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能登輪島ちょんのま
-2006.2.22~23-

 このごろ,温泉旅行のチラシや新聞広告によく目をとめることが多くなった。歳をとったせいかのんびりゆったり温泉にひたって美味しい物を味わう旅を好むようになった。
 ということで今回は,クレジットカード会社のビラで,「美味しい能登2日間」19,800円というのを見つけて,寒い冬には寒いところに行くのも一興かと申し込んだ能登輪島温泉である。
 往復の飛行機と宿と能登空港~ホテル間の足と,一箇所だけ漆器工房に寄るだけのツアーである。
あとの時間は,フリーという格安個人旅行ともなるまことに便利・安直な旅を楽しんできた。


初めて訪れた輪島

 羽田から能登空港までのフライト時間は,およそ45分ほど。
左に富士山,直下に秩父山塊,八ヶ岳,浅間山,右手奥に雪を冠った上越国境の山々。「あれは男体山か,これは谷川岳かな?」と目を凝らしているうちに,日本海が見えてくる。
糸魚川か親不知辺りの海岸線だろうか,富山湾に出てもう降下しだした。列車だと輪島までは,ほぼ一日行程となるがさすが飛行機は早い。飛行場ばかりつくって税金の無駄使いだとよく云われるが,地域の人たちのとっては自分達の足の便もさることながら観光客をより多く呼び込み地域の活性化にも寄与する貴重なインフラとなっていることは間違いないところだろう。

 能登半島には,1960年代の終わりごろ,電力関係の研究所に勤務していた大学の先輩Sさんにくっついて,地盤の常時微動を計測するためライトバンに地震計とアンプとテープレコーダーを積み込んで七尾,羽咋,富来,穴水あたりを走り回ったことがある。Sさんは大酒豪で,泊まる場所ごとに地酒を買い込んで毎晩宴会を開いたことが思い出される。その時は輪島までは足を伸ばしていないので,今回がはじめての輪島訪問である。



雪いっぱいの能登空港
 能登空港は滑走路とエプロン以外は一面の雪に覆われていた。まだまだ春浅く,今冬の大雪を垣間見た感じ。
 この空港は2年ほど前に開港したとのこと,最初の1年間はまあまあの利用客数だったが,2年目から客足が落ちて,「能登空港利用促進協議会」というのをつくってお客呼び込みに懸命の努力をしている。
 空港からホテルへはマイクロバスで。この時点でツアーの参加者が40名ほどであることが判明。


しおやす漆器工房
 バスは20分ほどで市内へ。
町の中に入ると輪島塗のお店や漆器工房がたくさん目に付く。
 市街の西外れにある「しおやす工房」で漆器製造工程の見学。豪華なテーブル,お椀,重箱などの展示品を鑑賞させてもらう。これらは実は販売用の品なのだが,わたしらには”0”が一つ二つ多い感じで手も足も出ない「うわ~素晴らしいね!」と嘆声をもらすのみ。


箸売り場にて
 でぇ~ 買ったのは箸だけ!
箸と云っても馬鹿にはできない。国産の漆を使っているか中国産の漆を使っているかで値段は数倍も違う。

宿は能登輪島温泉

 今夜の宿は市街地から少し東に外れた海岸沿いに建つ中間グレードのホテル。
部屋からは日本海が一望でき,遠くにかすんで七つ島が見える,バードウォッチャーの憧れの舳倉島はこの曇りがち天候では視認はできない。
海辺にはウミネコ,ウミウ,キンクロハジロ,スズガモ・・・・が群がっている。
 
 さっそく温泉に入る。
泉質はナトリュウム塩化物泉 すごっくショッパイ。温泉分析表によれば,Na+3666mg,Cl-5629mg 海水が泉源に相当量流れ込んでいるに違いない,湧出時の温度43.3℃,1983年深さ800mのボーリング孔から湧出したとある。湯量は20l/minで,湯船の大きさ(男子風呂だけでも百人くらいは同時には入れる)からして当然,循環式,それも何回も何回も循環させている温泉と推測できる。塩素消毒処理もしていると表示されている。温泉としては上質とは云えない部類に属する,しかしよく身体が温まり肌もすべすべになって美味しい夕食会場へ向かう。能登輪島温泉

