雪山救助訓練 2016

2016年1月23-24日

 教えるのは難しい。どうやったら穏やかに話せるのか、「え?」という反応があると、焦ってしまう。焦るとさらに、伝わらなくなる。おそらくは
 事前の準備と
 慣れること
だと思う。会社の通勤時間ぐらいは、特になければ、ぼーっとしていたいのだが、そうも行かないか。余っている時間は会社の通勤時間しかない。

今回の山行の大まかな位置(赤丸)

L:S木2さん、(講師)F川さん、M浦さん、メンバー:自分、(土のみ)M上さん、MMさん、(日のみ)I井さん、Y田さん

1月23日
天気:曇り時々晴れ
【コースタイム】7:50 土合駅−8:00/8:50 谷川岳ロープウェイ(ベースプラザ)−9:00 谷川岳天神平−9:45 天神尾根訓練場

7:50 土合駅の雪が少ない  

 この時期の土合駅といえば、雪の壁ができている感じですが、今回は申し訳程度に雪がある感じでした。

9:00 谷川岳ロープウェーを下りた風景   

 ロープウェーを下りた地点から、「登山者はリフトに〜」あるようで、たいした距離でもないので天神尾根へシール登降です。さてさて、シール登降の最中、右足が突然滑降モードになってしまった。クライミングサポートを使っていて、下手な足の下ろし方だと思うが…。書いていて気がついた、ひょっとして、慣れないTLTなのでかかとのビンディングを反時計回りに回したかもしれない。反時計回りだと、簡単に滑降モードになる。
 その他、「引き抜きのキックターン」の復習が必要でした。以前だと、自分のテレマークビンディングではできない使用だったので仕方がないが

9:40 尾根に上がって

・V字コンベアによる掘り出し訓練
 「今回は非常にスピーディーに雪が掘れた」というのは事実ですけど、それは締まっていない雪だったからです。

 A〜B:スコップ1個分の距離
A〜C:スコップ2個分の距離
 今回、右側のタイプで実施できたのは良かった

 今回、救助者の距離をきちんと把握し、右図右側のタイプで行えたのは良かった。だけど、どうしても、左図で、Bの右、Cの上部に雪があまり、気がつくと、Cが前進していて、以前の右図左側になっていたと思う。それでも2m強の積雪があり、訓練としてやるべきことはやったと思う。
 後になって思いついたのですが、4分の時間の半分の2分過ぎた所でBの位置にいる救助者が埋没者に向かってVの左端から、右端に移動すれば、問題は解決する。Cもそれに合わせて右端から、左端に移動すれば特に問題ないと思う。Bは左端でなければならない理由はおそらくないと思う。

 あるメーカーのビーコンの説明書に「埋没者の掘り出し」として、V字コンベアがでているのですが、わからないのは先頭の救助者が「後ろ向き?」なこと。説明書にも雪の塊の切り込み方として、『「V」字の開放端に向かって立ち〜」』とあり、そうなるとどうしてもゾンデに対して「後ろ向き」になる。「雪を掘るのではなくて、切り込んでブロックとして排出」良く言われることです。基本的に、ゾンデに対して前向きだけど、切り出すときだけ、後ろ向きになるということなのかな。仲間が雪崩に埋まってとなったら、どうしたって前向きで掘る(いやいや、掘るのは良くない)、切り出すとなると「後ろ向き」になった方が排出しやすい面もある。「掘る」のではなくて、切り出して下に排出するので、後ろ向きの方が良い?
 最新型は、このタイプ?
 それともこれは旧タイプ?
 それとも自分の読解力の問題、もしくは未だに「切り出す」でなくて「掘る」をしているので違和感を感じている。

