺生丸の行く手を塞ぐ二匹の鬼。武器を失った彼の噂を聞いた雑魚妖怪達が次々と群がってきているのだ。付き従う琥珀の首に残る最後の四魂の欠片も狙われる。うるさいの一言と爪の一撃で鬼達を引き裂いた殺生丸は不機嫌そうに歩き始める。琥珀に説教する邪見。その様子を空中から伺う白夜は、殺生丸が冥道残月破を無くしたことを確認して奈落への報告に戻る。奈落の隠れ家である洞窟には黒い光が充満。四魂の玉から渦巻く邪気が奈落の胸を貫くと、背中から不気味な妖怪が這い出てくる。無数の妖怪の体が混じり合ったそれはそのまま飛行して空に舞い上がり姿を消す。訝しむ白夜が新しい分身かと訊くと、あれは四魂の玉に永年封じ込められていた妖怪達の邪念だと答える奈落。
かごめは空を見上げて邪悪な雰囲気を感じ取る。奈落の臭いだと叫ぶ犬夜叉。奈落が邪念だと語った妖怪は、雷と共に殺生丸の眼前に降り立つと、鋭利な刃になっている右腕を伸ばして琥珀を襲う。またも琥珀の四魂の欠片を狙う敵か、と戦々恐々の邪見。殺生丸の爪の一撃をかわした妖怪は、逆に伸縮自在の刃で殺生丸の腹部を一突き。お前は弱い、と不敵に喋る妖怪を睨みつける殺生丸、怒る邪見…以下次号。
刀への興味をなくした殺生丸はどうするつもりなのか、それでも付き従うりんと琥珀。琥珀の四魂の欠片を狙う妖怪達が執拗に群がる。『おかげでわしは毎度身のちぢむ思いじゃっ』『それ以上ちぢんだら消えちゃうねー邪見さま』てな邪見とりんのやりとりは相変わらずですが(^^;)、殺生丸の威厳は微動だにしてません。
さて奈落自身の異変というよりは四魂の玉の異変。奈落の邪気を増幅させてきた玉はまた物騒な存在を産み出しましたが、奈落の左胸・心臓の部分に穴が空いたのが気になります。二足歩行の人間型妖怪ですが例によってキマイラ風。こいつも無双、赤子に似た野心を持っているのか。その最初の標的はいきなり殺生丸一行。琥珀の最後の欠片を狙うのは玉の意志なのか。奈落はこいつを使いこなせるのか否か。殺生丸への一撃でニヤリと笑って『お前弱いな』と暴言。彼を怒らせるとただではすまんぞと言いたいところですが、殺生丸自身の真の能力はまだ覚醒してません。四魂の玉や欠片には元々興味を持っていない殺生丸ですが、この敵が自らを何と名乗りどう語るかによっては再度参戦か?
かごめ贔屓としては、今週は空を見上げたアップのコマでしょう。四魂の玉との因縁は切っても切れない宿命です。『すごく邪悪な…近づきたくないような』気配を肌で感じ取ってしまうのも、玉を体内に持って生まれてきたヒロインなればこそ。霊力を封印した元凶が外に出てきたのなら、覚醒のためには激突必至でしょうか。
週刊少年サンデー31号掲載・第512話「正しい願い」
現代に戻ったかごめは級友達と第1志望高に願書を届け出るが、病欠続きでの受験勉強遅れを心配され焦りまくりで、残り一ヶ月を切っては実家の神社にも縋る状態でいた。
戦国では犬夜叉達が楓に瞳子の言葉を伝えていた。かごめが今でも不思議な力を持っていることを語る弥勒と珊瑚に、本来なら今以上の霊力があるということなのかと言う楓。四魂の玉を自らの亡骸とともに燃やせと楓に遺言した桔梗の想いがかごめの霊力を封印したのか。
かごめの祖父は例によって神社に伝わる四魂の玉のお守りを受験用に薦めるが、うさん臭さを指摘されてその由来を長々と語る。どんな願いも叶うという玉を巡って巫女と妖怪が戦い続け…戦国で体験済みだとうんざり気味で聞くかごめだが、最後に玉を手にした者が唯一の正しい願いを選んだ時、玉は浄化されこの世から消え去るという件では初耳だと呟く。最後まで話を聞かないからと言う祖父だが、正しい願いとは何なのかということは伝わっていないのだという。戦国に行く前は何度由来を聞かされてもすぐ忘れていたことも桔梗の封印なのかと考えるかごめだが、立場を思い起こして覚えるべき公式を鉛筆書きし始めるとどんどん頭に入ってくる。凄いと感じるとなぜが寒さも感じ、気付くと窓が開いていて犬夜叉が風邪ひくぞと一言。いつから寝てたとわめきつつ公式は全然頭にはいっていなかったかごめが頭を抱える背後で、お守り用の玉をしげしげと見る犬夜叉。
そのまま机に向かうかごめ。玉を見ながら桔梗の言葉を思い出す犬夜叉。おまえを人間にするために使うなら四魂の玉は浄化されて消滅する…そう言っていた桔梗も玉を浄化することはできずに逝った。気が散ると立ち上がったかごめは楓の見解を聞いてくる。犬夜叉が伝えた楓の考えとは、かごめの霊力を封印したのは四魂の玉そのもので、玉の邪な部分がかごめの力を封印したというものだった。犬夜叉は自分と傷付けあって死んだ桔梗に生まれ変わるつもりはなく、封印が望みだったならもう闘いたくないという思いだったのだろうと語る。かごめは封印が解けたらもっと強くなれるだろうかと話す。強くならなければ犬夜叉達と一緒に行けない。奈落から玉を取り戻し、唯一の正しい願いを選べば…と考えているともう朝になっていた。戦国に戻ると弥勒達が勉強の進捗を聞いてくるが全然ダメと涙混じりに返すかごめ…以下次号。
実は今回一番驚いたのは、つまり原作世界では2月ということかってところでした。別ページで以前書いていた「経過時間」の件はこの2年ほど“怖くて”続きを書けなかったもんですから(^^;)。受験どうこうよりそもそもかごめ、ほとんど病欠扱いで卒業に必要な単位は大丈夫なのか? まあ余談はさておいて、犬夜叉達は瞳子の言葉についてあれこれ検討。連載第一回で“何度聞かされても忘れてしまう”神社や玉の由来の一部が、ヒロインの耳に入って覚えることができたというのが極めて重大です。おそらくこの作品、日暮神社の由来をかごめが覚えることができなかったのは、自分自分がこれからその由来を作っていくことになるからなのでしょう。つまり“唯一の正しい願い”についても、祖父でさえ伝わっていないというのは、かごめがこれからそれを見つけなければならないからなのでしょう。
いつもの事ながら犬夜叉は、かごめの実家では実にあっさりとしていて淡々と動く。『邪魔しないでくれる? あたし勉強してたんだけど』『寝てるとこしか見てねーが』というやりとりもその象徴。桔梗が考えていた“犬夜叉を人間にすること”は唯一の正しい願いたりえたのか。巫女という立場を捨ててでもそれをやろうとした桔梗は奈落によって犬夜叉との仲を引き裂かれ、長い長い血みどろの因縁を生むことになったわけですが、それは結果論で間違っていたとは言い切れません。今、鉄砕牙には兄から譲り受けた冥道残月破が宿っている。これは四魂の玉の浄化=消滅とどう関わってくるのでしょうか。四魂の玉の邪な部分…意志を持ったそれがかごめの霊力を怖れている。かごめの体の中に宿って彼女を戦国へ呼んだのが正の部分なら、その能力に鍵をかけたのが邪の部分。常に玉の中で攻めぎあう正邪、光と影。しかしかごめの封印は桔梗の“もう闘いたくない”という願いだと解釈するあたりに、犬夜叉の持って生まれた優しさが表れてます。妖怪と人間の混血であればこそわかる、両親のDNAがね。
それでもかごめは闘いを選ぶ。唯一の正しい願いを見つけることが玉の浄化であり、桔梗から託された役目だから。もしかするとそれは、妖怪と人間の共存…いや双方が住む世界の隔絶なのかもしれません。あるいは最後の一欠片によって生き続けている琥珀の命なのか。もしも前者であったなら、犬夜叉はどうなるのでしょうか。今まで何度も言い続けては外れ続けた物語の最終章、今度という今度は突入という雰囲気です。次週はラスボス奈落の側の異変だそうで、最終決戦はそこまで近づいています。
週刊少年サンデー30号掲載・第511話「かごめの霊力」
今撃たなければこの地獄から抜け出せないと言う瞳子。その背後で奈落は、自分を撃てば瞳子の体を貫き、彼女を犠牲にした卑しさに蜘蛛の糸が絡まるとほくそ笑む。瞳子は自分が何を撃つべきかをよく考え、信じよと助言。かごめは梓山の弓に力を貸してと念じ、撃つべきものは奈落、と決して矢を放つ。
撃った、と奈落は笑うが矢は瞳子の胸の直前で消え、素通りして驚く奈落の顔面を砕く。かごめもまた弓の霊力に驚愕。瞳子の社を覆い尽くしていた蜘蛛の糸の束は消失し、強力な結界も解ける。床に突っ伏したかごめが気付くと、瞳子は不思議だと呟く。かごめが弓の霊力を使って自分を救ったのは確かなのに、矢を放った瞬間にもかごめから霊力を感じ取ることができなかったというのだ。ゆっくりと倒れる瞳子に駆け寄るかごめ。なにかが貴方の本当の霊力を生まれた時から封印している…これが瞳子の最期の言葉だった。駆けつけた犬夜叉と弥勒がそれを看取る。
村人達に瞳子の亡骸を引き渡し、供養を頼んで犬夜叉一行は旅を再開。考え込むかごめを気遣う犬夜叉。自分の霊力を生まれた時から封印している、そんなことができたのは桔梗しかいないと思い至るかごめ…以下次号。
出たっ!! ヒロインの新たな力は悪を砕くサイドワインダーアロー。かつて“悪い奴にしか当たらない”と啖呵を切ったかごめの矢は本当にその通りになったのです。凄く恰好いいのに本人はただ弓の霊力に驚く。ここもまたいいんだよなあ。しかし瞳子の最期の言葉は意外な展開を呼びました。この状態でもかごめの本当の力は封印されているのだと。
これはつまりアレか。いよいよヒロイン生誕の秘密に物語が踏み込むということか。なぜかごめと犬夜叉だけが骨喰いの井戸を通ることができるのか。四魂の玉を持ったまま身を焼かせ、哀しみの魂となった桔梗が何百年も彷徨い、憑依したのがかごめでした。桔梗がその際にかごめの霊力を封印していたとなると、生まれる前から何からの使命、いや宿命を背負っていたのでしょうか。まっすぐな心と芯の強さを持ちつつも、優しく暖かい人格に育ったかごめは“普通の子”であるがゆえの輝きを持っています。封印が解かれて真の霊力が覚醒した時、何かその、遠いところに行ってしまうようなムードが生じたらちょっと複雑(>_<)。
となればやっぱりここは主人公が彼女と今の輝きを分かち合ってほしいもの。光に還ってももう一人のヒロインは物語を何度も動かしてくれます(死してなお存在感が絶大なところが凄い)。桔梗がかごめの霊力を封印した理由には、この作品の根幹を流れる大きなテーマがありそう。さあ次週もかごめ贔屓視点オンリーで書けるかどうか?
