地図読み 萱ダワ

 今年のGWどこに行こうか。山スキー、今年は、近場ではどこに行っても雪が少なそうだ。沢登り、ちょっと時期が早い。縦走・ハイキング、今でなくてもできる、今もっともすべきこと、最近ミスしまくっている地図読み、他の人と一緒に行くと、どこまで自分の力だか不明なので、地図読み単独行に行ってみよう。当初、信州峠から小川山までのルートを5月3,4日で行く予定でしたが、4日の天気が大荒れのため、5日のみとし、必要最小限のルートにしました。自分の中では、短かったけど濃密な有意義な時間で、レベルをワンランク落とした単独行は(自分にとって)必要です。
 今回は登山道のないルートです。点々と、県境のプレートがあります。当然ですが、信州峠を出てから戻るまで、一人の人間にも会いませんでした。鹿は、遠目に何回か見ました。GPSは使い方を再確認したかったのと、念のために持参。往路では電源を切り、復路で使用。今回、使用してみて、ようやく(今頃か?)GPSの使い方(まだ至らぬ所も)がわかりました。

2016年5月5日(前夜発)
単独行

今回の山行の大まかな位置図

5月5日
【天気】晴れ(風速5程度)
【コースタイム】5:00信州峠−8:23 フシノソリ−9:07/9:33 萱ダワ−10:10 フシノソリ−11:40 信州峠 

5:00 信州峠

 4日は18時半頃、八王子JCTを通過し、21時に須玉IC。渋滞はほとんど無かったですが、談合坂SAで夕食をとり、双葉SAで休憩をし、基本的にSAごとに休憩しないと、自分ダメなんです。信州峠までの道はもっと暗くて人気(ヒトケ)が無いかと思ったら、手前の黒森までは人気がある感じ。22時15分に信州峠に到着。8台停められるとのことで確かにその程度の広さ、先客なし。
 今回の目的に車中泊というのもあり、挑戦。「シートを倒せば寝れる空間が…」と思うも、微妙なところで寝れる空間が作れない。「夜行バスに比べたらましかも」と思い、運転席のシートを最大限倒してそこで一休み。「もう少し足が伸ばせると」とも思うが、とりあえず夜行バスよりはまし。信州峠を通過する車もほとんど無く、暴走族の襲来もなく、シュラフカバーとシュラフに潜り込み、雨具(上)を着て、翌朝3時くらいまで問題なく眠れました。
 4時起床。まだ暗い。お湯を沸かして、朝食。4時半にはヘッドランプが必要なくなる。入り口を探すも入り口は不明瞭。上の「5:00 信州峠」の写真の真ん中辺りに踏み跡があるので、そこを通過。膝くらいの笹藪なものの、踏み跡もあり、笹も乾いており、快適(前日降った雨が残っていて、濡れるのでは? と思っていたが、下草は乾いていた)。

5:13 県境のプレートはいたる所にありました

 それにしても、県境のプレートは参考になるけど、赤テープは信用できない。前回(2004年)、ここに来たときは、「無雪期の登山道のない尾根歩き」を、「赤テープ探し」だと思っていたけど、今思えばハズレ。見るべきなのは、地形と地形図。赤テープの優先度は非常に低い。

5:28 夕日アタリ  

 今回のルートの途中にある「夕日アタリ」「石ッコツ」という名前は、前回は知りませんでした。今回、行く前に調べたネットで名前を知り、念のため購入した最新のエアリアに名前がありました。これまで自分の持っていたエアリアには、今回のルートは地図の端で表示されていませんでしたが、最新のエアリアは表示範囲も広くなり、きちんと表示されていました(もちろん登山道の記載はありません)。下のトラックログでB地点まで問題なく来て、時間も余裕があるし、距離的にも遠くないし、夕日アタリまで足を伸ばす。夕日アタリへは往復10分程度で、踏み跡もあり、藪も濃くなく、ほとんど平らな道です。

6:13 早速やってしまった(B'の尾根)  尾根が一段低いところからでている(奥)(Bからの県境の尾根)(正解)
   

