雪山救助訓練2014

2014年2月1−2日(前夜発)

L:N井さん、講師:M浦さん、メンバー:I井さん、F浦さん、K元さん、S野さん、Y田さん、W辺さん、自分

 自分が講師になったときのことを思い出す。あの時はいろんなことを教わって、ただでさえ口下手だというのに、「あれも、これもきちんと伝えねば」で、責任感の塊となり、教え方も一方的だったと思う。あの時、必死になって教えようとしたことは、救助訓練に未だに残っていることもあれば、忘れ去られているものもある。会を長く続けていて何度も救助訓練をして、毎年出て、「今回の講師さんは、話し方も穏やかだし、わかりやすいね、無理していないよ」と感じる。
 「教えることは、教わること」で、「教えることによって理解が深まる」、会にフィードバックすべき、確かにそうです。講習会で教わったことを、すぐ教えろと言われても経験の裏付けがないので、薄っぺらい内容になる。

1月31日
【コースタイム】21:45 所沢IC−23:35/0:10 塩沢SA

赤丸地点(今回、救助訓練の行われた大まかな位置)


2月1日
【天気】晴れ
【コースタイム】0:35/0:40 清水−1:30 威守松小屋

トレースは明瞭ではありませんが、おおよそありました

 威守松小屋周辺で、限られた時間の中で救助訓練をするとなると、清水から夜、暗い道を歩くのが望ましいです。リーダーのホーム小屋であり、何度も行っているようなので、おそらくは問題ありませんが、問題は、天気が悪いときです。天気が悪い場合への準備もし、向かったところ、トレースもおおよそあり、問題なく威守松小屋に着きました。夜スキーを使って歩くのは初めてで、月も出ておらず、当然街灯もなかったですが、ヘッドランプの明るさでずいぶん周囲が見渡せ、暗闇の中に白い雪面、雪をかぶった木々の風景は、(ちょっと違うかもしれませんが)以前挑戦したナイトダイビングの記憶もよみがえらせ、行ってみて良かったです。
 確かに、夜間行動は危険ですが、時(天候が荒れていない)を選び、場所(行程が短く、行き慣れた場所)を選べば、楽しめるものだと思います。ただ、今回成功したからと言って、「夜間のスキー登山、解禁」とまではとても行かず、用心に用心を重ねて、時と場所を選んで、だと思います。

時と場所を選べば、夜でも

1:30 威守松小屋

小屋に入って、暖炉に火をつける

 威守松小屋の名前を聞いたとき(今回山行の遙か前)、もっとこじんまりした小屋かと思いました。今回山行前に2階まであることを知り、実際に行き、とても広くて豊かな空間でした。

9:00小屋を出発

9:00 小屋出発

9:20 今回の訓練となる場所

9:25−16:00 救助訓練 
午前の部
 ・雪面の観察

9:26 雪面の観察

 雪面から、20cmくらいのところに弱層、積雪量は2m程度。地面から上1mは安定しており、1月中旬まで安定して雪が降ったためと思います。

9:30 断面ができました


訓練地点からの眺め

 ・弱層テスト(ハンドテスト、コンプレッションテスト)

9:50 コンプレッションテスト

 自分も挑戦、コンプレッションの側面の雪を抜く方法が、自分の中であやふやだった。救助訓練は今回で確か6回目になる。基本的に真新しいことはほとんどなく、ある意味では自分がどういったことを忘れやすいか、自分の癖みたいなことを知り、それに対処、という比重が今後、多くなっていくかもしれません。

雪面から20cm位の所に
 顕著な層あり


 ・ビーコンチエック
 様々なことで、ずいぶん気が弱くなることが多い。「戦う前に、負けている」自分がいる。言葉の縄跳びの中に上手く入れず、悔しい思いをする。他のみんなは、間髪入れずに話していく。タイミングが合わず、我慢、我慢、なのですが、そのくせ、「質問がある人」で話をふられて話すと、自分は「重箱の隅をつつく」話をしている。

10:40 ビーコンチエック

 ・ビーコン捜索練習(1)
 今回、新しくビーコンを購入しました、ARVAのNEOです。
広告より
 「最も受信距離が長くなるカップリングでの受信距離は56m。
 現行のデジタル3アンテナ機種の中では最高値ではないもののトップクラス。
 最も受信距離が短くなるカップリングでの受信距離は約40m。」
 受信距離が広い、トリプルアンテナビーコンが欲しかったので、これだと思い購入しました。

 前日に、事前準備もきちんと行い、装着方法も、肩にかけるストラップの装着方法もきちんと確認しました。

(前日)
黒いストラップについて、電源を入れた状態(電源を入れるスイッチが黒いストラップの端にある)にするとしっくりくるが、
電源を入れる前が非常にだらしない。黒いストラップの行き場がない。仕方なく、購入した店にお電話すると

