2008.05.2
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正しい温泉の入り方  
                                                      

 日本人は温泉好きである。
わたしも日本人の端くれ,最近よく温泉に行く機会が増えた。
そこで,どうせなら効果的かつ健康的に温泉を利用したいものだと考え,温泉の正しい入り方をまとめた。
 高齢になると,入り方を誤ると脳梗塞や心筋梗塞の原因となったり,健康維持のための入浴が,かえって身体に負担をかけてしまうことがあるという。
いままで,高い金を払って来たんだから,「元を取らなきゃ損々!!」といって,一日に何回もたっぷり時間をかけて温泉に入っていたが,これはよくないことが分った,気をつけたいものである。

いつ入る?
 
 宿に到着してすぐに入らない。

 温泉浴は,かなりの重労働と心得るべきで,旅行で交感神経が興奮した状態なのに,そのまますぐに温泉に入ると過剰に交感神経を刺激して,かえって疲れてしまう。1時間程度,部屋に出されたお菓子とお茶を飲みながら十分休憩してから入浴するのがよい。

 食事の直前や直後および空腹時には入浴しない。

 温泉の刺激により,血液が皮膚の表面に集まるので,消化器系に血液が行かず消化によくないので,食事前後30分~1時間の入浴は避けたい。

 飲酒後の入浴は絶対しないこと。

 アルコール類は血液循環を良くし,それなりの効能はあるが,血圧などの変化に対応する能力が低くなるので,血圧が上がった場合に,これをコントロールすることが出来ず思わぬ事故を起こすことがある。
 寝る前にもう一度入りたい場合は,飲酒後2時間くらいおいた方が安全。

 近ごろあまり見かけないが,温泉に浸かりながらお酒を飲むのを風流とする気風があるが,これは全くの言語道断!

(* わたしは寝る前にひと風呂浴びることが多い,もちろん飲酒はしている。 う~ん これは気をつけなければ!!)
まずは,かけ湯!
 
 浴槽に入る前に,かけ湯をする。

 体の汚れを洗い流してから,かけ湯(かぶり湯)をすることが大切。
足(つま先から股へ),腹,指先から腕,肩へと心臓に遠い方から順番にかけ湯して,血管を十分に拡張させてから温泉に入る。いきなりザブ~ンと飛び込むのは論外,冷たい身体をいきなり熱い湯に入れると身体に負担がかかり過ぎてそのショックで血圧が急上昇して危険である。
 かけ湯は温泉に限らず入浴には欠かすことができない重要なプロセスで,お湯につかる準備運動と心得ること。

 また,頭にも十分お湯をかけることがお薦め!

 頭に10杯くらいのお湯をかぶっておくと,入浴時の温熱刺激への準備運動になり湯から上がる時の立ちくらみも防ぐことが出来る(とくに冬場や温度の高い温泉では,励行すべき)。

 水分の不足している時や,脱水となりやすい人は,コップ1杯の水を飲んでから入浴するとよい。

入浴の仕方は?
 
 静かにゆっくり,頭にタオルをのせて湯につかる。

 熱いお湯に一気に身体を沈めるよりもまずは,体の半分の高さまでのお湯に入ると,身体に無理がかからない。

 入浴は半身浴が基本。

 首までたっぷりお湯に浸かった場合には,からだ全体で小錦2人分,500kg程度の荷重がかかることになる。その圧力で血管や内臓,筋肉が圧迫されてたくさんの血液が心臓に戻ってくるため心臓にかかる負担が大きくなる。
 みぞおち程度まで温泉に浸かる半身浴で身体への負担を少なく済ませよう。とくに心臓や肺に病気のある人には半身浴がおすすめです。

 下半身をできるだけ伸ばして全身を浮かすように浸る浮遊浴や浴槽の縁を枕にして仰向けになっての寝湯

 も水圧の影響が少ないので心肺機能にかかる負担が少ない入浴法である。
心臓や肺に病気のある人・からだが弱っている人に特におすすめである。

 入浴中,十分湯になじんだら,手足をゆっくり動かし,腰をひねったり軽いマッサージをするのもよい。

 胃腸の悪い人は温めのお湯で半身浴がおすすめ。

入浴時間,入浴回数は,どのくらいがいいの?
 
