鳴神 子供のための歌舞伎 2004.6.23 | ||||||
9日、国立劇場に歌舞伎鑑賞教室を見に行ってきました。
「鳴神」のあらすじはこちらをご覧ください。 例年どおり、まず歌舞伎についての説明が宗之助の司会でありました。着物に袴姿だった去年と違って、今年はポロシャツにパンツ。今回は、歌舞伎俳優養成所をでたばかりの10代の役者の卵が6人、これまたTシャツにジーパンといった格好で舞台に立ち、宗之助が養成所にはいったきっかけなどをインタビューしました。 見ている子供たちとさして変わらない年格好の若者たちが、その後着物に袴をつけて登場し立ち廻りの実演をした時には、きりっとした表情と姿勢を見せ、同じ人たちとは思えないような変わり方が新鮮でした。 宗之助も硬いムードの前回よりも良かったです。最後の踊りでは傘の「きのくにや」が揃うとより綺麗なのになと思います。舞台に上がった3人の子供たちに修善寺物語のせりふを読ませたり、動きをつけたりするのは、教えるほうも教えられる方も四苦八苦。 さて、20分の休みをはさんで「鳴神」が上演されました。所化の白雲黒雲は橋之助と扇雀のお弟子さんで研修所を出て6〜7年の若い役者たちが4人抜擢されてダブルキャストで演じていました。それぞれの組で最初のせりふにちょっと変化があったとか。「鶯の鳴いたのを聞いたか」というのと「当月国立劇場で上演さている鳴神の評判を聞いたか」の二通りだそうです。 この白雲黒雲、絶間姫の仕方話で少し間が合わなかったりはしましたが、花道の引っ込みなどは生き生きとしていてなかなか良かったです。 さて絶間姫の扇雀は見た目はともかく、声の感じがお姫様には思えず、どうみても中年に見えてしまいます。鳴神との掛けあいでもさっぱり話が盛り上がっていきませんでした。絶間姫のせりふの「懐かしきは夫」が省略されたのも、どうしてなのかなと不思議に思えました。 橋之助の鳴神は最初の出は立派で、前よりすこし痩せたように思える顔には高僧の感じが出ていました。しかし風邪でも引いたのか、声に冴えが無かったようです。鳴神に迫られた絶間姫が「なるわいなぁ」と妻になることを承諾してから世話にくだける場面では、もう少し鳴神の世間知らずで初心なところを残しておいてほしかったと思いました。 荒れになってからの隈取った顔はするどく鋭角的でしたが、今一つ動きには激しい怒りが感じられませんでした。御簾が上がった時、橋之助の鳴神はうつむいたままの姿勢で位置を直すために前へいざり出ましたが、鳴神の不気味な恐ろしさが失われるように感じました。 以前テレビ中継された際、ぶっかえった時まるぐけ帯に衣装がきちんとかぶさっていなくて、帯が出っぱなしのまま最後まで行ってしまったのがとても気になりましたが、今回は綺麗に処理されていました。(この件では、團十郎が鳴神を演じた時、所化の一人が荒れ狂う鳴神に掛かっていきながら、上手く着物を直したのを見て感心したことがあります。) それにしても歌舞伎教室でとりあげるのに、なんで「鳴神」なのか、これには大いに疑問に感じました。役者さんも小学生の子供たちの前では本来の演技はできないのではと同情します。 殺しの場のある演目が、昨今の世情を考えると子供たちに悪影響があってはと懸念されてのことかと思いますが、なにかもうちょっと適当なものがなかったのかと考えてしまいます。 ところが、この後で19日にもう一度見に行ったのですが、この時はもうちょっと年が上の中学生くらいの女の子が多かったのです。反応も素直で浅葱幕が振り落とされたときなど、「ほ〜っ」と言う声があちこちから聞こえたり、面白いところでは自然な笑いが起きるので、役者さんたちのノリも9日に見たときよりはずっと良かったです。 色仕掛けの場面でも橋之助は思い切ってたっぷりとやっていて、どことなく富十郎の鳴神を思い出させる陽気で好色な鳴神でした。つくづく芝居は生き物なんだなぁと思ったしだいです。 この日橋之助の鳴神は花道を「ウォ〜ツ!」と雄叫びを上げながら飛び去っていきました。 |
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この日の大向こう | ||||||
この日は小・中学生くらいの子供たちが沢山きていました。ところが絶間姫の扇雀が出てきた時に叫び声が聞こえたり、橋之助の鳴神上人がこちらを向きなおった時にもせりふが始まってから「まってました」という子供の声が聞こえ、最初からこれではどうなることかと思いました。 けれども歌舞伎鑑賞教室ではちょっと子供たちが騒ぐとと、場内係員が飛んで行って注意をするので、あとは何事も無くほっとしました。 この日は3人の方が主に掛けていらして、中央いいらした方が間、大きさ、掛け方ともに上手かったです。絶間姫のツケ入りの見得では沢山の方が声をかけられました。絶間姫が鳴神を色仕掛けで誘惑するところで下手の方が「ご両人」と掛けられましたが、場に合っていないように感じました。私は鳴神の花道での大見得に一度だけ「成駒屋」と掛けました。 19日は声を掛ける方はほとんどいませんでした。この日は土曜のためか全席売り切れで、当日券を買ったら花外の補助席でした。 |
壁紙:「まなざしの工房」 ライン:「和風素材&歌舞伎It's just so so」