蝶ヶ岳(ちょうがたけ)
(横尾〜蝶ヶ岳〜横尾〜上高地) 1人で登る 2009.08.20 |
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槍の肩から見た常念岳(左)と蝶ヶ岳(右) |
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場所 |
長野県松本市
(安曇野市)
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標高 |
蝶ヶ岳 2677m |
歩く標高差 |
累積 1300m
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歩行距離 |
計 約17Km |
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行動時間 |
約8時間 |
横尾〜140分〜蝶ヶ岳稜線〜20分〜蝶ヶ岳〜20分〜蝶ヶ岳稜線〜120分〜横尾〜45分〜徳沢〜45分〜明神〜45分〜上高地
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データ |
槍ヶ岳、奥穂高を巡った山旅の総括は、蝶ヶ岳からこの登ってきた山を振り返って眺めることである。ババ平で知り合ったご夫婦の「最後は蝶ヶ岳がいいですよ。今まで登った山が眺められるなんて最高!絶対行ってみてくださいね。」というアドバイスがなければ、蝶ヶ岳に登ることなど考えもしなかった。涸沢のテント泊をキャンセルするなんて考えられなかった。それほどまでに、魅力的なアドバイスであり、もしかしたら、神様がこのご夫婦を通して教えてくれたのかもしれないと思うほどの眺望を目の当たりにすることになる。
さて、北アルプスの単独登山最終日、横尾での朝を迎える。今日は横尾から蝶ヶ岳までピストンをし、上高地まで出て、松本に泊まる予定である。バスの時間があるので、なるべく上高地に早く着きたい。そのためには、蝶ヶ岳までの時間を短縮する必要がある。横尾山荘で話を聞くと、蝶ヶ岳まで4時間を見ておくとよいとのことであるが、4時間もかけていられない。3時間を目標に歩くこととした。歩き出すと、忘れていた勢いづいて駆け上がる山登りの感覚がよみがえってきた。息と呼吸をうまく合わせ、ぐいぐいと標高を稼いでいく。蝶ヶ岳稜線近くまで単調な道が続くが、途中、槍ヶ岳が眼前に見える場所がある。ここはさすがに立ち止まって槍ヶ岳の姿を三たびまぶたに刻み込む。
尾根つたいに単調な登りはひたすら続く。おや、目の前が明るくなってきた。一気に目の前が開けて青空が広がった。そうか、森林限界なんだ。木々が消えた登山道から、槍ヶ岳〜穂高の大迫力の山塊が姿を見せている。これは見る価値がある。槍と穂高を独り占めしたような気持ちである。
稜線から蝶ヶ岳までは20分程度、緩やかな坂を登って下るだけである。その先には蝶ヶ岳ヒュッテがあり、縦走路の登山者を潤してくれていた。
眺めを十分楽しんで、いよいよ帰路に着く。蝶ヶ岳をかけおり、横尾でテントを撤収し、徳沢、明神、上高地へと通常よりも少し早足で進んだ。この地に入ったときの不安と期待は、歩ききることができた達成感に満ちあふれていた。
槍ヶ岳と穂高連峰を巡った夏は、ずっと心に刻まれることだろう。
博多に向かう新幹線の中で、メールが入る。
「無事戻りましたか?ニュースにならなかったからご無事かと思っています。」
ほんの数行だけど、涙が出るくらいうれしかった。
一人での北アルプスだったが、途中途中、そよかぜ姉さんやhirokoさん、山友からメールをいただいた。家族からもがんばれの電話。HPを見ている人達からのあたたかい言葉。そして、たくさんの方々との出会い。一人で歩いているのだが、たくさんの人と繋がって、支えられていることを実感した一週間だった。感謝、感謝の夏である。
なぜ人は山に登るのだろう。
新田次郎の書いた「槍ヶ岳開山」の中に、播隆上人が言ったこんな一節があるので紹介して、北アルプス山行のしめくくりとしよう。
私は山に登ることが瞑想(精神統一)に近づくことのできる、もっとも容易な道のように思われました。山の頂に向かって汗を流しながら一歩一歩を踏みしめていくときには、ただ山へ登ること以外は考えなくなります。心が澄み切って参ります。登山と禅定(ぜんじょう)とは同じようなものです。それは高い山へ登って見れば自然に分かって来ることです。なにかしら、自分というものが山の気の中に解けこんでいって、自分が何であるか、人間がなんであるか、なぜ人間は死なねばならぬか、そういうむずかしい問題でさえ、自然に山の気が教えてくれるようにさえ思われて来るのです。そのような境地は登山によって身を苦しめて得られるものではありません。決して苦行ではなく、それは悟りへの道程だと思います。
「槍ヶ岳開山」 新田次郎
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横尾山荘の横の登山道から、蝶ヶ岳をめざす。ここは、時間との勝負。
久しぶりの気合いの入った歩きになりそうである。
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尾根に沿うようにしててくてく、いや今日はがつがつと登る。
歩きながら、歩きにパワーがみなぎってきたのがわかる。
思わず駆けだしてしまいそうになる。
気が付くと森林限界。そこには想像を絶する絶景が待っていた。
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思わず「おおっ!」と声を上げる。
槍・穂高連峰が眼前にせまるこの迫力。
ここを教えてくれた茨城のご夫婦に感謝である。
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蝶ヶ岳稜線から蝶ヶ岳、蝶ヶ岳ヒュッテに向かう。ゆるやかな道を進むとすぐ着く。
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帰り道、この旅した道を何度も眺めなおしながら帰路に着いた。
(赤がまず歩いたルート、黄色が次に巡ったルート)
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2009夏、憧れの北アルプス、一生の思い出となることだろう。
全て晴天、山の神に感謝、家族に感謝、山仲間に感謝、同僚に感謝、出会った人々に感謝、感謝である。
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そして、一人で歩く私の命を守ってくれたこの力強い仲間達にも
改めて感謝である。
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