 入浴時間は,額や鼻の頭が汗ばむ程度が目安

 汗が流れ出たり,動悸がするほどの長湯はひかえる。ほんのり汗ばむ程度で浴槽から出て,休み,また浸るを2,3回繰り返す程度がよい。

 ぬるい湯は30分以内,熱い湯は10分以内まで 

 それ以上では疲れや不慮の事故を起こすおそれがある。

 1日の入浴回数は,2~3回程度,多くても4回が限度。

 むやみに回数が多いと湯あたりなど,かえって逆効果となる。
湯治での入浴も初めは1日2回くらい,徐々に回数を増やすようにする。5回以上になると”湯あたり”の発生率が急激に増加する。

 夜寝る前のゆるめの温浴は熟睡を誘う,リラクゼーション効果が強まり血圧も低下する。

 温泉に行くと熱いお湯に何回も入りたくなるものだが,これは身体にとって好ましくない。
42℃以上の高温浴では血管が収縮して急に血圧が上昇するので,特に心臓疾患や高血圧症,動脈硬化症のある人や高齢者は注意が必要。できるだけ湯口から離れたぬるめのお湯に浸かるなどの配慮をすること。

”湯あたり”とは
 ”湯さわり”,”温泉反応”ともいわれ,湯の中毒を意味する。湯治などで温泉に滞在し毎日3回以上の入浴を続けていると,4.5日経つ頃から現れる病的症状で食欲がない・眠れない・熱が出る・下痢・吐き気・皮膚にぶつぶつが出る・関節が腫れて痛み出すなどがある。

浴槽から出る時,出た後では・・・・・・・

 浴槽から上る時はゆっくりと!

 出浴時には,静水圧がなくなるので一過性の低血圧が起こり脳血流が減少して立ちくらみを起こすことがあるのでゆっくりあがること。

 上がり湯はかけない。

 せっかくの薬効成分をシャワーで洗い流してしまっては勿体無い。
温泉の成分を肌に残すため,シャワーを使わず,タオルで水滴を軽く拭く程度にする。肌についた薬効は,3時間程度持続し,徐々に身体に浸透する。但し,皮膚の弱い人は,強い酸性泉や硫化水素泉では洗い流したほうがよい。
 (最近あちこちで見られる,1000~2000mもの深い井戸を掘削して深層熱水をポンプアップした都市型温泉では,何回も何回も循環(&消毒)して利用していることが多い。このような温泉では既に温泉成分がおおかた失しなわれてしまっている,もはや温泉と称すべきではないし上記のことは当てはまらないとわたしは思っている。むしろ上り湯をたっぷりかけて消毒用塩素分などを流し去ったほうがよいのではないか?)

 あがったあとは,湯ざめしないように体と髪をしっかり乾かす。

 冷房や扇風機は身体を冷やしすぎるので,できるだけ自然の風で涼むことが望ましい。気分は爽快でも身体はかなり疲れていることを肝に銘ずべき。

 入浴前後にコップ1杯の水で水分補給を。

 入浴中の発汗作用や利尿作用で水分が失われ,血液粘度が上昇しているので,コップ1~2杯程度の水で水分補給すること,また入浴は,思いのほか体力を使っているので30分~1時間程度はゆっくり休む。
 風呂からあがってすぐにビールを飲むのはやめましょう。

翌日の朝風呂は・・・・・

 寝ている間に汗をかくため,目覚めたばかりの身体は水分を欲している,血液もドロドロの状態で,さらに起きたばかりの身体は自律神経が不安定で血圧の変動や不整脈などが起こりやすくなっている。このような状態でいきなり湯に入ってしまうと危険。朝目覚めてすぐに温泉に入るのは,好ましくない。
一般的に心筋梗塞や脳梗塞の発症は1日のうち早朝が最も多いことが報告されている。早朝の入浴は避けるべきである。
 起きてから1時間くらいゆっくりして水分を補給してから温泉に入ること。散歩などの軽い運動をしてからでもよい。 かけ湯をしっかりかけることはいうまでもない。

露天風呂への入浴は・・・・・・

 冬場,雪降る中の露天風呂への入浴は,室内と屋外の急激な温度変化が身体に与える危険が高いので避けるよう専門家は忠告しています。
足湯の効果は?


 足湯は15~20分間でも十分な温泉効果があると言われている。
 血液中には,代謝によって発生した老廃物なども混じり,血の循環が悪かったりして排出されないと血液中に残り,引力の関係で下方つまり足にたまる。これを解消するには,まず足を温めて血の循環をよくすることが一番である。

 血の流れの折り返し点である足を温めることによって,温かい血が全身を駆けめぐり全身浴とほぼ同じ効果が得られる。
 足湯は気軽にできるので温泉地などでよく見かける無料の足湯を積極的に使いましょう。


上手な飲用法は?

 温泉の湯を飲む「飲泉」は,ヨーロッパで昔から盛んに行われている温泉水の薬効成分を皮膚からだけでなく,直接体内に取り込もうと健康法。

 症状ごとのおすすめ泉質

●貧血,出産後,萎縮性胃炎,リウマチなど

●慢性胃潰瘍,十二指腸潰瘍,痛風,過酸性胃炎

●無・低酸性胃炎

●胆汁促進・動脈硬化予防など
鉄泉

アルカリ性泉

酸性泉

硫酸塩泉

 温泉飲用の1回の量は,一般に100ml~200ml程度 

 1日の量は200ml~1000mlまでとする。強酸泉・酸性泉・含アルミニウム泉および含鉄泉は泉質と濃度によって減量あるいは希釈して飲用する。

 食前30分~1時間が良い

 必ず飲泉設備のある(コップなどがおいてある)場所で飲むこと

 飲泉設備以外で飲むのは衛生面からも効果面からも禁物。
湧き口から出てくる温泉をそのまま飲むのが好い。ポットなどに入れて持ち帰っても,時間とともにせいぶんが変化するのであまり意味がない。

