2013年 雪山救助訓練

 鈴蘭山の会に入会したころは、救助訓練に参加すると、教わることばかりだった。でも、さすがに、今は、良い意味でも悪い意味でも、教わることは少なくなってきた。自分が救助訓練の講師担当になった時、自分の教わったこと全てをきちんと他人に伝えねばと思った。そのために事前の打ち合わせ・救助訓練は、かなりギスギスしたものになってしまったと思う。あそこまで「きちんと他人に伝えようとする」必要はなかったのか。それとも、もちろん「きちんと他人に伝える」べきですが、伝え方が悪かったのか。もう、(逆転することもありますが概ね)自分は教わる立場でなく、教える立場になって、救助訓練をしている。
 もし、自分が他人より良い救助の方法を知っていて、現場で実際に起きた場合に「他人より良い方法」を教えるべきか? それもケースバイケースで、自分が他人より良いと思うのは思い込みかもしれず、その人には慣れている方法の方が良いか? など考えたが、「救助訓練では、いろいろ議論し合って、事故が起きたときには最良の方法で行う」というのが、最良の方法かもしれない。試行錯誤あるのみ。

2013年2月2−3日(前夜発)

今回の山行の大まかな位置


L:U村さん、講師:M・Hさん、F川さん(半雪洞)、メンバー:K元さん、Y和さん、A部さん、S木さん、F浦さん、S野さん、N片さん、Y口さん、N井さん、自分、(3日朝まで)M上さん
(訓練P:F川、K元、A部、S木、M上、自分
宿泊P:F川、A部、自分
車:F川、S木、F浦、自分)

2月1日
22:15 荻窪駅−24:00 水上IC
 待っている人がいるのだから、交通状態の混乱は仕方ないですが、時間に間に合わせるべきでした(交通状態が悪くなければ自分は22時4分に到着、集合時間より4分の遅れ)。

2月2日
【天気】曇りのち雨
【コースタイム】0:15/7:30 水上IC近くの道の駅−7:50/8:10 土合山の家(脇の駐車場を借りる)−8:20 白毛門登山口駐車場付近の雪原
 テント設営等

8:40 雪山救助訓練 開始
 1班と、2班に分かれて、1班はM上さんが埋没体験、2班はN片さんが埋没体験です。

9:15 埋没体験(1)

 雪に埋まったら、どれだけ体が動かせないか、雪の中でどれくらい声が通るか(以上埋まる人)。ゾンデの感触確認(埋める人)等が埋没体験で確認できますが、個人的には、リスクの割には得るものが少ない気がするので、あまり好きではないです。
(後日談)雪に埋まった人を掘り起こす訓練ができるのは、埋没体験くらいで、他にはない。そこにもっと注目すれば、実りの大きいものになるかもしれません。

埋没体験(2)

 下にマットを引き、その上に「埋没体験者」が(手で口周りの空間を確保して)うつぶせに横たわる。「埋没体験(2)」の写真が示すように、埋没体験者には、掃除機用のホースが(1)声を外の人に伝える(2)呼吸をする、ために与えられる。そのうえで埋没体験者に雪をかぶせていく。

埋没体験(3)

 雪を徐々に埋めていって

9:20 埋没体験(4)

 完全に埋没体験者を埋めた後で、「埋めた人」は、ゾンデ棒で、埋没体験者に当たった時の感触を確認。訓練なので、この時は(埋没体験者の)頭でなく、足側にゾンデを当てるようにする。ゾンデを当てた、自分の感想としては、「(大げさに言うと)チーズ状の妙に柔らかい」が感触確認でしょうか。

埋没体験(5)

 ゾンデの感触確認を終えて、埋まった人を傷つけないように掘り出します。

9:35 埋没体験(6)

