今年読んだ本(2005)
最近、映画とか行きつらいので楽しみの大きな部分になってます。
論理哲学論考/L.ウィトゲンシュタイン/著 中平浩司/
訳/ちくま学芸文庫
NEW
下流社会 新たな階層集団の出現/三浦展/光文社新書
NEW
アメリカの鱒釣り/リチャード・ブローティガン/新潮文
庫NEW
日本のお金持ち研究/
橘木俊詔/著 森剛志/著/日本経済新聞社NEW
電子の星 池袋ウェストゲートパークW/石田衣良/文春文
庫NEW
レヴィ=ストロース講義 現代世界と人類学/C.レヴィ
=ストロース/著 川田順造/訳 渡辺公三/訳/平凡社ライブラリーNEW
自由は進化する。/ダニエル・C・デネット/山形浩生訳
/NTT出版NEW
チョコレート工場の秘密/ロアルド・ダール
/評論社
負け犬の遠吠え/酒井 順子/講談社
誰からも好かれようとする女たち モナリザ・シンド
ローム、微笑みの心理/
ウーテ・エーアハルト/〔著〕 平野卿子/訳/講談社+α文庫
小説鋼の錬金術師 5 それぞれの絆/
荒川弘/原作 井上真/著/スクウェア・エニックスNEW
歌舞伎町の中国女/李小牧/バジリコ出版
明かしえぬ共同体/モーリス・ブランショ/ちくま学芸
文庫
Jポップとは何か 巨大化する音楽産業/
烏賀陽弘道/岩波新書
複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線/
マーク・ブキャナン 阪本芳久訳/草思社
2トーン・ストーリー スペシャルズ〜炎に包まれたポ
スト・パンク・ジェネレーション /デイヴ・トンプソン/著 中島英述/訳
/シンコーミュージック・エンタテイメント
人間の条件/ハンナ・アレント/志水速雄訳/ちくま学芸文
庫
日本ロック雑誌クロニクル/篠原章/太田出版
鋼の錬金術師 赤きエリクシルの悪魔/荒川 弘/映島
巡/スクウェア・エニックス
希望格差社会/山田昌弘/筑摩書房
旅の仲間〜王の帰還 指輪物語/J.R.R.トールキン 瀬田
卓二訳/評論社
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- L.ウィトゲンシュタイン/著 中平浩司訳/ちくま学芸文庫
- 1.世界とは出来事たる一切である。
- 2.出来事たること、すなわち事実とは、事態が存立していることである。
- 3.事実の論理的図像とは思考のことである。
- 4.思考とは有意味なる分(=命題)のことである。
- 5.命題は要素命題の真理関数である。
- 6.真理関数の一般的な形式は、〔 p,ξ , N(ξ)〕 である。
- 7.語りえないことについては、沈黙しなければならない。
という有名な命題の本作は論理的でカッコイイ。(ミーハー)
自分もこういう風に生きてみたかったなと思わせるいさぎよさがある。
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- 三浦展/光文社新書
2005年のベストセラーの一つだと思う。この手の本は題名が買っていて
いまいちの場合が多いが本作はなかなかしっかり分析できていたと思う。
まあ、いろいろと言われていますが、国民総中流ってのはまぼろしだったのね
というところだろうか。
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- リチャード・フローティガン/新潮文庫
いやー、今更なんですが、初めて読みました。この作者のものでは大昔
「西瓜糖の日々」をもらって読んだんですが、「合わない..というかよー
わからん」でした。で本作なんですが、私も「大人になった」ので
「わからん」ということはないし、「合わない」という風でもなかったです。
とても繊細で素敵なのはわかるんだけど。でも、多分、これは私とはぴったしに
ならないしそれでいいと思える作品でした。
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- 橘木俊詔/著 森剛志/著/日本経済新聞社
データで分析した日本のお金持ちの職業など。諸外国と比較すると
医者が多くて弁護士が少ないとか...。
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- 石田衣良/文春文庫
日本人作家はほとんど読まないが例外なのはコレ。場所(池袋)は自分もここ
数年馴染みの場所だし、作者と世代も近いし、作者のルックスがおだやかな
中国人のようなのも(?)いい。
ジャンルとしては推理ものになるのだろうし、結構ドギツイ表現も多いが
何故かとても素直にすんなり面白く読める本シリーズは好きだ。
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- C.レヴィ=ストロース/著 川田順造/訳 渡辺公三/訳/平凡社ライ
ブラリー
この筆者の「悲しき熱帯」は面白かったが読むのは大変だったし、
↓に続いてまたまた難解な本...だろうと予測していたのたが、↓が予想に反して
難解だったせいか、本書は予想と反してものすごくスラスラ読めてしまった。
講演会ということも多いにあると思うが....
