沢の救助訓練 2016

 自分が、救助訓練というものに、初めて出会ったのは今から10年前、2006年の10月(他会)でした。その時は、「?」マークしかなく、ライジングなどは見るだけでとても再現できない状態でした。毎年、参加して少しずつわかってきたように思う。
 今回思ったのは、「救助訓練のディスタンスブレーキについてきちんと覚える」などということは本職の人でもないので、まず無理。それよりは、例「(1)ディスタンスブレーキの基本の型を覚え、理解、(2)ディスタンスブレーキを楽にする方法を覚え、理解」ということ。(1)と(2)をはっきり分けるべき、「(1)は不変、(2)は持っている用具・状況でコロコロ変わる」なのです。(1)と(2)を、分けることなく、一気に一直線で理解しようとしてきたけど無理、無理。基本(1)と応用(2)ができて、初めてできるのが救助(訓練)だと思う。救助訓練の目的を考えれば、現場で救助できないと意味が無い。そのためには、極力、覚えることを減らし(1)を理解。暗記は本当に一部のみで、極力減らすべきですし、暗記の良くないところは、忠実に再現することしかできず、ちょっとでも型から外れると、途端にダメになるところです。それに、暗記は、他人の意見を聞けない、余裕が全くないのです。上の人を見ると、わからない個所は上手に修正している、自覚できたのは良いことですが、今回講師を担当して、講師となると、まだまだでした。

2016年5月21-22日
L:M浦さん、講師:自分、メンバー:S林さん、F川さん、S木2さん、I永さん、日曜朝帰り:I井さん、土のみ:T村夫妻、Ta田さん、日のみ:N片さん、F浦さん

5月21日
【天気】晴(夕方、なぜか小雨)
【コースタイム】9:20 水をくむ井戸、10:30頃−16:30頃 救助訓練

・ディスタンスブレーキ
 講師として、教えながら、ディスタンスブレーキを作成しようとすると、細かいところで引っかかり、上手くいきませんでした。 下記内容は、講習後に再度整理した内容になります。

(1)基本型:支点ビレイでセカンドが登攀中、落石をして下のメンバーを負傷させてしまいました。登るのを中断して、下の事故者を助けに向かいます。
 設定:救助者、ロープ操作をするコントローラーの2名で、下降して救助

基本型:支点ビレイでセカンドが登攀中、落石をしてしまいました。登るのを中断して、下の事故者を助けに向かう。

救助者

振り分け救助
 このシステムを「振り分け救助」というのですね。言葉の問題ですが、自分が理解しておらず、混乱してしまいました。

 岩場でのレスキューなので、事故者はロープにきちんとつながれ、その後ろ(脇)に救助者が位置する必要があります。A点でメインロープにつながり、2の端が事故者につながります。救助の前に振り分け救助のシステムを作って助けに行きます。救助者がコントローラーに声をかける。

ディスタンスブレーキ


(2)応用編
コントローラーは
 救助者が事故者を捕まえて、振り分け救助のシステムが完了すると、1本のロープに二人の体重が加わり操作が厄介になるので
 (ア)(推奨)今ある支点よりも高い位置に、さらに支点を作りその支点に半マストを作成して制動がかかるようにする

今ある支点よりも高い位置に、さらに支点を作りその支点に半マストを作成して制動がかかるようにする

 この場合、基本型の確保器がエイト管とされています。エイト管でない場合?

 (イ)(ア)が作れない場合、支点より下のロープを両手で握って、手を交互に送るようにすればスピードを抑えられます。

ライジング
 ディスタンスブレーキの際、教えながらのセットに失敗したので、休憩時間を利用して、ライジングのシステムをセット。教えながら、を外したら、問題なくできた。教わる方からすれば、教えながらセットが理想だと思いますが、安全策に逃げる。
(1)基本型

A地点の事故者をB地点まで引き上げたいのですが、重いし、手を離したら事故者は滑落です  「あ」の支点にタイブロックをとりつけ、ロープが戻らないようにしました。
 確認事項:タイブロックの向き
 重いのを少しでも解決するために、「1/3システム」を作ります。「1」に巻き結びをし、巻き結びの末端を「2」に止めます。

