12月14日 アレッポ(国立文書館ホール)
ピアノリサイタル
質の高い音楽を提供するとともに、西洋や日本の音楽を紹介することを
目指し、アレッポとダマスカスでの2回のピアノリサイタルが行われた。
ここアレッポは多くのアルメニア人が住み、前日の公開レッスンにおいて
も生徒たちはレベルの高い演奏を披露した。いわばシリアピアノ界を背負っ
て立つ彼らが住むこの地でのリサイタルは非常に重要なものと考え、演奏
会に臨んだ。
照明が点燈しないなどのトラブルに見舞われ、開演時間が20分も遅れた
が、これもシリアならではのことである。これ以外にも、本演奏旅行を通じて
日本ではまずは起こらないような事態に数多く遭遇し、面食らうこともあっ
た。シリアの方はこのような事態においても平然としていたが、このような
感覚の違いこそ、文化・習慣の違いから来るものであり、我々としては対応
に苦慮する反面、ある意味では興味深い。これも一種の交流であろう。
西洋音楽と日本音楽の紹介を目的としたこのコンサートでは、ショパンや
ブラームスの名曲と共にスカルラッティの作品を取り上げたが、恐らく多くの
曲がシリアでは初演であると思われる。ここでは予想通り、抽象的な曲より
技巧的な曲が好まれる傾向が強いようで、特に最後のブラームス「ピアノの
ための小品」の演奏では大いに盛り上がり、満場の観客が惜しみのない拍手
を贈っていた。
音楽学校の生徒のほか、アレッポの大学で日本語を学ぶ学生も演奏会を訪
れていたが、彼らは日本の音楽を殊のほか楽しんでいたようだった。極東の
島国から遠く離れたアラブの国にも、日本の文化に興味を持ち、日本語を学
ぶ学生がいることは、一日本人として非常に嬉しく思える。彼らはシリアと日
本を結ぶ架け橋となって活躍してくれることだろう。手を取り合って創る私た
ちの未来に、思いを馳せる夜となった。
会場となった国立文書館ホール
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