なんと、ヒューマンエラーを防ぐために、装着したときにはもう自動に電源が入る設定。
つまりは、作った会社で、装着するとき=ビーコンの電源が入っているしか想定しない。→電源を入れる前が非常にだらしない。
そいうことなのでした。とはいえ、その後気がついたのですが、小さなカラビナを電源スイッチにつければ解決することなのでした。

 自分のこれまで持っていたトラッカーを使い、きちんと受信できることも確認しました。

ARVAのNEO(右が本体、左はケース)

 当日になり、ビーコン練習の時間になって、「さあて、どの程度の受信距離から捕らえられるか」でした。何かがおかしいです。最初は、「急いで進みすぎたため計算に時間がかかっているだけなのか」とも思いましたが、たまに思い出したかのように電波を受信したかと思うと、すぐに表示が消えてしまいます。埋められていたビーコンが古いビーコン(オルトボックスm2)であり、前日、昨年の救助訓練を復習していたら、Y口さんが「古いアナログビーコンとの相性〜」について書いていたので、取り急ぎ、原因はそれではないかと思う。

 ・ゾンデ−連
 今回、ゾンデは地面まで突き刺せることができました。N井さんの話によれば、「地面は田んぼ」とのことで、「地面が柔らく、人体もこんな感じ、いや、もう少し柔らかい」。

12:00 午前の部、終了


通ってきた道


午後の部
 ・埋没体験(半身、全身)

 
13:12  半身埋没  

 半身埋没は、顔だけは出せるような形での埋没体験です。少しの雪の量でも、体を動かすのはかなり大変です。

13:22 全身埋没 完全に埋められたところ(ホースで呼吸できるようになってます)

 全身埋没は、ホースを使って呼吸、および意思疎通の場を確保した上で、全身を雪で埋めます。その後、ゾンデの感触確認をしました。

13:30 お役目、ご苦労様でした


 
 13:33    13:35

 K元さんが、ホース付きのジャケットを持っているとのことで、軽く埋没体験。

 ・ビーコン捜索練習(2)
 二つの班に分かれて、ビーコン捜索練習です。先ほどは、埋められたビーコンは1台でしたが今度は2台です。ところが、1台(PIEPS 457)は確実に反応するものの、もう一台(オルトボックスm2)が、ほとんど反応しません。他の人は、問題なく受信しているのに、なぜに自分だけ。
 念のため、自分のビーコンで他のすべての方のビーコンを受信できるかチェック、
 トラッカー3名、マムート(エレメントバリフォックス)3名、マムートOPTO3000)1名、オルトボックスF1フォーカス1名
 問題なく、受信できました。

救助訓練から帰宅後、何度も、購入したショップに向かったが、こちらも最初から、受信ビーコン(ARVAのNEO)と発信ビーコン(オルトボックスm2)の両方を提出していれば良かった。発信ビーコンは、自分のモノではないので、いろいろと制約があるのですが

ショップとのやりとりを通じてわかったことは

ビーコンの周波数について
 ビーコンの周波数は1986年に457KHzで国際規格を採用した。さらに1997年に 457KHzで±100Hzの範囲内に送信しなければならないことが決まり、さらに 2001年には、許容範囲は±80Hzと、さらに狭められた。現在、ビーコンがその機能を最大限に発揮するためには最大±30Hzの範囲内にあるべきと言われている。店内にあるビーコンを計測すると、ほぼ0〜10Hzの範囲だったとのことです。

 オルトボックスm2のように、10年ぐらい経っているビーコンは、半導体の劣化により457KHzのチューニングがずれることがある。2001年からしばらくの間は、±80Hzという範囲が浸透していないこともあり、ビーコンを作る会社でも周波数の範囲を多めにとっていた。しかし、最近になると、さすがに±80Hzという範囲が浸透し、±80Hzの範囲外まで受信するよりも、面積(受信距離)の点で範囲を多くとる機種が出てきた。

 古いアナログセラミック振動子を使用したビーコンは2001年の基準に則っていないものがある。特に、温度が下がると周波数の範囲が悪化する。ジャケット内側の暖かいビーコンは、457KHzの近くで送信できるけども、それが冷えたとき、±80Hzの範囲を超えてしまうことがある。

今回の現象
 問題のあったビーコン(以降、旧ビーコン)、交換として新品のビーコンを(以降新ビーコン)を用意。訓練に使ったオルトボックスm2を発信モードにし、新ビーコンと旧ビーコンを受信モードにしたところ、旧ビーコンはやっぱり、思い出したかのようにしか、たまに受信できず、新ビーコンはたまに途切れることはあるものの、ほぼストレスなく、受信できました。 

