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「花の心・風の姿」 (第5回原稿 7月13日(火)・産経新聞掲載) 


 「ミ〜ンミンミンミンミ〜ン」。みなさんのご近所でも既に聞こえている『声』ではないでしょうか? そうです、セミの鳴き声です。私共の家のすぐ近くに雑木林がありまして、今年は六月の最終週あたりから鳴き出しております。さて、この鳴き声。昔の人もこんなふうに表現していたのでしょうか?。
 狂言にはたくさんの擬音があります。現代の演劇にでは効果音はあらかじめ用意された音源を音響システム(スピーカー)から流して聞こえるようにしています。ところが狂言では役者自身が自分の声を使って表わします。もちろんそれらに呼応した型(動き)もありますが、言葉で物事の音や鳴き声を舞台上で役者が発するというのは狂言の特徴ではないでしょうか。
 私はクラシック音楽を好んで聞きますが、クラシックにも効果音が登場します。楽器を使って美しい旋律で表現し聴衆が情景を想像する。ジャンルや表現方法は違っていてもお客様の豊かな想像力をかき立てるのは、広い意味で共通点があるのではないでしょうか。
 では、狂言に登場する擬音はどのような物があるか少しだけご紹介しましょう。効果編→蔵の大扉が開く音「グァラ、グァラ、グァラグァラグァラ」。お酒を注ぐ音「ドブドブドブ」、最後の一滴になったとき「ドブドブドブ、チョロチョロチョロ〜」。茶碗が割れる音「グァワラリン! チーン!」。 鳴き声編→猿「キャアキャアキャア」。牛「ンンン〜、モォォォ〜〜」。鶏「コ〜ウコウコウコウ、コキャー!」。鳴き声ではありませんが、先日少し触れました神鳴様「ピッカリピッカリ!グァラリグァラリ!」。
 今とは少し違った言い回しもありますが、特徴を如実に表しています。当時の人々にはこんな風に聞こえていたのでしょう。また、この擬音も流儀や家によって言い方や言葉が違います。是非聞き比べてみてください。最後にクイズを。この効果音は?「ジャ〜ン、モ〜ンモ〜ンモ〜ン」。この鳴き声は?「ビョウ!ビョウ!ビョウ!」。是非大きな声で言ってみてください。答えは次週。
                  
 【善竹隆平】

* 産経新聞夕刊文化面コラム 平成16年6月8日(火)より毎週火曜日夕刊掲載 全15回(途中翌週延期有)
  善竹隆司さん、隆平さんのご好意により、掲載させていただけることになりました。
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