一通りV字コンベアを確認した後、最後に後ろ向きでやってみたが、斜面に向かって後ろ向きで切り出すということに慣れていないためか、感想としては「これは違う」でした。

・各自のビーコン性能の把握
 発信ビーコンを置き方を変えて発信し、各自のビーコンの受信性能を把握。昨年より良い値が出たという意見が多数。全国的に雪が少なく、仕方ないのですが、この「ビーコン性能の把握」は一直線で見渡せる雪原で行なわないと、だいぶ誤差が出る気がする。スタート地点からゴール地点が、視認できるべき。
 後日談:携帯電話の影響で誤差が出た? 頭の片隅にありながら忘れていたのが、携帯電話によるビーコンへの影響。後のガイドツアーにて、ビーコンに影響でるから携帯電話のスイッチは切っておくように、写真を携帯で撮りたいときも、電波の出ない機内モードにするようにと言われ、「そういえば」でした。

11:10 半身埋没

 話しは埋没体験に、でも埋没体験を行なうとなると時間と準備も必要なので、「それでは半身埋没を」

半身埋没のついでに、ゾンデの感触確認

 半身埋没のついでにゾンデの感触確認を。埋没者の体にヒットした場合、固いチーズを突き刺した感じというのが一番わかりやすい表現でしょうか、でもブーツに当たったら、別の感触になりますね。

11:50 各自持参のツエルトを利用して、風雪を避けて昼食

 自分の持参の軽量ツエルトは、入り口も狭くスキー靴では入りづらく、泊まれないことはないですが、上写真のようにかぶることもできず、改めて、「雪山には不向きかもしれない」でした。いや、たぶん抜け道はある。もうちょっといろいろ試行錯誤すれば良かった。とはいえ、実際にツエルトを使うのは本当に切羽詰まった時だと思うので、今回のように、体験ツエルトの時間をとってくれるのはありがたいです。「家でやると、できたような気になってしまう」というのはあります。ゲレンデスキーに行ったときに、スキー場から離れたところでちょっと設営してみようか。
 ツエルト設営も忘れた頃にやって、またやって、忘れて、というのはあります。少なくとも、軽量ツエルトは
 ・かぶりづらい
 ・スキー靴では入りづらい、入ったとしても変に引っかかり身動きがとりづらい。
というのは否めない。「づらい」だけで、抜け道はあるかもしれません。
その他
 ・支点となる木(2本)、細引き(長めのスリングではおそらく長さが足りない)があれば、ツエルトの頂点を固定できる。今回、持参した長めスリングは長さが足りなかった。「支点の木」は泊まるにはありですが、ちょっと休憩には手間がかかりすぎる。ちょっと休憩なら、かぶるか下写真のようにスキー板を使って設営が王道だと思います。

 「ツエルトは、トップに小さなスリングをつけておくと簡単に設営できる」、なるほど、風雪が強い場合でも休憩ができるということです。

 右が谷川岳  

13:30 埋没ビーコンの探索

 いつものビーコン探索ですが、改めて
 「ビーコンを速く振らない」「クロス十時は、十時をきちんと」
でした。

14:10

・雪洞作り

15:05

 雪のブロックは、雪洞の中から内側に傾くように積む。当初は雪洞作成でしたが、途中で木の枝が出てきたりして掘り進めるのが厄介になり、途中で半雪洞に変更。ブルーシート利用による雪ブロックの排出は、斜度が足らない(20〜25度)のか、あまり上手くいかず。その他、雪質もありますが、今回、ブロックを積もうと思っても崩れ上手く積めず、途中、自分が????になってしまう。

16:20

 歩行時には脛のバックルを外すタイプのスキー靴(最近購入)ですが、バックルの部分までスパッツをかけなかったら、ずいぶんと靴の中に雪が入ってしまった。
 雪洞内ではテントシューズに履き替え、睡眠時には、エアマットを敷き(テントマットも敷いてある)、シュラフに入ったものの、小さめのエアマットなので明け方には足がエアマットからはみ出し、うとうとしてエアマットを直すのが遅れて、足がずいぶんと冷えてしまった。その結果、翌朝足がむくみ、薄めの靴下でやっとこスキー靴が入る状態だった。翌日はバックルの部分までスパッツをかけ、雪の侵入は防げた。

