被害の未然防止がなりよりも大切なことです。冷静に考えれば、おかしいと思う点があるはずです。私自身、振り返ると反省しきりです。ある程度オークション慣れしていて、トラブル口座に登録されていないといった程度の確認で、すぐに入金してしまったのです。最悪ヤフオク補償もあることだしという思いもありました。(その時点では自転車操業にあたる被害が補償されないことも知りませんでした。)
しかし、すぐに不安になりオークションの評価欄に一喜一憂していました。ある日、これは詐欺だという書き込みが連発しました。(正直そんなこと書き込まないでくれとも思いましたが、これは詐欺撲滅を図ろうとする善意の書き込みなのですから仕方ありません。)それまで900以上あった良い評価が日増しに荒れていきました。
相手が発送の期限とした2週間後の10月7日(掲載写真の撮影日)、私はとうとう現地を確認に出かけました。それが騙されたことを確信した日です。その日からishiroguとの闘いが始まったのです。その日の夜、ishiroguはネット上から忽然と姿を消し、音信不通となりました。
犯人逮捕には、被害者の団結が不可欠です。10月当初より被害者はメーリングリストのグループを通して速やかに集結する事が出来ました。それぞれが不安と暗中模索の中、情報を共有し協力体制をつくっていったのです。
(被害届の提出の際に必要な資料を共有し、メールや電話の発信元などの解析やその後の現地の調査・関係機関との連絡調整・被害状況の集計等を分担して行うことができました。)
ヤフーに対してはもちろん、警察やマスコミ等に対しても連日のようにメールなどで情報提供と協力要請を行ってきました。
はじめから無駄だと思わずに、なんでも出来ることをやってみることです。 (関係諸機関へのメール)
11月10日には情報提供と捜査協力のために、被害者の会幹事で現地警察署を訪問しました。その際にはテレビの取材も受けました。(捜査に影響することを配慮して、逮捕までは放送しない約束もいただいていたのです。)
この取材が、結果的に警察の捜査を進展させたことは間違いないと思います。TBSニュースの森のスタッフの方々には感謝しています。
その後、逮捕までは2ヶ月以上を要しました。テレビの討論番組から出演要請の話もありました。グループ内やネット上でのトラブルなどもありましたが、お互いの協力と助け合いで何とか今日まで乗り切ってきたのです。
事件の真相は裁判で明らかになるでしょう。そして今後……被害の補償を諦めたわけではありません。しかしそれ以上に、このような被害の拡大を少しでも食い止めたい、我々のような被害者を出したくないというのが、現在の私の正直な気持ちです。
5月17日10時40分、刑事裁判第2回公判が開廷され、余罪約20件についての追起訴が行われました。
前回の全面否認から一転、大宮被告は起訴事実を認めました。これは私の想像ですが、弁護士と相談の結果、全面否認は事実関係からも通りそうもない、少しでも裁判官の心証をよくしておこうという判断から起訴事実を認めることにしたのではないでしょうか。
しかしながら被害者に対しての謝罪はありませんし、弁護士を通した被害者の会からの面会要求にも回答がありません。
今回は開廷後20分も経たないうちに閉廷となりました。
次回公判では、今回検察側の資料づくりが間に合わなかった分の余罪(合計100件程度)の追起訴が行われる模様です。
ishiroguこと大宮敏幸は、架空の(手元にない)商品をカタログなどの写真を元に、原価を割った値段で出品を続けました。
そして当初はこの金額差を次の落札者からの入金によって穴埋めしていました。いわゆる自転車操業師(チャリンカー)と呼ばれる多重債務者が手を出す手法です。
大宮はこの手口を自転車操業による破産だと主張しようとしたのですが、当初の送品もヤフオクの評価を稼ぐためであったことが明らかです。
つまり、一定の評価を獲得して入札者を信用させておいて、最終的に得た金額を詐取しようと画策したわけです。
この手口は現在多くのヤフオク詐欺師によってマニュアル化されているようで、大宮もどこかでこうした手口を知り実行に移したに違いありません。
評価の見方で一つの目安があります。ishiroguは900以上の好評価を得ていましたが、これは2004年6月から9月の約3ヶ月間に集中したものでした。つまり短期間に得た見せかけの評価であったわけです。こうしたことに気づくも後の祭りだったのですが、半年以内に集中した評価は要注意です。ヤフオクの評価欄の時期を見ると、どの期間に獲得した評価か判別できますので入札の際には考慮に入れてください。
大方の自転車操業師は4ヶ月程度の期間で転倒(必然または計画的終焉)しますので、この期間というのも一つの目安になります。もちろんID乗っ取り詐欺(他人のIDを乗っ取り行われる詐欺)などの場合は、この期間だけでは判別できません。商品の出品傾向などの変化も合わせて見る必要があります。人気商品なのに入札者の少ない商品や格安商品も十分注意しなくてはなりません。またishiroguの場合、商品説明も曖昧なまま出品を繰り返していました。