週刊少年サンデー29号掲載・第510話「地獄」
犬夜叉は赤い鉄砕牙で結界破りを企てるが瞳子の結界は強固で揺るがず焦りが募る。走り回るかごめに、自らの死と自分を地獄に落としての延命の選択を迫る瞳子。他に方法があるはずと言い返すかごめ。瞳子を犠牲にすれば心が汚れ、蜘蛛の糸から逃れられなくなる…奈落は瞳子の背後からもっと苦痛を与えろと指示する。
足元の床が抜けてかごめは糸の束の中に転落。眼前に広がるのは死体の山と火の玉の雨。ここは地獄だとの声とともに、かごめの首を絞めにかかる瞳子の手は妖と化し、突き飛ばしたかごめの前には千切れたその手首が蠢く。瞳子の胸の蜘蛛が糸を飛ばし、かごめの上で広がった糸は炎となりかごめを苦しめる。地獄の炎は体を焼き尽くすことがなく、永遠に責め苦を続けるのだ。身の程知らずが、と口走る瞳子の顔もまた妖怪化していた。苦しげにかごめは弓を引くが、ただ撃っているだけとの言葉が脳裏を過ぎり弓を下げる。首を絞められた時に流れ込んできた感情は恐怖ではなく、深い悲しみ。かごめは妖の手首を握り、この場に居させてはいけないと願う。撃ちなさいと言う瞳子の顔は元の巫女に戻り、手首もまた人間のものに戻っていた。貴方が焼かれると話すかごめによく見てと言う瞳子。蜘蛛が巣喰うその胸が透き通り、背後にいる奈落の顔が見える。私ごと撃てと語る瞳子だが…以下次号。
さしもの鉄砕牙も巫女の結界には歯が立たないか。今回のかごめの闘いは自力で切り抜けるしかない窮地。殺らねば殺られるような極限状況でも、巫女を撃てば心が汚れる…積み重なる死体と血の海は地獄の光景、ここに落ちよと妖と化した瞳子がかごめの首を絞める。懸命に抵抗するヒロインは痛々しくも神々しい。炎の熱さに耐えかねて「撃てば楽になれる」と弓を引いてしまうものの、撃つだけという言葉を想いだして撃たない。ここで妖と化している手首を握り、哀しみを感じ取るとは。かごめという娘の美しさはここにあるんです。『この人をこんな所に居させちゃいけない…』この想いが瞳子の巫女の魂を呼び戻したか。奈落は背後にいなければ操れない位置関係。『私ごと撃ち抜きなさい』と語る瞳子は、この娘の矢には利己がないと感じたのでしょうか。
思い起こせば連載の初期、現代でのエピソードが結構あった頃から、かごめの心にはまっすぐで純な優しさとぬくもりがあったのです。タタリモッケが連れて行こうとした真由の魂を引き留めて鎮めたのはその“まっすぐさ”。原作中ではあれから数ヶ月しか経過していないわけですが、そりゃもう凄い数のキャラクター達と出会い、戦い、和解し、別れ、あるいは強い絆を築きつつも彼女の本質は不変です。梓山の精霊が認めた弓を持つ者の資格。桔梗が後を託した資質。瞳子はそれを理解してくれたのか。たとえ奈落が二重の罠を張っていたとしても、かごめの持つ光は必ずそれを貫く!
週刊少年サンデー28号掲載・第509話「弓の霊力」
瞳子はかごめがその弓を持つのにふさわしくないと語る。桔梗が一度も使うことがなかった梓山の弓…その遺言を回想するかごめに、弓の霊力をまるで使えずただ撃っているだけのあなたが自分を救えはしないと言う瞳子。弓を置いて去れば命だけは救えるという瞳子だったが、蜘蛛の糸の束がその体を縛りつけると奈落の声が響く。瞳子の胸に浮かび上がる蜘蛛。そこを射抜けば瞳子は完全に死んでかごめだけは助かると挑発する奈落。ふざけるなと反発するかごめに再び瞳子の攻撃が続く。血の円陣からは動けず、瞳子が指先で血の一部をすくって一吹きすると円陣が炎と化す。かごめは弓を引いて瞳子の持つ鈴の串を射抜く。炎と円陣は消えるがばらけて散った鈴を広いあげて投げつける瞳子。糸の束まみれの社の中にはあちこちに鈴がつき、結界からは逃れられぬと奈落が笑う。戦わずに殺されるか、瞳子の胸に巣喰う蜘蛛を射抜いて逃れるかしかない。破魔の矢で滅せられた瞳子の魂は救われることなく永遠に地獄の業火で焼かれ続ける。それを知った上で瞳子を撃つなら、かごめの心も卑しく汚れるというのだ。鈴が鳴ると血が滲み、それが炎となって燃え上がる。懸命に走るかごめだが周囲はすべてその結界。かごめが流した血は本人と繋がり、近づけば燃え上がる。周囲を炎につつまれるかごめはさっきの瞳子の言葉を思い出す。弓を正しく使いこなせば瞳子を救えるという意味なのかと…以下次号。
今週もかごめ贔屓視点オンリー続行です(ファン冥利だ)。瞳子はかごめの持つ梓山の弓を、正しく使いこなせる他の誰かが持つはずだったと指摘。その弓はお前のものだと言い残し、使うことなく逝った桔梗。二人の巫女の言葉は相反しているようで実は一致しているのです。今のかごめは弓の使い方を会得していないのだと(>_<)。奈落に操られながら瞳子は矢を無駄に撃つなと口に出す。瞳子の項から胸の中に巣喰っているのが奈落の蜘蛛で、糸の束はそこから出ている。わざわざそれを見せて殺すか殺されるかの選択を迫る奈落。『どちらでもかまわぬからだ。お前が闘えずに瞳子に殺されようとも、命惜しさに瞳子を地獄に落として心を汚そうとも。』…罪なき巫女を地獄に落とせばその業が天敵であるかごめの心を責め苛み、結果的に霊力を奪うという計算なのか。そういう状況を一から十まで自分で作り上げるあたりがラスボスの面目躍如というところか。癪ですがひとかどの悪役ですな。
体に幾つもの傷をつけられ血を流し、炎で焼かれて大苦戦のヒロインも懸命に瞳子のアイテムを撃って反抗。鈴が瞳子の霊力媒体であるのは間違いない。かごめの血は鈴の一つ一つから滲み出て炎になる。えぐい術ですよ。その瞳子の言葉はむしろ自分に伝えようとしていたのではないか、弓の使い方次第で救う道があるのだと。それはどんな方法なのでしょうか。琥珀の光を守れと言い残した桔梗。光が奈落を殺すと言い残した神無。キーワードは“光”です。原作者もまたこの作品のヒロインを“心に光を持つ者”として描いていると語っているとか。もしかすると梓山の弓で撃つべきなのは破魔の矢ではなく、別の何かではないのか。かごめにはそれができると見込んだからこそ、桔梗は後を託してくれたのです。一か八かで推測。“光の矢”を撃て、かごめ!
週刊少年サンデー27号掲載・第508話「巫女の結界」
瞳子の社は誰の目にも見える蜘蛛の糸まみれになっていた。鳥居を潜って犬夜叉達に襲いかかる糸の束。鉄砕牙より飛来骨が有力で糸の束を消し飛ばすものの、鳥居の直前で跳ね返される。瞳子の結界が張られているのだ。鈴の音と共に現れた瞳子は、巫女の結界は巫女にしか破れぬと言う。瞳子の周囲に無数の鈴を見たかごめは結界の印を結んでいると考えて鈴の一つを矢で射抜くが、これが罠でかごめの体が社の中に引き込まれる。かごめの眼前に立った瞳子は矢を握って霊力の弱さを指摘。犬夜叉達は結界に阻まれて中に入れず歯軋り。かごめは瞳子に助けに来たと話すが、笑止と一蹴した瞳子はかごめを傷付け、その血で円陣を張って動きを封じる。
瞳子の背後の糸の束に奈落の顔が逆さに映る。かごめは卑怯者と罵ると強引に弓を引いて束を射抜く。奈落は逃げたが、瞳子は奪うべきなのは貴方の力ではなくその弓にこもった念だと言い…以下次号。
薬老毒仙によって強化された飛来骨は奈落の糸をものともしませんが、巫女の結界というやつはさすがに強力。今回はかごめ贔屓視点オンリーで行きます。瞳子の行動には必ず鈴が必須アイテム。それを見抜いて射落としたあたりは冴えてますが、真っ向から相対するとプロの巫女相手では分が悪いか(>_<)。奈落に心を操られながらも瞳子は自らの意志で喋る。『これごときの霊力を奪ってなんになるというのか…この私の命を奪い甦らせ…あなたの力と命を取れとあの男は言う…』。このプライドの高さが冷徹にかごめの頬と腕を傷付け、血による鎖を作る。それでも天敵・奈落の顔を見つけたかごめは激怒して弓を引き反撃。それがかごめの力ではなく弓にこめられた念の力だというのか瞳子。
これで今回のエピソードの趣旨が見えました。かごめの“もう一人のヒロイン越え”です。犬夜叉を巡って対立しつつも互いの力を認めあってきた桔梗は、後をかごめに託して光に還った。犬夜叉は父親越えを果たして兄からも最大の技を受け継ぎ、弥勒は命懸けで瘴気の傷との戦いを決意し、珊瑚は飛来骨を形成する妖怪達との絆を再構築しています(さりげに七宝も妖術昇級したし^^;)。今度はヒロインの番というわけです。桔梗から託された梓山の弓には、たしかに桔梗の霊力と念がこめられているでしょう。奈落が怖れるのはそれだという瞳子の言葉は、いわば心理攻撃。かごめは桔梗の力ではなく、自らの意志と力によってこの窮地に立ち向かわねばなりません。忘れるのではなく、彼女の想いを背負う意味でも桔梗を越えろ、かごめ!
