山域 谷川連峰
コース 清水〜柄沢山〜ナルミズ沢〜東黒沢
〜縦走、雪稜、沢の滑降と全て揃った山スキールート〜
日程 平成18年3月24日〜25日

今シーズン吾妻に入り浸っていたが、そろそろ近くの山の雪も落ち着いただろうということで、何年も前からモコモコさんが「行きたいのだ、行きたいのだー。」と騒いでいたルートを選んだ。普通は春になると、軽装で快適な滑りを求めるのだが、なぜかそれに逆行してテント持参のハードな山旅だ。
モコモコルートではナルミズ沢を滑った後は宝川温泉にそのまま降りるものだったが、最後の林道歩きがいやなので、東黒沢を下降ルートとすることに修正した。
さらに折角なので赤沢山まで稜線を歩いてから降りようという魂胆だ。

データ 地形図巻機山、茂倉岳

アプローチ
前日
東京19:12〜越後湯沢21:02

コースタイム
1日目 3月24日(くもりのち晴れ)
越後湯沢5:00〜清水(柄沢橋)5:40
柄沢橋発6:05〜枝尾根取り付き8:40〜尾根11:40〜稜線13:20〜柄沢山13:53〜檜倉乗越14:40〜14:54(幕営地)
2日目 3月25日(晴れ)
幕営地7:55〜檜倉山8:54〜大烏帽子山10:57〜大石沢出合11:45〜ウツボギ沢出合11:55/12:30〜丸山乗越13:15/13:35〜丸山14:17〜1482mPの肩15:00〜東黒沢出合〜白毛門沢出合16:01〜土合橋バス停16:45




朝一番の新幹線でもなんとかなりそうだが、幕営道具を背負って初日に少なくとも標高差1200mを稼がなくてはいけないので余裕をもてるように前夜越後湯沢まで入っておくことにする。

予定していたよりも一本早い新幹線に乗ることができた。幸先のいいスタートだ。
天気予報もその日が近づいてくるにつれてどんどん良くなっていく。新幹線の中でお弁当を食べてから前夜祭を開いた。
そうこうしている内に越後湯沢に到着。
宿に一度荷物を置いてからコンビニで買い物を済ませて戻るといくらも経たない内に雨が降ってきた。
明日の天気は回復して高気圧も近づいているようなので、天気予報を信じて床に就く。


一日日 3月24日
コースタイム
1日目 3月24日(くもり)
柄沢橋発6:05〜枝尾根取り付き8:40〜尾根11:40〜稜線13:20〜柄沢山13:53〜檜倉乗越14:40〜14:54(幕営地)


予約しておいたタクシーに予定通り5:00に乗り込む。
赤いきつねを仕入れるのを忘れてしまったので、途中コンビニによってもらう。ここまで赤いきつねに固執する我々っていったい・・・。
昨日からの雨はまだ続いていて清水に近づくにつれて雪に変わり降り方も強くなってくる。
タクシーの運転手さんも「今日は天気良いっていってたんだけどなあ。」といっている。

清水の柄沢橋でタクシーから降りる。
降りるときにいつもならあまり聞かれないのだが今日に限ってどこへ行くのか、明日はどうするのか何時頃降りるのか等細かく聞かれる。先日の遭難事故のことがあるからかな?と思いながら答えていると、運転手さんからやはり「まあ、いろいろありましたからね。」とのこと。
いつも思うことだが、親切な運転手さんを最後の目撃者にさせないように気をつけていこうと今まで以上に強く心に誓った瞬間だ。

雪がやむ気配が全くなく支度をして体操を済ませている内に道路は真っ白になってしまう。
最初は柄沢沿いの林道を進むことにする。
清水集落を過ぎてすぐに国道の除雪終了点となるところから歩き始める。すぐに清水峠へ向う国道とわかれて林道へ入る。しばらく林道を進み、林道が柄沢川を渡るところから沢を歩く。
昨夜からの雪が5cmくらい積もったところを延々と歩く。
雪は一向にやむ気配がない。
重荷で休み休みながらの歩みだ。
途中幕営するのに快適そうなところがでてくると、もうここでやめて軽い荷物で往復してくるのにとどめようかという気に何度もなる。