 A→B→Cと行って、Bに戻り一息してから出発。ルートが右側に向かっているのでおかしいと思いつつも、『「地図に表現されない」微地形ですぐ元に戻るだろう。』でどんどん下りてしまい、しかも赤テープも踏み跡もきちんとあった。しまいに沢が見えてきて、周囲を見渡すと、隣の尾根が正解に見え、点々とあった県境の標識もぱたっと現れなくなり、「間違えた」ことに気がつき、登り返し。元の場所に戻ったのが6時13分、「出血したものの、傷は浅い」という感じ。時間はたっぷりある、大丈夫だ。「早速やってしまった」の写真が示す尾根が、間違えた尾根(BからB'への)の写真です。欲を出して夕日アタリに行き、少し方向感覚が狂ったというのもあり得ます。目的の県境の尾根は一段下がったところから出ていて、B地点は意識しないとB'を誘導しているような地形です。
反省
(1)「右の尾根、左の尾根」という考え方は良くない。「西の尾根」というようにきちんと方位で考える、右、左で考えると、気がつくのが遅れる。
(2)北側から目的の尾根が出ているときは、北側を歩く。尾根の真ん中を歩いていると、一段下がったところから出る尾根に気がつかない。
(3)ピークからは、派生している尾根を、コンパスで確認

(後日談)
ずっと間違えた尾根はB’と思っていたが、ひょっとしてB”かもしれない。

6:22 山桜

 今回のルートは、皆、落葉樹で、この時期とても明るくて視界が広い(真夏など、樹木の葉に視界が遮られ、尾根が見えないことがある、地図読みに真夏は不向き)。下草も、膝くらいまであるのは信州峠からの出だしくらいで、ほとんどくるぶし以下です。歩いていて快適。

6:28 スミレ

 スミレがいたる所に咲いていました。そうですね、スミレではいけませんね。タチツボスミレでしょう。その上の写真も山桜ではいけませんね。

 
 6:40 石ッコツ  下のテープに石ッコツの文字あり (拡大) 

 

悪夢再び(D:石ッコツ)

 上のB地点での反省(1)〜(3)はその時の反省ではありません。後に思いついた内容です。ちなみにB地点のミスしたときの反省は
 (4)もっと山自体を見る
でした。地図ばかりみないで、山自体をちゃんと見ましょうということで、それは間違いではないですが、今から考えるとちょっと違う気がします。石ッコツ(D)手前で、地図を見れば次に通過するであろう1605m小ピークから始まる尾根が見えました。石ッコツに到着して、とりあえず、安堵し、休憩。石ッコツを出たしばらくは、その名が示すとおり、岩稜でした。尾根の上を歩けるような感じではなく、一段下を歩きつつも、(岩稜帯の尾根を外したらダメだの思い強すぎて)、思わず、岩稜帯が続く尾根の方に向かってしまいました。上の図でD’の尾根です。岩が連続するやせ尾根を10分ほど進み、何か違う。またもや、一段下から尾根が出ていてそれに気がつかなかったのでした。(1)〜(3)をきちんとしていれば防げたと思います。とはいえ、ちゃんと元の場所に事故も起こさずに戻り、まだ7:30、大丈夫だ。

 6:54 石ッコツを出たしばらくは、その名が示すとおり、岩稜 尾根の上は歩けないので、 一段下りた所からの尾根の写真  


ヤドリギかと思ったら違うようです 何かの病気?

 この写真は間違えたルートからの写真です  

再度、地図読みについて思ったことは
(5)全てを読もうとしても上手くいかない。読まねばいけないものに優先順位を作る 

 優先順位 1.尾根、谷、登山道:これを間違えたら、正しいルートに戻らなければなりません。その中でも特に重要なのが、分岐点を押さえること。分岐点さえ把握しておけば、間違えても間違えたことにすぐ気がつくことが可能。
  2.ピーク、コル、標高、尾根の勾配、曲がり:間違えない方が良いが、間違えたことに直接の問題はない。ただし、優先順位2の内容を間違えると、優先順位1の内容も間違える可能性が高いし、山行管理(日が暮れるまでに下山、ペース配分、事故が起きた時の位置を間違えて連絡は良くない)を考えると間違えるべきではない。
    3.ルート上のその他内容:周囲の尾根、植生、危険地帯、人工物等。危険地帯を除いて、優先順位2を把握するためには、3を理解した方が良い。

