アングモア地方
    のロマネスク
 
  Angoumois Roman 
 
   
 
   Champniers  
   Église St-Eularie
 
 
  
 
  県名と県庁所在地 
    ■ANGOUMOIS   
      
Charente (Angoulême)  
 
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 シャトル/旧ノートルダム修道院
  Châtre/Ancienne Abbay
        Notre-Dame
 
   
     Charente 
   
  
 
 シャラント県の最西端、ブランデーで著名な
町コニャックからは5キロ程東に位置するサン
・ブリスの郊外の森の中に建っていた。
 ヒエルサックの瀟洒な旅籠レストランに泊ま
った翌朝、私達は畑の中のドルメンを見てから
この廃墟のような教会を訪ねた。シャラント川
沿いに続く段丘の森と葡萄畑の中に、忘れ去ら
れた如く静かに孤高な佇まいを見せていた。

 “昇天の聖母”修道院の遺構で、現在は付属
教会の聖堂だけがポツンと残されている。
 聖堂はバジリカ式単身廊で高い天井が特徴で
あり、四つのドームが連続しているのだが外観
から見えず、また扉が閉まっていて内部へは入
れなかった。翼廊や後陣にも修復の手が入って
いる様に見えるのだが、全体の朴訥とした風貌
がとても気に入った。
 ファサードは縦長ながら、この地方らしい盲
アーチを多用した装飾である。
 扉口のアラブ風迫石が面白いし、当時の建築
家達が何故こうも盲アーチ装飾に執念を持った
のか判らないが、ファサード全体が示す不思議
な躍動感の様なものを私達は感じ取っていた。
 下から三連、五連、九連と重なったアーケー
ドの意匠が、その様に感じさせるのだろう。 
  
 
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 ブール・シャラント/
   聖ジャン教会

  Bourg-Charente/
      Église St-Jean
   
     Charente 
   
 
 
 前述のシャトルから更に東へ5キロ、シャラ
ント川の両岸に開けた城下町である。教会は川
の南岸、段丘の上に建っている。
 西側正面のファサードはシャトルにとても似
た構成であり、盲アーケードを多用した意匠で
ある。下から三連、十五連、六連の三層アーケ
ードが壮麗である。ただ、石を洗浄したのだろ
うか、異常に白っぽいのが気に入らなかった。
 単身廊に翼廊、三後陣というプランがとても
美しい。写真は後陣のもので、やはり三層の盲
アーケードで構成された見事なデザインだ。
  
 
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 ジャンサック・ラ・パリュ/
    聖マルタン教会

  Gensac-la-Pallue/
     Église St-Martin
   
     Charente 
   
   
 
 前記のブールから、国道を横切って更に南西
へと車を進めると、広々とした耕地を背景とし
たやや大きな集落が現れる。
 そこがジャンサックで、教会は村の北側の少
し開けた場所に、芝生の広場を前庭にして建っ
ていた。

 この地方では約束されたようなファサードな
のだが、人の顔が違う如くそれぞれが個性的で
あるのが面白い。三連、五連、六連という三層
構成は珍しいかもしれない。
 中央の扉口と左右の盲アーチで構成された最
下段のアーケードは、柱頭も含め横一列に彫ら
れた帯状の彫刻装飾に特徴がある。やや摩耗し
ているが、人物像や植物文様、説話と思しき場
面などが精密に彫られている。
 アーチ上部のレリーフは、左が聖母、右が聖
マルタンの像で、いずれも四人の天使に囲まれ
た栄光の図である。

 単身廊の聖堂は天井に特徴がある。鐘塔の下
も含め、四つの円蓋ドームが連続している様式
である。先述のシャトルの天井と同タイプであ
り、ここアンギュモアから
Périgord ペリゴ
ール地方にかけて分布している。
 残念ながら鐘塔や祭室後陣はゴシックの時代
に改修されたものだ。
 
 
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 シャトーヌフ・シュル・シャラント
      /
聖ピエール教会 
   Châteauneuf-sur-Charente/
       Église St-Pierre
   
     Charente 
   
 
 