ishiroguのメールは、ヤフー届け出のアドレス以外から送られてきました。(その時点で十分疑わしかったのです。)さらにishiroguには次点落札詐欺(出品者を装った第三者による詐欺。当然ヤクオフ補償は適用外。出品者とは何の関わりもない場合が多い。この手の詐欺師がかなり蔓延している。)もあったようです。ishiroguから落札者に宛てられたメールと次点落札詐欺メール(ishiroguとは別件)の手口を、被害防止の参考にしてください。
本事件が週刊アスキーに掲載
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6月21日10時、刑事裁判第3回公判が開廷され、余罪数十件についての追起訴が行われました。
前回までと同様に、裁判官から被告人に黙秘権があるといった注意事項が述べられた後、検察官の起訴状朗読。
正直言って早口で声が小さいので良く聞き取れませんでしたが、内容はほぼ前回と同じようです。その後同様の被害者の氏名のみが読みあげられました。
気になったのは、被告人の「事業計画等の頓挫といった形で行ったということを……認めます。」という発言と「(検事の)まともな感覚の意見をいただき……検事調べがあるのか無いのか……。」という捜査や追起訴の回数に関して注文を付けるような発言です。
今回も20分以内で終わりました。被害者の会からは私と代表のNさんが傍聴しました。
前回の公判後、新弁護人に伝えてあった、被害者の会への謝罪や被告人への面会の要求は完全に拒否されました。
「示談交渉等をやるというなら弁護士を立てて欲しい。」つまり、弁護士を立てなければ話合う気はないということですかと尋ねると
「まあそういうことです。」「私は刑事の代理人ですから、関係ない」「本人の意向がないことはそれ以上は出来ない」
謝罪の気持ちはないのかと尋ねると
「ないと言うか謝罪は現状では聞いてませんね。」「本人は否認している」ということで、まったくとりつく島がありませんでした。
裁判では被告人は被害者に謝りたいと言っていますが、まったく実際と言っていることが違うじゃないですかと尋ねても、
「本人の意向にそうしかない」「刑が確定するまでは無罪の推定なんです」と、まったく話がかみ合いません。
そのうちに「そうですかハイハイ」といい加減な返事に。
「忙しいから」「もういいですか」とまったく誠意がありませんでした。被害者の感情をどう思っているのでしょう。あげくのはてに、話の途中で電話を切ってしまう始末で、まったく失礼な話です。
再度電話をすると、謝るどころか「早めに終わらせてもらえます」などと、あまりの対応に、こちらもつい大声になりました。
弁護士という立場については理解できますが、こうした対応は、人としていかがなものでしょう。
被告人の立場や人権を守ることと、何でもかんでも言いなりに動くこととは、同じではないはずです。
被害者との橋渡しをする立場ではないのですかという問いには、答えがありませんでした。
弁護士としてどういう事実認識をしているのですかと尋ねると、「本人から聞いている」との答え。
客観的な状況証拠もそろっているのに、本人の言うことを鵜呑みにするということですかと聞くと
「そういうことになりますね」「大宮さんが謝りたいというならその意向で精一杯努力します」「本人が否認している以上、それ以上出来ない」のいってんばり。
裁判長から被告人の立場は、殺人事件で言えばナイフを心臓に突き刺したところまで来ていますとまで言われていますね。裁判のことを良く分かっている弁護士さんなんですから、本人にもアドバイスすべきではないのですかと尋ねると
「そういうことはしない」「わたしはこういう弁護士なんで そういうスタンスです」
弁護費用のことや、協力者のことも聞きましたが、当然答えはありませんでした。
そちらがそういう態度なら、こちらとしても被害者の会の意見陳述で徹底的に糾弾すると伝えました。
検察官にも新たな証拠に基づく再捜査を働きかけます。
民事で弁護士を要求するのは彼らの常套手段です。そう言えば被害者が引っ込むと思っているのです。
こういう相手は徹底的に追及してやらなくてはいけません。民事訴訟についても具体的に検討に入ります。
被告人の態度はもちろん、弁護士の態度にも本当に頭に来ました。(被害者の感情を逆なでしてどうするのでしょう。)
結局、金のためなら何でもやるが、金にならないことはしない。あと数回の公判をやり過ごすだけと言った感覚なんでしょうか。
被告人は再び弁護人の選定を誤ったようです。(裁判の引き延ばしが目的であるなら、効果があったとも言えますが……。)
被害者との橋渡しを少しでも期待した私がバカでした。