 今回登る前に、「ルートのイメージが把握できていないから、地図読みができないのでは」と考えていたけど、それはそれで微妙に違う気がする。少なくとも、イメージというと、自分は立体視だと考えてしまう傾向があり、立体視はできないよりはできた方が良いけど、その程度。それよりも、優先順位1でルートの骨格を理解し、ルートミスを犯さないようにするにはどうしたら良いか考えること。自分には、何か、メリハリをつけられずに、全体的につつがなく必要の無いところまで読もうとするキライがある。逆に、今回自分に、ルートミスをしそうな個所という視点が全くなかった。
 (少しずつ整理できていると思うが、前年の七ツ小屋裏沢で、自分が棒読みの地図読みをしていると、気がついている。なのに、また棒読み。自覚が足りなかったということです。修正力:あきらめず、一つ一つ解決していこう)
 「仮説、検証、修正、を繰り返す」それだけのこと。
 地図読みは、ある意味感覚で、ボルダリングでいうなら「落ちたら、落ちた理由を考えて再度登れば良い」だけのこと。「成功、失敗」そんなことはあまり考える必要はない。成功に思えても長い目で見れば、失敗ということもある。

 これまでずっと地図読みで大切なのは「集中力」で、「いかに集中力を切らさずに…」だと思っていて、そういう面もあるが、もっと大切なのは、どこできちっと地図を読むべきか事前にきちんとわかっていて、その場所に近づいたら周囲の状況を見て、地形図と照らし合わせて現状を判断すること。どこでギアを入れたら良いかわかっていたら、「集中力」はそこで入れれば良い。

7:30 県境のプレートもある大丈夫だ
こっちのルートが正しい

 「極力、地図を頭に入れて見ないように」でしたが、2回も間違えると、そうもいかなくなり、「わからなくなったら地図を出して確認」に変更。この後、大きなミスはナシ。

7:50 中央は横尾山、右奥が八ヶ岳


8:15 この頃、鹿の角が落ちていたので拾う

 8:23 フシノソリ  


今度は間違えませんでした。
萱ダワ(F)手前に、送電線

 上のトラックログのGでルートは南南西に折れ、すぐに南東に向かいます。今度は間違えませんでしたが、フシノソリからGを目指すと、少しでも意識があれば、隣に小高い小ピークが見えます。Gに着くとなぜか、「山梨県境一周記念」というプレートがあり左右に矢印があるのですが、左の矢印は、下写真「左の矢印の尾根」になり、この尾根を左(北東)に進むと正規ルートからどんどん外れていきます。ほんの少し、北東に進んで、北西に進むなら問題ない。そういうことか。

 
8:45  左写真拡大  左の矢印の尾根

 目的地である萱ダワが近づいてきました。上を見上げると送電線と鉄塔が見えます。地図にも、萱ダワの手前に送電線が見えます。

9:00 送電線と鉄塔


9:01 瑞垣山


9:07 萱ダワ 萱ダワからの林道 水をくもうと思えばくめます(正式な水場ではない) 

9:07 萱ダワ到着。萱ダワからは、北側に林道が出ていて、林道を5分ほど進むと、正式な水場ではないですが水を汲める地点があります。自己責任。

今回の山行のトラックログ(復路(往路はGPSの電源を入れず))
A:信州峠→B→C:夕日アタリ→B→D:石ッコツ→E:フシノソリ→F:萱ダワ→E→D→B→A

復路はGPSの使い方を確認しながらのハイクとなりました。

GPSの使い方(基本のキ)
まず、自分の持っていったGPSは、eTrex 20Jで、この機種についての内容になります。他の機種では解決している内容でしたら、ごめんなさい。
別売の詳細地図をインストールしておけば画面に地図が表示されますが

GPS(eTrex 20J) 左画面拡大

上のような表示が現れます。確かに、現在地と地図が表示されますが、わけがわかりません。もっと詳細な地図をということで、クリックスティック(上の写真「GPS(eTrex 20J)」で赤丸)と、ズームインボタン(上の写真「GPS(eTrex 20J)」で黄のボタン、上がアウトで、下がイン)を押して
(クリックスティックで現在地が画面の真ん中になるようにし、マップポインター(白矢印)を中央に持っていったところで、ズームアウト・インボタンを押せば、拡大・縮小可能

