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中央アルプス木曽駒ヶ岳

2008.AUG.5〜7

 酷暑の東京を脱出して,避暑兼身体を鍛える為中央アルプスの盟主木曾駒ケ岳登山をしてきた。登山と云ってもロープウエイで標高2600mまで連れてってくれるので,実際に自分達の足で登るのは350mほどで,麓から歩き始める通常の登山よりかなり楽ではある。でも3000m級の高山であることには変わりが無い,十分な装備をして,ロープウエイ上駅に併設されたホテルに2泊もするという贅沢かつ余裕をもった計画で出発した。
 折から,日本列島全体の大気状態が不安定で,よい天候には恵まれず雹も交える雷雨にも遭ったが,山の冷気に触れ,朝日に輝く南アルプス連山のパノラマを目に焼き付けることが出来た。

 「中央アルプス駒ケ岳」は,長野県天然記念物に指定されており(S.46.8.23),現地の案内板には,以下の説明が掲示されている。

 中央アルプスは伊那谷と木曾谷の境をほぼ南北に連なり,駒ヶ岳(2956m)が主峰である。駒ケ岳は一般には,西駒とも木曽駒とも呼ばれている。
 この地域は中・古生層を貫く伊那川花崗岩と木曽駒花崗閃緑岩とによって形成され,山の北部や山腹には木曽駒花崗閃緑岩が貫入した時の熱変成により出来たホルンフェルス(変成岩の一種)などが露出している。
 また,植物については,標高2500m以上の高山帯では全域に渡ってハイマツが繁茂し,サクライウズ・ヒメウスユキソウ・コケコゴメグサ・ハクセンズイナなどの珍しい植物があって学術上価値が高い。さらに千畳敷と濃ケ池周辺は植物の種類が多くお花畑が美しい。
 なお指定範囲は前岳の南斜面,カール地帯約60万平米である。(長野県教育委員会)

 ★ 8/5 千畳敷カールへ

 9:30 新宿高速バスセンターを出発。

伊那バスでは,新宿〜駒ヶ根(バス)〜萱の平経由しらび平(バス)〜千畳敷(ロープウエイ)の往復がなんと1万円ポッキリで乗れる特別割引きをしている。JRで特急を利用する場合,所要時間はほぼ同じ4時間,料金はジパング割引きを使っても1万円,これにバス代とロープウエイ代(あわせて4200円)が加わるので,少し乗り心地が悪いのを我慢することにして,当然のことながら割安交通手段の方を選択した。

 駒ヶ根バスセンターに着いたのが13:15
しらび平行きのバスは駅前から出るので,ぶらぶらと商店街を歩く。暑い最中なのかもしれないが,人通りが全くなくゴーストタウンみたいな感じである。わたしは,20年ほど前,仕事で訪れたことがある町であるが,当時はもっと活気があったと記憶している。
 駅前の食堂で,当地名物の「ソースとんかつ」で昼食。

 14:00発のバスでしらび平へ。

 乗客は,わたし達を含めてたったの4人。こんな筈は無いと思っていたら,案の定,高速インター近くの「女体入口(意味深な地名である!)」というバス停で,どっさり乗ってきてほぼ満員。
 バスの運転手が「雷雲が近づきつつあるのでロープウエイの運転は不定期運転,場合によると運転中止になるかもしれない」と放送する。 と言われてもこちらはどうすることも出来ない,行くしかないぜ。

14:50 ロープウエイ下駅のあるしらび平着。

 幸い,稼動していたロープウエイにすぐ乗り換え。1662mから高度差950mの千畳敷(2612m)まで,わずか7分30秒で,一気に雲上の世界へ。

 着いた所は,千畳敷カール(氷河圏谷)。辺り
一帯は,色とりどりの高山植物に彩られたお花畑,眼前に聳える峻険な宝剣岳(2931m)。だが,天気がはかばかしくない,一面が濃いガスに覆われている。

 ロープウエイ駅に併設されたが「ホテル千畳敷」にチェックイン。
暫くして,雷雲が近づき,眺望が全くきかない状況となる。
 
 今日は,ホテルでゆっくり寛ぐことにする。テレビは地上デジタル(我家より進んでいる),トイレは共同で,ウオッシュレット付き洋式トイレが一つだけある,全部洋式にしてもらいたいものである,浴場が素晴らしい 山の湧き水を利用しているというが,すべすべ感があって温泉のような肌触りである。夕食も地元産の食材をたっぷり使った豪華版。ハイシーズンなので宿泊料金が高いのが難点ではあるが,この高地で,この快適さを考えれば致し方ないかなと思う。
  

昼食に食べた駒ヶ根名物「ソースとんかつ」
妻は一度は除いた脂身を全部食べてしまって翌日まで胸がつかえて調子悪いと言っていた。
 ロープウエイ駅(左)に併設された「ホテル千畳敷」
 後ろは宝剣岳(2931m)。このホテルは年中無休,冬季間も営業しておりスキー客や雪山の写真を撮りに来る人々がよく利用する。
霧に覆われた宝剣岳と千畳敷カール

