ダイスケ  日だまり日記

(8)

11月6日〜11月19日

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11月6日(水)  「夢」

11月になって急に寒くなったね。Dorianさんがコタツを出してくれたのでさっそくもぐり込んだ。
うーあったかい!幸せ〜〜(=^^=)
手足を伸ばしていい気持ちで寝ていたら誰かがボクのお腹を蹴ったんだ。それでボクは思わずガブリと足を噛んじゃった。
「イタタ・・・なにすんのよーダイ!」
それはDorianさんの足だったんだ。

実はその時ボクはを見ていたんだ。ウサギを追いかけて広い野原を全力疾走している夢で、やっと捕まえそうになったときウサギのやつ後ろ足でぼくのお腹をけったんだ。それでボクはウサギの足をガブリとやったつもりがDorianさんの足だったというわけ。

猫も夢を見るのかだって?もちろん見るよ。赤ちゃん時代にお母さんに甘えているなつかしい夢とか、敵に追われて命からがら逃げている怖い夢とか、おいしいものを食べている幸せな夢とか・・・ときどき寝ぼけてギャッととび起きて走り出す事もあるけどね。そんな時はボス猫に追いかけられてる夢を見ているんだ。

夢でよかったよ・・・

 

11月7日(木)  「十二支」

「ね、うし、とら、う・・・」という干支に猫が入っていないのはなぜだ?竜(たつ)なんて架空の動物まで入っているというのに。これはかなり有名な話だからきいたことがあるかもしれないけど、次のような話があるんだって。

昔、お釈迦様が十二支を決めることにして、十二支になりたい動物は大晦日の夜までにお釈迦様のところに集まるようにネズミに伝言を頼んだんだって。ネズミは猫が嫌いだったので猫だけにはわざと一日ずらした日にちを教えたんだね。猫がお釈迦様のところに行ったのは元日で、もうすでに十二支は決まっていたんだ。

それ以来、猫はネズミを追いかけて目の敵にしているんだって。それにしてもネズミのやつ根性悪いよね。人間の世界にもこんな奴はいるらしいけど・・・。職場の先輩部下がネズミみたいなやつだったら最悪だね!

 

11月8日(金)  「汗」

寒くなるとあの夏の暑さが恋しくなるね。暑いからといって猫はだらだらと汗をかいたりしない。「額に汗して働く」のは人間ぐらいなものさ。猫はどこに汗をかくかというと、足の裏だ。あの肉球に汗腺があるんだよ。

でも猫がかく汗はだいたいが冷や汗なんだ。恐いとき、緊張したときなどに足の裏がジトッ・・・と濡れる。病院の診察台の上なんかペタペタと足跡だらけだよ。あそこはいつ行っても緊張するね。できれば一生行きたくないよ。

猫は忍び歩きが得意で廊下なんか絶対に音を立てずに歩けるけど、畳の上だけはどうしても「ミリ、ミリ」と音がしちゃうの。それは足の裏が畳に張りついて出る音で、脂性の人が素足で畳を歩くような音なんだ。

寝静まった部屋の畳の上を誰かが歩いている・・・誰もいないはずの部屋に・・・キャー!!!
寒い時期の怪談は間が抜けてるね、テヘへ・・・

 

11月9日(土)  「爪とぎ」

ボクは爪とぎは庭の柿の木でやるので問題ないんだけど、室内にいる猫の悩みはどこで爪とぎをするかなんだって。立派な「爪とぎ器」を買ってもらっても、気に入らなければソファーやじゅうたんでバリバリバリ・・・とやっちゃう。猫は家の中でいちばん研ぎ心地のよいもので爪を研ぐ、と決めているからね。

どうして猫は爪を研ぐのかというと、これも昔の狩りの習慣で、獲物を追いかけて捕まえるとまず両脚でがっちりと押さえ込む、その時獲物を逃がさないように曲がった爪を獲物の体に食い込ませるんだ。獲物はもがけばもがくほど爪が食い込んで絶体絶命ってことになる。つまり爪とぎは武器の手入れってわけさ。

さて、現代の猫はそんな狩りとは無縁だけれどやっぱり常に爪をとがらせておく。これはもう本能なんだね。どんなときに爪研ぎをするかというと、ボクのように放し飼いの猫は出かける前に、室内飼いの猫はこれから何かをしようとするときにバリバリ・・・とやる。

爪研ぎは「やる気まんまん」の証拠なんだよ。

 

11月10日(日)  「コタツ」

コタツにはいるといつもチビのことを思い出す。チビはコタツが大好きで、どこにいてもコタツのスイッチを入れるカチッという音をきくと飛んできて、モソモソとコタツにもぐり込んだものだ。Dorianさんがときどき意地悪をしてカチ、カチとスイッチを入れてすぐに切ったりすると、いそいそとコタツに入りかけて恨めしそうにDorianさんの顔を見上げるんだ。Dorianさんは大笑いしていたけど、そんなチビはもういないんだよね。