↓の続き...という感じがする。多分そうなんだと思う。
か本書は人類学についての考察と日本についても言及している。
西洋文化と日本という一面も。自分の経験だと外国=アメリカ=正しい発展
という刷り込みのある人が多いのが日本。
音楽でイギリスを知った。当たり前なアニメが世界ではあたり前にできない
と知ったとき。
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- ダニエル・C・デネット/山形浩生訳/NTT出版
山形訳ということで読みやすいだろうとタカをくくっていたら予想より
かなり読みにくかった本書ではあるが(読み出してから哲学書だと知った)
かなり興味のあることを題材としていて、それを哲学者でありながら
科学的な手法と検証で検討しているのがよい。
「自由意思は進化している」という、見方によっては「トンデモ」になりそうな
題材だけれどその主張は興味深かったし、読んでいて楽しかったのは事実。
楽しい...というより「元気が出た」という方があっているかもしれない。
全体のトーンがプラス思考なのだ。こういう学問(?)が更に研究されれば、
心理学や精神的な問題もかなり解決できそうな気がするが...。
文化があるのは人間だけで納得。
以下、印象に残ったフレーズをいくつか。
- 自由意志はあるけれどそれは重力のような人間の存在に先立つ特徴ではなく
人の活動と信念が進化して作り出したもの。音楽やお金同様リアルである。
- 決定論は不可避を意味しない。
- 命が誕生したとき、生き方は一つしかなかった。Aをやるか死ぬかだ。
今では選択肢がある-------AかBかCかDをやるか、死ぬかだ。
西洋人と第三世界の人の発達の違いは何故など興味深い他の展開もあるようだ。
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- ロアルド・ダール/評論社
一度も見たことはないが気になる監督のティム・バートン作であり
かつ、主演のジョニー・デップとその宣伝写真が「時計じかけのオレンジ」
風で妙に気になっている映画「チャーリーとチョコレート工場」の原作である。
原作のことはずーっと知っていたけど読むのは初めて。映像化したら
確かに楽しそうなチョコレート工場を初め、そのブラック・ユーモア的な
センスはなかなかだ。映画が楽しみになった。
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- ウーテ・エーアハルト/〔著〕 平野卿子/訳/講談社+α文庫
先の「負け犬」と似たような内容かと思いきや、こちらは女性全体に対して
女性特有の真理を指摘して、それを直していかないと進歩はないと示している
指南書。対象は全女性ではあるが圧倒的に対象にされているのはいまいち
ふみきれていないキャリア・ウーマン向けだ。具体的にいろいろと指南が
書かれているし、女性でもなかなか気がつかない「女性病」がいろいろと
書かれていて興味深いしなにより前向きである。
服装や靴についての指摘は確かにそうなのだ。私は今はそう思う。
しかし、こういうことをいうと「え〜」という人が出そうだが。
彼女の考えている悩みのレベルにまでいっていない女性も多いと思うが
確かにまだまだ女性は変われるのだろうなと思える一冊。
しかし、「負け犬」とこの本を読んで「ふむふむ」と思えたが、女性問題に
ついていまいち根本的な解決はないというかそんなふうに思えてしまうのは
なぜか。これも女性病か?
