岩場の救助訓練

【場所】丹沢・モミソ岩
2017年6月3−4日
講師:鈴蘭OB、MHさん、O庭さん。
L:T村Eさん、メンバー:S林さん、I井さん、F川さん、N片さん、M上さん、S木2さん、T村Mさん、Y原さん、自分
4日朝から:F浦さん、3日夕から:Ta田さん、S野さん、4日朝まで:YKさん

今回の訓練の大まかな位置図(赤丸) 今回の訓練のさらに大まかな位置図(赤丸)

6月3日 
天気:晴れ
【コースタイム】7:00 八王子駅−9:00/9:35 新茅荘駐車場−9:45/15:55 モミソ岩−16:30頃 大倉山の家

まず、講師より、説明です。
(1)支点構築、流動分散

 
流動分散は3点で、2点ごとの角度は60度以内に  

 トップロープでの支点構築は、さらにバックアップ1本追加したうえで、流動分散の合流する部分に環付きをさらに追加。

最近、売られていないが
ゲートの入り口がカギ状になっているカラビナは
ひっかかるので使わない方が良い

 その他:(確保器落下防止を防ぐためにも)カラビナと確保器はワンセットで扱う。

固定分散
 流動分散後に、スリングでガースヒッチ後、
 ぐるぐる巻きをし、末端処理

 流動分散か、固定分散か、固定分散の方が優勢のようですが、自分としましては、しっかりとした支点の多い岩場に行くことが多い人が固定分散を支持し、頼りない支点の多い岩場に行くことが多い人は流動分散を支持するのではないかと思います。つまりは「どういう所に行きたいですか」によるのではないでしょうか。

スリングが短いのしかなく、
流動分散が作れないとき、無理して流動分散を作るよりは一つずつカラビナにかける(どうしようもない時の対処法であり、お勧めではありません)


(2)確保(セルフビレイ)

 
セルフは2本が理想  セルフの長さは手が支点に届く範囲で

(3)介助懸垂

(1)セルフビレイをとり、メインロープにオートブロック (2)振り分けのシステムを作り、下降器をセット
   
 (3)オートブロックの効きを確認後、カラビナを使ってロープをワンターン、片手でオートブロックを操作しながら、怪我人に近づいていく。 (4)怪我人の後ろに回り、片方の手で怪我人のハーネスを持ち、もう片方の手でオートブロックを操作しながら下降していく 

 オートブロックに使う、スリングはソウンスリングにすべき。ここで講師よりの説明は一段落。

 参加者を3つの班に分けて、それでは、岩場の上で、各班、支点構築、介助懸垂を行いましょう。

何はともあれ、セルフビレイ 各班ごとに、支点のセット


喧々諤々

 モミソ岩のテラスは、今回の人数でぴったり、今更ですが、右からのルートしかなかったため、一番左端での訓練をしている人は、「真ん中と、右端」のパーティーが訓練している脇を通過しなければならず、面倒であり、(きちんとセルフビレイ用のロープが張られている割には)少々危険でした。岩場左側にFixロープを張って、オートブロック又はタイブロックで登る練習ついでに、登るという案はいかがでしょうか。案外、この2タイプで登ることを確認する機会がないのです。

 
介助懸垂  

 介助懸垂につきまして、基本的なことはわかっていた(覚えていた)が、振り分けの長さ、オートブロックのスリングの選定等、実際に怪我人役の方を下すとなると、微妙なところは、まだまだでした。

介助懸垂

介助懸垂

 各員が、それぞれ役割を行い、訓練一段落。

休憩 訓練再開


(4)自己脱出と登り返し

「トップのビレイ中、トップが何らかの事故により救助をしなければならくなった」場合の対処法です。

・自己脱出
(ロープを緩めれば下ろせる程度の斜度の壁を)登っている場合:ロープの半分以上、登っていなければ、(自己脱出をするよりも)トップを下すことを考えるべき。
 (ア)通常の形で登っている際に、登っている人が何かの事情で動けなくなってしまった。
 (イ)カラビナをハーネスにセットし、ロープをワンターン、確保器にぐるぐる巻きorムンターミュールで仮固定、末端をカラビナで止めて、メインロープにかける。
 (ウ)メインロープにオートブロック、末端はセルフビレイに、カラビナでセット。オートブロックをできる限り上に上げておく。
 (エ)(イ)の仮固定を解除、(ウ)のオートブロックに荷重を移動。荷重の移動が完了したら、ビレイを緩めてメインロープでクレムヘイストの下に「8の字結び」を作る→クレムヘイストがこれ以上、下に下りない。
 (オ)すっぽ抜け防止のために、ロープをさらに緩めて8の字を作り、セルフビレイのセットに止めた後、確保器からロープを外す。