標高900mくらいで目の前に地形図に載っていない大きな堰堤が現れる。
まだ完成してあまり経っていないようだ。清水周辺の沢は米子沢を始め堰堤工事の餌食になっているようでこの沢も例外ではないらしい。
この堰堤の工事の為に林道がここまで延びているので、林道をずっと辿ってくることもできることがわかった。
堰堤が大きいので巻きも結構大きくなるが、これを無事越えて枝尾根への取り付き点へ向う内に雪も止み、雲もときどき切れてくるようになる。また西の空には青空が見えている。

枝尾根への取り付き点で休憩をとる。
今回の登るルートは、柄沢川の二俣から立ち上がる枝尾根から取り付いて、稜線から威守松山へと伸びる尾根へ合流してから稜線へ登る予定だ。
標高が低くて小さな枝尾根だが、厳しい上越の気候にさらされているので、風上になる尾根の北西側(左側)はガリガリで、その反対側は先ほどまでの降雪もあり柔らかいが小さいながらも雪庇ができている。
取り付きの最初の急傾斜を頑張って登ると傾斜はわりと急でも快適な尾根歩きになる。
順調に登っていくと堰堤を見下ろせるようになる。
快適な登りもここまで。尾根の傾斜が強くなり雪面も硬くなってきてシール登行ができなくなってきたので、板を外して直登することにする。
少し傾斜がゆるんだので板をはいて登る。
板をはいて登れるところもあまり長く続かず再び急なやせ尾根となる。ここから再び板を担いで登る。

最初はあまりもぐらないが、徐々にもぐるようになったりする。
重荷+板の重量に耐えながらフウフウ登る。周りが見渡せるようになるのが救いだ。
しばらく登るときれいな雪稜となる。
膝まで潜るところをがんばって登ると傾斜が緩む。ここからは再び板を付けて尾根への分岐まで登れそうだ。
すばらしい景色を写真に収めてさらに登る。
尾根にでてからはすぐにガリガリのアイスバーンとなり、シールでは登れなくなる。
またもや板を担いで登る。
雪面が結構硬く、キックステップで登る。やはりアイゼンをもってくればよかったと後悔するところも多々ある登りだ。
慎重に登っていくが、途中雪に隠れていたクレバスを踏み抜いて落ちる。荷物がひっかかったので衝撃はほとんどない。足が底に着かないので怖くなった。胸の雪を払い穴の深さがどのくらいあるのか恐る恐る確認する。光が届き底が見えた。ウエストベルトを外し穴に着地する。深さはざっと2m。落ちたところは天然の雪洞のように広くて快適だ。落ちたところをモコモコさんに写真を撮ってもらおうとしたところモコモコさんに「それどころじゃないでしょ!!」と怒られる。そのあとなんとか脱出。
実はモコモコさんもその穴を迂回しようとしたところ思ったよりも穴は大きくて、モコモコさんも落ちそうになっていて穴ぼこ地帯から脱出しようとしていっぱいいっぱいだったらしい。

稜線上の空も青空になっているが、まだここは高気圧が追いついてきていないらしく相変わらず風が強い。ガリガリの斜面を登っていき稜線が近づいてくるとなんとか板を付けて登れそうになる。板をつけて少し尾根を登ってから、柄沢川の源頭を詰めるような感じでいく。
この源頭も雪面が軽くクラストしていてシールが滑るので、直登できる傾斜なのに斜登行することになり思ったよりは登りにくい。
そんなこんなでかなり大目に時間をとっていたにもかかわらず予定よりも大幅に遅れて稜線に到着。
稜線に着いてからは強い横風を受けての歩き。
休憩もせず歩みを進める。

相変わらずガリガリの斜面を柄沢山に向けて登る。
途中後ろを振り返ると巻機山(余談だが、我々は巻機山のことをマッキーと呼んでいる。そのため我が家ではマッキーというと槙原敬之ではなく巻機山を指す。)がとてもきれいだ。
ようやく柄沢山に到着。
ここまでくるとこれから先の稜線が一気に見渡せる。
文句なしの素晴らしい眺めだ。
予定では檜倉山で幕営をして、早くに着いたらその周辺を滑る予定だったがとんでもなかった。
幕営地につくのが精一杯だろう。
しかし檜倉山では風が強そうでその手前でもいいところがあったら泊ろうということで下りに掛かる。
ここからはシールをはずしていこうと思ったが、山頂直下はガリガリのアイスバーンで、その先はやせた尾根が延々と続いている。
シールをはずさずに行ったほうが無難だということでそのまま降りる。