週刊少年サンデー26号掲載・第507話「瞳子」
瞳子という名の巫女の村。行き倒れになった男の口からは蜘蛛の糸が見え隠れし、気味悪がる村人達は助けようとしない。声をかけようとした瞳子に、男の口から一気に糸の束が吐き出される。鈴の束でこれを撃退した瞳子は、妖怪だったようだという言葉を残す。空から降りる蜘蛛の糸を見たかごめは、犬夜叉達とこの村に急行。弥勒が村人達に異変の有無を尋ねると、村を守護していた巫女が妖怪の糸一筋のために七日前に死んだという。瞳子は自分が死んだら首を斬り落として体と別々の所に埋めよと奇怪な遺言を残したが、誰もそれを実行できないまま土葬したのだ。
その場に生前の姿そのままで鈴の音を鳴らして現れる瞳子。死人の臭いを嗅ぎとる犬夜叉。瞳子の体には無数の蜘蛛の糸の束が絡みついていた。かごめだけでなく七宝達にまで見える分量で、犬夜叉は鉄砕牙を抜いて束を斬る。そのまま宙に舞い上がり、糸を斬っても自分は滅びぬと言いつつ消える瞳子。死体が奈落に操られているのかと語る珊瑚に、かごめは自分の意志で喋っているようだったと返す。救ってあげられないかと言う村人達に、犬夜叉は亡骸を取り戻すくらいだと語るが、弥勒は瞳子の遺言が自分の甦りを怖れてのことだったと推測し、放置はできないと話す。
糸の束に体を拘束された瞳子の正面に顔を近づけ、お前の霊力でかごめという女の力を奪い、殺せと命ずる奈落…以下次号。
今度は巫女の霊力を利用してかごめ抹殺に動き出した奈落。心優しい瞳子は、桔梗のような威厳には欠けますが霊力は相当なもののようです。彼女の武器は鈴を束ねた串で、歩くと鈴の音がリンと響く。こういうキャラが奈落に操られるとこれまた不気味。首を斬れと言ったのに…という悲痛さは、妖怪の手足にされることへの巫女の屈辱感なのか。『巫女というのはどいつもこいつも扱いづらい…死んでもなおたてつこうとする』という奈落の言葉はドス黒い執着心。しかし蜘蛛の糸は巫女の心をも汚し、思いのままに操れるのか。かごめを殺せと繰り返す奈落。まやかしの城から幻影殺に始まって、神楽に神無に椿に七人隊に赤子に白童子に蜘蛛の糸に…と次から次へと仕掛けながらもことごとく失敗してきたラスボス。懲りないといえば懲りない奴ですが、もはや犬夜叉達を殺すことにしか自らの存在意義を見いだせないかのような奈落は、滅びるまでやるでしょう。命を賭けてかごめを守ると宣言した犬夜叉は、因縁深い巫女という相手とどう戦う。これは桔梗を失った悲しみを払拭するためにも、必要な過程なのかもしれません。
かごめ贔屓としては、今週は瞳子に絡みつく蜘蛛の糸の束を見た時の表情に「痛み」を感じました。桔梗を救うことができなかった心の傷。タイプは違うにせよ巫女が自分の命を狙ってくれば、否応なしに桔梗のことを思い出すでしょう。だからこそその哀しみを怒りに変え、一気に奈落打倒まで突っ走ってほしい。
週刊少年サンデー25号掲載・第506話「受験番号七七」
「不可」の札を片付けるかごめ達。宿が狐臭いと言う犬夜叉に七宝は宣戦布告。囮の変化を叩いた犬夜叉の頭に石地蔵が落ち、七宝に下った判定は従八位下のまま。なぜだと文句をつけると狐仲間が札の隅に正の字の「T」状態だと指摘。正正で十点たまると位一つが昇級するという。怒った犬夜叉に殴られて泣き出した狐達に詫びつつかごめがおすわりをくらわすと、札が降ってきて彼らも少し昇級。ウソ泣きの術成功らしい。隣の部屋では弥勒が狐美女達と歓楽。今度は珊瑚が怒って臭い玉を投げ、狐達は退散、犬夜叉も気絶。弥勒は狐達の昇級試験のことをかごめに説明するが、結局珊瑚には殴られる。
気絶している顔面に攻撃された犬夜叉は激怒して外へ飛び出し、結構本格的に妖怪に化けた他の狐達をことごとくぶん殴って前進。法師は美女に騙されてくれると化けて近づくと珊瑚がしびれ薬入りの団子で撃退。可愛いと弥勒に抱きしめられて珊瑚が頬を染めるとこれまた狐の変化。七宝は風船玉に変化して登場。「引くな」と書いた紐を引くとくす玉が割れて「バカは引く」という垂れ幕とともに狐石像に潰される犬夜叉。六点加点されてあと二点で昇級と興奮する七宝を蹴飛ばす犬夜叉に、潰し独楽、巨大竹蛇、団栗爆弾と次々繰り出す妖術は全部壊され夜明けが近づく。夜が明けると試験終了と聞かされて、七宝は焦るが道具も品切れ。試験の成績に目がくらんで仲間を傷付けた罰だと涙ぐんで駆け出す七宝。かごめに諭されて仕方なく犬夜叉がなだめに近寄ると最後は落とし穴に落とされる。これでついに七宝は「正八位下」に昇級。タコ殴りにされた七宝が来年も受験かと弥勒に聞かれてもういいと答えつつ…以下次号。
上級ほど昇級も難しくなるとはなかなか本格的な狐妖術の世界です。試験を承知で美女に化けさせ、肩を抱くわ尻を撫でるわ弥勒もやりたい放題。そのくせ『協力してあげてたんですよ。』とくるかまったく(^^;)。巧く化けてるのに怒り心頭の犬夜叉の前に出たばかりにぶん殴られて「不可」をくらう狐達はお気の毒。珊瑚の妬き方もまたいかにも彼女らしいんですが、そこにすかさずつけ込む狐達も抜け目がありません。『許さぬぞ犬夜叉。罪なき仲間を無差別に殴りおって。』…ってよく言うよ七宝も。しかしなあ、たしかに「引くな」と書かれてると引きたくなるものですが、冥道残月破まで兄から禅譲されたというのに犬夜叉は相変わらず七宝と同次元で喧嘩するところが嬉しいような悲しいような。独楽や竹蛇を鉄砕牙で切り裂くんですからマジで相手してるんですよ、これ(^^;)。
なにはともあれ七宝、「正八位下」への昇級おめでとう。これもまた彼なりの最終レベルアップなのでしょう。コミカルながらもメインキャラの一人として、立派に昇格されたわけです。かごめが生まれる五百年後まで生きられるのかな七宝は、とふと思いました。
かごめ贔屓としては、今週はせっせと「不可」の札を片付ける、ひさびさのおすわり炸裂、弥勒に『それ不正じゃないの?』、七宝くす玉炸裂に『これも妖術なの?』、ラストのコマでは『落とし穴も妖術なんだ。』と見所満載でした。でも一押しはやっぱり『犬夜叉、仲直りしてあげて』と彼の裾を引く仕草です(*^_^*)。さて今週もやっと書き終わった、やれやれとサイト転送したらひらりと札が降ってきて「不可」…嫌だ、そんなのは嫌だあ!
週刊少年サンデー24号掲載・第505話「狐の宿」
旅を再開した犬夜叉一行が山中で宿を探していると、林の中に狐火が浮かんで何かが七宝に飛んでくる。気絶した七宝の額には一枚の葉っぱ。皆がその方に走ると、表向きは立派な宿屋でも火の玉が蔓延する妖しげな建物があった。どう見ても妖怪屋敷だが、窓から大勢の美女が姿を現しお泊まりになってと声をかけると弥勒が即座に承諾。中に入ってチヤホヤされる弥勒の耳を珊瑚がつねっていると、上から多数の札が降ってきて、美女達はその札の文字を読んで男言葉で歓喜すると火の玉になって消える。妖怪にバカされたのだと呆れる珊瑚。犬夜叉が七宝を外に落としてきたと知ったかごめは探しに外へ出る。
七宝は七十七番という声で目を覚ますが、一つ目の小僧と唐傘と提灯お化けがいた。ビビリまくりながらも風船玉に変化して対抗すると、仲間同士でバカし合っても点はもらえんぞとの声で三匹は狐の姿に戻る。今日は狐妖怪達の年に一度の妖術昇級試験日で、額に張り付いた葉っぱに書かれた番号が受験番号なのだという。七宝は七十七番。夜露がしのげそうだから泊まろうと弥勒が言っていると、風呂で背中を流しましょうとまた美女二人。喜んで応じようとした弥勒を珊瑚が飛来骨の端でぶん殴ると、降ってきた札には「不可」の文字が。二人は悔しがって消える。狐妖術の位は最高位の正一位から最下位の少初位下まで三十段階もあり、認定されると降ってくる札にその位が書かれているのだ。狐達の話では正一位になるまでには百年以上の修行期間がかかるらしいが、試験会場になっている宿の今夜の客は法師に退治屋に妖怪だから、バカすのに成功すると高得点だという。七宝を探すかごめを見つけた三匹は早速バカしに突撃。七宝は止めようと駆け出すが犬夜叉に踏み潰される。暇はないから放せ、とつぶし独楽をぶつけて走り出したら札が降ってきて「従八位上」の文字。点がもらえたのかとドキドキする七宝。
一つ目小僧、唐傘、提灯お化けが眼前に出現するが、平然と笑みを浮かべるかごめ。犬夜叉が三匹を七宝だと思い込んでぶん殴ると、三枚の「不可」札が降ってきて三匹とも悔しがって消える。七宝が戻ってきた三匹に札を見せると、初めての試験で「従八位上」とはと驚かれる。五段階特進なのだ。犬夜叉を倒すたびに高得点で位が上がるのかと解釈した七宝は、猛然とやる気を出して第二派攻撃を決意。「不可」の札がどっさり落ちる部屋で、下手な化け姿に苦笑する弥勒、呆れて眺める珊瑚、ふて寝する犬夜叉、火の玉を照明に利用するかごめ…以下次号。
時速100マイルの剛速球をビュンビュン投げていたピッチャーが、突然ナックルボールを投げてきたらバットに当てられる打者はこの世にいないでしょう(^o^)。高橋留美子という漫画家はそういう芸当ができる人なのです。七宝は幼少でも連載の初期からなぜか美女に化けるのは巧かった。狐妖怪にとって美女に化けるのはDNAなのかも。たしかに法師や退治屋をバカせば得点は高いわな。その法師が稀代の女好きだという点は割り引く必要があるようにも思えますが、毎年妖術に磨きをかけて一日の昇級試験に挑む狐妖怪達の日々はそれなりに過酷なものです。
七十七番の七宝。三十段階もの位(弥勒によると官位のことで、貴族や場合によっては神の位でもあるらしい。戦国時代でも大名達は天皇からその位を与えられるのがステータスとされていたようです)を覚えられるかとわめくのももっともですが(^^;)、犬夜叉達との出会いと奈落一派や妖怪達との闘いで修羅場を経験してきたことが、本人の妖術を無意識にレベルアップさせていたらしい。いきなり五段階特進で七十七番さんと尊敬されればこれは野心も湧くというもの。犬夜叉を倒せば昇進…ってどこか勘違いしてますが『仲間をバカすの辛くないすか?』『辛いっ! 辛いがしかし…試験には替えられんっ。』に爆笑。さあ七宝、従八位上からさらに昇級するのか、それとも調子に乗りすぎて降格の憂き目に会うのか。コミカルインターミッションの行方は?
かごめ贔屓としては、今週はなんといっても一つ目小僧達を見た時の顔でしょう。気絶する直前の笑みというのは昔の漫画の定番なんですが(^^;)、日頃から妖怪との遭遇に慣れっこになっているうえに『感じが似てるから、七宝ちゃんとお友達だと思ってたのに』ときたか、流石だ。ラストのコマでは数学の参考書広げながら火の玉に向かって『もっと明るくしてくれない?』これも素晴らしい。
週刊少年サンデー23号掲載・第504話「冥道の光」
外側が薄れていく冥道を白夜の目玉を通して見る奈落は、犬夜叉と殺生丸は冥道に取り残され、この世に戻ることはできないと断言。殺生丸は気を失った犬夜叉の背に刺さった金剛槍を抜くと、無言のまま拳で殴って犬夜叉の目を覚ます。冥道は閉じ、冥界に飲み込まれるか元の世に戻れるかは貴様次第だと諭す殺生丸。貴様がやるしかないという兄の言葉から、犬夜叉は黒い鉄砕牙を発動させながらも自分から天生牙を折りにきたのかと兄に問う。無駄口をたたく暇はないと呟く殺生丸の半身と、犬夜叉の足が闇に覆われ始める。どこかを斬るのか、と焦る犬夜叉は兄の全身が黒くなっていく様を見て寝覚めが悪いから消えるなと怒鳴る。その時闇の中にぼんやりと光が浮かび、外界の匂いが伝わる。そこかと犬夜叉は黒い鉄砕牙を全力で一閃。手元から光が射し込み、かごめ達の前に真円冥道が開く。
