[HOME] [My Column 目次へ] 

「”ほんとうの温泉”の見分け方」     2004.9.10

 白骨温泉に端を発した温泉偽装事件は,その後各地の有名温泉にもおよび(関東地方では伊香保,水上,四万,那須,箱根など)問題となっています。
 ここでは,日本人の大好きな温泉をめぐる問題点や”本当の温泉の見分け方など考えてみようと思う。

 まず,温泉は「温泉法」という法律で定義されていて,これに当てはまらないものは温泉と称してはならないことになっている。(逆に言うと一度お墨付きを貰ってしまうと,以後はノーチェックということに注意!)

 温泉の定義は

     地中から湧出する水,水蒸気,その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で
     1) 採取された時の温度が25℃以上
     2) 溶存物質(ガス性のものを除く)の総量が1kg中に1000mg以上含まれるもの
     3) 下表に規定する成分のうちいずれかひとつを規定量以上含むもの

物質名 含有量(1kg中の総量)
遊離二酸化炭素(CO 250mg以上
リチュウムイオン(Li 1mg以上
ストロンチウムイオン(Sr2+ 10mg以上
バリウムイオン(Ba2+ 5mg以上
総鉄イオン(Fe2+,Fe3+ 10mg以上
マンガンイオン(Mn2+ 10mg以上
水素イオン(H 1mg以上
臭素イオン(Br 5mg以上
ヨウ素イオン(I 1mg以上
フッ素イオン(F 2mg以上
ヒドロひ酸イオン(HAS2− 1.3mg以上
メタ亜ひ酸(HA 1mg以上
総硫黄(S) HS+S2−+HSに対応するもの 1mg以上
メタホウ酸(HBO 5mg以上
メタケイ酸(HSiO 50mg以上
炭酸水素ナトリウム(NaHCO 340mg以上
ラドン(Rn) 100億分の20キューリー以上
ラジウム塩(Raとして) 1億分の1mg以上

 このうちどれかに該当すれば”温泉”です。 鉄分の多い井戸があって,吐き出し口にかぶせたガーゼ様の袋がすぐ茶色になる井戸をよく見かけましたが,こんな井戸でも温泉と称せるのです。むかし鉱泉といっていたものもいまはすべて温泉です。

 温泉場に行くと,成分表なるものが掲げてありますが,これは泉源で採取した水を分析したもので浴槽に入ってくる温泉の泉質ではない事また,温泉申請時の分析値であり一度お墨付きを貰ったらずーっと使えるということに注意してください。
 つまり,湧き出したあるいはポンプアップした温泉水は,水で増量しようが沸かそうが一度使ったものを再使用しようが宿の自由裁量に任されているということです。

 ところで,わたし達は温泉に何を求めて訪れるのでしょうか?

 ここんところを少々検証しておかなければいけないと思います。
 本来の温泉は,入浴して病気を治療する”湯治”の意味が強かった筈ですが,いまはほとんどの人が一晩に数回,せいぜい2泊程度で,湯に浸かって美味しい料理とお酒を飲むと言うのが一般的な温泉利用だと思います。いまや温泉へ行くと言うのは本来の湯治という目的ではなく観光的な役割でしかなくなっています。たった一晩か二晩入浴しただけで病状を改善できる温泉などありえないし,誰もがそれを承知で温泉に行くわけだから”お墨付き書”に書いてある適応症なんて無意味だし,あんまり泉質にこだわる事もないってことになる。
 そもそも温泉源からでて空気に触れた瞬間からものすごい泉質変化が生じる,温度の高い温泉では入浴に適する温度まで下げなければならない。水を入れて冷ましたり貯湯槽で自然に冷ましたりするがその間に掲示されている成分が大幅に変わってしまうのはやむを得ないことだ。また沸かし湯は”?”と思うかもしれないが,泉源で30℃くらいだったら当然沸かさなければ入れない,この場合先のケースで水を混ぜて冷ました温泉より泉質的には源泉に近いと言えるかも知れない。

 水道水を沸かして温泉と称したり入浴剤を入れたりするのは論外ではあるが,わたし達の温泉利用目的の現状からすれば,泉質とか沸かし湯であるとか言ったことにはあまりこだわらなくてもいいんじゃないかと思う。
 
 
でもやっぱり”ほんとうの温泉”に入りたい人のためにわたしなりのチェックリストをつくりました。

  ★ 蛇口からでるお湯が硫黄臭く,蛇口に湯の花が厚くこびりついたりさびたりしている湯は◎
  ★ 蛇口付近にコップが置いてある湯は◎
  ★ 浴槽が小さい温泉は◎
  ★ 共同浴場は◎
  ★ 自然の河原などを利用した露天風呂がある湯は◎
  ★ 混浴の浴槽しかない温泉は◎
  ★ 入浴効果を減じないために”上がり湯を使わない方が良い”などと注意書きが書いてある湯は◎  
  ★ 低温水の浴槽がある湯は◎
  ★ 肌に泡が付くような温泉は◎

  ★ 石鹸の泡立ちが悪い湯は○
  ★ 匂いが感じられる温泉は○
  ★ 脱衣所などに分析表など公的証明書が掲げられたいるお湯はおおかた○。
  
  ★ 泉種にもよるが,浴槽や洗い場がきれい過ぎる温泉は△。
  ★ 成分表が掲示されていない温泉は×。

  ★ 浴槽からお湯が流し場にあふれださせている湯は循環ろ過式ではない。逆および溝などに流れ込ませている 場合は九分九厘循環ろ過式。ちなみに,秘湯と呼ばれる山奥の温泉を除いていわゆる有名温泉はまず 循環ろ過式と思って間違いない。  
  ★ 大きなホテル様の旅館が林立している温泉場は総じて水による増量と循環ろ過している温泉である。
  ★ 湯量があまりに多いとか,大きな浴槽がいくつもある温泉は沸かし湯かつ循環ろ過式の可能性大。
  ★ 消毒臭がする湯は循環ろ過式。
  ★ 成分表に湧出量が10〜20リットルと書いてあるのに,普通の湯量である温泉は加水増量している。  
  


                          [このページトップへ] [My Column 目次へ]  [HOME]