2.アルミホイール、センターキャップ (1/4ページ)

 アルミホイールは、車イジリのイロハのイ、でもどれを選ぶか悩みどころです。「これしかない」と一点張りでピーンと来れば話は簡単ですが、私はちょっと悩んだ口です。ホイールの選定には、走行性能の観点と、外観の観点がありますが、レース用などの特殊なケースを別とすれば、外観デザインはとても重要な要素です。もちろん、デザインは好き嫌いの世界ですので、どれが良い、悪いということは一切ないのですが、しかし、こういうデザインのものはこう見える、という共通的に当てはまる法則性のようなものはあります。また、ホイール単体でカッコ良くても、車に装着したときにどのように見えるかは別の話で、そのあたりも考慮に入れて選ぶ必要があります。では、その辺りのホイールデザインをちょっと科学してみたいと思います。(本来は「よしなしごと」に書くような内容ですが、図解が多いこともあり本編に記載しました)

    

 上の絵は古典的な錯覚(錯視)の絵です。左の絵の青線は上の方が長く見えます。また、真ん中の絵の赤線も上の方が長く見えます。右の絵の黄丸は右の方が大きく見えると思います。実際には、これら線の長さや丸の大きさはそれぞれ同じです。人間の目の見え方には共通の法則性があり、実際とは異なる見え方(つまり錯視)をします。これは、アルミホイールの見え方についても当てはまりますので、そうした法則性を知っておくと、単に好き嫌いだけで選ぶよりも、確実性の高い選定ができるかもしれません。アルミホイールのディメンジョンは、もちろん走行性能に直接関わるのですが、ここでは外観面から見ていきます。外観を決める大きな要素は次の4つです。

     1.形状デザイン
     2.口径   
     3.リム幅    
     4.オフセット

はじめに、形状デザインによる見え方の違いは、どんな具合でしょう?(目の検査みたいですね)

     

 まず左のA,Bの絵を見て下さい。A,Bはホイール単体をイメージした絵です。これらを比較した印象はどんなでしょう。左のA,Bの絵だけを見て、Aの方がカッコイイと感じる方は、ホイール選びに目の肥えた方だと思います。一般的にはAの絵は間延びしたように見え、Bの方が見た目のバランスが良いと感じるはずです。Aはスポークに見立てた放射状の6本の線に対してリムに見立てた外周の丸い線が細くて貧弱に見え、Bはそれが放射状の線とほぼ同じ太さで書かれているため安心感があります。あるいは、「AもBも、どちらが良いとは言えない」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、右の二つの絵はどうでしょう。これはA,B二つのホイールにタイヤを填めたイメージです。Bのホイールを填めた方は、どう見ても鈍重で、格好悪く思えませんか。

 まあ、あえてこういう重量感のあるデザインが好きだというご意見もありましょうが、ホイール単体のときとタイヤを填めたときとではイメージが大きく変化することは確かです。一般的に言うと、ホイール単体で見たときに少し間延びしたような感じに見えるくらいで、タイヤを填めると丁度良くなると考えられます。もうひとつ、上のA,Bのホイールは同じ外径に見えていたと思いますが、実際にはAの外径をBよりも少し小さく描いてあります。同じに書いたのではAの方が大きく見えてしまうからです。でも、言われなければ同じ外径に見えませんか?

    

 ホイールの口径は、形状デザインによって大きく見えたり小さく見えたりすします。では、どういうデザインが口径を大きく見せるのでしょう。左の二つは、上のA,Bと同じデザインの絵で、ホイールの外径(口径)を今度は同一に描いたものです。しかし、明らかに左側の方が口径が大きく見えます。つまり、リム部が分厚いホイールは、口径を小さく見せてしまうということです。右の二つは、スポークの本数を増やしていますが、やはりリム部分を薄く描いた左側の方が大きく見えます。口径を大きく見せたい場合は、リムが分厚いデザインのホイールは避けた方が良いと言えます。例えば、2ピース、3ピースのホイールはリムの内側にもう一段リムがつくような形になり、そのぶん分厚いデザインになりやすいので、それらを選ぶ場合は口径の見え方も考慮する必要があると思います。

 今度はまた、違う例です。上の二つは口径もリムの厚みも全く同一です。違いはスポークに見立てた青い線が短く止まっているか、外周まで伸びているかです。見ためは明らかに左側の方が大きく見えます。つまり、スポークが外周部まで伸びているデザインは、口径を大きく見せることがわかります。逆に、スポークが途中から奥方向に折れ曲がっているようなデザインは、実質的にスポークが短くなったのと同じように見えるので、口径を小さく見せてしまう傾向にあります。最近のホイールでは、スポークの先端がリムの上まで掛かっているようなデザインや、スポークの先端とリム面の段違いをなくして同一面でつながっているようなデザインが多くなっていますが、これらは口径を大きく見せるためのデザインだと言えます。

 こちらの二つはスポークの形状を変えています。この辺りになってくるとかなり微妙ですが、右の先細りスポークよりも、左のストレートな形状の方が大きく見えるという方が多いかと思います。これは、見るポイントをスポークに置くか、スポークの間の5つの白い三角形に置くかで見え方が違ってきます。主にスポークを見るようにした場合、右の先細りスポークは視覚的重心が中央付近に寄るため、小さく見えてしまいます。隙間の白い空間に目をやると、右の絵の方が外に向かって空間が広がっているため、大きく見えるかもしれません。実際のホイールでは、空間ではなくスポークの方に目を引かれますから、スポークが先細りよりもストレートや先太りの方が口径が大きく見えます。

 これらの絵は、分かり易いように単純にモデル化したものですが、実際のホイールでも全く同様の錯視が生じ、デザインによって1インチくらいは大きく見えたり小さく見えたりしてしまいます。ただ、口径は大きく見えれば良いというわけではなく、大口径のホイールを選びながら、尚かつ口径が大きく見える形状デザインのものを選んだりすると、大きく見えすぎて今度は車体とのバランスが取れなくなってきます。口径が大きく見えすぎると、大八車のような薄っぺらな印象になってしまい、まるでカラカラと音を立てて回るんじゃないかという感じになったりするので、過ぎたるは及ばざるがごとし、かもしれません。(VIPカーなどで時々明らかにオーバーサイズというのを見かけますね、「大八車みたいにカラカラ音がしそう」とは家内の言葉です:汗)

    

 さらに、ホイールを真正面から見た平面的な見え方以外にも、立体的にも一定の傾向の見え方があります。上の絵は、左が普通のスポーク型のデザインで、右はディープリムをイメージしています。リムの口径やスポークの長さは同一に描いていますが、パッと見では右の絵の方がスポークが短く、口径が小さく小さく見えます。これは手前側のリムにスポークの一部分が隠れているためです。ディープリムまでいかなくても、リムに奥行きがあるホイールは、タイヤのワイド感を強調できるのと引き替えに、口径が実際よりも小さく見えてしまう傾向があります。また、奥行きのあるホイールはツライチ感を強調するのにも向きません。大口径に見せたい、ワイド感や奥行き感を強調したい、ツライチにしたい、といった方向性を予め明確にして、それに従って見せ方を工夫すれば、失敗のないホイール選びに近づけると思われます。

(このページは、掲載している方法および結果を保証するものではありません)