 シャラント河畔の町で、流れが湾曲する場所
に位置する小さなリゾートである。
 聖堂は三廊式の壮麗な建築で、側廊の列柱と
半円アーチ天井が特に印象的だった。近年清掃
されたものか、石の白さが目立ち、やや綺麗す
ぎたのも又記憶に新しい。
 ファサードはこの地方に多いアーチ装飾で、
中央の扉口の上が開口窓で、それ以外は盲アー
チとなっている。
 扉口のヴシェールは四重の装飾で、動物像や
天使の姿が繊細に彫られている。やや画一的な
部分が見られ、力強さには欠けるので、ロマネ
スク後期の作だろう。しかし、鑑賞するには充
分美しい。
 左上のアーチ内には、白馬の騎士が小さな人
間を踏みつけるという、例の不条理な表現がこ
こでも見られる。
  
 
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 アングレーム/
   聖ピエール大聖堂

 
 Angoulême/Cathédrale
     St-Pierre
   
     Charente 
   
   
 
 シャラント河沿いの丘の上に開けた町で、旧
市街の先端にこの大聖堂が建っている。
 聖堂の建築は一部に近年の修復が有るが、ほ
とんどは12世紀ロマネスクである。
 身廊の天井は高い四つの円形ドームで成り立
っており、積まれた切石の描く曲線が軽快で明
るく何とも言えず美しい空間を造っている。
 翼廊を持つ十字形プランで、祭室には四つの
小礼拝堂が、袖廊には二つの小祭室が付けられ
ている。細密に彫刻された柱頭が見えるが、か
なり高い位置に有るために詳細は見えない。

 写真の正面ファサード装飾は、実に洗練され
た意匠で、この地方における一連のファサード
の中では抜きん出て秀逸な傑作だと思う。最上
段と扉口は追補されたものだが、中段に優れた
彫刻が集中している。

 中央上部に「キリスト昇天」が、四福音書家
の象徴動物に囲まれて彫られ、その下に天使達
がこれを祝福している。中段を飾る聖母や預言
者達や使徒達の像は一体一体が個性的で、見事
な抽象の中にロマネスク彫刻特有の、親しみ易
い温かさを示している。
  
 
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 シャンプニエ/聖ユラリ教会
  Champnièrs/
    Église St-Eularie
   
     Charente 
   
 
 
 アングレームの町の北側に隣接する集落で、
アングレーム・コニャック空港の直ぐ南西に位
置している。
 市街に囲まれた聖堂で、基本的には単身廊、
翼廊の付いた十字形のプランである。
 交差部には八角形の鐘楼が聳えている。いず
れも12世紀の建築とされる。
 好ましい建築だが、修復の為に白塗りされた
姿は、お世辞にも美しいとは言い難い。
 見所は身廊の柱頭と写真のタンパンだ。かつ
てファサードに飾られていた彫刻である。四福
音書家の象徴動物に囲まれた、審判者キリスト
を表現している、ロマネスクらしい彫刻だ。
 
 
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 ディラック/聖マーシャル教会
  Dirac/Église St-Martial
   
     Charente 
   
   
 
 アングレームから南東に10キロも走れば、
牧歌的な森と畑の景観が広がる。そんな静かな
田園風景に囲まれた小高い場所に、このエレガ
ントなファサードを持つ教会は建っている。

 連続アーケードによるファサードの装飾はこ
の地方の特徴で、同時代同地域を示す様式とし
てワンパターンのように見えるが、人の顔の如
く微妙な違いがかえって面白く興味を引く。
 ここでは上部五連、下部三連のアーケードが
意匠されている。いずれも中央アーチのみが開
口部となり、他は全て盲アーチである。
 扉口の柱頭彫刻は変化に富んだ鳥や人物が植
物に絡んだ模様だが、かなり摩滅が激しいのが
惜しい。

 建築は12世紀のものだが、15世紀に大き
な修復があったらしい。身廊は三廊式で、好ま
しい柱頭彫刻が幾つも見られる。中央の鐘楼部
分に側廊は無く、そのまま半円形内陣が接する
構成になっている。
 側廊部分との間のアーケードが不自然である
ことから、側廊部分にはかなり手が入っている
と考えた方が良さそうである。
 
 美しい半円形の後陣を眺めていたら、丘の彼
方にいつの間にか虹がかかっていた。
 
 
 
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 フレアック/聖母教会
  Fléac/Église Notre-Dame
   
     Charente 
   
   
 
 アングレームの町の西側、シャラント川に沿
って三つの愛らしい小さな町が並んでいる。
 この町の他に、次掲載のリナール、トロワ・
パリがそれで、各々に清楚でチャーミングなロ
マネスク教会が残されている。
 
