コースタイム
B.P.6:45〜井戸沢出合6:55〜銅ノ沢出合8:22〜二俣9:41〜平ヶ岳13:21〜台倉清水15:50




朝起きると雨はやんでいたが、冷え込んでいて起きるのが面倒になってくる。昨日服を乾かしておいて良かった。
昨日の雨で空気が入れ替わってしまったのか寒い。
空を見ると明るいのでしばらくは天気が持ちそうだ。
ラーメンを食べた後、撤収し体操をしてから出発。

昨日確認しておいた井戸沢を何事もなく通過。井戸沢出合を過ぎてからも穏やかで、ときどき滑床状のところも見られるきれいな川原歩き。晴れていたらさぞかしきれいなところだったろう。
ときどきテンバになりそうなところもあったが、川原か藪なので昨日のところが一番良かったようだ。

白沢出合いまで目立った特徴はない。
出合いの対岸に泊まれるところがあるが川原なので少しの増水でも水没しそうな感じだ。
白沢出合からは谷は再び変化を見せ始め、小滝がでてくるようになった。また岩の色は赤見を帯びてきてくなって岩質が変わってきたようだ。
谷が狭まりちょっとしたゴルジュになる。釜をもつ小滝が連続するが、いずれも問題なく越えて行けた。小滝を何個か越えると沢が左に屈曲するところに2段の滝が逆くの字状でかかっているところに着いた。

1段目は登れそうだが、2段目が問題になりそうだ。ということで高巻くことにする。
巻は手前のルンゼから取り付いた。
このルンゼは割としっかりした階段状の岩となっていて簡単に登れた。ルンゼが消えるところから数m更に登ると平坦な尾根にでた。本谷に沿ってしばらく藪をこいでいくと先に銅沢との出合となる二俣がみえるようになり、このあたりになると降りられそうなところがあったので下降を開始する。沢に降り立つ直前にガイドに書いてあった枝沢が見つかったので、枝沢に降りて下降した。

出発してすぐにある小滝 しばらくこんなきれいな瀬が続く
ゴルジュ入り口 逆くの字の滝


すぐに銅ノ沢出合。出合いは両俣とも4mほどのかわいい滝をかけて入っている。
出合いの手前で休憩をとり、本流となる左の沢に入る。

銅ノ沢を分けると、きれいなナメやナメ滝が続いてすぐに12mすだれ状の滝が現れた。
とても美しい滝だ。一見傾斜が急でホールドもなさそうに見える。ガイドには登れるとあるので、ザイルを出して取り付いてみるとフリクションがきいて難しくはない。しかしランニングをとる場所がないので、いつも以上に慎重に登った。続いてモコモコさんも無事登ってきた。
息をつく間もなく2段8mすだれ状の滝が現れた。
この滝は面白い形をしていて下段の釜に落ち込む直前は1mくらいの幅になっている。右からへつっていって下段はツッパリで抜けて1.5mくらい登ると棚状のところにでる。ザイルをひいて登っていたので、ここでモコモコさんを迎えることにする。モコモコさんは、つっぱりをして抜けるところは問題なく通過(こういう変な動きをするのは意外とモコモコさんは上手だ)。しかし、このあとのちょっとした登りでモコモコさんが足を滑らせてしまった。すぐ上で確保していたので衝撃としては転んだ程度だが、ひじを思い切りぶつけたらしく痛がっている。荷揚げをしてから空身で上がってもらう。簡単に登れたのでなんで失敗したのかわからないが、どうやら足のかけ方が悪かったらしい。上段は問題なく通過。

この滝のすぐ上はナメとなり、目の前はすぐに二俣となっている。
この二俣もきれいな小滝をかけて入っている。
写真を撮ったりしているうちに、モコモコさんがさっそく左俣の滝を登って楽しそうにしている。
モコモコさんに続いて登る・・・・ときに突然岩を掴んだ手の甲にケロンパが飛んできて着地した。あまりのことに驚いて思わず手をひっこめてしまった。するとケロンパはその勢いでなすすべもなくしかも前方カエル身(伸身でも屈伸でもない)1回転で釜に落ちた。滝上にでてからモコモコさんに「1回転して落ちたよ」と報告すると「うん、ケロンパの白いあごとお腹がよくみえたよ」といわれた。故意ではないが、ケロンパには悪いことをした。
滝上の右岸にはビバークした跡があった。