 飲泉してはいけない「禁忌症」

 温泉ごとの薬効成分(泉質)によって飲泉してはいけない禁忌症が異なるので十分な注意が必要。

●高血圧症,腎臓病,その他むくみのあるとき


●甲状腺機能亢進症

●下痢をしているとき
塩化物泉(食塩泉),ナトリウム炭酸水素塩泉(重曹泉),ナトリウム硫酸塩泉(芒硝泉)は多量に飲めない。

ヨウ素を含むものは飲めない。

二酸化炭素泉(炭酸泉),硫黄泉,硫化水素泉

その他の注意事項

 ●発汗や動悸のする時は,湯船から上って休憩をとりましょう

 ●次のような状態にある人は入浴不可。
すべての急性疾患(特に熱がある場合),悪性腫瘍,活動性の結核,重い心臓病,呼吸不全,腎不全,急性伝染病,1年以内の心筋梗塞・狭心症発作,出血性疾患,高度の貧血,その他の病勢進行中の疾患,妊娠中(特に初期と末期)
  
 ●スポーツ直後の入浴も危険
   スポーツ中は,筋肉に血液が集中しているし,スポーツ後も筋肉に貯まった老廃物を運び去るために,筋肉の血流が増加する。入浴すると全身に血液が巡るため筋肉に十分な血液が回らない,結果として筋肉の疲れがなかなかとれない状態となってしまう。スポーツ直後の入浴は心臓にかかる負担も増加させる。
10 効能と泉質と代表的温泉地
 
 医学的に治療効果のある温泉を療養泉といって,主成分によって大きく9つに分類されている。
温泉法によって,各温泉場には,「温泉分析表」ご掲示され泉質のタイプが明示されているので,自分の体の症状と照らし合わせて温泉選びの参考としましょう。

効能または症状 泉質分類 代表的温泉
美肌 炭酸水素塩泉(重曹泉・重炭酸土類線) 赤倉・磯部・小谷・嬉野・濁川・洞爺湖・鳴子・土湯・塩原・箱根・平湯・湯村・人吉・長湯・由布院
足の痛み,関節痛,打撲・」捻挫,膝痛,肩こり,冷え性 塩化物泉(食塩泉)
 海水に似た食塩を含む温泉。塩分が汗の蒸発を防ぐことで保温効果が高い。
指宿・皆生・那須塩原・洞爺湖・長万部・定山渓・登別・秋保・赤湯・上山・熱海・伊東・伊豆熱川・四万・湯河原・輪島・芦原・湯田中・和倉・越後湯沢・渋・皆生・有馬・城崎・杖立・
動脈硬化予防,高血圧

硫黄泉(硫化水素泉)
 硫化水素ガスのにおいと湯の花が特徴。末梢血管拡張や肌をなめらかにしてくれる。


硫酸塩泉(石膏泉・芒硝泉・苦味泉)
 酸素を血液に多く送る作用があり,動脈硬化予防や保温効果がある。飲泉で慢性便秘の改善や胆汁の分泌を促す。

ニセコ・登別。酸ケ湯・繋,鳴子・中山平・蔵王・日光湯元・川原湯・万座・野沢・白骨・湯の峰,南紀勝浦・大涌谷・雲仙・別府・川湯


強羅・ニセコ・夏油・遠刈田・赤倉・飯坂・東山・那須塩原・法師・四万・土肥・玉造・山代・西山
慢性皮膚疾患,水虫
酸性泉(明礬泉)
 酸性が強く殺菌効果が高いため水虫に有効という。肌の弱い人は浴後,真水で洗うとよい。

岳・須川・乳頭・草津・雲仙・明礬
冷え性・肩こり
二酸化炭素泉(炭酸泉)
 炭酸ガス成分が溶けて気泡が出るのが特徴。低温だが保温性が高く,血行促進や,飲泉では食欲増進効果があるとされる。

長湯・肘折・黄金
貧血,リウマチ
含鉄泉
 鉄分を含み空気に触れると無色から褐色に変化。入浴・飲泉とも貧血を改善するという。

有馬・伊香保
高血圧,神経痛,痛風,慢性皮膚病,慢性婦人病
放射能泉
 ラジウムあるいはラドン泉が一般的。尿酸を尿から出し,痛風や神経痛によい。

三朝・栃尾又・増富・有馬
病後回復期の静養,手術後の療養,骨折・外傷後の療養
単純泉
 最も多い泉質ながら名湯といわれるものが多く」,効能もさまざま。

カルルス・花巻・作並・飯坂・板室・石和・下部・鹿教湯・上諏訪・下諏訪・伊豆長岡・修善寺・伊東・下呂・雄琴・道後・原鶴・武雄
  

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