 ロープが戻らないように、タイブロックの向きを設定。摩擦を極力減らすために、理想はタイブロックで、クレムヘイストでも可、ATCガイド等フォロー確保付確保器×。
 「2」への固定は、摩擦を極力減らすために、◎(理想)滑車、カラビナ:○(滑車がなければ)。
 1/3システム:重さは軽くになりますが、引く距離は長くなります。ロープを引くと、徐々に「1」の巻き結びが「あ」の支点に近づきますが、「あ」に近づいたところで、手を離し(タイブロックで固定されているので手を離しても大丈夫)、巻き結びの結び目を事故者側に戻すことで、再度ロープを引ける状態になります。
 以上がライジングの基本型です。

(2)応用編

「い」にさらに支点を作り、ロープを折り返せば、ロープに体重をかけることができ、だいぶ楽になります。
「い」の支点の固定は、理想は滑車です。ちなみに、カラビナ:仕方ない。

 「あ」の支点のタイブロックについて、タイブロックが反転すると、効きが悪くなるので、タイブロックに重りをつけて、反転しないようにした方が確実です。

・懸垂下降の仮固定

 懸垂下降の仮固定なのに、トップロープのセットをしてしまい、「バックアップに転用」ということで無駄にはならなかったが、時間のロスをしてしまった。本来なら、「懸垂下降の仮固定→宙づりからの脱出」でしたが、個人的に、渡渉訓練は参加者が多い方が良いと思ったので、「懸垂下降の仮固定→宙づりからの脱出」は翌日に回し、渡渉訓練に向かう。


・渡渉訓練
 スクラム徒渉
 末端交換三角法

トップの渡渉

 末端交換三角法:「末端交換」の部分で、現場ならではの修正ができなかった。末端を束ねる前の準備、末端をどのようにすればぬらさずに、水に流すことなく対岸に交換するか。今回程度の流れなら、「末端の交換」で、できてしまい、「末端の束ね方」および「「ぬらさずに交換」は、応用編ですが、現場では熟知すべき内容でした。
 あとは、他の訓練に比べて、末端交換三角法は、対岸という長さもあり、水の流れもあるので、対岸に渡った人に声が届かない、意思疎通が上手くいかない。あせらずに開始する前に、役割分担等、当然のことながら確認すべき。

セカンドの渡渉

 セカンドが渡る時、「ピンと張る」というのもありました。(後日談)別件で、鈴蘭山の会の「会員専用のページ」を見ていたら、「末端交換三角法」の記述があり、再確認、
 (1)良い支点がないので、「人間支点」で対処していたが、基本は支点を作ること。「人間支点」はあくまでも、他に方法がないとき。人間支点をする場合は、肩がらみで、ザイル末端はハーネスに固定。
 (2)セカンドが渡る際、ロープを固定するだけでなく、ピンと張らないと、渡渉中に流された場合、水中鯉のぼりになる、それを防ぐために、クレムヘイスト結びを利用してロープをピンと張る。
 (3)末端交換:ラストを除いて全員が渡りきったら、クレムヘイストを解除して、末端を結ぶ際、ハーネスなどに仮固定し、ロープが流されないようにする。

 渡渉方法      
流れの強さ(緩い⇔強い)     
行なう方法 徒歩  ストック渡渉  スクラム徒渉  振り子法  末端交換三角法  あきらめる


自分の考えるところの末端交換三角法(?)

 
スクラム徒渉では渡れないような、急流の場合、Aに支点をとりロープを使って対岸に渡ることがまず、考えられます(振り子法)
 改善点:「流されては、少し面倒で程度」ならロープが役に立つが、激流に流されてしまった場合、対処のしようがない

 (修正1)流されてしまった場合、元の岸に戻すために、Bにロープを持った人を立たせます。

 
 改善点:二人目、3人目が渡るのにロープを一々、対岸に戻すのは面倒

(修正2)一人目が渡ったら、AとBが一つの支点になり、ロープにカラビナをかけて渡れば良い

   
 改善点:二人目、三人目と安全に渡れるが、最後の人がロープを回収して、安全に渡ることを考えなければならない

(修正3)(2)の状態で安全に渡れたので、再度、末端を対岸に移動することによって、同じ条件を作れば良い

 
末端を対岸に移動 (2)の逆が作れた(Dは支点)  最終渡渉者に何かあった場合、下流にいる人が対岸に引っ張る  全員が渡りきる

土曜日の救助訓練終了

タープ設置


焚き火と共に
   


5月22日
【天気】晴
【コースタイム】7:00 訓練開始、14:00 訓練終了

・搬送法

吊り上げ法

 道具を使わない搬送(移動距離小、移動するルートは登山道で、危険個所はナシ)として
  ドラッグ法:救助者1名
  吊り上げ法:救助者2名(1人がドラッグ法、もう1人が救助者の足を持つ)
  ヒューマンチェイン:救助者多数
を各自、確認。

