ブックガイド@

これは、親しい先輩の先生に頼まれて書いてみた文章です。書いたのは2002年の2月から3月にかけて。ワードの文書をhtmlに読みかえたのでなんか読みにくくなっていましました。

(1)今どきの高校生に読んでみてほしいのは「乙一」!

初めて聞く名前かもしれませんが、「おついち」と読みます。作家としてのキャリアはまだ浅く、新人の部類に入るのでしょう。私自身、昨年初めてこの人の本を読みました。まだ20代前半のはず。今出ている7冊の本を全部読みましたが、いずれもおすすめです。文庫本が多いので、高校生でも入手しやすいですね。

@「夏と花火と私の死体」(集英社文庫・419円)

A「天帝妖孤」(集英社文庫・438円)

B「石ノ目」(集英社・857円)

C「暗黒童話」(集英社・905円)

D「失踪HOLIDAY」(角川スニーカー文庫・552円)

E「きみにしか聞こえない」(角川スニーカー文庫・476円)

F「死にぞこないの青」(幻冬舎文庫・457円)

  一応、ジャンルとしては「ホラー」に入るようですが、ほとんど怖くないです。「石ノ目」

  の中の「平面いぬ」なんてもう絶品ですよ。以上の7冊の中でのイチオシは「天帝妖孤」

  です。せつない話がすきな人におすすめです。あと、最近発売された角川スニーカー文庫の

  「殺人鬼の放課後」(476円)というアンソロジーにも、乙一氏の作品が一編収録されてい

  ます。4人の作家の短編の中で乙一氏の「SEVEN ROOMS」が一番良かったです。

 

(2)「石田衣良」にも注目を!

   どうもすんなり名前が読めない人ばかり紹介していますが、「いしだ・いら」と読みます。

  ドラマにもなった「池袋ウェストゲートパーク」を書いたのはこの人です。この人もまだ

  7冊しか本が出ていません。私が初めて読んだのは2年前です。乙一氏とはまったく違う

作風ですが、この人の本にははずれがない!どれをとってもおもしろいです。ドラマは見ていま

せんでしたが、あのドラマをおもしろいと思った人はぜひ読んでみてください。

 @「池袋ウェストゲートパーク」(文春文庫・514円)

 A「うつくしい子ども」(文春文庫・448円)

 B「エンジェル」(集英社・1600円)

 C「少年計数機」(文藝春秋・1619円)

 D「赤・黒」(徳間書店・1600円)

 E「娼年」(集英社・1400円)

 F「波のうえの魔術師」(文藝春秋・1333円)

この7冊の順番は出版された順番です。基本的に私もこの順番で読みました。

4は1の続編です。

5はそのまた外伝です。1にでてきた「サル」というヤクザが準主役で出てきます。

私としてはCよりもDの方が好きですね。Aは少年犯罪がテーマになっています。私は@と

Aを読んだ時点で、この人のファンになりました。Eはこの間の直木賞にノミネートされて

いましたね。受賞するとは思っていなかったら、案の定別の人(唯川恵)が受賞しました。

池袋ウェストゲートパークシリーズはこれからも出るみたいですね。今後が非常に楽しみな作家

です。「透明感のある文体」が石田衣良の特徴です。

 

(3)「戸梶圭太」もおもしろい!

   今回はなるべく生きのいい作家を選ぼうということで3人目はこの人になりました。

  この作家については、全作品を読んだというわけではありませんが、その多くを読みました。

  とにかく文章に勢いがあり、後半になるごとにストーリーがジェットコースターのように

展開していくところが独特です。万人に受けるというタイプではないですけどね。作品としては

すでに10作以上出ていますが、今回はその中から3冊だけあげておきます。

 @「闇の楽園」(新潮文庫・781円)

 A「溺れる魚」(新潮文庫・590円)

 B「ご近所探偵TOMOE」(幻冬舎文庫・495円)

私が最初に読んだのは@です。たしかデビュー作だったはず。私が読んだのはハードカバー

でしたが、つい最近文庫になるにあたり、加筆修正し決定版として出したという話ですので、

文庫の方を読んだ方がいいと思います。Aは、映画化され、今人気急上昇中の窪塚洋介も出てい

ましたね。椎名桔平もね。ジェットコースター的展開にさらに磨きがかかっています。

@Aは初期の作品ですが、Bはごく最近のものです。口当たりも軽く、かなりスイスイ読めてし

まうことうけあいです。Bの続編「episode2」も出たようですが、残念ながら私の近所の本屋

では売っていなくてまだ読んでおりません。ハードカバーで「牛乳アンタッチャブル」という新

作もありますが、まだ入手していません。癖のある作風ですが、リーダビリティは抜群です。タ

ランティーノの映画を見ているような気分も味わえます。「パルプ・フィクション」という映画

が好きな人にはおすすめです。

 

(4)「浅田次郎」で泣け!