念のため 現在地が画面の端にあった状態で、ズームインを押せば現在地は、画面外になります。
現在地を画面の真ん中に持っていって、ズームインを押してもマップポインターが中央に来ていなければ、現在地は、ほぼ画面外になります。ズームイン(アウト)は、マップポインターの示した位置が上下左右の中央になるように画面が移動します。)

(後日談)マップポインターを現在地に合わせて、ズームイン(アウト)を押せば良いのでは(いちいち両方を真ん中に持っていくのはとても面倒)

 ズームイン後(縮尺120m)  参考のために

 今回の使用状況では、「縮尺120m」が一番地形を読みやすかったです。
 県境の近くにいることはわかりますし、1725mの近くにいることはわかりますが、画面も小さいし地名が出てこないので(バリエーションで使う地名まで事前の登録なしに表示されることは、ほぼありえない)、進むべきルートのどこかはほとんど? 事前に、頭に地形図が入っていなければ、GPSの画面を見ても、???です。
(後日談:GPSの画像を見ただけでは位置が特定しづらいことを示すために、上の「ズームイン後(縮尺120m)」という画像を示したが、送電線、1725m小ピーク、県境、の3つを考えればずいぶんと絞り込める。例として、示した位置を間違えた。。)
 →GPSは事前にルートやポイントを、GPSに登録しておいて、それに対して自分が近くにいるか、遠くにいるか、判断するのなら、便利。
 「迷った→GPS」というのは手の一つですが、事前の準備がないと、さらに混乱するだけです。

GPSを、ナビのために(記録用なら問題ない)有効に利用するには(1.バッテリー、2.周囲の地形の予習 もしくは 事前のGPSへのルートやポイントの登録)が必要なのでした。バリエーションルートで忙しくて、お守りのために、準備をせずにGPSを持っていっても、ナビとしては役に立たないということです。地図がダウンロードされていても、軽量化のためほとんどGPSの画面は小さいですし、ズームイン・アウトの操作で間違えると混乱しますし、お守りとして役に立ちません。
※深い谷では、GPSの衛生が捕捉できないので、位置が特定できないことがあります。
 ここまで理解するのに時間がかかってしまった。

さらに後日談
バリエーションルートのナビで
 GPSの特性を一番活かすには、事前に「ルートとポイント」をカシミール等でGPSに登録(ダウンロード)。次回、確認します。
地図のダウンロードはあまり意味が無い、それよりも必要なのは「(進むルートの)ルートとポイント」のダウンロード。

9:47 復路はGPSでルートを確認しながら進む


10:00 G地点にあった大木


10:20 1600m小ピーク(H)を通過後

 復路は地形図を見ずに、GPSとにらめっこをしながら、進みましたが、1600m小ピーク(H)通過後、GPS画面で県境上にいるものの、「(GPSの)現在地アイコンの向き」が猫目のように変わり、尾根も広いので???、自分も蛇行してしまいました。GPSにルート設定がされていない場合(今回)の、「(GPSの)現在地アイコンの向き」は何を意味するのだろう。ここまでは問題なかったものの、(GPSだけでなく)やはり地形図も見なければ、ということで、1600m小ピーク通過後は、GPSと地形図を併用。すぐ後の、1605mピークは巻けるので巻きました。

10:43 巻いた小ピークを振り返る

復路を進んでいて思ったのは、往路で登ったから今度は下りだと思ったら、アップダウンが激しく、復路でも登ってばかりいる気がした。GPSのデータで、断面図を取得する(下図)と、復路はやはり下りでした。このルートは進行方向が一定でなく、登ったと思ったら、下って、尾根は一段下がったところから出ていて(沢の場合は、水が流れているので伏流にでもならない限り、離れたところから流れるというのはありえない)、藪も濃くなく、視界も明るい、自分の中では、地図読みおすすめのコースです。

今回のルートの断面図(復路)


11:39 道路が見えた、ゴールは近い


11:40 信州峠の駐車場(ゴール)
 出発の時は、車が1台もなかったのに

 問題なく、ゴール。信州峠では、自転車乗りの方が2名と、山菜採りのようなおじさんが2名いて、自分のザックから出ていた鹿の角を発見され、「落ちていたのを拾いました」というと、うらやましがられる。
 増富温泉に立ち寄り、帰宅。

戻る