刀々斎は冥道の隅から小さな光を放つものが落ちたのを見る。犬夜叉と殺生丸は冥道から出てくるが、力を使い果たして犬夜叉はそのまま地面に転落。駆け寄ってひどいケガを嘆くかごめ。中から冥道を斬ったのは犬夜叉かと呟き、殺生丸に納得できたかと問う刀々斎。主が天生牙を持っていないのを見て、本当に吸収されたのかと邪見はどぎまぎ。もう興味はないとの一言で去ろうとする殺生丸を呼び止め、刀々斎はあれを持っていけと言う。冥道から落ちてきたのは天生牙だった。顔をあげた犬夜叉は折れたはずなのにと呟き、冥界の中で見た光が天生牙の発するものだったことを悟る。突き立った天生牙を抜いて、斬れない癒しの刀に戻っているがなと語る刀々斎に、ふざけるなと返して殺生丸は歩き出す。りんはその天生牙を手に取ると、機嫌が直ったら渡すと声をかけて殺生丸の後を追う。琥珀もまたそれに続き、珊瑚に挨拶して去る。やはり付いていくのかと見送る珊瑚と弥勒。武器をなくした殺生丸はどうなると問う犬夜叉に、刀々斎はそれより新しい鉄砕牙を使いこなせと指導。冥道から出られたのが自分だけの力ではないことはわかっているだろうという刀々斎の言葉に、犬夜叉は天生牙の光を想う。あと一歩で殺生丸は、父の形見ではなく自分自身の武器を手に入れると刀々斎が独白して…以下次号。
かつて兄は、自らの心を冷えたままで追い詰められることもありはしないと語りました。たしかに死への怖れさえも感じさせない彼は熱さなどとは無縁にも見えましたが、そんな殺生丸でも弟である犬夜叉との刀をめぐる争いや、初めて天生牙で救った少女であるりんの命に関しては、読者が驚くほどの感情をむき出しにする。『奈落の毒ごときで気絶したか。ふん…所詮半妖』との言葉とともに槍を抜いてやる。ぶん殴って気付かせることといい、あくまで平然と貴様がやるしかないと言い渡すところといい、『それはもはや貴様の刀。貴様のやり方で使うしかない』の独白といい、グレートな兄貴です。弟が冥道を内側から斬った時、差し込む光を浴びた兄の顔には不思議な笑みのようなものまで感じました。『もはや興味はない』…弟への伝承を終え、その力を認めた兄は何を想う。折れたはずの癒しの刀は、兄弟をこの世に呼び戻す道標となり、以前の姿に戻りました。人助けをして回れとでもいうのか、と言い残して兄は去っていく。
代わりに受け取って持っていくりんがいじらしい。琥珀がやはり殺生丸についていくのは、姉から独立して本当に強くなるための選択なのか。もう一人の弟・犬夜叉は兄から譲られた力の重さを肝に命じて、また成長してくれるはずです。父の形見ではない兄自身の武器とは何なのでしょうか。もしかすると兄は弟のみをこの世に送り出して冥界に消えるかもしれないと考えていた私にとって、この展開はほんの少し肩透かし感も抱きましたが、やはりほっとしています。
かごめ贔屓としては、真っ先に犬夜叉のところに駆け寄った姿は当然として突き立った天生牙を犬夜叉の傍らから見つめる小さな顔です。こんな小さな表現にも可愛らしさを保つのが原作者の力量ですね。初期の頃を除いて、犬兄弟の闘いにはまったく入り込めなかったヒロインですけど、まだ最終回までしばしのインターミッションがあるならばその存在感を示してほしい。
週刊少年サンデー21号掲載・第503話「黒い刃」
取り残された弥勒達。かごめは犬夜叉の身を案ずる。不意に空から雷が落ちて刀々斎が出現。鉄砕牙と天生牙は、まもなく一本の刀になるという。殺生丸は巨大化していく犬夜叉の妖力が冥道を圧倒していく様を見つめる。同じ光景を白夜の目玉を通して観察する奈落は、犬夜叉が強くなったならこの場で命を断つと答える。犬夜叉は増え続ける自分の妖力に冥界から抜け出せる手応えを得ていたが、突然背後から金剛槍が飛んできて背中を刺される。殺生丸が捨てたコピー鉄砕牙が刀身のみで動いていた。神無の鏡の妖の破片をまとわせた天生牙は奈落の分身同然で、自らの意志によって簡単に操れると奈落は嘯く。刀身がまた動いて金剛槍破を飛ばす。必死に鉄砕牙で防戦する犬夜叉だが、背中に刺さった金剛槍からは奈落の瘴気が吹き出して体を蝕み妖気を弱める。奈落の介入を察した殺生丸は冥道に足を踏み入れる。犬夜叉は天生牙を斬るしかないと踏み込むが、刀身は真上に移動。さらにその上に殺生丸が現れて刀を掴む。犬夜叉が弱ったとみて刀を拾ったか、とニヤつく奈落は、貴様の手でトドメを刺せと独白。
殺生丸は犬夜叉に構えろと声をかけ、天生牙を振り下ろす。もう答えは出ている、自分と犬夜叉の闘いに奈落の出る幕などない、という殺生丸の独白とともに二本の刀身がぶつかり、天生牙を覆っていた鏡の破片が砕けて払われていく。天生牙は元の細い刀身に戻り、次の瞬間に真っ二つに折れる。犬夜叉は驚き殺生丸は無言。脈打った鉄砕牙の刀身は黒く変化し、犬夜叉の顔は半妖に戻る。冥道残月破が鉄砕牙に宿ったのだ。今一つになった、と呟く刀々斎。しかし奈落の瘴気が犬夜叉の力をどんどん弱め、冥道を圧倒していたその妖気も消えてしまう。兄弟揃って冥道に飲み込まれるしかない、と奈落がほくそ笑み…以下次号。
二本の刀の生みの親・刀々斎が自ら告げに来ました。父の牙から誕生した二本の刀は、そのまま殺生丸と犬夜叉の兄弟関係の象徴だったように思えます。奈落が天生牙を操る所業は明らかに兄弟の間に介入するもの。奈落の瘴気が宿った金剛槍破は二人の闘いそのものを汚すもの。殺生丸が再び天生牙を掴むことを、弟の弱味につけ込んで斬るつもりとしか解釈できない奈落ごときに、兄の心情が理解できるわけもない。“伝承”は『構えろ』の言葉とともになされます。奈落の下衆な意図を振り払うかのように鏡の破片は吹き飛ばされる。殺生丸にはわかっていたのです。刃を交えれば天生牙が折れることが。犬夜叉の方がこれに驚いても、無言の兄の目はなんともいえない光を放つ。妖怪化していた弟の顔が“伝承”の瞬間とともに半妖に戻る、胸が熱くなりました。兄は冥道残月破を弟に譲り渡し、ずっと軽蔑していた人間の血を弟に戻したのです。あくまで淡々と、ひとつになったと呟く刀鍛冶もまた、この瞬間を待っていたのでしょうか。
奈落は兄弟揃って冥界に消えよと勝ち誇る。さあ兄はどうするのでしょうか。次回、おそらく私たち読者は殺生丸の凄さ、気高さ、威厳、優しさをこれ以上ないシチュエーションで観ることになるでしょう。そしてその兄の姿は、二人の父の偉大さの再現にもなるのです。この作品を貫いてきた大きなテーマ、父と子、兄と弟、妖怪と人間…次週がお休みなのがちょっと残念ですが、クライマックスへ向けての最後の儀式が終わろうとしています。
かごめ贔屓としては、三週間ぶりに顔を見れて嬉しい。鉄砕牙と天生牙が一本になる、と聞いた時の表情。ひとつになった、と聞いた時の表情。不安いっぱいのその顔も、やがて主人公の帰還と、偉大な妖怪に成長した兄への感慨に変わるはずです。君が好きになった少年は、凄い父と兄を持ったんだよ。
週刊少年サンデー20号掲載・第502話「証」
周囲に開いた真円冥道。自分が育てた技がお前のものになる運命なら今ここで奪いとってみよ、との殺生丸の独白の中、犬夜叉は冥界に飲み込まれていく。逃げられないとの白夜の言葉を聞いた奈落は、触手を白夜の右目の窪みに突っ込んで犬夜叉の姿を観察。冥界の闇に消えつつある犬夜叉の姿を認めた殺生丸は、継承者がこれで終わりならこんな刀に未練はない、と鉄砕牙のコピーとなった天生牙を冥道に放り込む。その天生牙が脈打つと犬夜叉の持つ鉄砕牙が共鳴して竜鱗が浮き上がり、犬夜叉の周囲に妖気の渦が発生。冥道の奥にそれを認める殺生丸。なにかを斬れということかと見回す犬夜叉だが周囲にはなにもなく、再度脈打った鉄砕牙が犬夜叉自身の妖穴を示す。
奈落は敵の妖力の源を斬って殺すための竜鱗の鉄砕牙で冥道が斬れるものかと嘲笑う。脈打ち続ける鉄砕牙に自分で自分の妖穴=命を斬れというのかと自問する犬夜叉だが、なにもしないで冥界に消えるなら鉄砕牙を信じる、と自らの妖穴を両断。血迷ったかと奈落はほくそ笑むが、犬夜叉の体に強烈な妖気が流れ込んでくる。妖気の渦は大きくなり、犬夜叉の妖気が犬夜叉自身と鉄砕牙の中を駆けめぐり、冥道がその妖気に侵蝕されていく。奈落はこの様子に眉をひそめ、殺生丸はこれが継承者の証かと独白し…以下次号。
殺生丸があっさりと天生牙を捨てたのは驚きでした。『鉄砕牙の継承者であったはずのおまえが…ならばもうこんな刀に未練はない。冥界に消えろ。犬夜叉とともに。』この表情のやるせなさ。複雑極まる兄弟関係を示す心情が表れています。奈落の方は犬夜叉の最期を見届けたいらしく、白夜の右目に触手を突っ込んで「ログイン」。白夜自身が気持ち悪がる小技です。
しかし殺生丸が惜しみなく捨てた天生牙が鉄砕牙に“伝承”を始めます。相手の妖力の源・妖穴を斬って仕留める竜鱗の鉄砕牙が斬れと伝えたのは犬夜叉本人の妖穴。なにもない無の世界である冥界に消えるよりはと犬夜叉が自分の妖穴を斬ると、妖気が自己増殖を起こす。刀とその使い手の器が巨大化しているからこその現象。父から受け継いだ妖怪の血と、母から受け継いだ人間の血。生きるために妖怪化しても己を見失うことがなくなった犬夜叉の精神力と、完全な冥道残月破が宿った分身である天生牙。それを結びつけるのが元祖鉄砕牙。犬夜叉の妖気は冥道をも凌駕するほど大きくなっていく。己の技に倒されるようなことのない底力を示すように。
黙ってこれを見続ける兄。これが証か…と認めた時、殺生丸は刀々斎が言っていたようにすべてを捨てて父を越えるのか。次週、犬夜叉が帰還を果たした時、彼は弟になんと言葉をかけるのでしょう。
週刊少年サンデー19号掲載・第501話「還流」
殺生丸が放った風の傷を正面からまともに受けた犬夜叉は吹き飛ばされ、溶岩が泡立つ下へ落ちていく。この様子を観察するのは羽根付きの白夜の右目玉。その白夜は結界の中で体を再生中の奈落の傍らにいた。能力を奪われて反撃できない犬夜叉に容赦なしかと白夜が語ると、奈落は殺生丸が父親の形見に抱く執着がつけいる隙だと答える。自分の目論見どおり、罠だとわかっていても殺生丸は犬夜叉を殺すだろうと。
冷然と見下ろす殺生丸の眼前に、飛び上がって再度姿を現した犬夜叉の顔は妖怪化していた。苦し紛れかと呟く殺生丸だが、犬夜叉は以前の鏡の妖戦とは違う手応えを感じる。自分の妖力が鉄砕牙に流れ込み、脈打った鉄砕牙は殺生丸が持つ天生牙と共鳴を始める。間合いに踏み込んだ犬夜叉が殺生丸と刃を交えると、奪われた力が鉄砕牙に還流する。殺生丸の体を突き放して犬夜叉は風の傷を放つ。これに押されて後退し、天生牙を見つめて犬夜叉のところに戻りたいかと独白する殺生丸。次は金剛槍破を返してもらうと犬夜叉が踏み込もうとすると、殺生丸は真の継承者ならこの技も奪い取ってみろ、と冥道残月破を放ち…以下次号。
奈落は新生飛来骨に受けたダメージが相当大きいようで、未だ体の再生作業中。偉そうに思惑を語るのはいいが、首から上だけで浮遊しつつだから気味悪いというよりやや滑稽に見えます。利用できるものならなんでも利用するこのラスボスの計画ですが、これまで彼が実行したそれは、結果的にことごとく犬夜叉の実力と仲間との絆を強化してきたところが大河ロマンの法則といいますか悪役の宿命といいますか。
妖怪化しても己を見失うことのない精神力を身につけた犬夜叉。兄の名を怒鳴りつけながら斬り込んだ一撃を受け止めた殺生丸は、弟の確かな成長を感じ取ったでしょう。あくまで冷徹に、仮借なく攻撃を続けてもこれは兄が弟に課す“卒業試験”。使い手である犬夜叉自身の妖力が鉄砕牙に力を与える。刃を合わせると敵の能力を奪い取る力を。犬夜叉自身の器もまた大きくなり、鉄砕牙はそれと共鳴・増幅して強化される。『戻りたいか、犬夜叉のところに…』と刀を見つめた殺生丸の表情には、寂しさなのか悟りなのか、なんともいえない色が浮かびます。最後の試練は完全な真円冥道残月破。これを奪い取ることができれば、兄はすべてを弟に譲り渡して去る、と決めているかもしれません…。