 ファサードには三連のアーケードが下段に、
そして上段には半円アーチの窓が一つという実
に簡素な装飾となっている。中央アーチが扉口
で、他は盲アーチである。
 上部の軒持ち送りに、個性的な風貌の顔彫刻
が幾つも並んでいて面白い。

 単身廊の質素な聖堂は、外観からは切妻型の
ありふれた屋根しか見えないが、内部は写真の
ように三つに仕切られた梁間の天井は、それぞ
れが円形ドームという思いがけない建築意匠と
なっていた。まるでアングレームの大聖堂を小
型にしたような構成で、隣接するペリグー地方
などを含め、ドーム天井の分布はやや広いもの
のある地域性を示しているようだ。

 身廊の柱頭には、植物模様などの他に、相撲
の四股を踏むような格好をした人物像が印象的
だった。
 改造はされているが、創建11世紀の雰囲気
を伝える貴重な遺構である。
 
 
 
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 リナール/聖ピエール教会
  Linars/Église St-Pierre
   
     Charente 
   
   
 
 前述のフレアックからは、西南へ5キロの位
置にある静かな町である。
 教会はほぼ町の中央に建っていた。思ったよ
り細長い、想像以上に大きな聖堂だった。

 先ずはファサードが目に入る。ここでもサン
トンジュ地方に共通した、アーケードの組み合
わせによる意匠である。
 下段三連で中央にタンパンのある扉口、そし
て上段には中央に三連、左右に二連づつのアー
ケードが意匠されている。バランスのとれた、
美しい構成だと言える。
 中央扉口のタンパンには、二人の天使に囲ま
れたキリスト像が彫られているのだが、何とも
無残に摩滅してしまっている。石の種類にもよ
るのだろうが、近年に至るまでに何らかの修復
が成されず今日に至った遺構の宿命だろう。逆
にこれこそが、ロマネスク彫刻の真の姿なのか
もしれない。

 それに反して、単身廊の聖堂内は全てが漆喰
によって真っ白に塗りたくられていた。半円筒
ヴォールトに横断アーチというプリミティヴで
魅力的な建築が、柱も壁も柱頭も全てが無個性
化してしまっている。
 千年も前の芸術をいかに保存し後世へ伝える
かは至難の課題なれども、この美意識の欠如に
はただ呆れるばかりであった。
  
 
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 トロワ・パリ/聖母教会
  Trois-Palis/
    Église Notre-Dame
   
     Charente 
   
   
 
 リナールから更に南西へ6キロ行ったシャレ
ンテ川沿いに開けた町で、教会は家並みの南端
に建っている。
 12世紀に創建された教区教会で、写真のフ
ァサードと二層のアーチ窓が付いた鐘塔が印象
的だった。
   
 ファサードは扉口以外にはアーチは無く、サ
ントンジュ様式ではない。扉口のアーチ装飾も
見事だが、どうしても上部のレリーフに目が行
ってしまう。
 最上段は、四福音書家のシンボルに囲まれた
栄光のキリスト像である。全体が黒ずんでいて
良く見えなかったが、躍動的な彫刻であるらし
い。また下段のレリーフは、二人の聖人に囲ま
れたこの教会の象徴である聖母像である。これ
は、ややゴシック的な彫像のように見える。

 単身廊の聖堂の天井は尖頭ヴォールトで、後
世の改造を意識させるが、石壁の年輪にはロマ
ネスク的な雰囲気が十分残されている。
 柱頭彫刻には、旧約聖書の場面など見るべき
傑作が多いが、何故か彫りが妙にしっかりとし
ており、おまけに柱頭部分のみが全面真っ白に
塗られている。明らかに何らかの修復が成され
たようだが、その内容についてまではほとんど
判らない。
  
 
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 サン・ミシェル・ダントレイグ/
    聖ミシェル教会

  St-Michel-d'Entraygues/
     Église St-Michel
   
     Charente 
   
   
 
 この聖堂はアングレームの町外れ、かつてア
ントレイグと呼ばれた閑静な一画に位置する。
 一目見ただけで、この建築がいかに特異な形
をしているかが判る。建築は正八角形で、その
各辺が半円形になっており、平面図はまるで花
びらを八枚つなげたような形をしているのだ。
 写真の様にその花びらの一つが西側の正面扉
口になっている。
 残念ながら扉は閉まっていて、中では地元の
名士の葬式をやっている最中であった。仕方な
く、聖堂周辺を丹念に見て回り、葬儀の終了を
待つこととした。