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- 酒井 順子/講談社
昨年の流行語ともなった「負け犬」という言葉の元となった本。「負け犬」の定
義とは30代、未婚、子なしの女性のことだ。世間では文字通りもっぱら「負け
犬」と揶揄するような使い方が目立ったが本書の主旨はそうではない。
自らも定義上の「負け犬」である著者が負け犬の実態をつづったエッセィであり
「負け犬でも別にいいのでは...」と静かに主張しているのだ。
いろいろなところに女性特有のいろいろな真理が見えて興味深い。
しかし、この本の「負け犬」は作者+その友人が元になった「負け犬」のため
「負け犬」の中でも「勝ち犬」のように思えてしまう。
もっと地味な「負け犬」も多いと思うのだが....。
最後に期待の星として書かれていたサーヤは婚約してしまったし....。
最後に一応「負け犬にならないためには」と「負け犬になってし
まったときに」と処方箋はあるが、いまいち読んでいても未来に向けて明るく
思えないのはなぜか。その点は筆者も充分承知してはいるのであるが。
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- 荒川弘/原作 井上真/著/スクウェア・エニックス
ハガレン小説ももう第五弾まで出ました。今回もいつもと同様、安定したハガレ
ンの世界を描いています。何か目新しいものがあるわけではないけれど
これはもう水戸黄門のような世界なのかもしれません。ま、ファン向けアイテム
ですが。
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- 李小牧/バジリコ出版
いやー、今年は本が少ないですね。そこそこ読んではいるんですが、以下理由。
- 冊数が多い本を読んでいた。(指輪物語)
- 読むのに時間を要する哲学書を読み、更にその本の孫引きでまたまた哲学書
になり時間を要した。
- 6月よりNINTENDOGSを通勤時に本をほとんど読めなくなった。
ま、圧倒的に理由3なんですが.....(^^;;;
てなわけで(?)さらっと読めそうな軽い本を中心に手をつけようかと読んだのが
これ。軽いけど内容は結構重いような、軽いような、暗いような、明るいよう
な....。
自分は生理的に、風俗を仕事にするのは絶対受け入れられないけど
彼女達のバイタリティーというかそういうものには感じ入るところはある。
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- モーリス・ブランショ/ちくま学芸文庫
デリダの本からの逆引きで読んだが、バタイユともう一人の共同体論に
対する....とここまで書いて、一月ほど経ったのですが、内容ほぼ忘れてます。
(^^;;
でも、なかなか良かったことは確かです。(いい加減過ぎる.....(^^;;;)
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- 烏賀陽弘道/岩波新書
J-POPに対して、ある程度の年の人ならば「昔は歌謡曲と言っていたけど
いつの間にかJ-POPと呼ばれるようになったな」という感触だと思うが、
そのあたりの事情と共に、実は巨大産業である日本の音楽産業を産業的に
分析した本。いくつか、ちょっと疑問に感じる箇所もないではないが、
全体としてはなかなかよく分析していて面白い。
日本は音楽産業としては世界第二位の規模(一位はアメリカ)なのに、ほぼ
国内向けである。中華ものも中華対象だが、中華圏そのものが
ワールドワイドに広がっている今は、日本とはだいぶ事情が違いつつあると
思う。
自分はJポップはほとんど聴かない人なのだが、そのあたりも考慮しながら
読むと面白かった。(理由は、時代背景、性格、環境などが複合化しています。)
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- マーク・ブキャナン 阪本芳久訳/草思社
自分から、ブッシュ大統領までは何人の知り合いを介してつながっている
のだろうか?これがなんと、誰でも平均6回なんだそうである。このような
話を聞いたことはないだろうか?この数字は予想より遥かに少なく
感じてしまう。
ここから始まって、世の中のネットワークはこのような人間関係でも、
また、細胞の構造でもインターネットの接続でも、ネットワークとして共通の
構造があり、それが全体に与える影響も似ているらしい。
モノそのものでなく、お互いの繋がり方を研究するこの学問は物理学の一部で
あるが、最近になって注目されている新しい分野であり、まだまだ発展途上
らしいが、その繋がりがわかったときは、応用として、病原菌の対処方法などに
役立つことが予測されるらしい。(悪い方への応用もいろいろと出来そうだが...)
そんな風に考えると、まだまだほとんどわかっていない人間の心という未知の
分野も少しずつわかっていくのかもしれない。
全体としては楽に興味深く読めたが、生態系のところで捕鯨を取り上げていたが
これはいささか感傷的になりがちでちょっといただけなかった。
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- デイヴ・トンプソン/著 中島英述/訳
/シンコーミュージック・エンタテイメント
1979-1981年にかけてのイギリスの状況を当時勢力を誇っていた2-toneレーベル
を中心として描いたドキュメンタリー。スペシャルズの記述が当然多いが単なる
スペシャルズ・ストーリーではなく、当時の政治的背景や各種出来事も明記され
読み応えがある。このあたりのアーティストも実は結構好きで少しはこれらの