デイジーチェインは、長さ調節のために、カラビナをディジーチェインの輪に単独でかけるのは問題ない。一つのカラビナでディジーチェインの二つの輪にかけると、外れる恐れがある。

時間もないので、今回は自己脱出までを、各自パートナーを変えて、確認。

仮固定 オートブロックを作り、荷重を移動
   自己脱出完了

・自己脱出と、自己脱出後の登り返し(デモのみ)(→翌日のシュミレーションで再度確認)

 自己脱出の動画
 自己脱出後の登り返しの動画

 ・自己脱出後、登り返し
 (ア)2本あるうちの1本は固定されているが、もう1本はフリーになっている。それを利用して登る。登る前にロープの整理。登る前にきちんと準備。
 (イ)ロープにタイブロックをセット後、タイブロックを外した時、ロープが体から外れないように、タイブロックの下にカラビナをかけて、ロープをかける。タイブロックより下のロープを引けば、タイブロックは上がっていく。
 (ウ)予備として、もう1本の固定されたロープも利用。「自己脱出で使用したオートブロック」の上にさらに、オートブロックを作り、末端を自分のハーネスにセット。ただし、固定されたロープは、怪我人とつながっているので、予備として使用して、あまり体重はかけない。
 (オ)オートブロック、タイブロックの両方に気を配りながら、怪我人に向かって登っていく。
 (カ)怪我人の所に到着したら、セルフをとって、(怪我人とつながっていない、タイブロックをかけた方の)ロープを引き上げる。上げたら懸垂用の支点を作って、オートブロックをセットして、介助懸垂(人数がいればディスタンスブレーキも可)のセット→介助懸垂の準備ができたら、怪我人とつながっているロープ((ウ)でオートブロックをつけた)を、怪我人から外す。介助懸垂で下降
 (キ)介助懸垂終了後、登り返して、(怪我人とつながっていた)ロープを回収。

怪我人のところまで行き、介助懸垂

宿に帰ってからは、食事後、1時間ほど搬送法の確認
・ザックを使った搬送法
・雨具とザックを使った搬送法(F川さんより、胸の部分にハーネスを使うとより安定するとのこと)

雨具とザックを使った搬送

 その他、ツエルトを使った雪上搬送の確認(自分は怪我人役を努めたので、詳細は別紙参照のこと)

6月4日
天気:晴れ
【コースタイム】7:10頃 大倉山の家−7:35 新茅荘駐車場−7:45/14:20 モミソ岩−14:30 新茅荘駐車場−17:25 八王子駅

7:35 新茅荘駐車場出発

・ディスタンスブレーキ(8:00〜10:00)

当初は、ビレイ器具に
 ATCガイドやエイト管が提示されたものの

やはり鈴蘭は半マストということで、でも半マストですと(二人の体重がかかると)制動の効きが悪いということでMH講師より提示のあったのは

 ダブルデミキャプスタン
 半マストに、さらにもう1回カラビナを通した結び

 これがとても有効でした。正確には、
 (1)半マスト作成
 (2)半マストで、2本出ているロープのうち、制動のかかっていない方のロープを持ち、制動のかかっているロープの後ろに回して(前に回すと半マストが外れる)、カラビナにかけます。
です。

 コントローラーが救助者(および事故者)を下すとき、手は両手でスライド(必ずどちらかの手はロープを握っているように)するようにして、下ろす。
 下ろす前に、下ろす向きを意識して、(振られないように)体勢を考えた、位置をとる。

ダブルデミキャプスタン(黄)と、バックアップ(薄赤)


 左から
 救助者、怪我人、ビレイヤー


・ライジング (10:00〜)

ロープが戻らないようにタイブロック オートブロックで1/3

 タイブロックはロープをまたぐ。タイブロックの部分をオートブロックにするという手もありますが、オートブロックだと少し戻ってしまいます。
 1/3システムを作った後、ワンターンをした方が体重をかけやすいという人もいますが、言うほどの意味はない。