 扉口のタンパンには、聖ミシェルつまり大天
使ミカエルが、大きな翼を広げ、槍で龍を退治
している場面が描かれている。ロマネスクとし
ては、かなりリアルな表現となっている。ゴシ
ックに近い時代の作かもしれない。
 軒持ち送りの彫刻が傑作で、優れた石工の突
飛なアイディアに満ちている。
   
 ようやく入った聖堂内部は目を見張るような
美しさで、八本の梁が天井のドームに集約する
構造には心打たれた。扉口以外の七つの祭室に
は半円アーチ、上部の採光部には尖頭アーチの
意匠が見られた。
  
 
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 ラ・クロンヌ/
   洗礼の聖ヨハネ教会

  La Couronne/Église
      St-Jean-Baptiste
   
     Charente 
   
   
 
 アングレームの南西に隣接する町で、町外れ
に残る12世紀の大修道院で知られるが、現在
は廃墟となって見学は出来なかった。
 しかし、町の中心に立つこの教会は、ロマネ
スクの魅力の全てを備えた当地方随一の傑作、
とも言えそうな魅力を感じさせてくれた。

 ファサードは当地流の意匠で、下層は三連、
上層は七連のアーケードが意匠されている。扉
口の柱頭彫刻には見るべき傑作もあり、何より
も石そのものに重厚感が感じられるような気が
していたのである。
 その予感は、身廊に一歩入った途端に実感と
なった。写真はその時の印象を十分表現してい
るとは言い難いが、石を積み上げたというロマ
ネスク建築の本質が感じられたことは御理解頂
けるものと信じる。
 単身廊に翼廊の十字形、三つの半円形後陣、
交差部に八角の鐘楼、壁には数個の採光窓以外
一切窓は無いというロマネスクのお手本のよう
なプランである。怪獣いっぱいの柱頭彫刻も楽
しませてくれる。
 六つの梁間と半円筒ヴォールトに太い横断ア
ーチ、この無骨さも魅力だろう。建築が多少傾
いてしまっているが。

 聖堂背後の開けた空間から眺めた後陣と鐘塔
の姿も、忘れられない景観の一つとなった。
  
 
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 ムティエ・シュル・ボエム/
     
聖イレール教会
  Mouthiers-sur-Boëme/
      Église St-Hilaire
   
     Charente 
   
  
 
 アングレームから真南へ約10キロの田園地
帯、シャレントの支流ボエム川に沿って開けた
比較的大きな町である。

 教会は町の南東端に建っており、正面のファ
サードを見る限りではありふれたロマネスク・
ゴシック混合教会の一つ、と思われた。
 ファサードの下部は半円アーチの扉口とライ
オンのレリーフが意匠されたロマネスク様式、
上部は尖頭アーチ窓のゴシック様式だったから
である。

 しかし、聖堂の規模は単身廊ながら五つのベ
イ(梁間)を設けた堂々たる建築で、やや尖頭が
かったヴォールトの天井には迫力が感じられた
のだった。
 壁面は苔むしている、と言うよりは苔だらけ
だったが、石の質感が感じられたのが救いだっ
た。各梁間ごとに窓が設けられているのは、後
世の改造なのだろう。

 全体の建築プランは、単身廊に翼廊の十字形
で、三つの半円形後陣を備えている。残念なが
ら鐘塔はゴシックに改造されているが、祭室の
半円七連アーケードは窓は別としてロマネスク
様式を維持しているようだ。
 
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 プラサック/聖シバール教会
  Plassac/Église St-Cybard
   
     Charente 
   
   
 
 豊かな田園風景の中に溶け込んで、しかも小
高い位置に在って小建築でありながら象徴的な
存在感を示している美しいロマネスクと出会え
ることが出来た。
 そこは、先述のムティエから更に南西へ8キ
ロ行くと、広大な麦畑や牧草地の続く光景の中
に少しづつ見えてくる、という仕掛けだった。

 ファサードは下段三連、中段五連、上段三連
のアーケード構成だが、格別の優れた意匠とは
思えなかった。
 聖堂は三つの梁間を持つ単身廊で、天井は尖
頭ヴォールト、奥に鐘塔部と半円祭室が続いて
いる。こじんまりした建築だが、不思議に奧行
を感じさせる。