 ★ 8/6 木曾駒ケ岳山頂へ

  日の出は,5時45分頃。南アルプスをじっくり眺めたいので,谷側の部屋をとったのだが,今朝も雲が厚く眺望が全くきかない。残念無念!!
ホテルを出て山側を眺めると,霧の僅かな切れ間から宝剣岳が見える。早朝一番のロープウエイで登ってきた数組のグループがもう登山を開始している。

 私達は,7時に朝食を摂り,7:40 駅脇の「駒ケ岳神社」に手を合わせ安全を祈願して出発。
今日も,雷雲の発生が予想されるとロープウエイ駅の放送が何度も注意を呼びかけている。午前中に行動を終わらせたほうが好い! 木曽駒山頂往復コースタイムは,3時間55分と記されている。昼前に帰着できる十分な時間ではあるが,足に自信のない私達夫婦は,いつも標準タイムの2倍はかかると見込んで計画を立てている。時計を見ながら行ける所まで行って適当な地点で引き返すことにして歩き出す。いつもは花や景色の写真を撮りながらののんびり歩きをするのを常としているが,今回はひたすら登ることだけに専念することにする。

 07:55 千畳敷カールのお花畑遊歩道から登山道への分岐通過。

 ここからはガレ場を一気に300m近くを登る八丁坂と呼ばれるジグザグ急登である。道はよく整備されていて危険はないが,上を眺めて,「あそこまで登ったら休憩!」と目標を定め,息を切らしながら一歩一歩足を運び上げる。低血圧気味の妻は,まだ体が目覚めていないのかいささかきつそうではあるが,少し遅れ気味ながらしっかり付いてくる。もう下ってくるグループが,「もう少しだよ,きついのはここだけだよ,頑張って!」と声をかけて励ましてくれる。
 右手に三日月状の雪渓,オットセイ岩と名付けられた岩峰の左手下のお花畑を眺めながら登る(妻との距離調整も兼ねてザックからカメラを取り出し,花の写真をパチリパチリしながら)。

左:宝剣岳 右:伊那前岳へ続く尾根
中央の鞍部が乗越浄土。

 08:50 乗越浄土。

 最後の急な登りをこなして平坦な広場に出る。ここは標高2860m。相変わらず眺望はきかない。
しばし休憩。
 千畳敷カール分岐からここまで,標準コースタイムを10分ほどオーバーしただけで登って来られた。この調子ならさほど標準タイムより遅れずに進めそうである。木曽駒頂上は,手前の中岳(2925m)の陰に隠れて見えないが,ここからは尾根筋をアップダウンを繰り返しながら70分ほどの行程だという。このペースで行けば10時くらいには頂上に着けそうだと判断し,頂上アタック(ちょっと大げさ)をすることにした。

 宝剣山荘,天狗荘の山小屋脇を通ってだだっ広い尾根縦走路に出る。途中,人工的に植生回復をはかって植えられたコマクサ群落の写真を撮りながら進む。植生保護のために登山路の両側にロープが張ってあるので道を迷うことは無いが,濃い霧にまかれたらちょっと難儀するだろうなあと思う。

 この辺り,大正2年8月27日,上伊那郡中箕輪尋常高等小学校の生徒10人と校長が死亡した遭難事故があったところでもある。ロープウエイを利用しない登山道である馬の背尾根には遭難記念碑が建っているという。新田次郎が「聖職の礎」として長編小説化している。

 25分ほどで中岳山頂へ。 ここから,木曽駒頂上は指呼の間である。中央アルプスの盟主のどっしりした山容をしばし愉しんだ後,せっかく稼いだ高度を無にして一旦降る。鞍部に在るのが「駒ケ岳頂上山荘」 こんな尾根筋で,水をどうやって確保しているのかと心配になる。

 ここで,妻の携帯に友人からメールが着信。以後,妻はメールの送受信に余念が無い。天気が良ければ,伊那谷筋の下界が眼下に見える場所とはいえ,こんな山奥から携帯電話が通じるなんて,わたしは,びっくり仰天!

中岳の後方に聳える木曾駒ケ岳
右下に天狗荘

 09:45 木曽駒ケ岳(2956.3m)山頂

 最後の登り(高度差80mほど)を難なくこなし,山頂に到達,やったあ〜!!
わたしにとっては,中学生時代に登った甲斐駒ケ岳(2967m)以来,妻にとっては,三十年ちかく前の北岳(3193m)・奥穂(3190m)・北穂(3106m)・前穂(3090m)以来の3000m級高山の山頂である。

 山頂はだだっ広い。伊那側・木曾側の駒ケ岳神社奥社が立ち,木曾側奥社の隣に土産物や飲み物が並ぶ売店がある(売り子は二人,毎日近くの山小屋から上ってくるのだろうが,商売になるのかどうか?)
 眺望は,全くきかない。本来なら乗鞍岳や槍・穂高など北アルプスの山々,御嶽山,八ヶ岳,南アルプスの山々ががはっきりと見える筈なのだが。
記念写真を撮って頂上滞在は10分ほどで切り上げ下山開始。