 急に外部にさらすと、埋まっている人が寒くなるため、雪が数センチかぶさった状態から、ツエルト等で保温してから、最後の雪を除きます。

10:00 埋没体験終了

ビーコン捜索と弱層テスト
 まず、班ごとに出発前のビーコンチエックをしてからです。リーダーが発信モードで、他の人が受信モードにし、各自、受信モードがきちんとできるかチエック、チエック完了後、リーダーが受信モード、他の人が発信モードにし、各自発信できるか確認したうえで、リーダーも発信モードにする。

 一人一人ずつ、ビーコン捜索です。班の中で順番を決め、順番の中で、前の人が発信ビーコンを雪の中に埋めて、次の人がビーコン捜索。さらに次の人は、待機。それ以降の人は、空いた時間を利用して弱層テストを各自行う。
 自分は5番手くらいで、ビーコン捜索にまだまだ時間があったので、弱層テストに向かいました。

11:05 コンプレッションテスト(自分)

コンプレッションテスト
 作る四角柱は、幅30cm、奥行き30cm、深さ30cm
 (自分の場合)肩からでも反応せず、仕方なく引っ張ると、70cmのところで抵抗なく動きました。傾斜が緩すぎたかもしれません。

スノーソー(ケース含む)を刺したあたりに
明瞭な雪の層あり

 コンプレッションテストを1回したところで、自分の「ビーコン捜索の番」が近づいてきました。

11:25 ビーコン捜索

 (教わったこと)ビーコン捜索:手の向きではなくて、(地図読みと同じく)体ごと向きを変える。
 自分の番が来て、ビーコン捜索です。さあ、クロスサーチというところで、スコップと、ゾンデを雪面に置いてしまいました。今回は、平原なので流されませんが「スコップ、ゾンデは、捜索の時きちんと雪面に突き刺す。安直に置くと、傾斜のあるところでは流される。」です。発信ビーコンがだいぶ深く埋められていて、2−3回スコップで掘りながら、クロスサーチをしたものの、大きなミスはなく、無事ビーコン発見。

 (再確認)クロスサーチは、まず、縦のラインで動かし、最小値が見つかった所で横線を引き、その中で向きを変えずに最小値を探す。

12:00 午前の部終了

休憩

【他のパーティー】多くのスノーシューパーティーが、自分達の訓練場を通り過ぎていきました。同様に訓練をするパーティーは特になし。

自分のスコップはこんなふうにも使えます 

 今度はF川さんが講師となり、半雪洞作成です。

 半雪洞:全部が雪に覆われた雪洞と違い、上半分はツエルト等の布類で覆われている。テントを持っていく必要もなく、雪洞ほど場所も選ばない。テントよりも確かに寒いですが、衣類を1枚多めに持っていけば大丈夫。半雪洞作成で濡れるので、予備の手袋は必需品。

12:25 半雪洞作成(1)
 4辺をひもでくくって設計図

半雪洞の4辺をひもでくくって設計図を作ってから、踏み固める。固め終わったら、ひもは取り除く。
 縄張り用ひもは1辺180cmの四角形を作り、各頂点には約2cmの輪を作っておき、四辺の輪に木の枝を通してぴんと張れるようにする。

半雪洞作成(2)
 設計図を作ってから、踏み固める。


 半雪洞を掘るときに木などにぶつかることもあり、スノーソーは木も切れる方が無難。

 四辺に切ってブロック状の雪の塊を作ってから

 雪を掘るときは、四辺に切ってブロック状の雪の塊を作ってから、掘る。一番端の四辺はほぼブロックにならない。脇に捨てる。

掘ったブロックを使い、雪の壁を作っていく。

掘った雪のブロックをどんどん積み上げてゆく

ブロックに隙間ができてしまったときは、雪で埋める。

13:00 ブロックを4段積み上げ、概略が出来上がる


入口を作る

 

13:25 上にツエルト(ブルーシート)等をかけて、半雪洞のできあがり

 予備の手袋は必需品で、そのために半雪洞を掘る前にビニールの手袋等で手を覆っておくということですが、ドタバタしているうちに忘れて、やはり手袋はぐしゃぐしゃに濡れて、半雪洞作成後に替え手袋に交換しました。