左俣に入ると一転して穏やかになった。
ナメやナメ滝などの小滝を快適に越えていく。
しばらくするとゴーロ歩きになる。
インゼルがでてくるところで長めの休憩をとる。
天気予報では今日のほうが悪いはずだったが、晴れ間も見られ周りの山もきれいに見える。昨晩もたいした降りにならなくてとてもラッキーだ。クワガタちゃんと初日のケロンパの恩返しかな?と思ってしまうくらいだ。
このあたりから急激に高度を稼ぎ始めるようになってくる。全体としてはゴーロなのだが、時折ナメになったりで、小滝群にゴーロがつまっている感じだ。
途中にでてくる8mほどの滝を登ろうとしたが、とてももろくちょっと掴んだだけで岩がグラッというので左を巻いた。巻は簡単だった。

ふうふういいながら登っていくと、いちごの木が出始めるようになった。モコモコさんは「これを待ってたんだー。」といって早速食べ始める。この甘酸っぱさがたまらない。
時々つまみながらいく。モコモコさんはふと見るといつも口をもぐもぐさせている。手当たり次第つまんでいるようだ。
そういえばモコモコさんはこの時期はいつも上越の沢へ行きたがるが、どうやらこれが目当てらしい。
イチゴパワーでぐいぐい登っていくと、水流がほとんどなくなってとうとう水涸れ。
水涸れしても窪はしっかりしていて、花崗岩の溝に岩が詰まったような感じなので順調に標高を稼げる。

稜線まであとわずかと思われるところでクボが2手に分かれた。どちらでもよさそうだが、少しでも平ヶ岳の草原を長く味わいたいということで左に入ることにした。
窪に笹が被ってくることもあるが、総じて快適な登り。稜線までまだ遠いのではないかと思わせるくらいだ。
やがて窪もなくなって行き止まりになる。
笹を掴んで2mほど登ると・・・・。声を失った。
目の前が突然開け、笹原がその先には草原が空の下に広がっていた。
あまりの美しさに、このために来たのだと思ってしまう。写真を撮ったりするのでモコモコさんに先頭を譲る。
いつもは、ガイドとかに「草原にでて・・・」となっていても実際に行くと想像したよりも傾斜が強くて、「こんなの草原じゃないよ、草つきじゃないだけだよ」と文句をいうモコモコさんが、「きれいだね、本当に草原だね。」とはしゃいでいる。
ワカゴイ沢のときはもっと山頂に近いところに出たのと、雨でガスの中だったのでこんなに素晴らしいところだとは思わなかった。
お互い写真撮影をして山頂へのんびり向う。

あとは下山するだけ。
しかし今既に13:00すぎだ。木道にでて装備を解いて、途中ビバークになるかもという計画で13:30下山にかかる。
山頂から下り始めてすぐに恋ノ岐川を遡行してきたという男性2人に会う。山頂(正確には池ノ岳直下の水場)で一緒に泊るのを誘われた感じがしたが、テントでないので台風の影響をうけている今はさすがに稜線や山頂近くはつらい。泊りたい誘惑を断ち切って下山する。

銅ノ沢出合の滝 12mすだれ状滝
8m2段すだれ状の滝 二俣の滝(ここでケロンパ事件発生!)
沢はぐんぐんと高度を上げ始める 豊富なイチゴの実をパクついた
あまりにも感動的なフィナーレだった。 あまりの気持ちよさに寝転んでみた。


白沢清水に着く前から雨がポツポツ降ってきた。
最近長時間行動すると膝に違和感がでてくるようになり、下りのペースが上がらない。
白沢清水に着いたのが15:15、さらに台倉清水に着いたのは15:56になってしまった。
このままがんばっても降りられそうだが、きっとこのペースで行くと下山口に着くのは19:00頃になってしまうだろう。降りても帰りの交通手段がないため結局は登山口のところで雨の中(天気予報では今晩は雨)ビバークするしかないので、キャンプ禁止となっているが今晩は台倉清水への降口のところで急遽ビバークすることにした。