 祭室の奥壁には十一連の盲アーケードが意匠
されており、荘厳な雰囲気を創出する役目を担
っているようだ。写真の半円形後陣は五連アー
ケードが美しいが、祭室のアーケードは後陣の
柱間も含め二重に重なっている。
 八角形の鐘塔は遠くからも良く見え、後陣と
のバランスも絶妙で後方からの景観を素晴らし
いものにしている。

 祭室の下にクリプトが残されており、低い天
井の交差ヴォールトが特徴で、柱は無いが神聖
な空間を創出している。
  
 
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 コンザック/
    
聖アントワーヌ教会
  Conzac/Église St-Jacques
   
     Charente 
   
   
 
 プラサックから起伏に富んだ田園地帯を15
キロ程行った辺りで、白い馬の遊ぶ牧場に隣接
したこの聖堂が見える。
   
 ファサードは半円アーチの扉口があるだけの
簡素なもので、おそらくは後世のものだろう。
 聖堂は単身廊、天井は木造の箱型だが、この
部分もかなり後世のものらしい。
 注目すべきは、それに続く鐘塔部分と祭室で
ある。翼廊があったのだが現在は北側のみで、
写真の如く南側は塞がれている。北側には小祭
室が残されている。
 鐘塔の建つ交差部四方には豪快なアーチが構
築されており、柱頭彫刻には目を見張るほどの
傑作が詰まっている。大半は植物の枝や茎に絡
んだ動物や人物像である。

 半円形祭室は二段のアーケードで装飾されて
いる。上段は七連の窓の開いたアーケードで、
下段にはそれぞれに二連づつ、計十四連のアー
ケードが意匠されている。よくもまあ、ここま
で執拗な程アーケードに魅された建築家がいた
とは驚きだが、同じロマネスクとはいえ、ある
地方のある時代の潮流としか言いようは無いの
かもしれない。
 写真の後陣と鐘塔の眺めもアーケード装飾の
展覧会のようなものだが、当時の湧きたつよう
な美への探求心が感じられる気もしている。
 
 
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 モンモロー/聖ドニ教会
  Montmoreau/Église St-Denis
   
     Charente 
   
   
 
 コンザックの真東20キロ、アングレームの
真南30キロというのがこの町の座標である。

 町の中心の小さな広場に面して、写真のよう
な美しいファサードを持つ12世紀の教会が建
っている光景は、やはり感動的としか言い様は
無いだろう。
 サンチャゴへの巡礼路に当たり、巡礼から戻
る際のこの地方最初の宿場として、スペインの
影響が随所に残されているらしい。

 下三連、上五連アーケードの意匠は珍しくは
ないが、特筆すべきは中央扉口の四重ヴシュー
ル装飾とアラブ風の波型装飾だろう。判り易い
スペインの土産である。
 両サイドの盲アーチとタンパンは、サントン
ジュには事例が多いが、ここアンギュモアでは
他にラ・ロシェット、リシェールなどだけで珍
しい方だろう。
 ギョロ目のライオンが可愛く笑っている。

 三つの梁間を持つ単身廊で、天井は尖頭ヴォ
ールト、翼廊は北側だけが残されている。南側
は15世紀に改築されたそうだ。従って、半円
形後陣は二つだけが残っている。
 祭室は五連アーチ窓の半円形だが、大きな窓
は後世の改造を示しており、四連窓を各面に意
匠した鐘塔は翼廊交差部に立ち上がっている。
 
 
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 サン・タマン・ド・ボワックス/
    
聖アマン教会
  St-Amant-de-Boixe/
     Église St-Amant
   
     Charente 
   
 
 
 この地方を代表するような西のファサードで
ある。扉口は、五重ヴシュールの緻密な幾何学
模様で飾られている。
 三廊式の身廊の天井は半円筒ヴォールトで、
横断アーチが感動的だ。12世紀の創建で、ア
ーケードの重厚感は別格と言えるだろう。
 交差部の鐘塔は豪快で、内陣から見上げたド
ームの迫力は格別だった。
 祭室と後陣は15世紀に、ゴシックに改造さ
れている。
 北袖廊の西面に美しい扉口があるが、墓所へ
の入口としての役目があったようだ。二つの盲
アーチと、聖人像が彫られたタンパンが質素な
がら印象に残った。
  