かごめ贔屓としては、今週は出番なしでも私の想い入れから一言。鉄砕牙はヒロインの化身であり、アイテムとしてのかごめであり、一人の人格を持ったキャラクター。だからこそ犬夜叉と苦楽を共にしつつ進化する。妖怪の血を自らの意志で統制できるようになった今、鉄砕牙は最終形となり犬夜叉と一体化しようとしているのです。
週刊少年サンデー18号掲載・第500話「継承者」
犬夜叉はまだ刀にこだわるのかと言い返すが、殺生丸はその真横に真円冥道を飛ばす。本気でやる気ならと犬夜叉は鉄砕牙を抜いて風の傷を放つがこれが出ず、天生牙の刀身が鉄砕牙そっくりに変化。逆に風の傷が撃ち返され、犬夜叉は懸命にかわして奈落に魂を売ったのかと怒鳴る。天生牙から奈落の臭いがするという犬夜叉の言葉に、上空で折鶴に乗った白夜が自分の臭いだと答え、神無の鏡の妖の破片を殺生丸に渡したことをかごめ達に話す。かごめは殺生丸が奈落の力を借りて鉄砕牙の力を天生牙に写し取ったのかと呆然とする。奈落は琥珀を殺そうとしたのにと叫ぶりん。雑音まみれだと白夜は犬夜叉と殺生丸の周囲に謎の液体を撒き、両者の足場の岩ごと異世界へ飛ばす。
岩が宙に浮かび、妖怪群が舞う空間。殺生丸は邪魔は入らないと呟き、そこまでして鉄砕牙が欲しいのかと罵倒する犬夜叉に金剛槍破を放つ。足場と白夜ごと消えた二人の後に残され、技を出せなくなった鉄砕牙で殺生丸を相手に勝てるわけがないと危惧するかごめ達。この程度の者なら元々鉄砕牙を持つ資格などない、と独白する殺生丸の頭上から、犬夜叉は怒りの刃を振り下ろす。平然と受け止めた殺生丸は、弱ければ殺し、天生牙も鉄砕牙も捨てると言い放つ。別の岩に叩き付けられた犬夜叉に、貴様が継承者だという証を見せてみろと迫る殺生丸。俺が勝ったら諦めるということだなと言い返す犬夜叉に、殺生丸は容赦なく風の傷を放ち…以下次号。
まんまと奈落の思惑どおりの展開なのか…? 『ゆっくりと闘える所にお連れしましょうか』とご丁寧にも犬兄弟をかごめ達と引き離し、外野の声を封じる白夜が狡猾。殺生丸が奈落の力を借りたことにショックを受ける琥珀ですが、敵の能力を奪い取る力のない天生牙が逆に鉄砕牙を吸収した形になったと歯軋りする弥勒。
しかし兄の思惑は弟の底力を自ら試すこと。己の武器の能力を敵に奪われた時にどう戦うか、己の武器に倒されるようでは継承者とは認められぬということなのか。しかもそれだけではなく、命を奪い、刀も二本とも捨てるとまで断言。殺生丸は父が遺した最終的な思惑を自分なりに悟りつつあるのでしょう。自分には刀は必要なく、完全な冥道残月破をも取り込んだ元祖鉄砕牙はやはり人間の血が混じった弟のものであったのだと。それを譲るには、どんな不利な状況になっても跳ね返すだけの底力が認められなければならない。主人公の最大の試練は、兄自らの手による伝承の儀式となりそうです。
かごめ贔屓としては、今週は犬兄弟の闘いから排除された恰好になってちょっと凹み気味です。『力を映しとられた犬夜叉の鉄砕牙は技を出せない。殺生丸相手に勝てるわけがないわ』と思ってしまうのも無理はない。しかしこうなれば彼と刀の絆を信じるしかない。技が出せなくとも、犬夜叉を唯一の使い手と認めている鉄砕牙はある意味ヒロインの化身なのですから。
週刊少年サンデー17号掲載・第499話「妖の破片」
かごめは掌を琥珀の首筋にかざして邪気を浄化しながら、琥珀から奈落の触手が触れた時のことを聞く。神無がいまわの際にかごめに見せたビジョンにあった、奈落の持つ四魂の玉の中に残る一点の光…これが桔梗の力なのだ。横から珊瑚が自分の欠片で奈落を倒せると思うかと弟に苦言。りんは奈落が琥珀の首を落とそうとしたと話し、琥珀は欠片に桔梗の力が残り奈落を苦しめると言うが、犬夜叉はゲンコツ一発でハッキリ言ってやれと怒鳴る。かごめはおすわりをかましてから殺生丸不在のところを襲撃されたのは仕方がないと諭す。珊瑚は琥珀の心の弱さを指摘して自覚を促し、かごめは桔梗が託したものを語りかける。弥勒は皆から離れてまた伸びた瘴気の傷に眉をひそめていた。
一方、殺生丸は父が何も自分に遺す気がなかったのかと自問自答。その背後に表れた白夜は冥道残月波の大穴に閉口しつつ、岩虫から刀の件をすべて聞いたと話す。貴様ごときが立ち入るな、と爪でぶち抜いた白夜の体は幻で、殺生丸の右手には鏡の破片が残っていた。神無の鏡の妖の破片は、細かく砕いて天生牙の刀身にまとわせれば鉄砕牙の能力を奪い取ることができるというのだ。邪見をいびりつつも殺生丸が戻るまで護衛のつもりの犬夜叉の前に、鏡の破片は自分と犬夜叉を戦わせて双方の無力化を目論む奈落の差し金だと承知で殺生丸が戻ってくる。罠でも乗ってみる価値はある、と殺生丸は犬夜叉に鉄砕牙を抜けと促し…以下次号。
珊瑚は琥珀が弟だからこそ厳しく諭す。『おまえは心も力も弱い。だから奈落はおまえの心の弱さにつけこんでくるし、一人で闘って追い払うこともできない。それは自分でもわかっている?』…犬夜叉に言わせると『迷惑だから勝手にチョロチョロするなっ』(とハッキリ言ってやれって言い回し^^;)なわけですが、一人の戦士として独り立ちしたように見えても、まだ琥珀は未熟なんですね。りんもまた皆に奈落の狙いをはっきり話すまっすぐな子です。その影で瘴気の傷がどんどん心臓に近づいてくるのを『頼む…最後までもってくれ』と一人願う弥勒がまた男だ。
奈落もかなり焦ってきたようで、かくなるうえは殺生丸のプライドを利用する手に出てきたか。天生牙は鉄砕牙の一部にすぎないという一番殺生丸を怒らせる話を白夜に吹き込ませ、神無の鏡の妖の破片を使わせるとは。奈落の計算を百も承知で殺生丸は天生牙を抜いて犬夜叉と対峙する…連載第500回は因縁の異母兄弟、何度目になるかの激突がアオリ文句です。
かごめ贔屓としては、今週は『桔梗ほどうまく浄化できないかもしれないけど…』地道に回復呪文役。『今回は仕方ないわ。殺生丸がいなくて小さい人ばっかりのところを襲われたんだし』に邪見が『ちっ、小さい人ってわしもか!』のリアクションに微笑。『桔梗があなたに託していったものを、大切にして』と琥珀に語りかける目がヒロインらしい。しかし今度の兄弟対決は鉄砕牙と天生牙に託した父の想いがねじ曲げられかねないだけに、梓山の弓で乱入してでも仲裁してほしい。連載500回だ、ヒロインも目立てっ!
週刊少年サンデー16号掲載・第498話「新生飛来骨」
奈落は琥珀が父と仲間を殺めた記憶を珊瑚の存在によって引き出されるため、姉弟が共に居ることはできないと揶揄する。死ぬ以外に救われぬ心だと嘲る奈落に、珊瑚は自らの所業を苦しみ恥じるからこそ、琥珀がそれを自分で乗り越えるまで貴様と戦うと宣言。奈落は邪気を強めて琥珀を操作。かごめは琥珀の四魂の欠片の汚れが強まるのを感じる。珊瑚の飛来骨に背後から琥珀の鎖鎌が当たる。必死に姉の身を案ずる声を発する琥珀は、体が邪気に操られながらも意識を失わないのだ。面白がる奈落に珊瑚は激怒して飛来骨を投げつける。到着した犬夜叉達の眼前で、飛来骨は余裕綽々の奈落の胴体を真っ二つに切断する。
旋回して戻ってくる飛来骨は邪気の渦を巻き込んでいた。邪気の塊の自分の体を砕くとは邪気だけでなく別の毒を纏っているのかと奈落が戸惑った時、飛来骨が再度奈落の上半身を砕く。体が再生できない奈落は慌てて瘴気の渦に身を変え逃走。飛来骨の強化を七宝ら同様に珊瑚自身も驚く。犬夜叉は薬老毒仙の酒の匂いがすると言う。邪気を巻き込んで邪気を砕く新生飛来骨は、これで奈落と互角に戦えると珊瑚に確信を与える。邪見は犬夜叉に踏まれていたが、りんは倒れた琥珀を案ずる。黒ずんだ首筋の欠片を持つ弟を珊瑚は悲しげに見つめ…以下次号。
いつものことですが奈落という悪役はいちいち人間の心の痛手をネチネチと抉るセリフをご丁寧に繰り返す。姉の存在が弟を忌まわしい過去にひきずり戻すのだと。自分で操っておきながらこの言い草。しかし珊瑚は『それがどうした。そんなことわかっている』と真っ向から反論。『お前に操られたとはいえ、琥珀が私達の父上を手にかけたことは事実だ。私はあの日の出来事を忘れたことはない。琥珀だって同じだろう。自分のした事に苦しみ、恥じている。だからこそ死なすわけにはいかないんだ!』見事なり(/_;)。これぞ強く優しい姉の心。人間の弱さをつつきまくる奈落に、人間の誇りで対抗する姉弟はこの作品の大きなポリシーを見せてくれます。
どうだ奈落恐れ入ったか! 人間の覚悟を認めた妖怪達の魂が貴様の体を邪気ごと粉砕したのだ。薬老毒仙自身がどう変わっているかはわからんと評した新生飛来骨は、見事に奈落の再生能力をも封じ込む。予想外の反撃で退散を余儀なくされ、殺生丸の真円冥道残月波の情報も白夜から聞くだろう奈落は、しばらく琥珀の最後の欠片に手を出せなくなり作戦の練り直し。『邪見、てめえなんで俺の足にくっついてんだ。』『お前に踏まれたんじゃっ。』わずか一コマでソツない笑いを入れるところも高橋氏らしい(^^;)。さて琥珀の過去を知ったりんは、この後どう行動するでしょうか。
かごめ贔屓としては、次週は琥珀の欠片の汚れを浄化する大事な役割が回ってきそうです。桔梗が認めたヒロインの力。かごめの放つ光で琥珀の命を救ってくれ。
週刊少年サンデー15号掲載・第497話「琥珀の首」
犬夜叉が白夜の足下の蔓を風の傷で粉砕すると猛烈な瘴気が発生。鉄砕牙で薙ぎ払おうとする犬夜叉を制して弥勒が風穴を開き瘴気を吸い込む。折鶴で空に逃げた白夜が蔓の第二波を繰り出して執拗に進路を妨害するが、かごめは破魔の矢で白夜を攻撃して珊瑚を先に進める。眼前に斬りかかってきた犬夜叉を幻花のまやかしでかわして白夜は逃走。身を案じるかごめに弥勒は平然と応答するが、犬夜叉は弥勒が痛みを感じないだけでまた瘴気の傷が広がったはずだと危惧する。
上空の奈落からなんとか逃れようとする琥珀はりんと邪見に自分を置いて逃げろと言うが、邪見はともかくりんが拒否。奈落の瘴気の渦が森の中に落下してきて、双頭獣ごと三人は地に叩き付けられる。琥珀は自分の防毒面をりんに付けて離れろと突き飛ばす。その目の色も黒ずんできて四魂の欠片は一段と黒さを増す。眼前に降り立った奈落は邪気によって琥珀の体を操る。桔梗の仕掛けによって直接欠片に触れられないため、かつて父や仲間をその手で殺めたように琥珀自身の手で自らの首を斬らせるつもりなのだ。懸命に抵抗の意思を示そうとする琥珀だが、その腕が鎖鎌を首筋に当てて食い込ませる。そこへ珊瑚を乗せて飛び込んできた雲母が間一髪で鎖鎌を噛み取る。奈落は珊瑚一人で来たかと余裕の態度で、弟を思うならこの場で命を絶たせてやれと嘯く。激怒して対峙する珊瑚は、背中の飛来骨から何かが出ていることに気付き…以下次号。
奈落の分身達が操る物の怪はほとんど瘴気の塊らしい。あれだけ吸えば即死だと言った白夜も、弥勒が薬老毒仙の毒薬を飲んできたことまでは計算外。とかく気を見るに敏で『覚悟しやがれ!』に『やなこった』でさっさと逃走。食えない野郎ですが未だ抜かないその刀にはどんな能力が秘められているのでしょうか。あくまでかごめと珊瑚には本当のことを伏せる弥勒と犬夜叉、男気ってやつですがタイムリミットはどんどん迫ってきます。
『邪見さま、俺と別れてりんを連れてお逃げください!』『ばっ…そんな事…えっいいの!?』って、こんな非常時にもギャグを忘れないキャラだから人気があるんだろうな邪見(^^;)。当然りんが反対するけど。奈落は強攻策に出て琥珀自身に首を斬らそうとする。おまけに『こわいか琥珀…わしの邪気に操られその小娘を手にかけてしまう事が…お前がその手で父や仲間を殺した時のように…』と琥珀の最大のトラウマを持ち出してくるあたりが悪役の真骨頂。とことん人間の心の苦悩を利用し弄ぶ奴です。これを聞いたりんは何を感じたでしょうか。飛び込んできた珊瑚は姉の怒りをぶつける。さあ今度こそ新飛来骨の出番。人間を利用しゴミ扱いする敵に対し、人間の覚悟を認め共闘する妖怪達の魂はどんな反撃をみせるか。奈落の瘴気を切り裂け、飛来骨!