 ここ2・3日,日本列島上空は不安定な気象状態が続き,この辺りも,積乱雲がモクモク,伊那谷側からあるいは木曾谷側からひっきりなしにガスが吹き上がって来る。午後は雷雨の発生が必至である。依然として携帯メールを打ち込んでいる妻を急かしてペースアップして下る。

 11:30 宝剣山荘(宝剣岳と乗越浄土分岐)
 
  このまま下れば12時ちょっと過ぎにホテルに帰着できる。
霧が晴れたので,欲張って宝剣岳(2931m)にも登らんと20分ほど進む。少し先に鎖を頼っての物凄い岩壁をよじ登る区間があり,下から見ても恐怖感が湧く。先行していた若い夫婦連れがギブアップして戻ってきた。平衡感覚が低下しかつ手足の踏ん張りも弱くなっているわたしら年寄りには無理だと判断して引き返す。(11:50

岩峰鋭い岩場に恐れをなして退散した宝剣岳
中央に見える男性は,下りにかなり難儀して時間をかけていた。

 13:45 ホテル千畳敷着

 宝剣岳登頂を止めたのは正解であった。今朝,難儀した八丁坂を半分ほど下ったところで,大粒な雨が落ちて来て,まもなく霰(あられ)となる。早めに着衣を雨仕様に切り替えておいたので,トラブル無く無事下降。
 翌日,ロープウエイ駅の放送で知ったのだが,この雷雨で,尾根筋で落雷事故が発生したと言う,山を下りて日帰り入浴の温泉で地元の人から,ヘリで下界に搬送されたが死亡したと知らされた。ロープウエイのおかげで,安直に登れるようになったとはいえ,ここは,3000m級の高山である。とくに雷注意報が出ている午後になっても尾根筋を歩くことは非常に危険であることを思い知らされた。

 ロープウエイは雷雲が近づいているということで一時ストップ,客が満杯で運転再開を待っている。一旦やんだ雨がまた激しく降り出し先刻より大粒な霰(雹(ひょう)と言うべきか)が部屋の窓をバタバタと叩く。
結局,ロープウエイは13時から15時まで運転がストップされた。
     
*雹(ひょう)と霰(あられ)の違い:雹は5mm以上,霰は5mm未満
 雨があがると,雲間に南アルプスがかすかにその全貌を見せてくれた。(17:30)

 ★ 8/7 千畳敷カール散策


 午前4時50分,カーテンを引くと南アルプス連山のパノラマが眼前に広がる。朝焼けの八ヶ岳,南アルプスが全貌をくっきりと現してくれた。遠くに富士山の姿も。
 北から甲斐駒ケ岳・仙丈岳・北岳・間の岳・農鳥岳・富士山・塩見岳・悪沢岳・赤石岳・聖岳・茶臼岳・光岳,3000m級の山並みは実に壮観である。1時間ほど写真撮影に専念する。

左から農鳥岳(3051m),富士山(3776m),塩見岳(3047m)

 さて朝食後は千畳敷のお花畑散策に出かける。
千畳敷には,見事なお花畑が広がる。一周45分ほどの回遊路であるが,図鑑と睨めっこしつつ花の写真を撮りながら,結局3時間をオーバーしてしまった。
 この間,一般の観光客が続々とロープウエイで上って来,散策路が混雑しだす。沢山の写真愛好家が三脚を据えて花の撮影にいそしむ。ボランティアの方が数人巡回していて花の名前などを教えてくれる。

 シナノキンバイ,アオノツガザクラ,ムカゴトラノオ,ショウジョウバカマ,シシウド,イワカガミ,チングルマ,ウラジロナナカマド,モミジカラマツ,カラマツソウ,ヤマブキショウマ,キバナノコマツメ・・・・・・
 今年は,千畳敷の高山植物として有名な「コバイケイソウ」は花の咲かない年に当たるそうで残念!
 花の写真は”こちら”

 入道雲がにょきにょきと湧いてきて,今日も雷雨が襲来しそうである。
ロープウエイ駅から「早めの下山」を進める放送が何度も流される。でもロープウエイは連続ピストン運転で,団体客などがひっきりなしに上ってくる。下りが混雑しないうちに早めに切り上げる事にした。

11:40 降りロープウエイ乗車。
12:30 萱の平 早太郎温泉”こまくさの湯”で日帰り入浴。
露天風呂から,雲に覆われた宝剣岳が見える,いまごろ激しい雷雨に襲われていることだろう。
昼食を摂って14:30まで休憩室(エヤコン無し,天井の扇風機で十分)で午睡。入浴料550円でゆっくりと時間を過ごせるグッドな施設である。

 予定より2時間早い,15時発の高速バスで駒ヶ根をあとにする。
途中,上野原〜小仏トンネル間で軽い渋滞に遭ったが,20分ほどの遅れで新宿着。
 うわ〜 東京は暑いなあ〜。

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