[HOME] [My Column 目次へ] 

「”アスベスト”ってどこに使われているの?     2005.07.19

 現在,社会問題となっているアスベスト(石綿)による健康被害は,アスベスト関連企業に働いていた人たちだけでなく, 周辺の一般住民の人たちの間にも発生していたことが明らかとなった。更に,これからアスベスト製品を使用した建物が続々と立替・解体を迎える時期に入っており,解体・運搬時の飛散により一般住民にも健康被害を及ぼす恐れが急速に高まっている。
 そこで,アスベストってどんなものなのか? どこに使われているのか?(建材用に限って) 個人としてどんな対応をしたらいいのか? などなど調べてみた。


 アスベストって何者?

 「アスベスト」は,天然に産する蛇紋岩系および角せん石系の繊維状鉱物のことで「石綿(いしわた,せきめん)」とも呼ばれる。 単一の鉱物ではなく6種類のアスベストが知られている。
 一番たくさん使われてきたのが蛇紋岩系の
クリソタイル温石綿または白石綿 化学式 Mg3(Si2O5)(OH)),その名のとおり白いアスベストで非常に柔らかく,顕微鏡下では,カール状をしている。
角閃石系アスベストは,角閃石の中にでき,5種類ある。そのうち工業的に使われてきたのは
青石綿クロシドライト)と茶石綿アモサイト)。それぞれ青色と茶色のアスベストだ。角閃石系のものは顕微鏡では直線状の繊維で,蛇紋岩系よりも発がん性が強いと言われている。
  
 アスベストは石綿という名前のとおり, 綿のように柔らかな繊維で ,熱に強く,摩擦にも強く切れにくく,酸やアルカリにも強く,電気絶縁性もあり何よりも安価なので建材を中心に幅広く使用されていた。 建材以外にも身近な例としては,石油ストーブの芯,魚を焼く網,トースターなどに,工業用として自動車や鉄道車両のブレーキパッド・クラッチ板,配管部材としてガスケット・シーリング材・パッキングにも使われている。

  アスベストという言葉は,ギリシャ語の「消すことができない」 あるいは「永遠不滅の」という意味から命名。

 アスベストの一番わかりやすいイメージは,アスベスト金網だ。家庭では魚焼きの網として,中学や高校の理科の実験で, ビーカーに入れた水をアルコールランプで沸かすときに使った四角い金網。あの金網の真ん中の白い陶器のような部分にアスベストが使われていた。

 ところで 1987年 わたし達一般市民が身近なアスベスト問題に気づかされる事件が起こった。
全国各地の学校の天井や壁に,発がん物質アスベストが吹きつけられていることが報道されて大騒ぎになったあの事件,覚えていますか?
 それ以来,アスベスト金網は姿を消した。1995年の阪神・淡路大震災では,壊れたビルを解体するとき,大量のアスベストが飛散して大問題になった。
 例の如くだいぶ遅まきながら ,2004年10月1日より建材用を含めて全てのアスベストの使用が原則禁止された。(原則というのが問題! 代替品への移行が難しいと云うもっぱら企業の損得勘定で,化学プラントや発電所などの配管設備などで現在でも例外使用が認められている。08年に全面禁止になると仄聞している)

 どこに使われているか?

 建設用材料として,どんな場所に何のために使われているか調べてみよう。
その前に,(社)日本石綿協会が1980年に出した
「石綿スレートの優れた10の特徴」という記載を見ておこう。
 こういう認識の下に,建材として多用されたということがよく分かる。おそろしいことだね~!!!

 まず,
「石綿は、健康な現代の建築材料です。」,「石綿スレートはあらゆる性能のバランスがとれているフェアな健康な材料です。」と宣伝し続いて「10の特徴」として

①燃えない。だから不燃材に使われる。
②水に強い。だから風呂場や洗面所の壁に使われる。
③丈夫で長持ち。腐りません。施工も簡単。柔らかくて簡単にのこぎりで切れます。
④軽い。
⑤ネズミや白アリに負けない。
⑥遮音性がよい。
⑦防音性がよい。
⑧断熱性がある。
⑨耐侯性がある。従って,外壁とかに使われる。
⑩そして何より安い,経済性がある。

 建築用材としてどこに使われているかをまとめると下表の如くである。

使用箇所 使用形態/目的など
工場などの屋根・外壁 波板スレート
住宅の屋根 住宅用化粧スレート,石綿セメント板(平らな板状で軽量瓦としてよく使われた)
住宅の外壁 サイディングボード,石綿セメント板(隣接家屋と接近していて施工スペースがない場合によく使われている。
空調機械室,ボイラー室や昇降機などの機械室,駐車場の天井・壁 吹付けアスベスト
空調設備などののダクトなどの継ぎ目 ひも状保温材
天井,壁の内装材,間仕切り スレートボード
天井,壁の吸音・断熱材 ロックウール,吸音天井板,吹付けアスベスト
部屋の床 ビニール床タイル(いわゆるPタイル)
鉄骨の梁,柱や鉄板床 耐火被覆として吹付けアスベストまたは耐火被覆板
モルタル壁 モルタルの延びを良くしてひびわれを防ぐため混和材としてクリソタイル粉末が使用された。
煙突材 断熱材として煙突内側に石綿セメント
水道管 アスベスト水道管
      吹き付けアスベストは1975年全面使用禁止

 身近な所にいろいろ使われていますね~
いまから20年以上前の建築物に不燃材として使用されている建材の殆んどは,アスベスト含有と考えて差し支えないと思う。
 また,わたしの単なる推量で確証はないのだが,簡易耐火住宅の外壁に多用されているモルタル壁にも,もしかしたらアスベストが混和材として使用されている可能性が大と見ている。(これ 壊すときには物凄い粉塵を近隣に撒き散らすよ!)

