2003年のベスト10

フライ、ダディ、フライ 金城一紀
対話篇 金城一紀
日曜日たち 吉田修一
イリヤの空、UFOの夏その4 秋山瑞人
アフリカン・ゲーム・カートリッジズ 深見真
バイトでウィザード 蘇れ骸、と巫女は叫んだ 椎野美由貴
マルドゥック・スクランブル(全3冊) 冲方丁
ラッシュライフ 伊坂幸太郎
クライマーズ・ハイ 横山秀夫
10 葬列 小川勝己

(書名をクリックすると、amazonの該当ページに飛べます。ユーザーの書評もついてますので、私のと読み比べてみるのも一興かと・・・。7については1巻のページとリンクしてあります)

前年は20位まで選びましたが、今回は10冊に(厳密には12冊)絞ってみました。
ミステリ界においては伊坂幸太郎が一大センセーションを巻き起こしていましたね。
そしてSF界では冲方丁が日本SF大賞を。
私の中では金城一紀が大ブレイクしました。

今年のランキングには多少の作為を施してみました。
上位3冊はミステリでもSFでもない普通小説を(各種ランキングでも話題にならない本を)。
4〜7位にはライトノベルおよびその出身者のSFを。
8位以下にはいわゆるミステリ畑の作家を(でも選んだのは「ミステリ」とは言い難い作品ですが)。
てな感じです。

@この本は実は学校で読みました(笑)。
ちょうど3年生が家庭学習期間に入り、当時3年生しか教えていなかった私は
2〜3月は授業がまったくなくなったのです。
だからと言って一日中本を読んでいられたわけではありませんが。
で、この本は2月の終わりごろに読んだのですが、ページをめくる手が止まりませんでしたね。
夢中で読んでしまいました。自分が40を目前にしたオジサンだからなのか
完全に主人公に感情移入してましたね。それぞれのキャラクターも非常に魅力的で。
「レヴォリューションNo.3」の続編なんですが、別にそれを読んでいなくても十分楽しめると思います。
逆にこれを読んでから「レヴォ」を読むのもありかと。
読み終わって素晴らしい爽快感を味わえる小説です。
こんな面白い本が1180円なんて嘘みたい!(笑)

A「フライ〜」を読む前日に読んだ本です。こっちは家で(笑)。
同時刊行された「フライ〜」とは対照的とも言える質素な表紙。
3つの短編中、特に良かったのは最後の「花」。これは泣けます!
これまでに4冊しか出ていない作者の本の中ではちょっと異色な味わいであり、
「GO」のような世界とはまったく違っていますが、実に心に沁みる話でした。
デビュー作で直木賞を受賞したのも伊達ではなかったなと納得させられました。

Bこの人の本は1冊を除いて全部読んできましたが、これは飛び抜けて面白かった。
そして感動しました。あまり期待しないで読んだのがかえって良かったのかも。
帯には「連作長編」と書いてありますが、「連作短編」と言ったほうが正確かと。
それぞれの話をつなぐある要素が最後になって・・・これ以上は書けません。
別にミステリではないのですが、ある意味ネタバレになってしまうので。
ともあれ、これを読んでこの作家からもう目が離せないな、と痛感しました。

Cシリーズの完結編です。
1巻を読み始めた頃は、まさかこういう結末を迎えるとは思ってなかったですね。
なかなかおもしろいなあ、とは思っていましたけどね。
上遠野浩平以外のライトノベルはあんまり読んでいない私ですが、
このシリーズはライトノベル界屈指の傑作である!」と断言してしまいたくなるくらいに大好きです。
涙もろい人は、結末でハンカチ・ティッシュが必要になること間違いなしです。
この作者がSFマガジンで書いたいくつかの短編を集めた本を早く出して欲しいですね〜。
いずれにしてもこの作者の新作を早く読みたいです!

Dネットで日記を書き始める前に読んだ本です。角川の「NEXT賞」を受賞したものらしい。
同時に出たほかの2冊は読んでいません。
一応新人だと思うんですが、富士見ミステリー文庫でもけっこう書いてます。
「(富士見での)デビュー作が出版されるずっと前に、僕はこの原稿をNext賞に応募しました」
とあとがきには書いてあります。
実績で言えばライトノベル畑の作家だと思うんですが、この「AGC」はまぎれもないSFです。
「ある日、平凡な高校生の僕は『銃使い』になってしまった・・・」
この「銃使い」の設定がなかなか秀逸で私好みでした。一種の超能力モノですし。
二段組で345ページ。なかなかの分量なのに、定価950円はお買い得でしょう。
一般的なハードカバーよりひとまわり小さなソフトカバーですが。
世のSFファンに読んで欲しい作品です。

E昨年の「ライトノベル強化月間」の中で初めて読んだシリーズ「バイトでウィザード」。
特に誰に薦められたわけでもなく、なんとなく「ジャケ買い」してしまったのですが。
予想外に面白かったのです。それでも、1巻、2巻までならそれほど強烈な印象も残さなかったのですが。
この3巻(本のタイトルに「3巻」とは表記してないのですが)を読んで、完全にとりこになりました。
当時の日記を振り返ると「最後の方では不覚にも泣きそうになってしまいました」なんて書いてます。
ラノベ侮りがたし(笑)。
私がこの3巻を好きなのは、いろんな登場人物が実に生き生きしているから、なんです。
今後も読み続けますよ、「バイトでウィザード」!

F昨年の日本SF大賞受賞作ですね。
各方面で話題になっていましたので、今更私ごときが何を言おうか、という気もしますが。
どうやら2004年にはこの話の過去にあたるストーリーが本になるそうで、楽しみですね〜。
(冲方丁は他にもいろいろ著作はあるんですけど、何故か他のはあまり読もうという気にならないのです)
ともあれ、2巻の後半から3巻の後半まで延々続くブラックジャックのシーンも話題になってましたね。
カジノでの緊迫したシーンが結末の戦闘シーンへの立派な伏線にもなっているところがお見事。
この作品を書くまで作者はブラックジャックをやったことがなかったというのがオドロキですね。

G昨年のミステリ・エンタテインメント界でなみなみならぬ注目を浴びた伊坂幸太郎。
各種のランキングに顔を見せているのは(出版された年の関係でしょうね)、
「重力ピエロ」と「陽気なギャングが地球を回す」ですが、私はあえて2002年発表のこの作品を。
表紙にエッシャーの「騙し絵」を使っているのですが(帯にも「収斂するは、一枚の壮大な騙し絵」とあります)、
本当にエッシャーの世界のような不思議な物語になっています。私はこの世界にしびれました。
まあ、伊坂作品に関しては私設ファンサイト「陽気な伊坂が地球を回す。」(@しょうさん)がありますので、
そちらをご覧になっていただいた方がいいかと思います。

H2002年に引き続き、横山作品もたくさん出ましたね。
彼の作品は一通り読んできましたが、これは今までに読んだ中で一番面白かった!
ページをめくる手がもどかしいほどに夢中で読みました。
「ミステリ」とは言いがたい小説ですが、こんなに素晴らしい話なら大歓迎です。

I文庫化されたのを読みました。小川勝己のデビュー作です。
彼の作品はすべて読みましたが、やっぱりこれが一番好きですねえ。
ジャンルとしてはクライム・ノベルってやつですかね。普段あまり読まないタイプなんですが。
かなり大勢の人が死ぬんですが、不思議と凄惨さをあまり感じさせませんね。
「キル・ビル」に近いテイストがあるかも。そして、ラスト1行のカタルシス。
この後日談っていうのも読んでみたい気がしますけどねえ。書いてくれないかなあ・・・。

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