1月24日
天気:朝のうち晴れ、雪
【コースタイム】8:00 訓練開始−14:25 訓練終了、14:55 下山−15:15 天神平(ロープウェイ)−15:25/16:05 谷川岳ロープウェイ(ベースプラザ) 

朝の半雪洞    

 雪の侵入はなく、半雪洞として、問題ありませんでした。

8:00 朝の谷川岳

 格好良く、谷川岳が見えたのも、朝のみで、すぐ天気は雪に。

・雪面観察

弱層

・弱層テスト

8:30 コンプレッションテスト

 弱層テストというのは、確かにやっても明確な答えは出ない。そんなことを、最近はずっと思っていた。だけど、天気予報のように考えたら、確かに天気予報は外れることもあるが、天気予報を知ろうとしないのは、ナンセンス。風、微地形の影響があり、どんなにやっても弱層テスト100%正解はありえないが、天気予報のように知っておいた方が良いかもしれない。あとは、雪崩のメカニズムの理解として、弱層テストは行なうべき(それはそれで次元が違う内容)。
 とはいえ、天気予報はプロの人の手が多く入るので、現地で自ら判断するとなると「観天望気」になる。それはそれで必要不可欠ですが

 9:20 ルッチブロックテスト    

 一番、右の写真が示すように、表層から40cm辺りに層があり、切れ込みを入れただけではなんでもありませんでしたが、圧を加えると、下の層とはきれいに分かれました。

9:50 埋没ビーコンの探索(斜面)
 

 斜面上からビーコンサーチをし、最小の値が出たところで、鉛直にビーコンを刺す。斜面に垂直なように、鉛直ビーコンの地点に刺したら、ほぼヒット(自分のビーコン)。arubaのNEOは、古いビーコンへの対応は悪いが、それ以外はかなりできるようです。

・ビーコンチエック
 山行出発前に行なうビーコンチエックの確認。多少、流派はあるようですが、とりあえずは
 1.リーダーが発信ビーコンにして、他の参加者は受信ビーコン、リーダーが各参加者の周りを回り、受信を確認。
 2.1の次にリーダーが進行方向に進んだところで、受信モード、他の参加者は一人ずつリーダーの前を通り過ぎてゆく。このことで、発信を確認。
 3.2を確認後、リーダーが発信モードにすれば、全員が発信モードになり、ビーコンの設定漏れを防ぐことができる。

・シュミレーション
 班を二つに分け、片方の班は、発信ビーコンを埋め、もう片方の班は、埋められた発信ビーコンを、プローブをたたんだところから班全員でビーコンを用いて探索。今回は、埋没人形は使わず。

 M浦さんのアナログビーコンを発信ビーコンにしたら、以前にも起こりましたが、自分も含め、アナログビーコンをほとんど受信できない現象が発生。最近の機種は、微妙に劣化したアナログビーコンには反応が悪いのです(ビーコンチエックの時は問題なかった)。アナログビーコンは、もう止めた方が良いと思います。

 とりあえずは深くビーコンを埋めれば、捜索としていろいろあり、訓練になります。
 深く埋まった場合、変にクロスサーチにこだわらず、
 (1)クロスサーチ→(2)ゾンデで探索→反応がない→(3)クロスサーチの部分をスコップで掘る→(1)に戻る
を繰り返すのが一番速く埋めたビーコンを発見できます。
 別解)(2)ゾンデで探索→反応がない→(3)ゾンデを同心円状に広げていく、こっちの方が一般解かもしれません。
 今回、埋没人形を使いませんでしたが、実際はやはり人が埋まっているので、ゾンデに目盛りがきちんと表示されている(危険ラインで色が変わる)タイプをおすすめします。危険ラインに近づいたら、掘るのを慎重にして、人体をスコップで傷つけないようにする。

下山


訓練場所のおおよその位置(赤丸)


戻る