滑車をつけるとさらに楽に上げられます A点はタイブロックを使うとロープを痛めるので、オートブロック
C、D点は滑車を使ったほうが引き上げが楽。

・シュミレーション
 登っていたトップが事故にあい、動けなくなりました。事故者を下に下ろしたいです
 →自己脱出して、事故者のところまで行き、ディスタンスブレーキで下ろしました。
 そもそもこのシュミレーションを行ったルートがかぶっていて、自分は救助者役でしたが、慣れないタイブロックとオートブロックでの登りで、一苦労。怪我人役のN片さんには、痛い思いをさせてしまった。ヌンチャクを回収するという、冷静になれば当然することも忘れてしまっていた。再度、クライムダウンして、ヌンチャクを回収。

・斜張り(別名:流星法、チロリアンブリッジ)(13:00〜14:00)
 事故者のいるテラスと、下の安定した場所との間にロープを張りこみ、そのロープづたいに事故者を下す方法。(「ロープを張るところはデモのみで、各自実演していませんので、実際やってみるといろいろあるかもしれません)
 (1)ロープ(ガイドロープ)を張る

確保器にセット オートブロックをセット
   
 1/3システムにより締め付け   1/3システムにより締め付けたロープを、固定(方法は仮固定)
   ←張られたロープ

 ロープ(ガイドロープ)を張る方法は、ロープを上部でFixして、下の確保器にセット→メインロープにオートブロックをセット→オートブロックの末端を1/3システムにより締め付け→固定

(2)チェストハーネスの準備

 胸のハーネス(チェストハーネス)
 長めのスリングとカラビナ1枚で作成
参考動画(YouTubeより検索) 

 チェストハーネスの作り方
 長めのスリング(120cmほど)を用意、スリングを背中に回して、両端のうち、片方末端は肩にかける。もう片方の末端は(肩にかけず)、手に持って前に持ってきて、肩にかけた末端と、両端を交差して下から巻き付けて結び、末端にハーネスをかける(参考動画参照)。

(3)下りる(下ろす)
 (ア)上部で、もう1本下ろすためのロープ(誘導ロープ)も準備します。支点を作成し、確保器(またはダブルデミキャプスタン)をセット
 (イ)張ったロープ(ガイドロープ)に滑車をセット
 (ウ)介助懸垂やディスタンスブレーキで使う振り分けを準備、短いほうをチェストハーネスに、長いほうを腰のハーネスにかける。
 (エ)(ウ)の連結したカラビナに(ア)のロープ末端、(イ)の滑車をセット。
 (オ)下りる準備ができましたので、張ったロープ沿いに、ディスタンスブレーキの要領で上にいるコントローラーが救助者(および事故者)を下します。今回は、救助者のみの下降となりました。

斜張りによる下降(上からの写真)

 
斜張りによる下降(下からの写真)


斜張りによる下降・上からの動画(F浦さん)


斜張りによる下降・下からの動画(S野さん)

ヒルはモミソ岩では会いませんでした。行きの新茅駐車場で、小さいヒルがいて、これでもかと虫よけを体に散布したのが効いたのかもしれません。

今回の訓練の位置図(A:新茅荘駐車場、B:モミソ岩)

 全般的な感想、次回へ
(1)講習会というのは、入試に受かったというのと同じで、確かに必要なことだけど、それを活かすか、活かさないかは、その後の自分で、スタート地点に立ったというだけかもしれません。今回の、救助訓練はすばらしく、目標としていた〇〇大学に、無事合格、やった! でも、どんな学生生活にするかは、その後の自分次第。
(2)自分などは、例年やっていて今年やらなかったことに、目が行き過ぎたかもしれません。焚火が、渡渉訓練が、自炊が、これは無くしても良かったのだろうか。さも、わかったようなことを書いてしまいました。その後の山行で上手に、修正、取り入れば解決する話かもしれません。(後日談)モミソ岩は、沢の合流点にある岩なので、(本格的な確認は無理かもしれませんが)渡渉訓練のシュミレーション程度なら、できたかもしれない。必ずしも、無理な場ではなかった。渡渉訓練を行わないことに、驚いて、本当に行えないか、自分が考えなかっただけかもしれません。
 よし、ちょっと遅れてしまったが、今シーズンの沢の計画をきちんと立てよう。
(3)次回の救助訓練は、何を続けて、何を外すかというのは、せめてワンシーズン経てみないと何とも言えないのではないかと、思います。

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