 道具を使った搬送(移動距離大、移動するルートは登山道で、危険個所はナシ)として、
 「ザックの基部に穴を開ける方法」と「(上下反対にした)ザックを使った搬送法」を各自確認。

・ザックの基部に穴を開けて、の搬送

事故者が穴の空いたザックに入る(1) 事故者が穴の空いたザックに入る(2)
   
 ザックごと救助者が背負う(1)  ザックごと救助者が背負う(2)

 「リーダーのお古のザック50リットルの両サイドに穴をあけた」ザックを今回使用。全員がストレスなく、ザックの中に入れた。

 人を変えて

 今回は、道具を使った搬送(移動距離大、登山道など危険個所はナシ)として、 「ザックの基部に穴を開ける方法」と「(上下反対にした)ザックを使った搬送法」を各自確認。
 雨具、スリングを用いての搬送も、修正力、応用力を高めるという点では価値があるが、現実問題として、両方の方法が使えてどちらを取るかといったら、ザックのみの搬送の方が、シンプルでわかりやすく、わかりやすければミスも少ない。ザックに穴を開けるというのは抵抗がありますが、山岳保険にきちんと入っておれば、事故後、保険が下りるとのことで、背負う方も背負うのがザックなので安定している。時と場合によりますが、一番使えるのが、「ザックに穴を開ける方法」かもしれません。

 
事故者をザックに入れるところから確認  

・ザックを使った搬送法
 「上下反対にしたザック」を利用しての方法も念のため確認。


・懸垂下降の仮固定→宙づりからの脱出
 設定:懸垂で下りられそうなので下りたものの、上から思っていたよりもはるかに悪い状態、再度登り返す。

宙づりからの脱出

 「宙づりからの自己脱出の、操作一つ一つ」は何も、難しくないが、懸垂の仮固定から行なうと実力が出るという感じ。沢シーズン前に、巻き結びによる登攀を確認、できることは非常に大切で、有意義でした。総合力が試される感じです。この場合のフリクションノットは、テープスリングでなく、ロープの方が効く。

・介助懸垂
 設定:救助者1名で、下降して救助

介助懸垂

 とてもややこしい。介助懸垂の覚え方として考えられるのは
 (1)安全に下降するには、オートブロックを併用した懸垂下降をするということ
 (2)ディスタンスブレーキで、二人行なっていたことを一人でするということ(振り分け救助
で一つ一つの操作を確実にすることです。基本的には、懸垂下降、振り分け救助、オートブロックです。これも、総合力が試されます。

・シュミレーション
 今回のお題:「4人パーティーで沢登りに行き、登山道から沢へ下降し、最初の滝を高巻きしている際に、セカンドが3番手に落石を落としてしまいました。落石は3番手の、右足に当たり、びっこを引くようになってしまい、撤退が決定となりました。登山道まで、怪我人を運ぶことが必要です。」もちろん仮定です。

 パーティーをSとFの二つに分け、同時に別の場所で
  事故者にザックの中に入ってもらって救助者が背負い(搬送法)、ディスタンスブレーキで斜面を下ろし、河原を歩き、ライジング(1/3)で上げる。
を、Sパーティーは搬送し、Fパーティーは無理して搬送を加えても危険なのでカット。

支点は一つでも(右写真を拡大)  

 単なるシミュレーションですが、訓練の際には使えると思っていた、ライジングのカウンターバランスが使えないと判明したり、個々の救助訓練では問題にならなかったことが、シミュレーションとして繋げただけで上手くいかないことがありました。ライジングの支点はきちんとした支点なら一つでも大丈夫。わずかな斜面でも、事故者と救助者を上げるのは一苦労。当初は、支点の所まで上げるつもりでしたが、ライジングで巻き結びが下から上まで上がるというのを3セットほどし、傾斜もあり背負う救助者にもずいぶん負担がかかり、登山道のように平らでなく上がるのも困難だったので、流れはつかんだので終了としました。
 いろいろ面倒なことが多く、訓練で事故を起こしては意味がないですが、それでもちょっとしたシュミレーションをしてみないと見えてこないこともあり、40分ぐらい(説明・準備の時間を除く)で、距離は短くても良いので、次回もやりましょ。説明・準備の時間を含めると1時間か。
 少し、時間を読み間違えました。シュミレーション後、時間が余ったので各自、30分ほど、各自内容おさらい。


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