 ところが,「美味しい能登二日間」の案内がある部屋に入ると,テーブルの数も少ないし空きテーブルも無くてどうも場所が違うらしい?同じ名前のツアーで別グループがあるらしい。
 廊下に出ると係りの人が「申し訳御座いません,今しばらくお待ち下さい」と言う。
「しばらくって,どのくらいなの?」と尋ねると「10分くらいです」と答える。ドアーの隙間から覗くと,なんやら講演会みたいなことをまだやっている,とても10分やそこらで夕食にありつけるとは思えない。

 部屋に戻って,サッカーTV中継を見る,アジアカップ予選日本vsインド戦である。試合開始のホイッスルが鳴ったとたん,「お待たせしました,お食事をどうぞ」となった。サッカーは見たいけど,お腹もぺこぺこ(お昼は羽田空港で”のり巻き”少々だった),かなり格下のインド相手だからよもや競った試合にはならないだろうと,早いとこ食事を済ませて後半戦をじっくり見ることにした。(試合結果は6:0で圧勝 o(^-^)o )
 
 食事は,格安ツアーにしては,それほど悪くはない,量もちょうどよい,別途注文の特別料理を申し込まなくてよかった。食事が遅れたお詫びに”ビールとお酒2本”が無料となった。\^o^/

 先ほどの講演会といい,食堂の従業員が我々と同世代のおばさん(というよりおばあさんか?)を大勢使っていることなど,経営の効率化に懸命な有様がひしひしと伝わってくるとともに,われわれのような地元にあまりお金を落とさない観光客といえども地域の雇用創出には少しは貢献しているのかという想いを感じる。

夕食メニュー
先付け 能登水雲 山芋とろろ 梅肉
前菜 六品盛小鉢
造り 寒鰤 甘海老 平政 赤身 槍烏賊
焚き合わせ 鰤大根 菜の花 柚子
強肴 蟹すき鍋
蒸し物 自家製豆腐蒸し 蟹餡掛け
油物 八目唐揚げ 青唐
留め椀 目鱚団子 かじめ
食事 能登こしひかり米
香の物 三種盛
水菓子
 
 

  御陣乗太鼓鑑賞~~~!

 都合よいことにサッカーの試合が終わった9時半から,ホテルのお祭り広場で県無形文化財に指定されていると云う御陣乗太鼓の(ごじんじょだいこ)舞台が始まる。これが終わってからも,地元歌手の歌やカラオケ大会などをやると云っていたが,わたし達は退散,もう一風呂浴びて就寝。



御陣乗太鼓
 「天正4年,越後の上杉謙信は,七尾城を攻略。その余勢をかって奥能登平定にでた。郷土防衛の一念に燃えたった村人達は,樹の皮で仮面を,海藻で髪をこしらえ,バチも折れよとばかりに打つ陣太鼓を先頭に,越後勢の陣地に突撃し,これを撃退した。」
という言い伝えが残っているそうだ。
 ハイライトは夜叉・だるま・爺などの面を被った打ち手が,序・破・急のリズムで打ち込み,見得を切るところ。勇壮な実演は迫力満点であった。
[入場料1300円]


ゆるゆる市内観光

 翌朝 目を覚ましたらもう7時10分過ぎ,食事は7時から8時まで。あわてて朝風呂に飛び込み8時ちょっと前に食堂にすべりこみセーフ。
 今日は,ホテル発14時20分まで自由時間である。
ツアー参加者のほとんどは,地元観光タクシー会社が募集した,輪島周辺のミニツアー(朝市,白米(しらよね)千枚田,西保海岸etc ~空港)に参加したが,わたし達は,急かされるようにあちこち早足で周る観光を好まないので,朝市や輪島塗漆器の店ほか市内を自分らのペースで勝手に歩き回って,美味しい昼食を食べさせてもらう店でも探そうと云う事にした。
 9時発のホテル⇔市内連絡バスで朝市へ。

  魅惑の朝市~~

 輪島朝市は,岐阜高山・千葉勝浦・佐賀呼子などと並んで三大朝市の一つとして有名である。
時間はたっぷりあるので朝市通りの西の端から歩き出す。おばさんたちが「旦那さん ダンナさ~ん」と声を掛けてくる,「もう買った!買った!」といいながら通り過ぎる。どういうわけか妻には声を掛けない。既にいっぱいの荷物を抱えているからであろうか。

