最後の手紙

烏兎の庭 - jardin dans le coeur

第五部

観音埼海水浴場近くの岩場

8/17/2017/THU

もう一つの夏休み


夏休み中のツィートと楽しい写真をまとめた

その裏でまったく景色の違う暮らしが、8月6日からつづいている。以下、ツィートしなかった、「もう一つの夏休み」。

タイトルは、浜田省吾「もう一つの土曜日」から借用。

新入社員の頃、よくカラオケで歌っていた歌。


8/4、木:娘(父にとっては孫)の成人式写真撮影。夜は焼肉屋。父は機嫌よく呑み、よく語る。肉や野菜にはあまり手をつけない。水も飲んでいない。

8/5、金:朝食はほとんど食べず。小岩井農場のレストランでランチするも調子悪い。ほとんど食べず。帰宅後、夕飯に寿司を少しつまんで早めに就寝。珍しく酒を呑まずに休んだ。

8/6、土:朝、父が2階から降りて来ない。見に行くと床で寝ている。呼吸が辛そう。意識も混濁して応答があいまい。

以前、肺炎で入院したことがある県立循環器センターへ電話するとすぐ救急車を呼ぶように言われる。救急車内で酸素吸入開始。センターへ到着後、即ICUへ。

ICUとは、CTスキャンのような大きな測定機械が並んでいるような部屋と勘違いしていた。ナースステーションの中に患者がいて、24時間体制で容体を診守る「集中治療室」だった。

当直の医師から脱水と肺炎、身体が弱っているので感性症にも注意が必要と説明を受ける。 フルフェイスのマスクで酸素を強制吸入。 ニトログリセリンと強力な抗生物質の点滴で心不全と感染症に対して応急処置。

もし、朝、発見が遅かったらどうなっていたか。想像するとぞっとする。

ICUからは早く出た方がいいのではと思いきや、入院したばかりで不安があるので家族にいて欲しいと言われたので、3人で夕方まで見守る。実際、事態が把握できていない不安と多種のチューブが鬱陶しいせいか、少しむずがったり、チューブに手をかけたりする。

月曜から水曜まで仕事なので一度、帰宅する。7日と8日は仕事のあと、見舞いに行き、帰宅した。

8/7、月:四人部屋に移動。ICUは緊急時対応の部屋なので長居する所ではない。マスクは全面を覆うものから簡易的なものに変わる。意識ははっきりしていて会話もできる。血圧と体温がまだ高い。

8/9、水:退社後、病院へ。とろみをつけた水で薬を口から呑む。実家で甥姪と合流。

8/10、木:甥姪と横須賀港めぐり記念艦みかさを見学したあと、お見舞い。小さい子たちはロビーで待ってもらう。退院に向けて介護審査の申請を依頼された。この日は天気がよかった。

別れ際に握手をすると思った以上に力が強くて驚いた。まだこれだけの筋肉があるのだから、食べられるようになれば回復も早いだろう。

8/11、金:高校同窓会。三次会までいて0時に帰宅。

8/12、土:酸素吸入がマスクから鼻チューブに。「口から薬が飲めるようになったところを見てくれ」と言うので、看護師に頼み定刻より30分早く薬を服用。 横になってるとウトウトしているが起きているときは目をはったきり開けている。

8/13、日:午後に様子見。顔色はよくなってはいるものの、ニトログリセリンの点滴は継続している。

8/14、月:激しい雨のなか、午前中に墓参。午後はYouTubeをダラダラ見て過ごす。

夕方、見舞うと起き上がってお粥を食べているところだった。倒れてから四日間の記憶がないので、あとで整理して教えてくれとのこと。前に入院した病院であることも、前週、孫の晴れ着を見たことも覚えている。

突然、人類は水と鉄とで進化したと宣う。医師から水と鉄分の重要性を示唆されたか。 財布と入れ歯を探す。大切なものを思い出したか。

8/15、火:区役所で介護認定の審査を申請。昼食後に面会するが疲れた様子。朝と昼によく食べたのか、バナナを半分残している。眠くなったようなので横に戻してもらい、病室を出る。

先週からずっと雨が降っている。しかも、屋内から窓を見ると小降りなのに、外へ出ると激しくなるような気がする。横須賀港へ行った日は天候もよく、停泊している船も多く、奇跡的な1日だった。


医師の最初の説明ほど絶望的な状態ではない。かといって当分退院はできそうにない。年齢から見ても完治ということはもう考えられない。衰えた身体をいたわりながら暮らすことになる。

室内でも熱中症に注意、とくに高齢者は、と聞いていたはずなのに、最も身近なところで水分補給の注意を怠っていた。

今のところ、9月6日退院予定。自力で歩行、着替え、食事、排泄ができるかが課題。その後はデイサービスで軽運動を継続すれば、まだまだ孫たちの成長を見てもらえる。

県立循環器呼吸器センター

そういうわけで、8月9日から15日まで、ずっと実家に滞在することになった。その間に横須賀港をクルーズして見物したり、同窓会にも行った。それから、横須賀美術館にも行き、これまでは積極的にしなかったお盆の墓参りもした。


救急車に同乗するのも初めてなら、ICUに入るのも初めてだった。母は自分は何回も入院した経験があっても、父の具合が悪いと動揺してしまう。何もかも初めてのことで私もうろたえた。

驚きながらも感心したのは、ICUにいた看護師が皆、冷静で、ときには談笑さえしていたこと。彼らがドタバタしていたら、頼る方のこちらはもっと不安になっていただろう。


2017年8月22日、経過を追記。

2017年9月1日、経過を追記。

2017年9月4日、経過を追記。

2017年9月7日、経過を追記。

2017年9月8日、経過を追記。

2017年9月12日。退院。


写真は、横須賀美術館の近く、観音埼海水浴場近くの岩場。