購入記(アルプスヘ)


1998年12月2日(水)
『スポーツサイクル アルプス』を初めて訪れた。
自転車独特の匂い、見覚えのある懐かしいパーツ、自分のイメージ通りの『自転車屋』だ。
なじみの客らしい男性が主人(萩原氏ということを後で知った)と話し込んでいる。
一見の客が入り込めないマニア向けの店の雰囲気に圧倒されそうになる。

なんとなく居心地の悪さを感じながらもディスプレイされているオーダー用の
スタンダード車をじっくりと見てまわる。
やっぱりいい。 メーカー品には無い気品と存在感にあふれている。

『すべてのものは付け加えるものがなくなったときに完成されるのではなく、
取り去るものがなくなったときに完成されるのである。』
サン・テグジュペリの言葉だったと思うが、まさにそんな自転車達だった。

子供2人が大きくなり、幼児用車を卒業したときから、家族でサイクリングするのも
いいなと思うようになった。
2人は今、5段変速のATB車に乗っている。
自分が小学生の頃は、変速付きの自転車なんて夢のようなことだったのに。
女房はお買い物自転車。  それでも5段変速付き。

実のところ私はこの時、自転車を持っていなかったのである。
パナソニック、ブリヂストン、マルイシ、プジョー。  最初は完成車を安く買うつもりだった。
予算は5万ほど。

しかし、カタログを見ても現物を見ても、どうにも気に入ったものが無い。
ランドナーは? 1 -3/8タイヤはどこへ行ったんだ!。
なぜMTB(あるいはMTBルック)ばかりなの?。
 ドロヨケが無いなんて雨の日大変じゃないか!
 ブロックパターンは抵抗が大きいだけだと思うけど。
 サスペンションが付いて15kgとは!重たいだけじゃないか!

自転車雑誌もしかり。 記事はMTBとロード中心の構成で、ランドナーのことなど眼中に
無いと言った感じだ。 オーダーしか道は無いのか?とも考えはしたが、先立つものもない。
とりあえず見るだけなら金はかからないし、ということで訪れたのがアルプスだった。

アルプスの存在は知っていたが、オーダー専門店ということもあり、遠い存在だった。
このような店は都内にも何軒かあるが、アルプスに近い神田駅が通勤途中という
便利さもあって行ってみることにした。 駅から徒歩2〜3分。本当に近い。

パスハンターというカテゴリーの自転車を初めて目にした。
ランドナーとキャンピングの違いはわかる。 見た目にはランドナーとほとんど
変わらないようだが、何が違うのだろう。
主人は相変わらず先ほどのなじみ客と話し込んでいる。
カタログが置いてあった。 ワープロで打ったらしい文書にカラープリンターで印刷した写真が
載っている。 

さらに店内を見てまわる。『ニューサイクリング』? ランドナー全盛期の頃のサイスポを
思わせる表紙と記事。バックナンバーもあったが12月号を手にした。
相変わらず2人は話し中。 カタログとニューサイクリングのレジを済ませる。
この日、主人とは話しをすることもできず、店を出た。


帰りの電車で、さっき買ったカタログに目を通す。
アルプスのオーダーはミリ単位の超専門的なものではなく、スーツで言えばセミオーダーの
ような仕組みになっているらしい。
サイクリングのすばらしさと、各オーダー仕様車の諸元が記載されている。
さっき店で見たパスハンターとランドナーの違いが、わかりやすく説明されている。
『パスハンター』か。

もうこの時点で完成車を購入することなど選択肢から消えつつある。
資金のことはあとで考えよう。


1998年12月5日(土)
アルプスを訪れて以来、会社の帰りはいつもカタログをながめていた。
あこがれのオーダー車への思いが高まってくる。
汗をかきながら坂を上り、さわやかな風を受けながら景色を楽しむ。
快走するダウンヒル。 そんなシーンが脳裏に浮かぶ。 

オーダーするならパスハンターにしよう。  グレードは3つある。
最上級のスーパークライマー,エクセルクライマー,スタンダードなクライマー
今日は主人と話しができたので、いくつか質問をぶつけてみた。
なぜMTBのように手元にシフトレバーを付けないのか?
最近よく見かけるようになったフロント3枚なんて無駄だと思うが?。
親切に、そして情熱的に答えてくれる。


1998年12月12日(土)
20年前の相棒で使っていたパーツをアルプスに持ち込む。
長い間ほったらかしにしていたので、ところどころ白サビが浮いているが、ペーパーをかければ大丈夫だろう。
安く済ませたいという思いもあって相談に行ったのだが、その思いはあっさりと断ち切られた。
『今のパーツとは規格が違うんですよ。このパーツを使うなら、足回りはほぼ特注にしないと
できない。』
Wレバー台座、エンド幅、チェーン。
どれもがこの20年の間に進化していた。
未練は残るが、旧パーツを使うのはやめよう。

最後にひとつ、つまらない質問をしてみた。
『自分で組み立てると少しは安くなるのですか?』
答えは
『標準価格には組み立て費用のような工賃は含まれていないので、安くはなりませんネ』
価格設定に良心的なものを感じました。

 

AsternAhead


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