チビとボクはあまり仲が良くなかったので、いっしょにコタツにはいるときはケンカしないように両脇に離れて寝たんだけど、今年の冬はボクがコタツを独り占めしている。なんだか淋しいよ・・・

 

11月11日(月)  「佐渡おけさ」

♪はぁ〜佐渡へ〜佐渡へと〜草木もなびくよ〜♪ という「佐渡おけさ」の踊り知ってる?あれは猫の姿を真似して踊ってるんだよ。手の動きなんか猫そのものでしょ。佐渡おけさには猫にまつわる話があるんだって。「猫の恩返し」の話だよ。

昔々、佐渡に流行らないお蕎麦やさんがあったんだって。そのお店の夫婦は一匹の猫をとっても可愛がっていたんだ。でもお店は客が入らなくて今にもつぶれそう。そんな時におけいという美しい娘さんが店に来てお店の窮状をきくと、「では私が歌い踊りましょう」と言って店の前で踊り出したんだって。美しい娘の踊りを見たさにお店には客がわんさか来るようになり、ソバ屋は繁盛したけれど、おけいさんは過労で死んでしまったんだ。すると娘の姿は飼い猫の姿に変わったんだって。可愛がってくれたお礼に猫が恩返しをしたんだね。

でもこれは人間の作り話で、もともと猫は人間に恩なんて感じていないので、恩返しなんてあり得ないよ。

 

11月12日(火)  「猫の鳴き声」

ボクの友達から「猫って声変わりするの?」ときかれたので、猫の鳴き声についてボクなりに考えてみたんだ。

猫の鳴き声の「ニャー」というのは人間に話しかけるときのことばで、仲間同士では絶対にあんな声は出さない。ケンカするときの「シャーッ」とか「カーッ」とか「ギャッ」とかは思わず喉から出る音で、恋の季節に相手を捜す「ウオ〜ン」とかいう鳴き声も意識しないで出てしまううめき声みたいなものなんだ。

それで人間に話しかけるときの「ニャー」とか「ニャン」という鳴き声だけど、本来はお母さん猫に甘えるときのことばなんだね。猫はいくつになっても子どもの心でいるのでこの「ニャーオ」という鳴き声もいつまでも赤ちゃんのときの声なんだ。つまり「猫は声変わりしない」というわけだね。

でも、いざという時には激しいうなり声や悩ましいうめき声はちゃんと出るから心配ないよ。これは本能だからね。でもできればそんな声は一生出さないで暮らしたいもんだよね。

 

11月13日(水)  「自立」

猫はもともと単独生活を好む動物で、大人になった猫が人間みたいに友達を作ったりいっしょにどこかに行ったりなんてことはまずないね。孤独が好きなんだ。たとえ数匹がいっしょの家で暮らしていても、よっぽどのことがない限りくっついて寝たりしない。本箱の上だのイスの上だの、自分のお気に入りの場所をみつけて、バラバラに寝ているんだ。くっついて寝るのはお母さんか子どものころの兄弟だけだね。

でもある程度大きくなったら母親は子どもを追い払う。これはお母さんが子どもの将来を考えて心を鬼にして子離れするなんてものではなくて、ただそばにウロウロしているのが鬱陶しくなるんだね。でも最近の猫はだんだん人間に近づいているのか、子離れができない母猫が多くなってきたらしい。

でもお母さんにいつまでも甘えられる猫は幸せだと思うよ。どっちみち猫はいつまでも子どもの気分を持ち続けるもので、お母さんと引き離された猫は代わりに人間に甘えるんだからね。甘えればいつでもご飯がもらえるし快適な環境も与えられる。

大人になったら働いて自立しなくてはならない人間はけっこう大変だね。猫に生まれてよかったよ、ボク。

 

11月14日(木)  「掟」

人間の世界では「できの悪い子ほど可愛い」なんて言うらしいけど、猫のお母さんはかなりシビアで、できの悪い子はどんどん切り捨てていくんだね。例えば、同時に生まれた赤ちゃんをお母さんから引き離して離れた場所に置くとお母さん猫は飛んできて、まず一番元気な赤ちゃんをくわえて連れ戻すんだって。ふつう弱い子から助けると思うでしょ。これはどうしてかというと、確実に子孫を残すための動物界の掟で、弱い子どもを優先したら共倒れになってしまう危険性もあるからなんだね。

ところでボクは兄弟の中でいちばん小さくて弱々しくて、よそに里子に出せなくてDorianさんちに残ったんだって。今のボクからは想像もできないけどね。ほんとうならボクなんかいちばん最初に置き去りにされるところだったんだ・・・(-.-#)

こういうデキの悪い子猫が人間の手によって育てられると、猫らしくない猫になるんだって。より人間に近い個性的な猫に。たまに芸をやる猫なんかが紹介されたりするけど、あれはきっとお母さんに見捨てられた可哀想な猫だったんだね。

 