隣の半雪洞1


半雪洞内でポールを1本使えば、さらに強固

隣の半雪洞2 

13:40 半雪洞作成終了

 時間が余ったので、Y和さんが、個人用雪洞を作るとのことで、他の人も、概要を聞きに行く。

13:55 木の周りに個人用雪洞
 (自分の写真に良いものがなくN井さん写真を)
 ありがとうございます。

14:00 各自、本日のおさらい等
 思っていたよりも早く、半雪洞作成が順調に進み、残りの時間を使って、各自本日のおさらいをしました。ビーコン捜索の確認をする人が多かったです。自分は、弱層テストの再確認をしました。

14:20 ハンドテスト

 ハンドテストは後ろも掘らなければいけないので大変、「手首、ひじ、肩」の違いがあまりよくわからない(後日談:ハンドテストの場合は「手首、肩、腰」)ですが、スノーソーがなくても作れるという利点はあると思います。どちらかというと前時代的な方法。

30cmの所

 この時のハンドテスト:30cmの所で抵抗なく切れました。

14:40 コンプレッションテスト

 肩まで叩いても反応がなく、手で引いたところ、ハンドテストと同じく、30cmのところで切れました。掘りながら思ったのは、四角柱の左と右の雪を、前回はもう少しきれいに簡単にとれた気がする。再確認。

15:05 残りの時間で、半雪洞の前に暴風壁を作りました

 風はそれほど強くありませんでしたが、少し自分の時間が余っていたので、残っている時間で暴風壁を作りました。

半雪洞の中に入る。夕食は、3パーティーともキムチ鍋(偶然)

隙間からもれる光が、なんか良かった

半雪洞の入り口は、ツエルトでふさいで

 前回半雪洞に泊まった時は、入口が頼りなかった記憶がありましたが、今回は具体的にどうこうではないですが、(風が前回ほど吹かなかったですが)なんかぴったり感がありました。

【今回の服装】ウエア上下(下は雪山用を)に、山用下着上下、山用ズボン、山用長袖、帽子、ゴーグル、厚めの靴下一枚、スパッツ、今回は登山靴で参加。2日は暖かったので左記で、3日はこれにネックウォーマーと、厚めの口の周りを覆うの(正式名忘れた)、薄め羽毛ジャケットを加える。夜は3日の服装で、スパッツ、登山靴を脱ぎテントシューズに履き替え、シュラフカバー+3シーズンシュラフ(テントマット+エアーマット)でちょうど良かったです(自分の場合)。

 今回は、水を大量に持ってきていたので、水つくりはせず。

2月3日
【天気】曇り時々雪
【コースタイム】8:10−12:30 訓練、12:50 訓練場を出発、13:00 駐車場着

朝は、カレーうどんを

隅にザックを置き、そこに座るようにすると、テント内で広く使える。

A部さんに、撮ってもらいました

 なお、雪洞内は、割りばしを雪にさせば、物をかけることができるようになります。上の写真ではゴーグル、食器が割りばしを利用することにより、雪面にかけられています。

8:00 半雪洞解体

全員が入れました、スタードームテン

8:10 救助訓練2日目開始

8:45 遅れをとり、急いで追いついていったら、「きちんと踏み固めてください」とのこと 

9:25 2班雪崩シュミレーション(1回目)
 埋まったビーコン1台

 班ごとに分かれて、雪崩が起きた場合の救助シュミレーションをしました。1回目は、埋められたビーコン一つ、リーダーが見張りとなって、2次雪崩の危険がないかきちんとチエック。

ビーコン捜索開始

 自分がリーダーとなって、2次雪崩の危険がないかチエックということをしたのですが、とても手持ちぶたさで、何をしていいかわかりませんでした。でも、「2次雪崩の危険がないかチエック」というのも確かに必要ですので、上を見ていました。そのうちにあまりにも手ぶらなので、屈曲点まで下りました。