かごめ贔屓としては、今週はしっかり二の矢で白夜の折鶴の翼を砕いてナイスフォロー。空を狙って弓を引き絞る姿が大いにサマになってます。貫禄もついてきたみたいで嬉しい。弥勒の首にまで瘴気の傷が伸びてきた時には二人の嘘を知るでしょうが、どうか怒らないでほしい。何もかもすべてを恋人に話すのが真の優しさというわけじゃないのです。
週刊少年サンデー14号掲載・第496話「仕掛け」
奈落は琥珀の首筋に仕込まれている最後の四魂の欠片を奪おうとする。琥珀は鎖鎌で奈落の右手を切断して走るが、即座に触手が伸びてきて囚われかける。しかし先端が欠片に触れた瞬間火花が散って欠片が光り、邪見が人頭杖の炎を奈落に浴びせて凌ぐ。りん、琥珀、邪見は双頭獣に載って空に逃れる。触れられたにも関わらず欠片の邪気が薄れたことを感じる琥珀。見上げる奈落はこれが桔梗の仕掛けだったかと舌打ち。あと一欠片までに完成した四魂の玉に桔梗が残していった一点の光が、琥珀の欠片を浄化したのだ。
犬夜叉は奈落の臭いを、かごめは琥珀の四魂の欠片の気配を察知してその場へ向かう。殺生丸の臭いがしないことで犬夜叉は彼の不在を悟り、奈落の目的を知って一行は急ぐ。飛行中の双頭獣の真上に奈落が瘴気の渦と化して出現。桔梗が琥珀の欠片を浄化していたのは、その欠片を四魂の玉に打ち込んで玉ごと浄化し奈落を滅するためだったが、死んでも奈落の命をおびやかす。琥珀は自分の欠片がまだ奈落を倒す武器になりうると考えるが、奈落は触れなくても持ち帰るのは可能だと言い、渦から無数の触手を飛ばしてくる。触手の先が次々と樹木を切断。低く飛べと双頭獣の高度を下げる琥珀は、首をはねて持ち帰るつもりだと歯軋り。奈落は欠片ごと琥珀の首を手元に置いて時間をかけて汚すというのだ。
森の上を動く瘴気の渦を見つけた犬夜叉達の眼前に、地を砕いて棘付きの触手と共に白夜が現れ道を塞ぐ。犬夜叉は付き合っている暇はないと鉄砕牙を抜くが、どうせ奈落の仕事はすぐ済むと白夜も独白。触手の攻撃をかわしながらも琥珀の欠片は再び汚れ始め…以下次号。
桔梗は琥珀への遺言で、首筋に残された最後の四魂の欠片には一点の汚れもあってはならないと言い残しています。懸命の抵抗を試みる琥珀を救ったのは桔梗の仕掛け。桔梗の最後の霊力が残した一点の光は、一瞬の接触で琥珀の欠片に移動したのか? 殺生丸不在でも邪見とりんが健闘。しっかりファミリー化してるなあ。
奈落が直接琥珀を狙ってきたとわかれば、犬夜叉達は最終戦へ直行でしょう。触れれば桔梗の“爆弾”が炸裂すると知った奈落もさるもので、触れずに持ち帰れば勝てると戦法変更。荒っぽく琥珀の首を切断する作戦に出てきた。殺生丸がりんの移動用に与えた双頭獣(名前は出てきませんので勝手に普通名詞です)もよく働きますがとにかく相手が悪い。犬夜叉達の妨害は白夜の仕事というわけか。『そんなに長く邪魔するつもりはないよ』とは余裕綽々の弁。珊瑚の新しい飛来骨の出番が来たようです。弟の危機を救うため、新しい能力を見せてくれ!
かごめ贔屓としては、戦国時代へ戻るなり修羅場が来た感じ。琥珀の光を守るため、梓山の弓を引き絞るその先は白夜の触手か奈落の瘴気か。いずれにしても今回のバトルでは傍観者ではなく大活躍を期待します。桔梗は、琥珀の光を守ることはかごめにしかできないと言い残したのですから。
週刊少年サンデー13号掲載・第495話「その先の考え」
奈落の分身・白夜は殺生丸と死神鬼の死闘の場に出向き、地面から岩虫を呼びだして起こった事を聞き取る。その殺生丸は邪見らを置いて刀々斎の所に殴り込んでいた。夜逃げの直前に冥道残月波が炸裂して刀々斎の住処の一部が円形に切り取られる。殺生丸の剣幕から天生牙の秘密を知ったかと語る刀々斎。最初から全て知っていたなと睨む殺生丸に、刀々斎は否定もせずに死神鬼に会って完璧な真円の冥道残月波をものにしたなと指摘。父の見込みは正しかったろうと言うと、殺生丸はその先のことに気付かないと思うかと続ける。天生牙には鉄砕牙のように戦った相手の武器の能力を奪い取る力はないから、冥道残月波が完成したところで再び天生牙を鉄砕牙に吸収させるつもりだったのだろうと。刀々斎はそこまで見通したかと膝を打ち、平然として父がいずれ冥道残月波も犬夜叉に与えるつもりだったのだと断言する。
激怒した殺生丸が再び天生牙を抜くと、刀々斎は槌で地を叩いて溶岩を起こし、声のみで語りかける。父は犬夜叉可愛さに兄に貧乏籤を引かせたと思っているのかと。形見の鉄砕牙にこだわっている間は、さらにその先の考えなどわかるまいなと。冥道残月波の二撃目が刀々斎の住処の大半を消滅させ、殺生丸は眦を吊り上げたまま背を向けて去る。刀々斎は住処の影でビクつきながらも、刀への執着と犬夜叉への憎しみを捨てた時に殺生丸は父を越えると独白。
りんが殺生丸の帰りが遅いとしつこく呟いていると、琥珀の首にある四魂の欠片が嫌な反応を示す。どんどん汚れていくのだ。琥珀が突っ立ってりんと邪見に逃げろと叫ぶと、その背後に出し抜けに奈落が出現して…以下次号。
穴だらけの激闘の場。白夜には無機物を妖怪に変える能力があるんでしょうか。冥道残月波の力の凄まじさはこれで奈落一派に伝わったわけです。「引越マシタ」の貼り紙で逃げようとしたところに殺生丸登場。いやいやさすがはうる星ワールド系出身の刀々斎、性格と表情と行動様式が実にコミカルです(^^;)。がそれでいて語る内容はハードボイルド。天生牙を鉄砕牙から打ち出したのも武器として鍛え直したのも自分だからそりゃ知ってたと開き直り。この場で殺すかいと言ったら無言ですっと天生牙を掲げる殺生丸の目つきが怖い。『待て』(汗)もいいけど、何のことはない殺生丸は鉄砕牙との共鳴なしでも真円の完璧な冥道残月波を放てるようになったのか。しかし兄に完成させたその技を、弟に授けた刀に斬らせることで再度奪わせるつもりだろうとは…ちとスネすぎでしょう。肯定する刀々斎にええ!?と一瞬感じたものの、後の語りかけから偉大なる父の意図が見えてきました。
強大無比な能力を持った父の血を引く完全な妖怪である殺生丸には、刀すら必要ないということなのです。鉄砕牙も天生牙も父の牙から作られた武器。つまり“父の体の一部”でしかないのですから。怒りが解けない彼の今の心ではそれに気付いていないだけで、最終回で殺生丸がその境地に到った時、天生牙は彼がかつて鉄砕牙によって失った左腕として復活するのではないか、そんな気がします。
殺生丸が不在のところを狙って自ら琥珀の欠片を狙い出撃の奈落。セコいっ! セコいが実に狡猾。さあ琥珀どう切り抜ける。いくらなんでも相手が悪すぎるけどとにかくなんとかして逃げろ! かごめ贔屓には桔梗の遺言があるだけにこの展開は早すぎて困ります。
週刊少年サンデー12号掲載・第494話「ふたつの世界」
かごめは実家に三日ほどの予定で戻る。犬夜叉は楓に桔梗の最期を告げて詫びる。桔梗の役目をすべてかごめが引き継ぐことに一抹の危惧を抱く犬夜叉。命を落とすくらいなら井戸の向こうの親兄弟がいる世界で安全に生きてほしいと。
戻ってみると祖父と母と弟は温泉旅行で不在。仕方がないと学校に行ってみると日曜日で無人。友人達の家に電話しても買い物で不在。携帯電話が無意味なので持っていないかごめは、やむなく入浴して布団に入るが昼間からは眠れず、自炊して食事してみるものの一人だけの空間では寂しさが募る。机に座って勉強していると、いつもなら邪魔をしにくる犬夜叉も来ないので苛立ちを感じ、やがて机に突っ伏して寝入ってしまうかごめ。
重みを感じて目を覚ますと布団がかけられていて、ベッドには犬夜叉が座っていた。涙ぐむかごめを見て焦る犬夜叉だが、梓山の弓を取り出して渡し、肌身離さず持って心を通わせよとの楓の伝言を伝える。あっさり引き上げようとする犬夜叉の髪を引っ張って引き留めたかごめは、誰もいないことを愚痴る。学校もあり母達も戻ってくるかもしれないから、と語るかごめにこっちの世界が好きかと問う犬夜叉。奈落との戦いが終わるまでこっちにいたらどうかと言い出す犬夜叉にかごめは戸惑う。自分はいなくていいのかと落ち込むものの、生きていてくれればという犬夜叉の言葉にかごめは桔梗の遺言を思い起こす。桔梗との約束がある。自分はずっと犬夜叉と一緒にいる。肩にもたれるかごめの手を握って、ならば命懸けでお前を守るとまっすぐに言う犬夜叉。もう少しで顔が重なるというところで草太がいきなり声をかけたのでかごめは大焦りで犬夜叉の頭を押さえ込む。戻ってきた家族にもうちょっとゆっくりしてきてよかったと苦笑しながらも、この時はまだふたつの世界のどちらかを選ぶ日が来ると思っていなかったというかごめの独白で以下次号。
定例の犬かごインターミッションではありますが、最後に衝撃の一言が添えられていました。実姉の最期を長い間の苦しみからの解放だったと語る楓に、その役目をかごめが引き継ぐことは大丈夫なのかと語る犬夜叉の表情は、彼らしくもない不安に満ちる。桔梗を二度までも死なせてしまったことを思うと、安全な世界で生きていてほしい。かごめには家族も仲間もいる。あいつはひとりじゃねえ…との独白に重なって家族が不在の家で立ち尽くすかごめが描かれるところがすこぶる暗示的なんです。
今週はかごめ贔屓一本。いい言葉が目白押し。『ケータイ? 持ってない。戦国時代圏外だし。』わはは、そりゃそうだ(^^;)。『ふー。ママのごはん食べたい…』『犬夜叉なにやってんのよ。いつもだったらすぐ邪魔しに来るくせに。さみしい…せっかく帰ってきたのに…』だよなあ、うんうん。こういう時に唐突に彼氏が『起きたか』と声をかけたら涙ぐむよね。『なっ、なんだよっ。おれがなにをしたっ。』『来たんだ…』ってやりとりがいかにもこの二人らしい。『ただの武器じゃないんだ…』そう、梓山の弓はかごめにとっての鉄砕牙。必ず重大な役割を果たすアイテムになる。『おまえやっぱり、こっちの世界が好きか?』『そりゃ…だって、生まれ育った所だし、家族や友達もいるし…』『おまえさ…奈落との戦いが終わるまで、ずっとこっちに居るってのはどうだ?』『…熱はないか。』と額に手を当てるのがまたいい。『そんな事言いに来たんだ。私なんかいなくていいんだ。それで弥勒さまや珊瑚ちゃんと温泉行ったりするんだ。』『いや…温泉には行かねえ。』このやりとりが可笑しいんだけどなんとも顔が綻んでしまう。『おれはただ、おまえが無事に生きてさえいてくれれば…』の言葉に桔梗のことを想うかごめこそがヒロインなんです。その桔梗との約束が琥珀の光を守ること。『ありがと犬夜叉。私のこと…考えててくれたのよね。』の顔が猛烈に綺麗。『大丈夫。私は、ずっと一緒にいる。』肩にもたれるかごめの手を握って『だったらおれは、命を懸けておまえを守る。』れっきとした求婚じゃないか犬夜叉(/_;)。よくぞ言った。『…ってこの体勢…あ…今二人っきりなんだ…』の先は少年誌ですから草太が『…ねーちゃん帰ってたんだ。なにしてんの?』なにしてるもしてないもあるか! おかげでなにもできんかったわ(*^_^*)。『一緒に行きたかったのう。』『いや〜もうちょっとゆっくりしてくればよかったのに。』の顔と背後の犬夜叉の痣と目が素晴らしい。