 
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 ラ・ロシェット/
   聖セバスチャン教会

  La Rochette/Église
      St-Sébastien
   
     Charente 
   
 
 
 アングレーム北の寒村で、教会は村外れの草
地にポツンと建っている。
 ファサードの上部は改造されているが、写真
の三連アーケードは健在だ。扉口左右のタンパ
ンが特徴で、馬に乗り異教徒を駆逐するコンス
タンティヌス帝を表している、のだろうと思わ
れる。
 単身廊で、天井は尖頭ヴォールト、方形の鐘
塔、半円形の祭室がつながっている。
 10~11世紀の遺構だがかなり改造はされ
ているらしい。しかし、奇妙な恰好をした人物
と植物が絡み合う図像などを彫った柱頭には、
ロマネスクの香りが十分伝わっている。
  
 
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 サント・コロンブ/
    聖コロンブ教会

  Ste-Colombe/
     
Église Ste-Colombe
   
     Charente 
   
 
 
 前述のラ・ロシェットに近い、ここも全くの
寒村である。
 単身廊に半円祭室のみという、聖堂の原型の
ような建築に感動したが、ここでも壁や個性的
な柱頭までが全て真っ白けに塗られていた。フ
ランスの美意識は何処へ行ってしまったのだろ
うか。
 が、ここでは、写真の西正面ファサードに注
目したい。多くのレリーフ彫刻が壁面を飾って
いる。
 中央窓の両側の人物は、左が聖コロンブ、右
が聖パウロである。そのすぐ上にライオンと天
使、牡牛と天使、更に外側に人物像と鷲が彫ら
れ、四福音書家の象徴を配している。
 それぞれの彫刻は全てシンボリックで造形的
であり、ロマネスク彫刻の感性を見事に伝えて
いるように感じられた。
  
 
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 セルフルアン/聖ピエール教会
  Cellefrouin/Église St-Pierre
   
     Charente 
   
   
 
 アンギュモア地方のほぼ最北端に位置する町
のひとつで、教会は11世紀に創建されたロマ
ネスク様式の建築として知られる。

 ファサードは特徴的で、サントンジュ様式と
は大きく異なっている。四本の半円柱形をした
控え壁が縦に並べられ、その間にアルメニアな
どでも頻繁に見られた細長いニッチ
Niche と
呼ばれる壁龕が並行して意匠されている。開口
部は中央部分にのみ、扉口と上の窓が設けられ
ている。

 身廊は三廊式で、ロマネスク初期の豪放な質
感が伝わってくる。身廊も側廊も半円筒ヴォー
ルトの天井で、豪快な横断アーチが見られる。
 写真は、翼廊の交差部から身廊入口方向を眺
めたものである。重厚な構造が示す不器用さこ
そが、ロマネスクの本質だと再認識させてくれ
ているようだ。黒いカビが壁面に付着して、ち
ょっと気味が悪いのだが。
 祭室にも控え壁的な半円柱が四本建てられて
おり、正面と左右端の三か所に窓が開けられて
いる。建築後方から眺めた三後陣と鐘塔の景観
は、方形の控え壁が気になるものの、落ち着い
たロマネスクの見本のような美しさだった。

 時間の都合で、墓地に建つ12世紀の死の頂
塔
Lanterne des Morts 見学は諦めた。 
 
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 リシェール/聖ドニ教会
  Lichères/Église St-Denis
   
     Charente 
   
 
 
 この小さな礼拝堂の様な教会は、シャラント
県アングレーム市の北の田園地帯に、人知れず
建っている。この教会を取り上げたガイドブッ
クは、ほとんど見かけられない。
 しかし、牧歌的な田園風景の中に建つこの教
会は、後補の塔以外はれっきとしたロマネスク
の遺構である。

 後陣・翼廊・身廊・側廊・三つの祭室など、
規模は小さいが、落ち着いた十字型プランの全
てが完璧に揃っている。
 入口の小さな門にも、動物模様などがきりり
と彫られていて、確かな美意識を持った建築家
の仕事であることが分かる。
 威圧感の無い人間的スケールを持った、まこ
とにチャーミングな聖堂である。畑の真中にた
たずむ、こじんまりとした聖堂の姿は何とも優
雅であり、名残惜しい気持ちで何度も振り返っ
たものだ。
 
 
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