 PiepsのDSPプロ(および黄色Pieps DSPバージョン3.1で始まるPiepsソフトウエア)には、他のビーコンの周波数を測定する機能を持っている。
 方法:捜索モード時にオプションボタンを押す(あくまで簡易的なもので計測は10Hz単位)。
 問題のオルトボックスm2の周波数計測の結果(右写真)
 気温20度:50Hz基準よりずれている
 気温5度:70Hz基準よりずれている
 となり、気温5度で問題の±80Hzに近いものの、この段階では基準はクリアーしている。
 トレーニング等でビーコンを身体から離して雪の中に埋めたりするとズレが80Hzを超えてしまう可能性もありますが、実際の行動中ではジャケットの内側であたためられているのでこの点は問題にはならないと思われます。

まとめ
 今回、発信ビーコンであるオルトボックスm2は、気温5度において、-70Hzと、基準はクリアーしているので、問題があったのは受信ビーコンであるARVA NEO(旧ビーコン)でしたが、最大限に発揮するための範囲±30Hzには届いておらず、使用を控えるか、メンテナンスを検討すべき。

(追加)「マムートのビーコンは、±80Hzよりも、範囲を多くとれるように設計されてある(180〜200Hz)。ただし、これは公式発表ではなくて、そのような範囲外をめざしているというような、多少あやふやな内容らしい。また、 マムートのビーコンは、ビーコンチエックの機能を利用して、±80Hzの範囲にあるか確認できる(これは正規の使い方でなく、ビーコンチエックの機能を逆手にとっただけで、あくまでも参考程度)。」ということもわかりましたが、参考の域を出ないと思うので、ここに示す程度にします。
 方法:設定を「グループテスト(キョリ1m以内に)」のモードにし、発信ビーコンを1m以内に置き、受信されれば規格内の発信(±80の範囲)にある。
 規格内の範囲にあるか確認できるだけで、数値は出ない。
 問題のオルトボックスm2の結果:反応なし
 


 ・スノーマウント作成

 
14:47 ザックを集めます その上にツエルトをかけます  ツエルトの上に雪をかけていきます
 
出入り口だけ雪を除いておきます かけた雪を固めた後、
ザックを入り口から取り出します
15:00  スノーマウント完成

 雪が少ないときにも作れる緊急用シェルター、誤解してましたが一時的なビバークのためなようです。ツエルトと(設営時には必要な)ザックのみでできるというのは便利か。

 ・雪洞作成

雪洞作成

 とりあえず掘っていたら、隣のF浦さん・S野さん雪洞に近く、それならつなげようと、途中で合体する雪洞を作りました。

 全部で3つの雪洞  15:51 ツエルトを入り口にかけて

 もっと時間がかかったと思っていたら、1時間程度でずいぶん立派な雪洞ができました。ですが、今回はすぐ近くに立派な小屋があるので、そちらに泊まります。

 救助訓練終了後、時間が余っているので、Y田さん、W辺さん、F浦さん、N井さん、自分らは、シールを使って、登り、滑降(小1時間ほど)。自分の中で心技体、ばらばらで、上手く滑れなかった。

宴会・夕食の準備

2月2日
【天気】曇り一時雨
8:00−11:45 救助訓練
 ・捜索シミュレーション、前日の弱層テストのおさらい

ビーコン捜索練習、訓練用の埋没人形を使って、掘り出して移動するまで

 弱層テストをしたら、上から20cmのところで、前日よりスパッと切れました。
 この動画は、あくまでも訓練の一部を切り取ったもので、上手くいっていないときが、たまたま録画されてしまった、というのもあります。また、Windows8のパソコンを購入したら、これまで簡単に編集できたWindows Live movie makerが使えなくなっていました。編集せずに、そのままアップです。

 この日も、2台の内、1台は難なく捕らえられたものの、もう一台(オルトボックスm2)が、思い出したかのようにしか出てこない。
 救助訓練で、欠点を見つけられるというのはある意味では幸せなこと。これが、実際の救助現場とかでなったら、本当にどうしようもない。自分のビーコンの特性を知る、救助訓練はそういう場でもある。
 ということも思うけども、やっぱり悔しい。

雪山救助訓練での、埋没人形を見つけてから、外に出すまでです。

 埋没人形は、上下一体となったものでないと、上と下でばらばらになりやすいです。今回、リーダー持参のつなぎが役に立ちました。頭部は風船で、「何で」とも思いましたが、手荒に頭部を扱うと割れるべきなのかなと、後々思いました。

雪山救助訓練(実際の人で、半身埋没から、搬送までです)


 ・雪上搬送
 雪上搬送は、自分が、怪我人役(搬送される)をつとめました。安定していて、不安になるようなことはなかったですが、後から考えて気になったのは、「持ち上げるのではなく、引きづるのでは」ということ。それ以外は、落ちついて任せられました。

埋没人形と今回のメンバーと 威守松小屋の前で


クロカンで参加のM浦さん


13:05 威守松小屋出発

赤丸地点(今回、救助訓練の行われた大まかな位置)


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