…さて、この作品の抱える最大の課題であったヒロインの立場。やはり二者択一は避けて通れるものではないんですね。かごめの選択はとてつもなく重いけれど、彼女が出す答えはもう出ています。数々の人々との関わりを背負って、二人で走り抜くことだと。
週刊少年サンデー11号掲載・第493話「共鳴」
犬夜叉の鉄砕牙も脈打って天生牙と共鳴する。何かが起こると察した犬夜叉が殺生丸に抜けと叫ぶが、犬夜叉を助けるために戦えというのかと殺生丸は反発。しかし死神鬼が形見ともども冥界へ行けとわめくと、彼への怒りから殺生丸は天生牙を一閃する。死神鬼の背後に巨大な真円冥道が開き、死神鬼が放っていた七つ以上の冥道を飲み込む。驚愕した死神鬼は鉄砕牙が横にあったからかと悟り、犬兄弟の父を残酷な奴だと罵りつつ冥道の中に消え去る。
無言のまま去ろうとする殺生丸を呼び止めた犬夜叉は、今天生牙を極めたこと、死神鬼の刀への侮辱は言いがかりであること、その刀もまぎれもない父から兄への形見であったことを認めろと言う。例によって憎まれ口ながらも、兄の刀への敬意なのかと呟く弥勒達。殺生丸は真円冥道が開いたのは鉄砕牙が主で天生牙が従であることの証しでしかないと独白し、死神鬼の最期の言葉を反芻しつつ、自分と犬夜叉は死ぬまで闘い続ける運命だと言い残して背を向ける。琥珀は珊瑚に声をかけることなく殺生丸の後を追う。黙ってこれを見送る珊瑚。冥加は殺生丸の様子から父の真の目的に気付いたのだと独白。複雑な表情のまま兄の後ろ姿を見つめる犬夜叉…以下次号。
本来一本であった刀。天生牙は元の本体である鉄砕牙が間近で発動したことによって共鳴し、身につけていた完全な冥道残月破を放つ…こう書くとたしかに殺生丸が感じたように主従の関係に見えます。しかし腹違いとはいえ二人の息子達が互いに死ぬまで争い続けることなど、その父が望むわけがありません。死神鬼の悔し紛れの捨て科白をマジにとるのか愚か者!…と読んだ当初は思ってしまったのですが、よくよく考えてみるとこの兄貴、たとえ父が生きていて面罵されたとしてもやはり弟に同じ事を言うでしょうね。『覚えておく事だ。貴様と私は、死ぬまで闘い続ける運命にある。』それがわかっていたからこそ、偉大なる父は鉄砕牙を二つに分けたのでしょう。天生牙を鉄砕牙から切り離したのではなく、巨大すぎる力を均等に分けたのです。二本の刀が正しき目的のために振るわれる時にだけ、真の力が発揮されるように。
兄弟が相争うことは避けられない。しかし人間の血が混じる弟は本気で兄の命を奪うことはできない。だから兄が慈悲の心を身につけるまで、天生牙は癒しの刀であり続けたのです。犬夜叉が初めて風の傷を見切って兄に鉄砕牙を振るった時、天生牙は殺生丸の命を結界でガードしました。刀を振り切ることができなかったのが弟であり、父の読みだったのでしょう。二本の刀が闘う時は互角であって決着はつかない。互いが互いの使い手の命を守るからです。犬夜叉が自ら鉄砕牙を手放そうとしても、殺生丸は認めないでしょうね。この異母兄弟の意地の張り合いは、おそらくこの作品が最終回を迎えても終わることがありません。兄と弟ゆえに。
ですが、かつて卑しい人間の血が混じる半妖として弟を侮蔑していた殺生丸はもういません。今回の言葉で、犬夜叉を生涯を通じて闘うライバルと認めたのです。彼にとって奈落とは自分をコケにした相手であり落とし前を必ずつける気でしょうが、犬夜叉に比べれば他の雑魚妖怪とさほど変わらない存在ということです。
かごめ贔屓としては、今週は犬夜叉の憎まれ口について『殺生丸を励ましてるのかしら』の一言ですね。犬夜叉と一緒にいる限り、この兄との関わりも続きます。いつか殺生丸がかごめのことを名前で呼ぶ時が来るでしょうか。
週刊少年サンデー10号掲載・第492話「父の真意」
殺生丸は亡き父の意図がわからず、なぜそこまで自分をないがしろにするとやりきれない思いで死神鬼に突進。複数の真円冥道が次々と周囲に穴を空ける。足元の岩を爪で砕くが死神鬼はまったく怯まずに攻撃続行。無謀だと兄を怒鳴る犬夜叉。弥勒は冥加の体をつまんで護符に乗せ、犬夜叉のところに飛ばす。犬夜叉の肩に来た冥加は、殺生丸に父の真意を懸命に伝えようとし、兄が真の妖怪であればこそ冥道残月破を天生牙に変えて譲り、正しく使いこなすと考えたのだと諭す。しかし殺生丸は鉄砕牙から切り離された刀であることが納得いかない。死神鬼は兄を頼もしいと考えるなら、冥道残月破付きの鉄砕牙を譲ればよかったはずだとせせら笑う。
殺生丸は話すことはないと再度死神鬼に直進。冥道の一つが殺生丸の左腕部分を抉るが、右手の爪が死神鬼の仮面を叩き割ってふっ飛ばす。左腕は弟に与えられた鉄砕牙によって失われたが、闘いの上でのそれを恨んではいないと独白する殺生丸。半分欠けている死神鬼の顔を見て、あれで生きているのかと驚くかごめ達。殺生丸は卑しい貴様の口から天生牙の秘密など聞くべきでなかったと半目で呟く。もう遅いと杖を振るう死神鬼。横から飛び込んだ犬夜叉が、手出しするなと怒鳴る殺生丸に構わず金剛槍破を放つが、死神鬼は額に青筋を浮かべて無数の冥道で迎撃。金剛槍は次々と冥道に飲み込まれ、かごめが逃げてと絶叫。その時殺生丸の鞘の中で天生牙が脈打ち…以下次号。
冥道を五つ六つ飛ばされてもその狭間を潜り抜けて攻撃する殺生丸の素早さたるや凄いものです。危ない所には近づかない冥加が側にいく術がないとわざとらしく言うや否や、手をお貸ししますと護符で飛ばす弥勒がナイスフォロー。冥加はノミサイズなのに声は相当大きいようで、死神鬼にまで聞こえるのか。冥道残月破は危険な技だからこそ殺生丸の強さと才覚に賭けて天生牙を与えたのだとの冥加が伝えても、「そんなことのために、わざわざ天生牙を鉄砕牙から切り放したというのか」と返す殺生丸の目が冷えてます。父に疎まれているからだろうと死神鬼が暗に嘲笑。「言い負かされてんじゃねえか」と冥加を睨む犬夜叉。
しかし殺生丸は鉄砕牙に左腕を斬り落とされた時以来、ほとんど変化を解いて真の犬妖怪の姿になっていません。いつも人型のまま闘います。今回の独白でも左腕のことは闘いの過程で恨みはないとまで言っている。「天生牙の秘密…か。心卑しい貴様の口から聞くべきではなかったな。なにもかもがいじましく聞こえる」こう語った顔はむしろ死神鬼を哀れむ色さえたたえている。それでも犬夜叉の乱入には激怒の表情を見せるあたりがやはり血筋なのか。七つ以上の冥道が金剛槍の雨を吸い込む。これまで節々で常に、亡き父の意志を殺生丸に無言で伝えてきた天生牙がこの局面で抜けと…果たしてそれは金剛槍破に対してなのか冥道残月破に対してなのか。次週こそ天生牙の真の覚醒の時?
かごめ贔屓としては、今週はギャラリーだけでしたが犬夜叉と兄の身を案ずる表情が幾つもありました。鉄砕牙の封印を解いて父の体内から抜いたこのヒロインが、二本の刀の最終進化に大きく関わってほしいものです。
週刊少年サンデー9号掲載・第491話「鉄砕牙と天生牙」
昔、死神鬼は鉄砕牙と闘って敗北し冥道残月破を奪われた、その時天生牙は存在しなかった…かごめ達がそう呟き、死神鬼がその先を語ろうとした途端、殺生丸は激怒して天生牙を振るうが死神鬼は三度冥道を相殺。奪い取っても持て余し、鉄砕牙から切り放した、そのいらない技を受け継いだのが天生牙だと蔑む死神鬼。冥加は冥道残月破の危険性について犬兄弟の父が扱いを思案していたのは事実だとかごめ達に告げる。鉄砕牙を奪おうとしてからの経緯、天生牙を癒しの刀として使ってからの事を思い立ち尽くす殺生丸。元の刀を譲り渡した弟が人間の臭いの混ざる半妖とは、よほど殺生丸は父に疎まれていたらしいと嘲る死神鬼。いかに鍛えようと鉄砕牙の一部にすぎない天生牙から完全な冥道残月破は放てないというのだ。
動かぬ殺生丸に放たれた死神鬼の次の一撃を犬夜叉は風の傷で粉砕し、黙っていられるかとわめくがその頬を殺生丸が手出しは許さぬ、と殴り飛ばす。八つ当たりだと睨む七宝。二本の刀の過去が事実ならば残酷すぎると呟く弥勒。かごめは他に捨てる方法があっただろうに、天生牙にして兄に託したのは…と考える。冥加は父の真意を知っても殺生丸は納得しないだろうと独白。天生牙を鞘に収めて死神鬼に突進する殺生丸に次々と飛んでくる真円冥道。素手でも小さい冥道ならかわせると皆が見守ると、死神鬼の杖の輪が妖しく光り、一度に複数の冥道が飛び出す。犬夜叉は固め打ちされたら殺られる、と殺生丸に止まれと叫ぶが…以下次号。
先週書いた内容が半分までは当たったかなと自負しますが、兄のプライドとショックは凄いものだった様子。「鉄砕牙の結界に阻まれ触れることも許されず、武器ではない癒しの刀として天生牙を与えられ、武器として鍛え直した後に得た冥道残月破が…」他の妖怪の技でなおかつ完全にはなりえない。確かにこれでは自らの存在を否定されたかのように感じるでしょう。なぜだ…と呟く殺生丸の目つきには、これまで見せたことのなかった苦渋の色がありありと出ています。それを横から見た犬夜叉もまた言い様のない戸惑いと怒りを示す。この兄弟の表情の描写には唸らざるをえません。常日頃からいかに悪口を言っていても、殺生丸は自分の兄。父がそれを差し置いて本体の鉄砕牙を自分に与えたというのは居心地が悪い、というのが主人公の心根なんですね。
弟をぶん殴ってまで死神鬼を単独で葬ると意思表示するのは兄の意地であり強烈な自負心。無数に冥道を放つという反則技まで使える死神鬼を倒すとすれば、もはや冥界に道連れにして向こうでぶった斬るしか方法がないか? 今の殺生丸が死神鬼を斬れば、初めて完全な冥道残月破が天生牙に宿るでしょう。父の真の意図は、彼が身を挺して悟ってくれると信じます。犬夜叉よ、死神鬼が殺生丸を冥道に捕らえたら続け様に吹き飛ばしてやれ!
かごめ贔屓としては、今週はなんといっても『本当に必要ない技なら、他に捨てる方法があったんじゃない? それをあえて天生牙という形にして、殺生丸に託した…』それだそれ! 犬兄弟の父、人間である犬夜叉の母を愛した彼の意図に思い至ることこそヒロインの真骨頂!
