12月15日ダマスカス(アサド図書館ホール)
ピアノリサイタル
ここシリアで最も格式の高い会場とされるのがアサド図書館ホールであ
る。しかしその作りは会議用で、反響版はない上客席はカーペットで覆われ
ているため、残響が全く無い。昨年はこれに、手入れが少なくコンディション
の悪いピアノを使用せざるを得なかった。
ところが今年は日本の楽器メーカーの援助により、ピアノの技術者がダ
マスカスの支店から派遣され、充分な調律がなされた状態で演奏するに恵
まれた。シリアの人々に良質な音楽を届けようという私たちの目的を考え
ると、このようなご支援は非常に貴重なものである。
アレッポでのリサイタル同様、ここでのリサイタルはブラームス、ショパン、
スカルラッティを紹介した。また邦人作品としては、武満徹のLITANYと、中
山博之氏がこのコンサートのために作曲した委嘱作品「日本の情景」が演
奏された。いずれも現代作品ではあるが、武満作品の静かで豊かな色彩に
溢れた世界と、中山作品の描く叙情的な美しさが、会場内を別世界に導く。
満員の会場は熱気につつまれた
昨年もそうであったが、これら聴きなれない現代作品に対しても、シリア
の聴衆は静かに、そして真剣に耳を傾ける。その姿勢は、何ら東京の観客と
変わることが無い。そのような質の高い観客に対し、全身全霊を込めて、語
りかける。その語りに対し、聴衆は拍手をもって応える。そこには、確かな心
の通じ合いがあった。
本番はテレビカメラが4台入る中で行われた。聞けば、後日国営放送で特
集を組んで放送されるという。このような様子にも、シリア側の真剣な姿勢
が見て取れた。
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