ダイスケ  日だまり日記
(7)

10月16日〜10月31日

 

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10月16日(水)  「?の形のシッポ」

10月も半ばだというのに毎日暑いね。きょうなんか26度の夏日だよ。まったくどうなってんだ!ま、寒いのよりはいいけどね。きょうはシッポの話だよ。

猫のシッポはじつに多くを語っているんだけど、それを分かってくれる人間は少ないんだよね。シッポをピンと立てて先の方だけちょっと曲げる・・・そう、あのはてなマーク(?)の形をするのは親愛の情をあらわしているんだ。それから、シッポを立ててお尻を突き出すポーズ・・・人間はオシッコをひっかけるのかと思って慌てるけどとんでもない!あれは赤ちゃんの時にお母さんにお尻を見せてオシッコが出るかどうか見て貰った名残なんだ。だから人間に完璧に心を許している証拠なんだよ。

よく猫は恩義を感じない動物だっていうけど、いくらなんでも飼い主にオシッコをひっかけるほど恩知らずじゃないよ。

 

10月17日(木)  「マーキング」

オシッコの話題をもう一つ。オス猫が電柱や塀のかどや木の幹などにオシッコをかけるあのマーキングは人間にはとても迷惑な行為らしいね。猫が嫌いな人はあのマーキングが我慢ならないらしい。でも家の中でやるのなら別だけど、外でのマーキングだけは許して欲しいね。よくあれで縄張りを張っていると誤解されるんだけど、マーキングをしたところで敵の侵入を防げるわけではない。じつはあれはボクらの掲示板なんだ。

その臭いをかげば、そこを通った猫の名前や時間、性格なんかがピタリとわかっちゃう。恋の季節には出会い系サイトの掲示板にもなっちゃうんだ。
「カノジョ募集!サバトラの♂4歳。スポーツ万能で得意技はバッタ取り。色白でロン毛の女の猫(こ)希望!」てなぐあいにね。

でもあとから来た猫にマーキングされればボクの臭いは消えちゃうから、時間との勝負だね。こうみえても猫の世界はけっこうキビシイものがあるんだよ。

 

10月18日(金)  「平和主義」

ボクなんか特にそうだけど、猫はムダな争いは絶対にしない。平和主義なんだ。ネコ同士がすれ違うときなんか目を合わせないようにして遠回りして行くんだ。いったん目が合うと、気が合わないもの同士なら間違いなくケンカになるからね。だから無駄なケンカを避けるためにいつも用心しているんだ。

集会の時でもお互いにくっつかないで一定の距離をとって座る。そして目を合わせないようにそっぽを向いてテレパシーで会話するんだ。たまに塀の上なんかでネコ同士はち合わせするときがある。そういう時がいちばん困るね。猫は譲ることができないから、お互いに睨み合い唸りながらいつまでもじっとしている。先に塀から下りた方が負けなのだ。

人間も猫のやり方を真似して、一定の距離をとって相手の目を見ないで外交すれば戦争なんておこらない・・・なんてことないか(-_-;)

 

10月19日(土)  「色の識別」

猫の目が強い光に弱いということは以前書いたけど、真っ暗闇でも完璧にものが見えると誤解されても困るので少し説明しておこう。猫の目は薄暗がりでもっとも威力を発揮するんだけど、真っ暗闇ではじつはヒゲや耳が頼りなんだ。
では色はどうかというと、猫は緑や青は識別できる。も見えることは見えるけど、人間が見ているように鮮やかな赤ではなくて、うすぼんやりした灰色に近い色に見えるんだ。全体的に白っぽくてパステル画のようにおとなしい色合いの風景を見ているわけなのさ。

よく横断歩道で信号が青になるまで待って渡るを見かけるけど、猫が信号を見て渡るところなんて見たことない。それは猫は赤が見えないからなのか?それともやっぱり猫は犬よりおバカなのかなぁ・・・

 

10月20日(日)  「音」

Dorianさんちのお兄さんはロックが好きだ。別のところに住んでいるけど、たまに帰ってくるとステレオでがんがんロックをかける。その音のうるさいこと!

ボクたちの耳はとても感度がよくて、人間が4万ヘルツの音を聞き取るとすると、猫は10万ヘルツまで聞き取ることができる。つまり猫の耳は人間の2.5倍も感度がいいってわけさ。だからボクらはあのロックの音には耐えられない。人間はよくあんな野蛮な音楽に我慢してるなぁ。音楽はやっぱり静かなモーツアルトに限るね。

にゃんと?ボクには似合わないって?たしかに・・・(-_-メ)

 

10月21日(月)  「淋しい猫はハゲになる」

ウサギは淋しいと死んでしまうと誰かが言ったけど、猫は淋しいとハゲになるんだ。ほんとだよ。幸いボクはまだなったことないけど、ストレスがたまると禿げるのは人間と同じなんだ。

飼い主にかまってもらえない猫は淋しさを紛らわすためにしきりに毛づくろいをする。あまりに熱心に舐めるのでしまいには脇腹などがハゲてくるんだ。飼い主が精神的に落ち込んだりするとご飯を食べなくなる猫もいる。猫は人間の精神状態を敏感にキャッチしてストレートに影響を受けてしまう。案外デリケートな動物なんだ。