ガリガリの斜面を横すべりで降りる。ガイドには「狭いが快適な下り」とかかれているが、とてもそうは思えないなあと思う斜面だ。すこし我慢すると雪面が柔らかくなり、急なところは斜面を広く使って降りられるようになる。
念のため、お互い見張りをしながら交代で滑り降りる。
完全な尾根の形になってからは、確かに狭いが雪が柔らかく、シールをつけていても快適な下りになる。
柄沢山ではやたらに遠く感じた檜倉山手前の鞍部(檜倉乗越)まで楽しんでいく。
シールをつけたままでもやはりスキーは乗り物。思ったよりも早くに檜倉乗越に到着。
これから檜倉山への登りだ。
登り始めてすぐにモコモコさんが「ここ泊るのにいいんじゃない?」といってくる。のぞいてみると尾根が少し広くなっているところで風も弱そうなところだ。
ここを候補地にして先へ進むことにする。
するとすぐに板を外さないと登れないような状態になる。
そこで荷物と板を置いて偵察に行く。

やはりわずかながら板をはずさないと登れない。またその先も長そうなので、今日の行動をここで打ち切ることに決定。明日の為にステップだけ作っておくことにする。
ステップもできたので荷物のところへ戻り、幕営ポイントに行く。
お腹が空いてきたので早く休みたいので早速テントを張る。
さらに風除けのブロックを積む。
これくらいでいいかなと思うとモコモコさんが「まだまだもっと積まないと」といってさらに作業をすすめていく。
お腹が空いていらいらしてくるがなんとか積み上げる。
モコモコさんはさらに積みたそうだったが、先にテントに入るとさすがのモコモコさんもあきらめてテントに入ってきた。
風はやんだみたいでとても静かだ。

テントに入り早速水作り。
水つくりの間、担いできたワインとおつまみでお互いの労をねぎらう。
さすがにこの時期の上越のしまった雪は密度が高く、同じ量を作るのでも吾妻のときの半分の嵩で水ができてしまう。また今回はMSR(通称暴れん坊)を持ってきているので、水作りも早くに終わり、赤いきつねにその分早くありつける。

続いて夕食の支度にかかる。
このころになると風がでてきてテントがあおられるようになる。
天気予報では明日は高気圧に覆われて今夜も穏やかでしょうといっているのだが、モコモコさんにそれを伝えても心配でたまらない様子。ずっと「ブロックもっと積めばよかった。」と言っている。
今晩のメニューは白菜汁ではなく白菜と肉の蒸し煮、定番になりつつある焼肉、パスタ、さらにデザートまでもってきているのだ。

夕食の準備中ずっと風が吹いているのでこれに対する不安にモコモコさんは負けたらしく、めずらしくモコモコさんに食欲がない(といっても普段と比べてという意味で、多分一般の女性よりも食べていたと思う。)。
そこで少しでも栄養を付けてもらおうと焼肉を焼くことにした。焼いている内に物凄く煙が出てきて二人で「目が痛いよ〜」「換気!換気!」と楽しい夕食の時間が修羅場になってしまった。ウェアにはお陰で焼肉の臭いが染み付いてしまった。ショックです。

さすがにこのときは外張りを冬季用にするべきだった、モコモコさんの主張通りブロックをもっと積むべきで、計画が甘かったと思った。

食事をしている内に風がほぼやんで静かになった。
そこで風が静かになっているときに少しでも寝ておきたいというモコモコさんに付き合って残りは明日の朝食べることにしてシュラフに包まる。
寝る前に歯磨きとトイレの為外に出ると、風が強くはないが絶えず吹いているので非常に寒い。
二人とも「風があって外すごい寒いね。でもブロックのお陰でなんとか過ごせそうだ。」と話しながら眠りに着く。

幕営したくなるようなところを延々と行く 枝尾根取付点から柄沢川下流をみる
わずかながらこんな快適なところもある 雪稜を登る
大源太山を眺めながらさらに登る 落とし穴に注意!
もうすぐ柄沢山 巻機山を背に柄沢山へ
柄沢山からこれから行く稜線を望む 柄沢山を振り返って
偵察地点から下降するモコモコさん 風に備えブロックを積んでいく


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