ボンネットバス(シャーシ編)
ボンネットバスは、エンジンが運転席の前のボンネット部分に収納されているバスで、自動車としては標準的な形状を持っています。しかし、バスに関しては、収容力向上の目的により、終戦後の1950年代から箱型バスが主流になったため、1960年代以降にはほとんど作られなくなっています。ここでは、主に1960年代に製造されたボンネットバスについて、シャーシメーカー別に解説します。
ボンネットバスのシャーシはエンジン部分をそのカバーとともに製造されるため、いわゆるボンネットの部分はボディとつながっているもののシャーシとなります。そのため、ボンネットの形状を見ることにより、シャーシメーカー、シャーシ型式などを見分けることができます。
右写真は、日野BH14のカタログに掲載されていたシャーシの写真です。多くの場合、ボンネットバスのシャーシとボンネットトラックのシャーシには共通性が高く、同じ時期に製造されたバスとトラックのボンネット形状はほとんど同じです。
いすゞ自動車
その後、エンジンの改良や高出力化などを行いながら、BXは1962年にBXDと名前を変え、1967年まで製造されています。
また、トラックシャーシを流用した4輪駆動のTSDもあり、最終的には1979年までボンネットバスが製造されています。
いすゞBX系
表8-1-1 いすゞ BX系ボンネットバス
年式 | 1948-1952 | 1952-1953 | 1953-1954 | 1955-1956 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
原動機型式 (出力) | DG32 ( PS) | DA43 (85PS) | DG32 (90PS) | DA45 (90PS) | DG32 (105PS) | DA48 (100PS) | DG32 (105PS) | DA48 (100PS) | |
軸距 | 4000mm | BX43 | BX41 | ||||||
4300mm | BX80 | BX91 | BX81 | BX91 | BX81 | BX91 | BX81 | BX91 | |
5000mm | BX95 (1949〜) | BX85 | BX95 | BX85 | BX95 | BX85 | BX95 | ||
備考 |
年式 | 1956-1957 | 1958-1959 | 1959-1961 | 1961-1962 | 1962-1967 | ||||
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原動機型式 (出力) | GA110 (105PS) | DA110 (105PS) | DA120 (118PS) | GA110 (105PS) | DA120 (120PS) | DA120 (125PS) | DA640 (130PS) | DA640 (130PS) | |
軸距 | 4000mm | BX231 | BX131 | BX331 | BX231 | BX331 | BX521 | BX721 | BXD20 |
4300mm | BX241 | BX141 | BX341 | BX241 | BX341 | BX531 | BX731 | BXD30 | |
5200mm | BX251 BX252 | BX151 BX152 | BX351 BX352 | BX251 BX252 | BX352 | BX552 | BX752 | BXD50 | |
備考 |
いすゞBX (1952〜55)
日本遊覧自動車 いすゞBX95
画像:所蔵写真(新日国工業公式)
いすゞBXは、終戦後にTX型トラックシャーシをベースに開発されたボンネットバスシャーシで、改良を重ねながら約20年間にわたって生産されました。
初期の車両はラジエーターグリルの目が細かいのが特徴です。1952年から、ボンネット下部にメッキグリルが付きました。
いすゞBX (1955〜59)
元札幌市交通局 いすゞBX95(1955年式)
撮影:小野澤正彦様(札幌市交通資料館 2010.8.21)
1955年から前と横のグリルが大きくなると同時に数を減らしています。
1956年にマイナーチェンジが行われ、3桁数字の型式になりました。ガソリンエンジンがBX200番代、ディーゼルエンジンの低出力がBX100番代、高出力がBX300番代に区分されました。
いすゞBX500・700・BXD (1959〜64)
東濃鉄道 いすゞBXD30(1965年式)
撮影:恵那駅(2005.11.3)
1959年からディーゼルエンジン車に統一され、BX500系列となりますが、この時にボンネットの形状を変更しました。正面にはメッキグリルが付きます。
1961年にはエンジン型式の変更によりBX700系列へ移行、1962年には型式呼称の変更によりBXDとなりました。
いすゞBXD (1964〜67)
四国交通 いすゞBXD30(1966年式)
撮影:小野澤正彦様(三好市 2008.10.13)
1964年に箱型バスと同時に前照灯4灯化が図られ、近代的なフロントグリルになりました。メッキグリルの形状も変更されています。
いすゞBXDは1967年には最終車両の生産を終えているようです。
いすゞTS系
その後、悪路を走行する自衛隊や営林署などに納車されたほか、岩手県北自動車や山形交通など積雪の山岳路を走る路線バスとしても導入例があります。これらは、通常のボンネットバスが生産終了した後も、その特殊なニーズから生産が続けられました。
岩手県北自動車 いすゞTSD40(1968年式)
撮影:小野澤正彦様(宮古市 2011.7.22)
TSは1962年に他のいすゞ車同様にTSDと型式を変えています。ボンネットの形状は武骨な角型のまま変わりません。