 輪島の朝市通り。両側の商店の間に露店が200位(最盛時は400店とか),約350メートルの間に魚・カニ・野菜・漬物・果物・菓子・花・乾物類・民芸品などを並べている。
 売り子はすべて女性ばかり!能登の女性は働き者で「能登のトト楽」という言葉が有るくらいだという。見ごろは8:00~11:00頃まで。5割は地元消費だそうだが,最近は人口も観光客も少なくなり昔のようにごった返すことはなくなったという。
 
 妻は,手始めに,郵便局が特別出展している屋台で記念切手を80枚ばかり,続いて女性陣で込み合っている老舗和菓子屋さん中浦屋で”丸ゆべし”をおみやげ用に5個購入。さらに10数軒先で”ずわい蟹”2杯を宅配便で送ってもらう(甘海老がおまけに入っていた)。その他魚介類をいろいろ買い込む。

 市の両側は普通のお店になっていて,輪島塗漆器を商っているお店も多い,妻は,その何軒かに入ってなかなか出て来ない,茶器やらお椀類を矯めつ眺めつしている。買いたい気持ち山々なれど,収入先細り,支出(老人いじめの税金など公的負担を含めて)先太りの家計の現実を認識してか,さすが手が出せず!

 売っていた品物を順不同で列記すると(ノートにメモしていたら一人のおばちゃんが「なに書いてんの?」と覗きに来た)
 梅干し,鮑,みょうが,竹の子,からすみ,ホタルイカ,鮭とば,山芋,鱈,もずく,カワハギ,穴子,唐辛子,ブロッコリー,蕪,甘海老,貝柱,たこ,岩海苔,うるめ,河豚,サヨリ,うに,蟹味噌,剣先するめ,シジミ,青海苔,銀杏,カレイ,桜エビ,たこ,ひじき,生カジメ,いかそうめん,ハタハタ,メバル,アオサ,めかぶ,いしる,うるめ,えいひれ,ゆり根,ワカメ,かまぼこ・・・・・・・・。

  輪島漆器資料館へ~~~!

 朝市通りを引き返して(結局 ひと往復した),次は漆器会館の2Fにある輪島漆器資料館へ行くことにした。朝市の西はずれから河原田川の護岸沿いに10分とかからない。この間にも朝市と同じような屋台店がポツリポツリとあり,客を呼び込む声をかけてくる。
 1階の販売店はパスして2階の資料館に上がる。



輪島漆器会館
 輪島漆器資料館には,国の有形民俗文化財に指定されている貴重な作品をはじめ、輪島塗の道具,輪島塗の歴史など輪島塗に関する資料が展示されている。。

 輪島塗最大の特徴は非常に硬くてはげにくい仕上がりにあると云われている。素地となる”あすなろ”,”ケヤキ”,”ヒノキ”,”ホウノキ”や漆材の栽培,地の粉 (じのこ/輪島市内で産する珪藻土の一種を蒸し焼きにし粉砕した粉末) と米糊をまぜた地漆(じうるし)の使用,気の遠くなるような沢山の工程を経てさらに沈金や蒔絵などの伝統工芸技法の上に成り立っていることが理解できた。
[入館料100円]
通常入館料は200円なれど,ちょうど2.18~26間に「あえの風冬祭り」共催イベントで割引となっている。ところが,ここのモギリおばさんは「200円」とろうとする。「ホテルで,いまイベント期間中だから100円です。って云われたよ」と言うと,「それを書いたものを出せ」と言う。「あえの風冬祭り」のチラシを見せると「100円です」と来た。チラシは割引券ではない!割引しますと書いてあるだけだ!知らない客からは,200円掠め取ろうという魂胆が見え見え ”コスイ” ”きたない”ぜ~。

 輪島塗: に関する記載は,下記のサイトに詳しい。
    ① 輪島塗 (輪島塗」漆器商工業組合)
    ② 石川新情報書府・輪島塗

  輪島駅ふらっと訪夢へ~~~!