ボクが禿げないのはDorianさんがノンキだからだよ、きっと。

 

10月22日(火)  「留守番」

犬は散歩があるから一人で何日も留守番することはできないけど、猫は留守番はそんなに苦にならない。ご飯と水があれば2泊までならおとなしく留守番できるんだ。かえって静かな家の中でゆっくりと昼寝ができて孤独を楽しむにはもってこいだね。

今はタイマー付きの自動給餌器なんて便利なものがあって、食べた分だけ上から落ちてくるようになっている。冷蔵庫の氷がガラガラと落ちてくるのと同じような原理だね。これなら新鮮なご飯を好きなときに好きなだけ食べることができる。

Dorianさんたちもときどき旅行に出かけるけど、ボクの場合はだいたいお兄さんがいるのでご飯や水は心配ないんだ。誰もいないときは親戚のおばさんが見に来てくれる。それに天窓がいつも少し開いているのでそこから自由に出入りできるようになってるんだ。ボクにとってはありがたいけど、かなり不用心だよね。

もっとも泥棒が入っても何も持っていくものはないけどね。泥棒が気の毒がって何か置いていくかもしれないよ。

 

10月23日(水)  「旅行」

最近、ペットを旅行に連れて行く人が多くなったんだって。でもそれってかなり猫には迷惑なんだよね。犬なら長時間のドライブにも耐えられるかもしれないけど、猫は環境が変わるのがいちばんこたえるんだ。いつもいっしょにいたいという人間の気持ちも分からないではないけど、少しはボクたちの気持ちも考えて欲しいよね。

ボクは泊まったことはないけど、あのペットホテルってとこもあんまり居心地が良いところではないみたいだね。いくら美味しいご飯が出されても猫はパニックになって食べるどころではなくなる。柔らかいベッドが用意されてもケージの隅で震えながら夜を過ごすことになるんだ。

やっぱり猫にとっては住み慣れたわが家がいちばん。長期間の旅行にはだれか世話をする人を頼んでもらいたいね。あ、そういえばDorianさんはそういうボランティアもやっているらしいよ。

 

10月24日(木)  「味覚」

猫の視覚や聴覚についてはかなり詳しく書いたので分かってもらえたと思うけど、きょうは味覚について書いてみよう。猫はかなりの美食家で、味にはうるさいほうなんだ。まず最初に感じるのは酸味、それから苦味、塩味、最後に甘味を感じるんだ。よく生クリームやソフトクリームが好物の猫がいるけど、あれは甘味が好きなのじゃなくて乳製品が好きなんだね。

水の好みもかなりマニアックで、お風呂のお湯やタイルにたまった水、流し台についた水滴なんか大好きだ。外に行けば池の水、水たまりの水、メダカのいる水槽の水・・・美味しい水はいくらでもある。人間は顔をしかめるけど、それで猫がお腹をこわしたことなんて一度もないんだ。

人間が飲んでる「○○のおいしい水」とかいうのを飲んでみたけど、あんなマズイものはないね。無味無臭で味もなにもない、あんなマズい水を高いお金を出して買ってる人間の気持ちはさっぱり分からないね。

 

10月25日(金)  「ゴロゴロ」

猫にだけできる特技、それはあのゴロゴロとのどを鳴らして甘えるしぐさだ。人間に撫でられたとき、抱かれたとき、ご飯を食べたとき、寝たいとき、あらゆる場面でゴロゴロとのどを鳴らす。人間はそれをきいて「ああ、この子はいま満足して喜んでいるんだ」と人間のほうもうれしくなるんだって。

じつはこのゴロゴロは、赤ちゃん猫とお母さん猫とのコミュニケーションの手段だったんだ。お乳を吸いながらゴロゴロのどを鳴らすとお母さんもゴロゴロと答えてくれる。毛づくろいのときもゴロゴロ、眠くなってもゴロゴロ・・・大人ネコになってからは人間がお母さんのかわりになったので、おもに人間とのコミュニケーションに使われるようになったんだ。

ボクもDorianさんの首にしがみついて指しゃぶりしながらゴロゴロ寝るんだけど、耳元でゴロゴロやられるからうるさくて寝られないよと、いつもDorianさんはこぼしてる・・・・-_-#

 

10月26日(土)  「美猫の条件」

ネコはかなりの面食いだ。もちろんボクも男の端くれ、可愛いメス猫には弱いけど残念ながらこのあたりには美猫と呼べるネコはいないんだよね。猫はかなり遠くからでも相手の顔を識別できる。顔が分かるということは顔の好き嫌いも出てくるってわけさ。

ボクが好きな顔は(ボクが好きと言うことは大多数のオス猫が好きと言うことなんだけど)まん丸の顔と大きな目をした女の子だ。そしてこれが絶対条件なんだけど、左右対称(シンメトリー)であるということ。体のつくりや模様がシンメトリーである猫は健康な遺伝子を持っているからなんだ。