1979年まで生産されたバスがあります。また、代替となる車両がない分、遅くまで現役で活躍し、保存された例も多く見られます。
トヨタ自動車
表8-1-2 トヨタボンネットバス
年式 | 1949-1951 | 1951-1954 | 1954-1955 | 1955-1957 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
原動機型式 (出力) | B (82PS) | F (95PS) | B (85PS) | F (95PS) | B (85PS) | F (105PS) | B (85PS) | F (105PS) | |
軸距 | 4370mm | BL | FL | BY | FY | BB | FB | BB60 | FB60 |
備考 |
年式 | 1957-1958 | 1959 | 1960-1964 | 1965-1970 | ||||||
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原動機型式 (出力) | F (105PS) | D (110PS) | F (110PS) | D (110PS) | 2D (130PS) | F※ (125PS) | 2D (130PS) | F (130PS) | 2D (130PS) | |
軸距 | 4370mm | FB75 | DB75 | FB75 | DB75 | DB85 | FB80 | DB90 | FB100 | DB100 |
4800mm | DB102 | |||||||||
4900mm | DB70 | DB70 | DB80 | DB92 | ||||||
5170mm | DB95 | DB105 | ||||||||
備考 | (※)F型エンジンは1961年に125PS→130PS |
トヨタFY/BY (1952〜54)
元山梨交通 トヨタFY
撮影:川上村(2011.11.5)
1951年頃から、トヨタのボンネットバスのライト周りは、丸みのある独特の形状になります。
ちょうどFY/BYの時期に当たるようです。
写真の車両は、刈谷車体(→トヨタ車体)製ボディ。
トヨタFB/BB (1954〜57)
日本ヘリコプター トヨタFB60
画像:所蔵写真(呉羽自工公式)
1954年からグリルがマイナーチェンジされ、縦の格子が中央部分のみになりました。
FB/BBの時期に当たるようです。
写真は、呉羽自工製のデラックス車体を持つ車両。
トヨタFB/DB (1957〜60)
北恵那鉄道 トヨタFB75
画像:所蔵写真
1957年のFB/DB70系列登場の時から、フロントグリルの形状が、丸みを維持したままシンプルなものに変わりました。ライト間のプレス形状は、下が広がった台形のような形で、その上部にTOYOTAのロゴが入ります。
この時、ディーゼルエンジンのDB70が登場します。
トヨタFB/DB (1960〜64)
トヨタ博物館 トヨタFB80(1963年式)
撮影:小野澤正彦様(トヨタ博物館 2010.6.11)
1960年に若干マイナーチェンジし、写真の形状になりました。内側のプレス形状も外側に合わせたカーブを描き、フォグランプを内側に配置しています。
トヨタFB/DB (1964〜70)
福山自動車時計博物館 トヨタDB100(1967年式)
撮影:シンコー様(福山市 2008.8.13)
1964年に、FA100型トラックのモデルチェンジに続いて、バスもモデルチェンジによりDA100系列となり、4灯の角張ったフロントグリルに変わりました。
トヨタの公式サイトによると1975年まで生産されていたことになっています。
日産自動車
表8-1-3 日産ボンネットバス
年式 | 1956-1957 | 1958 | 1959 | 1960-1969 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
原動機型式 (出力) | UD3 (100PS) | NC (105PS) | KE21 (90PS) | UD3 (110PS) | NC (105PS) | KE21 (90PS) | UD3 (120PS) | NC (105PS) | KE21 (110PS) | UD3 (120→130PS) | |||
軸距 | 4300mm | U590 | 590 | M590 | U591/U592 | 590 | M590 | U592 | 592 | M592 | U690 | ||
5000mm | UG590 | G590 | UG591/UG592 | G590 | MG590 | UG592 | G592 | MG592 | UG690 | ||||
備考 | UD3は1963年に123PS、1967年に130PSに出力強化 |
日産590 (1956〜59)
元千曲バス 日産G590改(1958年式)
撮影:旅男K様(福山自動車時計博物館 2005.5.22)
日産のボンネットバスはフロントグリルが2枚に分かれた独特の外観を持っています。1953年頃から金属製の飾りが付き、1956年頃から写真のような形状に変わりました。
日産690 (1960〜67)
自家用 日産U690(1964年式)
撮影:小野澤正彦様(佐原市 2008.11.15)
1960年よりガソリンエンジンと三菱製エンジンはなくなり、日産ディーゼル供給のUD3型エンジンに一本化され、型式も690番代に変わりました。
この時、グリルの形状も変わり、縦目4灯の個性的なスタイルになりました。
日産690 (1967〜69)
日ノ丸自動車 日産U690(1966年式)
画像:所蔵写真
1967年よりグリル形状が再度変わり、縦目から横目になりました。
この時期のバスとしての製造はほとんどありません。1969年には生産が終了しています。
日野自動車
表8-1-4 日野ボンネットバス