週刊少年サンデー8号掲載・第490話「天生牙の秘密」
殺生丸は泣き言を言うために呼び出したのかと挑発するが、死神鬼は同じ技の使い手や天生牙のような不完全な刀はいらぬと叫び、殺生丸の真横に真円の冥道を飛ばす。知っていることを答える気がないなら用はない、と再び冥道を開く殺生丸。そこへ犬夜叉達が到着し、巨大化した冥道を知る。死神鬼が大きいだけで真の円は永遠に描けぬ、と再度真円冥道を飛ばすと、これが内側から殺生丸の冥道を吸収する。殺生丸は犬夜叉に、珊瑚は琥珀にそれぞれ気付く。
犬夜叉の右肩で冥加は死神鬼の名を叫んで驚き、皆には犬兄弟の父に敗れた妖怪だとだけ語るが、殺生丸が天生牙の秘密を知ればまずいことになると内心で危惧。死神鬼は犬夜叉に気付くといきなり真円冥道を飛ばす。咄嗟にかごめを庇ってこれをかわすと、鉄砕牙で風の傷をお見舞いする犬夜叉。足元の崖が切り刻まれたのを見た死神鬼は、弟の方に鉄砕牙を与えたのかと不敵に呟き、なぜ兄が譲り受けられなかったと殺生丸を皮肉る。闘うために呼び出したのなら余計な話をするなと殺生丸が天生牙を振るっても、死神鬼の杖が同じく冥道を飛ばして相殺する。冥道残月波の使い手がもう一人いたことに驚くかごめ達に、元々死神鬼の技なのだから吸収されるのは当然で、犬兄弟の父が奪い取った技だが殺生丸はまだ完成させていないと語る冥加。弥勒は天生牙にも鉄砕牙同様に相手の能力を奪い取る力があるのか、と鋭く突っ込む。
死神鬼は犬兄弟を前に天生牙がどう生まれたか知らぬかと呟き、親父と闘った時には天生牙は存在しておらず、実際に闘ったのは鉄砕牙だと驚くべき事実を告げる。殺生丸の表情が激変して…以下次号。
犬兄弟の父が息子に残した二本の形見の決定的な事実が明らかになりました。死神鬼と闘って勝利し冥道残月波の能力を奪い取った彼は、自らの絶大な妖力が加わってあまりに巨大したその力を危惧したため、あえて能力を分離して天生牙を作った(正確には刀々斎に作らせた)のでしょう。刀の使い手がその能力に驕れば世を滅ぼしかねないと。だから天生牙には二重三重の封印が施されていたのです。弱き者の命を憐れむ心、敵に対する慈悲の心、これらが殺生丸に備わるまでは“殺せぬ刀”であったわけです。死神鬼は次回で泥棒猫の刀だと殺生丸を侮辱するでしょうが、今の殺生丸はなぜ天生牙に冥界で敵を斬る力や死者の魂を呼び戻す力があるのかが理解できるはずです。冥加は再び殺生丸が鉄砕牙への野心を再燃させるのではと心配そうですが、一時的に大屈辱を覚えたとしても、今の彼はもう以前の彼とは違っているはずです。
『ぬうっ、あいつめっ、殺生丸さまが一番気にしていることをっ…言われなくとも何度も鉄砕牙を奪おうとなさり、挙げ句の果てにその鉄砕牙で左腕を斬り落とされ、やっとあきらめて天生牙を鍛えているというのにっ…』いやどうも邪見、簡潔な解説ありがとう(^^;)。直後に琥珀とりんが『わかり易いのですが…殺生丸さまがそばで聞いてたら間違いなくぶっとばされてるよ』とこれまた完璧なツッコミ。万一兄が怒りにまみれるようなら、最後の悟りをもたらすきっかけを作るのが弟であり主人公たる犬夜叉の務めかもしれません。腹違いの兄弟でもその血筋に必ず相通ずるものがある。この作品の持つ多種多彩なテーマの一つが、いよいよ昇華されようとしています。
かごめ贔屓としては、今週は冥加のコマなんですけどその乗ったかごめの右肩のアップがいい。矢羽根が大きい、リュックの帯が大きい。こんなに接近してめったに見れるもんじゃありません。願わくば弟の犬夜叉が言えないことを、兄に大声で告げる役割を担ってほしいなあ…。
週刊少年サンデー7号掲載・第489話「完全な冥道」
童子は天生牙の冥道が真円になっていないことを直言し、知りたければ後に付いてくるように告げて歩き始める。琥珀の四魂の欠片の気配を察したかごめを背負って走る犬夜叉は、殺生丸の臭いを嗅ぎとる。両者が揃って行動しているのかと話す弥勒と、薬老毒仙の毒と薬をくぐった飛来骨は元のままではなく変化しているとの言葉を反芻する珊瑚。
童子の後に続く殺生丸に邪見は罠でないかと危惧するが、それなら斬るまでと単純明快な返答。突然前を行く童子の姿が消えたと思うと、崖の上から衝撃波が飛んできて殺生丸と琥珀達の間の岩道を砕く。殺生丸は天生牙を居合い抜きして崖の下に冥道残月破を放ち三日月型の大穴を開けるが、崖の上にいた童子の横には仮面で顔の左半分を覆った男が立っていた。天生牙の秘密を知りたいかとの言葉に、なぜ天生牙を知っていると問う殺生丸。昔、貴様の父親と戦った時の天生牙はそんな形ではなかったとの返答に、殺生丸は間合いに飛び込むと足元に爪の一撃。軽くかわした相手は死神鬼と名乗り、秘密を知るために刀を使わずに倒す気とは舐められたものだと奇妙な形の武器を一閃する。飛んできた衝撃波が崖にぶつかると、直径こそ小さいが完全な冥道が一瞬開いて真円の穴が空く。これに驚きを隠せない殺生丸に、死神鬼は元々自分の技だった冥道残月破が殺生丸の父にこの顔ごと奪われたのだと語り、仮面を外すとその下には何もなく…以下次号。
『こりゃきさま何者だっ!なぜそんなことを知っているっ!!』『黙れ、邪見』『なにも言っておりませんっ』『なんでいつもそういうウソつくのー?』…シリアスの権化である殺生丸の周りにボケとツッコミをやる邪見とりんがいるのは絶妙の取り合わせといえましょう(^^;)。しかし二度目の臨死体験をしたりんのために、移動用に双首の妖怪(まだ名前が不明)をつけてやるあたり優しい主人ですよ。琥珀が殺生丸に付いていることを知った犬夜叉達はおそらく合流できるでしょう。飛来骨は元の形に戻ったとはいえ、戦いで使った時にどう変わっていても驚くなとの薬老毒仙の言葉が気になる珊瑚と読者。
りんが載せてもらう双首の妖怪は、雲母同様に空も飛べるらしくて凄い。最初の攻撃で吹っ飛んだ邪見をすかさず琥珀が鎖鎌の分銅を飛ばして救出する一コマに、殺生丸一行の日常が垣間見えます。さて天生牙の秘密をひっさげて登場した新キャラ・死神鬼は父の代の因縁絡みの敵ですか。やはり人型の美形ながら顔の左が欠けている隻眼。これでも死なないあたりが妖怪の生命力ですな。持っている武器は三日月型の刃物が両端についた杖で、その片方は円環もある…まさに元祖冥道残月破を象徴する形状をしています。変化を解くと殺生丸同様に別の姿があるのかもしれませんが、犬兄弟の父への恨みは相当なものの様子。さてどんな経緯で冥道残月破が父の手に渡ったのか、回想シーンでついに生前の父の姿が描かれることになるのでしょうか。
かごめ贔屓としては、今週は出番なしだろうと思っていたのでわずか二コマでも犬夜叉の背中におぶさるいつもの光景が嬉しかった。しかし両手を犬夜叉の胸のところで組んでいるのは、単に両肩に当てているよりも親密度が高いと感じます(*^_^*)。
週刊少年サンデー6号掲載・第488話「答え」
飛来骨を形成する妖怪達は珊瑚の四股を捕らえ、首筋に爪を突き付ける。二度と裏切らぬと誓えと脅す妖怪達に、それでも珊瑚は偽りの誓いはたてられぬと拒み、あの法師は命を懸けるほどの男なのかという問いにはきっぱりと頷く。毒薬を飲み干した弥勒は焼け付く痛みに苦しみ倒れ伏す。様子を危ぶんだかごめが近づこうとすると薬老毒仙が長い腕を伸ばしてスカートめくりし、犬夜叉にタコ殴りされながらも毒がなじむまで触らせたくないからだと弁明。犬夜叉は弥勒を案ずるかごめに酒だと一言返す。後悔していないかと問う薬老毒仙に、弥勒は苦痛の中でも珊瑚とともに戦うことを願い続ける。
瘴気に蝕まれている法師は重荷でしかないと言う妖怪達。何度も命懸けで自分を助けてくれた男だと言う珊瑚。だから命を捨てるのかと妖怪達が攻めると、捨てる気などない、生きる力をくれる男だから一緒に生きていくのだと言い切る珊瑚。私達に力を貸してほしいと願う珊瑚と、脂汗を流し拳を握る弥勒…珊瑚のいる瓶の水は脈打って次第に澄んでいき、妖怪達の体は溶けて骨へ戻り始める。犬夜叉とかごめは毒が薬に変わったのかと驚く。人間の情などわからぬが法師の覚悟が伝わった今、それを見届けるとの言葉を残し、妖怪達は再び共に戦おうと飛来骨を再生。涙を浮かべてこれを抱きしめる珊瑚。薬老毒仙の毒と薬はすべて繋がる。弥勒の体に注ぎ込んだ毒が瓶の毒を薬に変えたのだ。苦痛が消えて楽になった弥勒は、再生した飛来骨を抱えて出てきた珊瑚と安堵の再会。弥勒の体が良くなっているわけではなく瘴気の傷は広がる一方だと念押しする薬老毒仙に、犬夜叉は礼を述べる。
琥珀が加わって行動する殺生丸一行。天生牙の冥道は開いたものの完全な円にはならなかったことが主のピリピリムードになっていると溜息の邪見。そこへ天生牙の足りない部分の秘密を知りたくないかと奇妙な目の童子が現れ…以下次号。
見事なりミロサン。飛来骨には嘘を言えないと語る珊瑚も、苦しみと痛みさえ感じないなら風穴を開いてともに戦えると願う弥勒も、生きていく強い意志ゆえの絆。『私は法師さまとともに生きていく。法師さまは私に生きる力を与えてくれる。』こう独白する珊瑚の表情がいかに澄んでいることか。弥勒の覚悟を認めた飛来骨は、二人を見届けようと再生する…義侠だよ妖怪達。弥勒は自らの意志の力によって毒を制し、死に近づこうとも珊瑚を守るべく戦う道を選ぶ。珊瑚は法師の覚悟という言葉から何かを察したでしょうか。いずれ彼の真実を知る時が来ます。気付かぬふりをしつつ一緒に戦うことが愛情か、それとも隠し事をしないことが愛情か。まだまだ深いものを見せてもらえそうです。
スカートめくりの意味するところ、付き合いが長い分犬夜叉にはわかっていたようですが(*^_^*)、女性が下着を身につけるようになったのは昭和になってからだそうなので戦国時代の段階じゃあ存在しなかったはず…。腕が長いというのは色々便利ですな。しかし弥勒からの口止めを言葉少なげに守るあたりが犬夜叉の男気ってやつです。口の悪い彼が『それでも礼を言うぜ』なんて珍しいこと。今後は盟友弥勒の戦い方に、行動で応えてくれるでしょう。さて殺生丸の方は天生牙の最終進化まであと一息ながらも、何が必要なのかがわからず煩悶のところへこの眼の有無不明の童子登場。何者なのか。
かごめ贔屓としては、今年は衝撃の一コマもたぶん「純白」だったんだろうなと犬夜叉にボコられそうな想像からスタートです(^^;)。珊瑚同様に弥勒の真実を知らされないのは、弥勒の強い望みとはいえ少しばかり悲しくもありますが、やがて来るであろうクライマックスには必ずヒロインらしさを見せてくれるでしょう。
さて2006年連載分も読みたいという方はこちらをどうぞ。
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