運用方針ホーム

「図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み」
正誤表掲載のお知らせとお詫び

2009年5月30日 津村ゆかり

自著「図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み」(秀和システム)の正誤表を作成しました。(出版社のサポートページ
たいへん誤字・ミスが多いことを読者の皆様にお詫びします。

誤字・ミスの主な内容

一番大きなミスは「併行精度」またはこれに関連して使用している「併行」の語が「並行精度」「並行」になってしまっている点です。二通りの漢字があることを私が認識しておらず、最初にワープロで変換されたまま終始使用してしまいました。

二番目に大きいのは、走査型電子顕微鏡(SEM)データの欄に走査型プローブ顕微鏡(SPM)のデータが誤って挿入されている点です。

三番目に、略語集の「掲載頁」が2ページ後ろへずれている項目が多数あります。

この他、図版の提供クレジット漏れ、構造式の間違い、物質名の間違い等があります。上付き下付き、日常語の誤植はこの表に含んでいません。

不正確な内容でお届けしてしまったことを、本当に申し訳なく思います。

誤字・ミスが起こった理由

ミスの最大の要因として、本の制作を急ぎすぎたことがあると思います。私は単著で本を出すのは初めてで、出版スケジュールを自分で組んだ経験がありませんでした。そして、自ら出版社に約束した期限に縛られすぎてしまったと思います。原稿と図版がそろってからの制作期間が短すぎ、十分な精査ができないまま最終版組みとしてしまいました。

併行精度の件にしてもSEMデータの件にしても、最初のページ組みができた時点で査読の先生方やデータ提供元に見ていただけば簡単に発見されていたはずです。(なお、SEMデータに関しては査読時には別の仮画像が挿入されており、図版集めの段階で私の判断で変更したものです。)

また、本を作る困難さと重みを私が十分理解せず、個人でできることの限界を認識していなかったと思います。
本書は余暇時間を利用して個人として執筆したものですから、業務上の関係者に手助けを依頼することは避けました。また、通常の業務や論文発表においてはミスを防ぐための様々な仕組みが整備されていますが、それらと同等の枠組みを自分で用意するということが不十分でした。

以上のとおり、本の内容に応じた作業時間と入念さが欠けていたことが誤字・ミスの原因だと思います。

誤字・ミスにより考えられる影響

今回起こしてしまった誤字・ミスの影響について考察しました。

まず「並行精度」の件ですが、JISや医薬品バリデーション等は全て「併行精度」ですから、完全に誤っています。ただ、本書はこの語の概要を説明しているのみであり、実際にバリデーションを実施するにはそのための専門的な資料に当たる必要があります。その過程で誤りは認識されると予想されます。

また、「並行精度」によって想起される意味は「併行精度」と全く同じであり、学習者が違う内容をイメージして混乱するということはありません。従って誤りと気づけば比較的容易に切り替えられると思われます。

次にSEMデータの件ですが、SPMによる画像も「立体的」という特徴はSEM画像と共通していますから、全く違うイメージが学習されるということはないと思います。ただ、スケールや観察対象が両者で異なりますので、間違ったデータ例を記憶してしまうことになります。いずれにしてもこれはデータ例ですので、読者が間違って何かをすることにはつながりにくいと思います。

略語集のページずれについては、この正誤表をご覧になった方はそういうものとしてご利用いただけると思いますが、正誤表の存在を知らない人に対しては不便をおかけすることになります。

その他の誤字の多くは図版の中で発生していますが、本書は化学分析で実際どんなことを行うのかというあらましを紹介するものなので、個別の操作を行うにはそれぞれの専門書や技術資料が参照されるものと思います。なお、数値には特に注意を払って校正していますので、今のところ間違いは見つかっていません。

以上のとおりですので、今回の誤字・ミスによって読者に深刻な不都合が発生することはないと認識しています。なお、提供クレジット漏れについては提供元の皆様にお詫びし了解をいただいています。

これまでと今後の対応

ミスが多いことに気づいたのは、5月の連休明け頃に親しい人から指摘されたのがきっかけでした。それから自分で精査して「並行精度」の誤記に気づき、その他にも多数のミスを見つけたとき、自分だけの力では発見しきれないと悟りました。
そこで、既に献本した方たちに仮正誤表を送付し、また、様々な縁ある皆様にも献本し、どうか一部でもお読みいただいて、問題点を見つけたら教えていただきたいとお願いしました。どなたもそれぞれの分野で分析に従事しているか、あるいは従事していた方たちです。

その結果30名近い方からコメントをいただきました。全編を読んでくださった方もおられますし、また、特定の事項に詳しい方には特にその部分をお願いして、できる限り本全体に詳しい人の目が入るようにしました。その結果を集約して正誤表を作成しましたので、本日まで時間がかかってしまいました。新型インフルエンザ発生で慌ただしい中、チェック作業に応じてくださった皆様には、言葉で言い表せないくらい感謝しています。たいへんご迷惑をおかけしました。どうもありがとうございました。

取りまとめた内容について、分析の現場で指導的な立場にある方などに御相談しました。その結果、本書の性質上、細かな間違いによって大きな問題が起こることはないだろうとの御意見をいただきました。

今後は、特に「並行精度」の間違いにできるだけ早く読者が気づくことができるよう、最大限目立つ形で私のウェブサイト及びブログで注意喚起をしていきます。また、寄せられたコメントには単純な誤字の指摘以外の深い内容のものも多いので、順次解説記事を作成し、本書のサポート情報として公開していきたいと思います。
さらに、分析各分野の専門家に献本して御意見をうかがうことを継続していきたいと思います。

本書の役割

このようなミスを起こしてしまいましたが、本書は発売直後からたいへん好評を得ています。「わかりやすい」「むずかしいことをうまく説明している」「分析の現場に即している」など、お褒めの言葉を多くいただきました。

分析の現場にいる者は、多かれ少なかれ「ゼネラリスト」「何でも屋」であることを求められるでしょう。その中で、新しくこの分野で働くことになった人たちは特に、「何をどこまで学べばいいのかわからない」という未達成感、不安感を持つと思います。本書は一人の分析屋の立場から、とりあえず分析の世界でどんな知識が必要かを案内する、つまり「物」でなく「人」を中心に据えた解説になっています。また、個別の分析法等の解説は簡潔ですが、それぞれがどんな役割を持つのか、どう使い分けていけばいいのかがはっきりわかる書き方を心がけました。

このような本が求められている以上、私も大きな責任を自覚して、本書の読者のために追加の情報提供をしていきたいと思います。

御意見の募集

本書を読まれての御意見・御感想・御批判を寄せていただけばたいへんうれしく、追加情報提供に役立てさせていただきます。
ただ、公開の場でのリアルタイムの討論という形になると対応しきれる自信がありません。従って、これ以降基本的にブログのコメント欄は閉鎖します。一つだけコメント用の記事を作りましたので、こちらを利用して御意見をお寄せください。これは御意見を受け付けるためだけのもので、公開することはありません。また、メール(yukari.tsumura@nifty.com)でお送りいただいても結構です。

寄せられた御意見には、十分な消化時間を取った上でお答えしていきます。

私の不注意のために読者、出版社、チェックをお願いした皆様、図版提供元の皆様に多大な御迷惑をかけてしまったことを、改めて深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ありませんでした。

正誤表:出版社のサポートページ
御意見送信用
「並行精度」は間違い、「併行精度」が正しい


管理者:津村ゆかり