   天下の直木賞作家、浅田次郎については私などが紹介するまでもなく、みなさんご存知で

しょうが、多々ある著作の中での私のお気に入りをピックアップさせてもらいます。直木賞を受

賞した「鉄道員(ぽっぽや)」は高倉健主演の映画にもなりましたし、小説もベストセラーにな

りましたが、私としてはそれほど好きな本ではありません。武内先生も、以前「方言が不自然

で興ざめだ」とおっしゃっていたような記憶があります。私は彼の著作の半分も読んではいませ

んが、好きな作品はいくつかあります。

   @「天国までの百マイル」(朝日文庫・476円)

   A「地下鉄(メトロ)に乗って」(講談社文庫・552円)

   B「きんぴか@三人の悪党」(光文社文庫・533円)

   C「きんぴかA血まみれのマリア」(光文社文庫・533円)

   D「きんぴかB真夜中の喝采」(光文社文庫・533円)

 

  以上5冊です。3〜5はもともと1冊の作品ですので、実質3作品ということになります。

  @を読んだ時私は号泣しました。涙が止まらなくなる小説は久しぶりに読みましたねえ。こ

の人の本で初めて読んだのはAでしたが、これも目が潤む話でした。で、B〜Dはとにかく

  おもしろい!読み終わるのが惜しくなるくらいに。キャラクターが魅力的です。私は古本屋

でハードカバーを見つけ、定価2000円のところを1000円で購入したのでお買い得でした。文

庫になってしばらくたつので、古本屋で見つけたら即ゲットすることをおすすめします。決して

損はしませんから。この人の作品で「プリズンホテル」シリーズ(全4冊)というのもあり、集

英社文庫で出ています。「きんぴか」が気に入った人はそちらも読んでみてください。

 

(5)「GO」を読め!

   今回の締めくくりとして、生きのいい本を紹介しておきます。窪塚洋介主演の映画で知っ

ている人も多いかと思いますが、私は映画の方は見ていません(ビデオ化されたら見るつもりだ

けど)。この「GO」(講談社・1400円)が出版されたのはおととしの3月ですから、

  そう新しい本とも言えないのですが、この本も今を生きる高校生なら読んでみてください。

  作者の金城一紀はこれがデビュー作で、しかもこの作品で直木賞までとってしまうという

  離れ業をやってのけました。1968年生まれというから、まだ30代前半ですね。表紙は

  モノトーンで味気ない感じですが、中身は熱い!映画の方も好評だったようですが、それも

  やはりこの原作があってこそでしょう。私のクラスの学級文庫にも置いてありますが、生徒

にも好評でした。新人なので、これ以外の作品としては「レヴォリューションNo.3」(講談社

・1180円)のみですが、こちらもなかなかおもしろかったです。今後の作品をさらに期待して

おります。

 

(6)おまけ

   「」(小林泰三・角川書店・1500円)という作品を知っていますか?昨年の日本

SF大賞にノミネートされた本です。大賞をとったのは北野勇作氏の「かめくん」でしたが。

  私に言わせれば、「AΩ」の方がよっぽどおもしろい。世代的に30代以上の大人でないと

  わかりにくい部分もあるかと思いますが、要するに「ウルトラマン」の世界をリアルに描い

たらどうなるか(「空想科学読本」のように)、という話です。この作者はホラー畑の人ですが

、かなりSFよりの作家みたいですね。次回作は「仮面ライダー」に挑戦してほしいもの

  です(笑)。

 

 

・・・ということで、今回はここまでです。今回は特に統一テーマを設けませんでしたが(強いて言えば、「今イチオシの作家」かな?)、次回のテーマは決まっています。「今この女性作家がおもしろい!」です。さてどんな本が登場するか、乞うご期待!


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