11月15日(金)  「節分猫」

この前 BBS に「猫の発情期は春」なんて書いたけど、正確にはもっと早い時期なんだね。

動物は餌が豊富になり暖かくなる春に出産するのが普通だけど、春に出産するためには妊娠期間の2ヶ月を差し引いて、2月のはじめに仕込むのがいちばん理にかなっているというわけ。それで恋の季節は1月末から2月初めにかけてがもっとも激しいんだ。この時期の恋する猫を「節分猫」と言うんだって。なんとも情緒的で優雅な言葉だよね。「ワオ〜ン、ウオ〜ン」という悩ましげな鳴き声を聞くと「もう春か・・・」なんて俳句の一首でもひねってみたくなるんだろうね。

でも実際にはそんな生やさしいものではなく、断末魔の叫びみたいな声を出すやつもいて、猫嫌いなオヤジに水をぶっかけられるのもそんなやつだ。

猫は年に4回発情期がある。ずいぶん猫は好色みたいに言われるけど、とんでもない!発情期以外の猫はメスもオスもただの猫なんだから・・・。10代の初めから死ぬまでエッチなことに反応する人間のほうがよっぽど好色な動物だと思うよ。

 

11月16日(土)  「ハッタリ」

人間は寒いときや恐いときに「トリ肌」が立つんだってね。じつは猫もトリ肌が立つんだよ。

ケンカをするときなんか毛をボワーッっと逆立てて背中を丸め、シッポもふだんの2倍ぐらい大きくふくらませて睨み合う。この時、毛穴の一つ一つが盛り上がって鳥肌がたっているというわけなんだ。

どうしてこんなに毛を逆立てるかというと、体をできるだけ大きく見せているんだね。つまり相手に対するハッタリなんだ。本当は恐いけれど「どうだ、オレは大きいんだぞ、強いんだぞ」と虚勢を張っているってわけさ。

この睨み合いは長い。見ている方で焦れったくなるほど長いんだけど、本当はムダな争いはしたくないので、様子をうかがいながら相手が折れるのを待っているんだ。その時一瞬でも弱気を出すと相手は「勝った!」となって均衡が破れる。剣豪同士の果たし合いみたいなものだね。

負けた猫は小さくなって耳を伏せ下から相手を見上げる。ギブアップのジェスチャーだね。そして脱兎のごとく逃げ出すんだけど、勝った猫はそんなに深追いしないのが原則だ。それが武士の・・・じゃなく猫の情けってもんだね。

 

11月17日(日)  「ハッタリ2」

猫は自分を大きく強く見せるために毛を逆立てる。これは人間にも言えることでヤクザのオニイサンが肩を怒らせて歩くのも同じ心理だと思うよ。体の小さなヤーサンがふんぞり返って歩いていると、おかしくて笑いをこらえるのが大変だよ。江戸時代のかみしも、現代の背広の肩パットなどもやっぱり強く見せるための演出じゃないかな。偉そうにしていると「大きな顔しやがって」なんて言われるのも同じで、べつに顔が大きくなるわけじゃないんだよね。

ところで猫が負けを認めて「ごめん」と地面にひれ伏すと、相手は攻撃意欲が失せて不必要な深追いはしないんだけど、人間の場合はそうでもないらしいね。相手が弱味を見せると急に強気になってとことん攻撃してくる。そしてたくさんの犠牲者を出したりするんだ。

まったく人間てアホな動物だね。

 

11月18日(月)  「招き猫」

猫が右手をあげておいでおいでをしている置物、あの招き猫のファンてけっこう多いんだよね。大きいのとか小さいのとか細長いのとか、デフォルメされたものとかじつにたくさんの種類があって、招き猫コレクターもたくさんいるんだって。猫としてはありがたいことだね。

あの招き猫の伝説はどこからきたのだろう?それには2つの説があるんだって。まず一つは・・・・豪徳寺(東京・世田谷)のタマちゃん伝説。偉いお侍さん(井伊直孝)が狩りに出かけるとお寺の前で手招きする猫がいる。猫に導かれてお寺の中にはいるととたんに雨が降ってきたんだって。その猫はお寺で飼っていた「タマ」という猫だったんだけど、その猫のおかげで雨に濡れずにすんだので、お侍はおおいに喜んでそのお寺を井伊家の菩提寺にしてタマを可愛がったそうだ。

タマが死んだときに祀ったのが「招福庵」で、今でも豪徳寺の中にあるらしい。いま「タマちゃん」といったら、汚い川で暮らしているアザラシのタマちゃんだけどね。

 

11月19日(火)  「招き猫2」

もう一つの招き猫伝説は、昔の遊女屋のトレードマークが手招きする猫だったというもの。

猫が遊女で「おいでおいで」をして男の客を誘ったんだね。その遊女たちは三味線をひいて客を引いていたんだけど、その三味線が猫の皮でできていたので猫には縁があったんだ。その置屋の名前も「金猫・銀猫」という縁起の良い名前だったそうな・・・

そういえば招き猫の顔ってなんだか色っぽいよね。猫がおいでおいでしていると、ついフラフラとお店に入っちゃう客の気持ちがわかるような・・・分からないような・・・

つづく