年式 | 1950-1951 | 1952-1954 | 1955 | 1956-1957 | 1958-1960 | 1961-1966 | |||
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原動機型式 (出力) | DS10 (110PS) | DS11 (110PS) | DS12 (125PS) | DS12 (125PS) | DS30 (150PS) | DS12 (125PS) | DS30 (150PS) | DS50 (155PS) | |
軸距 | 4500mm | BA10 (1951〜) | BA11 | BA12 | BA13 | BA14 | |||
5000mm | BH10 | BH11 | BH12 | BH13 | BH14 | BH15 | 5500mm | BF10 (1953〜) | BF12 |
備考 |
国鉄バス 日野BH11
画像:所蔵写真(栃木県)
日野では1950年から大型ボンネットバスBH系の製造を始め、エンジンの改良を続けながら1960年代中頃まで製造されました。通称「剣道面」と呼ばれるボンネット先端の形状が特徴です。
大型車であったため、リアエンジンバスへの代替が可能であったことから、早くに生産終了となりました。
三菱自動車
日野自動車とともに大型のボンネットバスが得意分野であるため、リアエンジンバスの普及とともに市場が狭まり、1961年にボンネットバスの製造を中止しています。
表8-1-5 三菱ボンネットバス
年式 | 1949-1955 | 1955-1958 | 1958-1959 | 1960-1961 | |
---|---|---|---|---|---|
原動機型式 (出力) | DB5 (130HP) | DB7 (130HP) | DB31 (155PS) | DB31 (165PS) | |
軸距 | 4500mm | B23(1950〜) | B260 | B360 | B360 |
5220mm | B25 | B280 | B380 | B380 | |
5600mm | B24(1950〜) | B270 | B370 | B370 | |
備考 |
三菱B20 (1950〜55)
自家用 三菱B25(1950年式)
撮影:ぽんたか様(置戸町 2017.6.27)
三菱では1946年にガソリンエンジンのB1を、1949年にディーゼルエンジンのB1Dを製造開始し、大型のディーゼルエンジンのボンネットバスの市場を開拓しました。
続いてB20系列が登場し、最大級のB24では全長11m級という大型のボンネットバスでした。
外観的には、メッキの装飾がついたグリルと、どっしりとした大きなフェンダが特徴です。
三菱B200/300 (1955〜61)
三菱B380
画像:三菱ふそう自動車公式パンフレット(1960年発行)
1955年ごろにB200系列にモデルチェンジを図り、以降はボンネットのグリル形状が変わっています。
1958年にDB31型エンジン搭載にモデルチェンジを行い、B300系列になったものの、大型車のため早くに箱型バスにその役目を譲り、1961年で生産終了となりました。
民生デイゼル
ホイルベース5mクラスで強力型エンジンを搭載した大型モデルと、日産自動車シャーシに自社エンジンを搭載する小型モデルの2種類に分類できます。
ボンネットの形状は四隅にRを持つ縦長のグリルを2本並べた優美なスタイルでしたが、1952年頃には日産自動車とよく似たスタイルに変わりました。なお、1955年には大型のB系のみ、剣道面スタイルに形を変えています。(注2)
表8-1-6 民生ボンネットバス
年式 | 1950-1951 | 1951-1954 | 1955-1959 | 1960-1961 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
原動機型式 (出力) | KD2 (60PS) | KD3 (90PS) | KD2 (70→80PS) | KD3 (105PS) | UD3 (110PS) | UD4 (150PS) | UD4 (165PS) | |
軸距 | 4200mm | B70S | B70S | |||||
4300mm | BS22 | BS23(1952〜) BS24(1953〜) | BS60 | |||||
4350mm | KB3L | BN32 | ||||||
4500mm | B70 | B70 | ||||||
4800mm | BN33(1952〜) | BS70 | ||||||
5000mm | B80 | B80 | ||||||
5300mm | KB3B | BE31(1952〜) | ||||||
備考 |
箱根登山鉄道 民生KB3L
画像:所蔵写真(撮影:鉄道趣味社写真部 箱根町 1949.6.5)
KD型エンジンを搭載したKB3は、1948年から製造され、欧米風のスタイリッシュなボンネット形状を採り入れました。
写真の車両は、日国工業製ボディ。
名古屋市交通局 民生BE31(1953年式)
画像:名古屋市交通局発行絵葉書
1952年から長尺・高出力タイプはBE31に型式を変えると同時に、ボンネットの形状も変わりました。日産自動車とよく似ていますが、グリル部分の金属の飾りは大きめです。
写真の車両は、1953年にメッキグリルをマイナーチェンジした後のスタイル。
東京急行電鉄 民生B80
画像:民生デイゼル工業公式カタログ(1958年発行)
1955年に民生の大型ボンネットバスは搭載エンジンをUD4型にモデルチェンジするとともにB80となりました。ボンネットの形状は、鼻筋部分が若干傾斜した剣道面に変わりました。
なお、同時にモデルチェンジを行ったUD3型エンジンの小型車は、日産自動車と同じボンネット形状のまま推移しています。