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 東京地区の温泉開発に問題あり!」 2003.12

今日、NHKTVのクローズアップ現代で東京の「温泉開発」を取り上げていた。(12・12)

 番組では一言も触れていませんでしたが、わたしが危惧する
問題点がありますので筆をとりました。
日本人の温泉好きは誰しもが認めるところで、10数年前だったか 「ふるさと創生1億円」 と言う、時の政府(竹下か宮沢じっちゃんのころ)の馬鹿げた大盤振る舞いであちこちで温泉開発ブームがありましたが。
 

今度は東京で温泉ブームと言う話です。

 この種の温泉は、火山とかマグマに起因する温泉ではなく、専門用語で言うと「深層熱水」と言われるものです。すこし難しくなりますが読み進めてください。
 
 地球表面を構成する地殻のごく浅いところに含まれているウラン・トリゥム・カリゥムなどの放射性物質の崩壊によって発生する熱エネルギーは常に地球表面に向かって発散されています。従って、地下深部に向かうにしたがって温度が上昇し、火山地帯を除いて、一般に100mあたり摂氏3℃の割合で地温が上がっていきます(地下増温率といいます)。
 
 地温の上がった場所に地下水があれば当然、ある程度温まった水(温水)になっています。これを地表に引き出せばいわゆる温泉となります。(温泉法では、温度25℃以上あるいは定められた成分を定められた量以上含むものを温泉と称せます)
 
 この種の温水は

           @地層が堆積したときに閉じ込めらた水(化石水と言います)

           A地表の雨水などが継続的に地下へ浸透供給されている水

が前記の熱エネルギーによって長い長い年月かかって徐々に暖められたものです。
この熱エネルギーは火山やマグマのそれとは、数桁の違いがあることに留意して下さいね。

 さて、東京の温泉は、1500ないし2000mもの深さまで孔を堀り、この温水を強制的にポンプアップしているのものです。
番組でも言っていましたが、掘削の申請が続々と出ているそうです、今後、沢山の温泉が開発されバカバカ温水を吸い上げたらどうなるでしょう。

 
広域的地盤沈下が発生するのが目に見えています。(水温の低下は当然の帰結として)

 ちょっとでもこの方面に知識のある人だったら誰でも、ちらっと頭をかすめることになんで気をつけないんでしょうか?
 この現象はすぐには現れません、 数十年単位の時間尺度ですが、今のまま乱開発とやりたい放題の揚湯では遠くない将来確実に起き得ると思います。
 
 わたしの知る限りでは昭和40年代初期の段階では、地盤沈下抑制のために新規の地下水用井戸の掘削は東京都区内では全面禁止であったはずです。
 いつの間にかこの規制がなくなったのでしょうか? 石原おやじが景気回復を大義名分に,はずしたのでしょうか?
 同じような現象は、天然ガスや石油掘削で新潟平野で実証済みなのです。失礼ながら田んぼばかりの場所での地盤沈下と東京都心部での地盤沈下の影響はまったく異なります。

 
わたしの試算
   許容できる温泉施設数を試算しました。
   降雨量の約1/3が地下に浸透するといわれています(1/3は蒸発、1/3は地表流下)。東京地方の年間降雨量1800mmとすると
  一日あたり地下に浸透する水量は1.6mmとなります。
  この水量までは汲みあげてもいいと仮定します。
  東京23区(面積11.64km2)での一日あたり地下水への浸透量(専門用語では地下水涵養量と言います)は面積×1.6mmで
  18600t/日となります。安全率2で割って9300t/日。
  。
    さて1箇所の温泉施設で毎分100リットルを揚湯するものとすれば、1日に約150tとなります。上記の9300tを150tで割れば
  
許容できる施設数は62箇所となります。

  都内の源泉数は94年に74箇所,03年には126箇所,さらに掘削許可がおりているものが10数件もあるというという。
 わたしの杞憂でないことを祈ります。                                                                                                                                        

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