 アスベストを使用した建材の写真のいくつかを示す。
P-1 床タイル P-2 間仕切り,天井 P-3 住宅外壁サイディングボード
P-4 住宅用屋根用化粧スレート P-5 工場などの屋根用波型スレート P-6 鉄骨吹付けアスベスト
P-7 
工場などの外壁用波型スレート
P-8 石綿セメント板
P1,P2,P6は,『中皮腫・じん肺・アスベストセンターシンポジュウム第2回(2004.8.9)「中小規模物件での使用と対策の実例」(高井史雄:全建総連東京都連安全対策委員)』から借用。

 被害から身を守るためにわたしたちにできる事は?

 ところが、こんなに便利なアスベスト製品も,製造時や施工時,修理・解体作業時に,粉塵状となった繊維を肺に吸い込むと大変なことになる! 30年から50年後に”がん”になるおそれがある,というより極めて多くの発症・死亡例が出ている。
 ヨーロッパ8ケ国ではすでに使用が禁止され,使用量が激減していると言う。日本でも1995年4月から青石綿と茶石綿の使用は禁止されたが,白石綿はその後も大量に使われ,やっと昨年(2004.10)使用禁止となった。

 米国やヨーロッパ諸国ではすでに膨大な被害者が出ていて,巨額な賠償請求のために企業が破産する例も多くなりそうだという報道さえある。
 遅れて使い始めた日本でも,今年になって実態が次々と明らかになって大きな問題となっている。被害者の多くは,今のところ製造や施工の関係者に留まっているようだが,たまたま吸い込んでしまった家族や近隣者にも健康被害が出ており安心できません。 わたしたちも被害者となることが有り得るのです。
 
 今までに大量に使われた建築物(学校などの公共建築物,一般住宅,工場,ビルなど)が,これから続々と改築や建て替えの時期に入ってくる。
そうなると解体工事が行われ,運搬時点も含めてアスベストが粉塵として近隣に撒き散らされる事態の多発が予想される。もちろん労働安全衛生法による解体時の規制や廃棄物処理法による運搬処理の法的規制はある。
 しかし,本格的対策をしようとすれば実は,物凄くお金がかかる。クリーンルームのような空間を作って,そこから外部に石綿の粉が飛散しないようにして,その中で完全防護服で作業を進めることになる。
 本当にそんなことができるんだろうか?大いに疑問だ。

 首都圏の大型物件では社会的に関心度が高い上に,発注者,施工業者ともかなり認識度が高いので,そこそこの基準で行われるだろうが,大規模工事以外のところでは,発注者(住宅では一般市民個人となる)は,石綿による健康被害の恐ろしさを十分にわかっていないし,施工者(一般には職人さんと言われる人たち)もまだまだ認識が足りない,例え認識があっても,十分な対策を施すには大変なコストがかかるので,ついつい安易な手段(現場をブルーシートで囲う,散水する,防塵マスクをするといった程度)に流れ,系統だった対策を出来ないのが実情ではなかろうか。

 さてそれでは,私たち自身でアスベストに被爆しないための心構えをもたねばなりません。

 近隣に中規模以上の解体工事が実施される場合は,自治体の環境課や建築課に問い合わせて調査してもらう。施工中は近づかない。
 個人の住宅が近所で解体される場合。隣近所お互い様という観念があって,これが一番厄介なんですが,勇を振るって,アスベスト製品の解体の存否,あればどんな対策を講じているか工事業者に尋ねる。
施工期間は,そばに近寄らない,家を離れることが出来ればベスト。
 いずれにしても,最低限の自己防衛のためにマスクを着用することは当然。

 こんな消極的なことしか出来ないなんて哀しいことだ。

 建物の解体工事も,新築する時の「建築確認」を受けるというシステムと同様な規制をかけないと,アスベストばら撒き放題の事態となることが目に見えている。
 工事の規模の大小を問わずアスベスト暴露の危険性は変わらない,一方で対策にはかなりの費用がかかるんです。ここんところが肝心だ。
 アスベストをふんだんに使った建築物の解体や改修はこれからが本番!ピークは2020年頃と言われている。いま,ここで不完全な作業を行ったり,石綿使用を知らずに作業してしまうと,また潜伏期間の30年を経て再び多数の患者が発生することになる。いま,ちゃんとしなければいけない。
 発注者・施工者・実際に仕事をする職人・周辺に住む人たち全員が,アスベストによる健康被害を自分の問題として捉える必要があることを痛感する。
 それにしても またかと思う。
アスベストの危険性が海外で指摘されてから40数年,日本で吹付けアスベストが使用禁止になってから30年,WHOが発がん性を断定してから15年が経っているのに,政府が全面使用禁止にしたのがやっと昨年だとは!          

   以下,関連ホームページです。
厚生省石綿情報
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/

東京都環境局「建築物の解体等に係るアスベスト飛散防止対策マニュアル」
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/kaizen/kisei/taiki/asbest/index.htm

アスベストについて考えるホームページ
http://park3.wakwak.com/~hepafil/

アスベスト根絶ネットワーク
http://www.jca.apc.org/asnet/

中皮腫・じん肺・アスベスト センター
http://www.asbestos-center.jp/

石綿対策全国連絡会議
http://park3.wakwak.com/~banjan


                          [このページトップへ] [My Column 目次へ]  [HOME]