ムーブメントの意味もわかっていたつもりではあったが(スペシャルズは白人と
黒人混合バンドである。)、「ああ、そうだったのか」的なことも多かった。
スカだけではなく、スカとモッズとOiなどについても記載してある。
あの時代にちょっとでも興味のある方には是非お薦めしたい良書である。
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- ハンナ・アレント/志水速雄訳/ちくま学芸文
庫
デリダの本を読んでいて読みたくなった子引き本。内容は
- 彼女は政治哲学者
- 人間の条件を労働、仕事、活動とした。
- 観照(本質を極める )は大事というのにはホッとした。しかしこれに
気づいていない人も多い...。
- 科学と哲学
- ゼウス・エキス・マキーナの意味がわかった。某ゲームに出てくるのだ。
この程度しか残っていないが、たまに読むと頭がすっきりするのだ。
今、自由研究が出たらこの本のまとめなど楽しくやれると思う。
いまさらながら、時代によって、いろいろなものの価値感が違うということを
感じさせてくれた。シンプルに生きていけば人間楽なのに...ね。
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- 篠原章/太田出版
タイトル通りの日本における所謂洋楽雑誌の歴史本。とりあげられているのは
ミュージック・ライフ、(ニュー・)ミュージック・マガジン、
フォーク・リポート、ロッキン・オン、、宝島、ロック・マガジンである。
このうち、私が愛読していたのはミュージック・ライフ、宝島で、
ロッキン・オンは知ってはいたが嫌いで、(ニュー・)ミュージック・マガジンは
立ち読み程度である。フォーク・リポートとロック・マガジンは
存在も知らなかった。ロック・マガジンなどは昔の自分だったら結構好きそうな
内容だったが、大阪ベースなのと、値段が高かったのと、当時は多分Fool's
Mate信者(?)だったためだと思われる。
この本にもあるように、今やロック雑誌というものはほぼなくなってしまい、
あっても内容をかなり限定している。
それについてはいろいろと理由が考えられると思うが
- 昔はネットもなく、海外も気軽にいけず、本が情報源だった。
- ROCK/POPS市場そのものの成熟と他のレクリエーショよるこの市場の衰退
あたりが大きな原因だと思われる。
私自身、それを強く感じ始めたのが10年くらい前で、その頃はまだ雑誌を
探していたが、いつのまにか「そんなものはない」と気がついた。
しかし、ネットも今や大勢のプログで勝手な感想が立ち上がる時代であり
昔のような「一極集中」な情報ではもはやない。
これは音楽だけではなく、他のカルチャーにも共通したことであり、もはや
今の子供は自分も含めた昔の子供のように共通の思い出はなくなりつつ
あるような気さえする。それがいいとか悪いではなく、そういう世界では
trust friendが大事であり、それを見つけていくことが、この世の中を楽しく
生きていくコツのような気がする。
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- 荒川 弘/映島 巡/スクウェア・エニックス
ハガレンのPS2ゲーム第二段のノベライズ本。これこそ、所謂ライト・ノベル。
ゲームは家族がやっているのを横目で見ていた程度だが、ストーリーは
ハガレンの前半のいろいろな見せ場を復習しつつ、それにゲームオリジナルの
キャラを上手くかませたなかなかいい仕上がりとなっている。
ライト・ノベルについてはいろいろと言われて....すらいないが、
現在の日本の書籍売り上げで大きな割合をしめているのは間違いないし、
少なくても本をまったく読まないよりはいいと思う。
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- 山田昌弘/筑摩書房
指輪物語が終わって、まったく違うジャンルということで読んだが、
実にサラサラと読めてしまった。
パラサイト・シングルを命名した著者が更に現代社会において、
一億総中流と言われる日本で、様々な格差が生じていて、
人が人として生きるための「希望」まで格差があるというのが
本書の主題である。その証拠のフリーターの増加や、リストラや
家族形態のあり方の変わり方などの現状認識はまあ、それなりに
あたっているような気がするが、それに対する対策がこの手の本に
ありがちで弱い。多分、現在その対策を検討中だとは思うのだが...。
まあ、あまりこの手のことを考えたことのない人には有効かもしれない。
(...と言ってもそういう人は本書は手に取らないような気がするが。)
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- J.R.R.トールキン 瀬田卓二訳/評論社
本のページが今年に入ってまったく更新されていなかったが、実は理由が
あって、この本をずーっと読んでいたためなのであった。
映画化され、そちらも大ヒットしたが、元々は代表的なファンタジーの
(もはや)古典。実はもこの本は小学校の時に読もうとして
挫折している。いっしょに塾に通っていた友人が大変な文学少女で
薦められたのだが、あまり読書家ではなかった私にはちと難しかったのだ。
さすがに今回は読めたがそれでも、全8巻読むのに2ヶ月かかったという
ことは今のライトノベルとは質がかなり異なるということになると思う。
前半は結構ゆっくりペースで話がすすみ、各巻ごとで主人公が違ったりして
いて、旅が続くわけだが、話が一気に進むのは最後の巻であり、しかし、
それにいきつくまでの細かい伏線が生きてくるラストであり、長いが
少しでも興味のある方は読むことをお薦めしたい。
私は映画は未見であるが、そのうち見てみたいと思う。