マネジメントシステムの解説

【日本流経営システムとISOマネジメントシステムの差異】

 ISO9001、ISO14001などのマネジメントシステムの要求事項は、効果的なマネジメントを行うために「やるべきこと」を体系的に漏れなく示していますが、どのようにしてその要求事項を達成するかの手段は示しておらず、組織が具体的に決めるよう求めています。一方、日本の経営システムは、何をやるべきかが体系的に決められておらず、ISOのマネジメントシステム要求事項の一部が漏れている場合がありますが、どのようにして「やるべきこと」を達成するかの手段は、色々工夫して改善が進められており、充実しています。

 日本の成長を支えた目標管理制度、TQC、QC、TPM、5S等は、どのようにして、ISOの要求事項を達成するかの手段と位置づけることが出来ます。すなわち、日本流マネジメントシステムには、ISOのマネジメントシステム要求事項の大部分が含まれています。

 組織ですでに運用しているマネジメントシステムに、ISOマネジメントシステムの要求事項の「やるべきこと」で欠落しているものがあれば、それらを加えることで、より効果的なマネジメントシステムとすることができます。下記に、一般的な日本流経営システムでの実施例とISO認証取得に必要な改善事項を記載します。

マネジメントシステムの要素 日本流経営システムでの実施事例 ISO認証取得に必要な改善事項
方針 経営理念・経営方針 スローガン的で具体性に欠ける。
方針についてのコミュニケーションがない。
方針の重要性を自覚させていない。
活動・製品の要素 ブレーンストーミング法、KJ法、KT法による課題決定 手順が決まっていない。
以前のものを見直しせず最初からやり直す
法的及びその他の要求事項 各部署での個別対応
(点検計画、行政への届出・報告、など)
手順が明確でない。
体系化されていない。
目的、目標及び実施計画 目標管理制度、方針管理制度 手段が具体的でない場合がある。
スケジュールが明確でない場合がある。
資源、役割、責任及び権限 職務分掌、組織図、役割分担表
各種委員会
設備の導入や管理、担当者の選任
役割、責任、権限が具体的でない
役割、責任、権限の周知不足
力量、教育訓練及び自覚 既存の教育計画
OJT、5S活動の「しつけ」
具体的にどうするか手順が明確でない
コミュニケーション 朝会、メール、文書、掲示板、会議、提案制度
外部からの情報受付、クレーム対応、
報告書やホームページでの情報公開
一方的な伝達になっている。
会議などが多すぎ非効率になっている
文書類
文書管理
方針、規定、規則、操作手順、チェック表
文書管理手順
文書類を関連付け、統合管理する仕組みがない。適切な人が承認していない。
見直しがされていない。
廃止文書が管理されていない。
運用管理 TPM活動、QC活動、5S活動、従来の手順書、
業者への指示書・契約書
色々な運用管理を実施しており、中途半端になっている
緊急事態への準備及び対応 防災訓練、汚染事故発生時の訓練 リスクについての意識が不足
監視及び測定 管理チャート、チェック表、日報、月報会で
監視測定実施
部分的に監視測定し、体系的に監視測定されていない。
順守評価 各部署での対応(点検結果や届出・報告内容
の確認など)
部分的に評価し、体系的に評価されていない。
不適合並びに是正処置及び予防処置 クレーム・トラブル報告書、問題報告書など
原因究明にQC手法・KT法の活用
システムの原因追求がされていない。
是正処置の効果が確認されていない。
記録の管理 個人管理 管理する共通の仕組みが無い。
記録を探すのに時間がかかる。
内部監査 現場パトロール、監査役による監査 手順が決まっていない。
監査員教育がされていない。
計画的・体系的でない。
マネジメントレビュー 経営会議、社長報告
(パフォーマンスについての言及)
インプット情報が十分でない。
方針、目的・目標、システムの改善に言及していない。