これは偉い動物病院の先生が実際に手術してデータを出したらしいんだけど、美人の猫は内臓もきれいで手術もしやすく治りも早い、これに対して顔の変な猫は内臓のバランスが悪くて治りも遅いんだって。だから種族保存の本能からオス猫は美人の猫を求めるんだって。

なんだかブス猫が可哀想になってきたなぁ・・・ボク少しぐらい顔が変でも性格が良ければ我慢するよ。

 

10月27日(日)  「恩」

犬は三日飼われた恩は忘れないというけれど猫はどうだろう?はっきり言って三日程度の恩なんてすぐに忘れるね。というか、飼われていることに恩なんて感じないんだよね、猫は。むしろいっしょに住んでやっているという自負があるんだ。

だからもしも他の家に里子に出されて、何ヶ月かして元の飼い主が会いに来たとしても、懐かしむどころか怯えて逃げちゃうと思うよ。だって新しい環境になじむまでじっと我慢してやっと今の環境に慣れたんだもの。元の飼い主が「見知らぬ人」になるのはあたりまえさ。

猫は一生同じ場所で同じメンバーと、ある程度の距離をおきながら暮らすのがいちばん幸せなんだ。猫に恩義を求める方が間違っているというものさ。

 

10月28日(月)   「長生きの条件」

世の中にはヒマラヤンだのアメショーだのアビシニアンだの、由緒正しい高級な猫がたくさんいるんだけど、ボクが雑種の自由猫だから、どうしてもボクの視点からボクの基準でものごとを考えてしまう。そこのところは許して欲しいんだよね。

で、猫にとってどんな環境がベストだろうと考えてみた。あるところに25歳まで生きた猫がいたんだけど、その長生きした猫の環境というのがじつに羨ましいんだな。広い庭があって庭の真ん中に木造二階建ての家。縁側があっておじいちゃんおばあちゃんや孫など親子三代が住んでいて、犬が放し飼いになっている。犬と猫は仲良しで猫は屋敷の外に出ようとはしない。その環境に満足しているからなんだね。それに犬がいるので他の猫が屋敷の中に入ってくることもない。その家には2匹の猫がいたんだけど2匹とも25歳まで生きたんだって。

まるできんさんぎんさんみたいだよね。こんな環境はよっぽどの田舎に行かなくちゃないと思うけれど、きっとまだ日本のどこかに25歳以上の猫が生きていると思うよ。そう思いたいよね。

 

10月29日(火)  「悪女」

人間の世界ではよく悪女を猫に例えるらしいけどどうしてだろう?ぼくにはよく分からないけど、たぶん台所の猫寝室の女性を比べているんだと思うよ。

猫は外で家の人と会ってもよそよそしくて他人のフリをするけれど、ひとたび家に入ってご飯をねだるときなんか体をすりつけてゴロゴロいって、もう飼い主をメロメロにしてしまう。このしぐさだけで飼い主は外での冷たい仕打ちを許してしまうんだね。

やり手の女性もこんな猫のテクニックを身につけて、外では他人行儀に振る舞っていてもベッドにはいるととたんに「可愛い女」に変身して、金持ちのおっさんを手玉にとってがっぽりお金を貢がせてしまうらしい。

え?ボク?ぼくはDorianさんに外であったらうれしくてその場にごろんと寝転んでバンザイしちゃうね。

 

10月30日(水)  「交尾」

恋の季節になるとボクも男の端くれ、メス猫とにゃんにゃんするわけだけど、一瞬の快楽と種の保存のために命がけの闘いをすることになるんだ。まず大勢のオス猫と闘ってそのメス猫の相手をする権利を取得する。人気のあるメス猫ほど競争相手も多いわけで、かなり年輩のメス猫ならそんなに苦労することもないのは人間の場合と同じだね。

さていよいよ事に及ぶんだけど、その最中にオス猫はメス猫の首を噛む。なんだかいじめているように見えるだろうけど、これはメスの排卵を促すためなんだ。猫は「交尾排卵動物」といって交尾によって排卵するんだ。猫にとって交尾はあくまでも子孫を残すための行為だから、百発百中じゃないと意味がないんだ。

ただの快楽のために交尾するのは人間だけさ。人間ってやっぱり野蛮な動物なんだね。

 

10月31日(木)  「愛の形」

オス猫がみんなメス猫を求めて目をギラギラさせているかというと、実はそうでもないんだなこれが。例えばお母さん猫とずーっといっしょに住んでいて、おとな猫になってもお母さんに甘えているオス猫はメス猫に興味を示さないんだって。マザコン猫だね。

猫の同性愛はどうかというと、これはどうもないらしいね。ただ発情期に興奮しすぎてオスメスのみさかいなく上に乗って交尾のまねごとをする猫はいるらしいけど。野良のクロとボクが実はそうだったんだけどね。いま考えると恥ずかしいことしたもんだと思うよ。

人間の世界にもいろんな愛の形があるんだから、猫の世界にホモレズがあってもいいと思うけどねぇ・・・

11月1日〜5日まで休みます。ボクはヒマなんだけどDorianさんが忙しいらしいんだ。6日にまた会おうね、バイバイ。

つづく