タープを張って早速水を汲みに行き、泊まる準備ができたので、着替えて夕食を作る。
ラジオをつけていると「ガガガッ」と雑音が入るようになった。雷が近づいてきているらしい。それからいくらも経たないうちに雨が本格的に降ってきた。しかし、樹林帯の中なのであまり気にならない。
雷の音がはっきり聞こえるようになって、やはり行動を打ち切って正解だったと話す。あのまま下っていたら今頃吹きさらしのやせ尾根を下っていたところで怖い思いをしたことだろう。ちょうどそのときにラジオのニュースで落雷の被害にあった人のことをやっていた。

今晩は焚き火も出ないし、雨が降っているしで何もすることができないので、担ぎ上げてきたアルコールをすべて飲み干して寝ることにした。
22時頃から雨脚が更に強くなった。
それからしばらくしてモコモコさんから「やだー」という声が。
起きるとモコモコさんは全身(地面に接する全面)、山人は半分(地面に接する部分のうち、モコモコさん側の半身面)が水溜りに入ってしまった状態で寝ていた。

中身はまだ濡れずに無事だった。シュラフカバー偉い!!!と大いに褒めてあげたいが、それどころではない。
即座に雨具を着て排水作業にかかる。
移動したり排水をしたりするがうまくかない。なんとか「まあこれなら我慢できるでしょう」という状態にして作業を終了することにした。最後に点検で地面に敷いたシートをめくってみると、なんと水溜りからどんどん水が排出されていくではありませんか。
どうやら水の出口をふさぐように寝てしまったので水が逃げ場を失って溜まってしまったらしい。
相変わらずの雨だが、水の出口を確保してあげたらしばらくしてきれいに水ははけてしまった。やれやれなんとかこれで落ちついて寝られそうだ。
雨具を着ていたとはいえ雨に濡れて作業していたので体が冷えてしまってなかなか寝付くことができなかったが、それでも何時間かは熟睡したらしい。



3日目
コースタイム
台倉清水6:25〜平ヶ岳登山口(バス停)9:20/バス10:00くらい(バス遅延のためで本当の時刻は9:48発)〜尾瀬口船着場10:10/10:20(船)〜奥只見ダム船着場11:00



翌朝、雨は小降りになっていた。昨晩の雨はきっと滝で落としてしまったケロンパの涙だったのだろう。
朝食はとらずに撤収。
途中休憩したりして、下山するのにはモコモコさんが見込んだ通り3時間ほどかかってしまった。
無事降りてきたのであとはバスが来るのを待つだけだったが、予定時刻を5分過ぎてもバスは来ない。まあこれくらいの遅れはあるかもしれないと思ってさらに待つ。10時を過ぎてもこない。かなり前から待っているのでバスが既に行ってしまったことは考えられない。
もしかして昨日の雨のせいで土砂崩れでもおきてしまってバスは運休なのか?とかなり不安になっていたらようやくバスが現れた。やはり昨日の雨で通行止めの掲示がでていて、確認をとっていたので遅れてしまったとのこと。予約していたのは午後の便だったが、その場で変更してもらえ無事乗車もできた。連絡する船に乗れるかなと心配もしていたが、船に待ってもらうよう連絡するから大丈夫といわれ一安心する。

バスから無事接続した船に揺られて奥只見ダムに到着。
ダムからの乗り換えのバスの時間まで間があるので、お土産屋さんでかるくビールを飲んだりして過ごした。
船に乗るときに仕入れた情報では、船に乗ると入浴料を割り引いてくれるとのことで大湯温泉の「ユピオ」に入ることにした。バスの運転手さんが親切にも入り口に近くなるようにバス停より手前にバスをとめてくれた。
ユピオのお風呂は貸し切りで、贅沢にお風呂に浸かって冷え切った体を温めることができて最高だった。

予定よりもかなり早く帰れ、しかもお風呂にも入ってくることもできて最高の夏休み最後の沢旅となった。

後日談

翌日は遅出の勤務だったので、自宅いたところ登山届けを出した奥利根湖の管理事務所から電話が入った。下山確認とのことで、無事下山(帰宅)を知らせると、事務所の方によれば、我々の入山中に麓でもかなりの雨が降ったようで心配しており、この電話に出なかったら警察に連絡しようかと思っていたとのこと。すぐに下山連絡をしなかったとことでご心配を掛けたことに恐縮するとともに、見守って下さっていたことに感謝したことも今では大きな思い出。


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奥利根水長沢 その2