 1回目のビーコン捜索が終わり、反省会、見張りの役割について確認したら「見張りは、破断面をチエックしさえすれば良く、上ばかり見ていても仕方ない。屈曲点のような、全体を見渡せる位置までは動くべき。」とのことです。確かに必要なことですが、(特に訓練での)単なる「2次雪崩の危険がないか」は一工夫しないととても意味がないです。

トリプルアンテナの力が発揮され、あっという間に発見

 これまで班対抗のビーコン捜索と言えば、「アナログ対デジタル」という図式で違いが多く出ていた感じでしたが、今回はアナログがS木さんだけだったこともあり、「トリプルアンテナ対(単なる)デジタル」の図式という感じで、違いが出ていました。この時は深めに埋めていたにもかかわらず、あっという間に特定され、トリプルアンテナの力を見せつけられた感じでした。
 特に、クロスサーチから、ヒットの間が記憶が確かならゾンデ一発だったと思います。クロスサーチまでは、それほど変わりませんが、トリプルアンテナはクロスサーチから異様に、速く探せる。

 その他、これまでゾンデと言えば鉛直に刺すのが基本でしたが、トリプルアンテナは、斜面に垂直に刺すよう、指示が出るとのことです。

9:30

各自、反省会と掘った場所を埋めなおし、元に戻す。休憩

10:00 2回目 ビーコン捜索シュミレーション

埋没用人形(スーちゃん)作成

 いよいよ埋没人形の出番です。

11:45 2班雪崩シュミレーション(2回目)

 2回目は出発前のビーコンチエック、埋まったビーコン1台、埋没人形も埋め、通報者、遺失物もあり

まずは、通報者のもとへ

 2回目は1班、2班共に、ビーコンの「自動的に発信モード」により、誤った場所を掘ってしまいました。「自動的に発信モード」があると、捜索は混乱するので、事前に自分の機種がどういう動きをするのか、きちんと確認が必要です。その他、全員が受信モードになってから出発の方が、混乱も少ないです。
 実際は切られていましたが、通報者のビーコンを捜索しても仕方がありません。通報者のビーコンにも気を使いましょう。
 ゾンデ―連も訓練でする平らな平地なら隊列が整いますが(それでもリーダーは各員の歩調を気にしながら)、実際のデブリだらけの雪崩後では、かなり乱れて歩調が合わないと思います。実際ゾンデ―連をする可能性は、本当に低いですが…

ヒット!、と思いきや


11:55 ゾンデ―連で埋没人形を捜索


12:00 埋没人形の一部発見

手間暇かかりますが、実際の現場を考えると、埋没人形でしか訓練できない掘り出しをやっておいてよかったと思います。頭部をぶつけないように掘る、などは埋没人形でないとできません。


ツエルトでくるんで保温 過去の写真より

 自分も、ツエルトをかぶせて保温の作業をしました。自分のツエルトはコンパクトに折りたたまれ、出しづらいイメージがあったので早めに取り出したら、案外簡単に取り出せて、逆にツエルトが飛ばされないように四苦八苦してしまいました。
 なお、ツエルトで「埋まっている人」をくるんで保温後、ヒューマンチェインで持ち上げるのですが、その際、上の「過去の写真より」が示すように、「埋まっている人」の下を深めに掘っておけば、その部分に膝を準備し、スライドするだけで、「埋まっている人」の上の空間が空き、手間暇もかからないと思うのですが、他の方にはうまく伝わりませんでした。無念です。

12:02 ヒューマンチェインで持ち上げて搬出

12:30 掘った場所を埋めなおして、訓練終了

本年の救助訓練も無事終了

帰宅の途へ

【使わなかった装備】共同装備、個人装備(結果論として):特になし

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