 漆器会館を出て20分ほど歩く。
 旧国鉄”七尾線”→第三セクター”のと鉄道”の終着駅であった輪島駅へ向かう。
広い通りはケーブル類が地下化されて昔の建築様式を残してリニューアルされた商店とともにすっきりした町並みを形造っている。だがしかし人通りはまばら(ほとんど無しの状態)でさびしい。輪島の町は,みんなが屋内で仕事をすることが多いので人通りが少ないと聞いたことがあるが・・・・・・



旧輪島駅プラットホーム
 2001年3月31日廃線となった”のと鉄道”のプラットホームと軌道が残されて「道の駅」,「バスターミナル」など輪島の交通基点として蘇っている。
 時代の趨勢とはいえ,鉄道がなくなってしまうのはさびしい。まして地元の人々にとっては感傷以前の切実な問題であったろう。先人が汗と血を流して苦労して引いた鉄道がなくなってしまう事が至極残念である。

 輪島駅ふらっと訪夢

  美味しい昼食をもとめて~~~!

 さて,もうお昼を過ぎている。
 朝市通り近くに,輪島名物「魚汁(しいる)の貝なべ」を食べさせてくれるという店を先刻見つけておいたので,そこを目指す。ところが本日休店だって え~っ困った じゃあ別の店探そうかって思案していると,すかさず「わたしの親父がやっている漁師の店です。よろしかったらどうぞ」と青年が声をかけてチラシを手渡していった。
 うん 地元料理にこだわらず,新鮮な肴料理もいいか! ホテルへ戻る方向でもあるし。
かくして 工房長屋の一画にある漁師の店「こだわり」へ行く。
途中,ふり売り屋さんに出会う。



工房長屋付近で出逢った「ふり売り屋さん」
 ふり売りとは,手押し車に野菜や魚をのせて町を歩き回りながら売る商売。ご存知 朝ドラの秀作「おしん」で,リヤカーに魚を積んで行商をしたシーン あれがふり売りだ。
 カレーとハタハタの一夜干しを買い求める。

 ふり売りおばさんの言:「わたし達は市民を相手に商売をしている,朝市は主に観光客相手でおのずと品物が違ってきます。」
道理である。



昼食に食べた「こだわりご膳」
 メバルとマダイの味噌漬け,刺身はフクラギと甘海老にタコ。棚には地元のお酒も並んでいてちょこっといっぱいやりたい気分になる。
 フクラギとは出世魚”鰤”の中間世代の名前 関東では”いなだ”に相当。
 店の壁に掲げてあった鰤の名前:
 「つばす」→「こづくら」→「ふくらぎ」→「がんど」(関東ではワラサ)→「ぶり」
[食事代 2000円/一人]
 店内のケースには輪島魚港(現在800艘の漁船が漁をしているそうだ)で水揚げされた地物の魚が並んいる。タコ刺しとカブ海苔4束を買い求める(締めて3000円)。

 漁師の店「こだわり」
    

 お腹いっぱいになって店を出る。
 工房長屋を見学する時間的余裕が無く残念ながらショップをちらっと冷やかしただけでホテルに戻る。落ち着いたたたずまいの家並みが続く裏道を通っておよそ15分,人っ子一人歩いていない。

 ホテル発14時20分の送迎ジャンボタクシーで空港へ。
 乗り合わせたのは,わたしらと同じくミニツアーに参加せず市内で買い物三昧して来たらしき女性四人組み。
このグループの一人が車に乗ってから「財布がない!」と言い出して 残り三人が大騒ぎ。立ち寄った店に電話したり,ホテルのトイレに探しに行ったり,おばさん四人がガヤガヤ・ざわざわと騒ぐ様を想像してみて!それはすさまじい,かしましい。でも見つからない!
 飛行機に乗り遅れたらそれどころではなくなってしまうので,本人の周辺を再度落ち着いて探してということでとにかく出発した。
さて,ものの数分も立たないうちに「あった!」という小さな声が聞こえてきた。 お粗末さまでした。でもあってよかったね~  

 帰りの飛行機も あっという間に無事,羽田着。

 今回の旅での買い物: 
 輪島塗箸,天然ワカメ,海苔,ユリ根,カブラ漬け,キュウイ,竹の子漬物,丸ゆべし,みょうが漬物,ズワイガニ,ハバ(アオサの一種),タコ,カブ海苔,芽かぶ茶,丸干しするめ,いも菓子,節分草,雪割り草,斑入りヤブコウジ。


宅配便で送ってもらったズワイ蟹 
翌朝届いて,夕餉にさっそく大吟醸片手に舌鼓をうつ。

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