2012年 雪山救助訓練

2012年2月4−5日(前夜発)

今回の山行の大まかな位置(赤丸:訓練地点)


L:F川さん、メンバー:I井さん、F浦さん、Y田さん、N片さん、Y和2さん、M上さん。M浦さん、(土のみ)K元さん、(土曜夕方から)N井さん

2月3日
22:05 荻窪駅出発

2月4日
【天気】 曇りのち雪
【コースタイム】0:00水上IC−0:30/8:25 土合駅−8:35 土合駅近くの雪原
 9:30−11:50、昼食、12:45−15:45 雪山救助訓練

またしてもここに来ました、土合駅
8:25 土合駅を出発

【他のパーティー】5名ほどのスノーシューパーティーが通り過ぎたことはありましたが、他に訓練する人はいませんでした。土合駅も普段なら、他の山屋さんがいるはずなのですが、車中泊の5名パーティーがいただけで、土合駅は自分たちのみでした。

8:27

【今回の服装】行動中は、山スキーのスタイル(長袖山用下着+長袖山シャツ、ウエア上下、靴下1枚、雪山用帽子、ネックウォーマー、オーバーミトン、薄手の手袋、ゴーグル)、夜は中間着のダウンジャンパー、山用下着(下、くるぶしまで)、3シーズン用シュラフ、シュラフカバー、テントシューズ。2日目行動中は、山用下着(下、くるぶしまで)をそのまま脱がずに履きました(脱ぐのに手間がかかるので)。行動中、寒い時はフェイスマスクをつけて調節。

8:35 予定の雪原に到着

午前の部
1.雪面観察

雪面観察

 自分の中でも自信がなく、やるべきかどうか迷いましたが、新しく入った人の中にまだ雪の層を見たことがないという人がいまして、それだったらまず始めにざっと雪の層を掘っておいて、弱層等の説明をした方が「雪崩の仕組み等の理解」にわかりやすいだろうと思って、やりました。自分が雪の層を掘っている間、リーダーは、ビーコンシュミレーションの準備、「雪面をあまりきれいに整えても、どうなるかわからない、融けてしまうかも」と思い、概略掘った所で、伺いに行く。リーダーに確認すると、「はじめて良いとのこと」。いざ集まると。きれいに雪面を整える場合でなく、今から考えれば大雑把でした。弱層の存在を示し、雪面に柔らかい部分、固い部分があること、各自確認しあいました。Y田さんが、結晶確認用の黒いシートを持っていたので、それを使わせていただきました。でも、結晶の細かい所は上手に示せず。
 表層から5cm程度下、20cm程度下、50cm程度下、1.5m程度下に層が見られました。

各自、弱層テストを

2.弱層テスト(コンプレッションテスト(バーブテスト))
 続いて、掘った雪の断面を利用して、コンプレッションテスト(バーブテスト)を
 弱層テストは他に、ルッチブロックテストと、ハンドテストがあり、ルッチブロックが一番正確なのですが、作成に手間もかかり、手間の割には正確でない(そもそも、風、微地形等の影響により、弱層テストの結果は、ずれてしまいます。ルッチブロックが悪いというよりは、弱層テストそのものが正確とはとても言えない)。そして、ハンドテストは一番簡単ですけど、主観の影響がだいぶ入るので、真ん中を取ってコンプレッションテストをしました。
 先ほど作った雪の層の脇を利用して、幅がスコップくらいの四角柱を作り、背側にスノーソーで切り込みを入れて、スコップを四角柱の上にのせ、まず手首で10回叩きます。次に、ひじから10回、それでも破断がおきないようでしたら肩から叩きます。この時、(手首、ひじ、肩というより)、どんな切れ方をしたかを見るのが重要です。
 このコンプレッションの反省としましては、やはり普段から行わないと経験として生きてこないということでした。どんなことをするかというのは理解していますが、実際にやってみると慣れていないせいか「どんな切れ方をするか、見るのが大事」なのですが、言ってる自分が見落としてしまったり、普段は持っていかないスノーソーで作成の方法を説明してしまったり、試行錯誤あるのみです。切れたのは先ほどの雪面観察で見れた弱層の部分からでした。思っていたよりも、破断面はきれいな切れ方をしていました。
 なお、コンプレッションテストは表層の上にスコップをのせてしまうので、表層の結果が見ずらいことがあります。それを補うのがバーブテストで、コンプレッションテストの脇の「表層の雪」を下からスコップにのせ、下から、トントンと叩いて、反応を見ます。表層に弱層があれば破断が入ります。ここでも、雪の層観察で見られた部分に小さな破断が見られました。
 自分が実演して見せた後、各自弱層テストをしていただき、ほぼ同じ場所で破断が入ったとのことでした。

10mおきに旗を置いて、どこで受信するか確認

3.各自ビーコン性能把握
 10mおきに旗を置いて、発信ビーコンを0mの地点に置き、50mくらいから受信ビーコンを持って近づいて行って、どこで受信ビーコンが発信ビーコンの電波を捕らえるかというのを、各自ビーコンで調査しあいました。普段なら、発信ビーコンが、会のアナログビーコン1台なのですが、今回は、ビーコンの機種を変えていろいろ調査してみました。自分のビーコンはF川さん、M上さんとも同じ、トラッカーですが、なぜか二人より成績が悪かったです。二人よりも3−4m近づかないと捕捉できませんでした。ビーコンの機種を変えてみたところ、確かに捕捉はできますが機種により微妙な違いが見られました。

単位:m 鈴蘭通信2012年3月号(非売品)より抜粋
自分 他のトラッカー使用者
雪面に水平・捜索ラインと並行 38〜42 41〜44
雪面に水平・捜索ラインに直角 30〜32 35〜38
雪面に垂直・捜索ラインに平行 25〜29 26〜34

 (個人的には)これを調べることは確かに必要ですが、個人的には次の段階で、優先順位として、ビーコンの捜索訓練をしっかりやり、全員が初心者のレベルを脱したうえで、やるべきことだと思います。今回は、ビーコンを初めて扱う人も多く、ビーコンの捜索訓練にもっと時間をかけるべきだったと思います。

ビーコンを横においいた場合と、縦に置いた場合の違いの確認も

・ビーコンを深く埋めた場合の性能把握
 発信ビーコンを深く埋めた時、受信ビーコンにどういった動きが現れるか。自分のビーコンのみが、少しずれた位置を案内した記憶があります。しいて言うなら、正解がここだと目に見えてしまうと、それを無意識に目指してしまうことがあります。別の主観をもっと消せるやり方でやったらどうなったかと思います。でも、これはよっぽど時間が余っていれば別ですが、他の人の実験した報告を「なるほど!」と読めばいい気がします(時がたてば、自分の考えも変わるかもしれません)。

ビーコンを深く埋めた場合の性能把握
(この合成写真はあまり自信がありません、イメージのため)

4.ビーコン探索

班ごとにビーコン探索

 班ごと(5名ずつ)に分かれ、片方が「発信ビーコン」を埋める役、もう片方が「受信ビーコン」で探す役をしました。ビーコン探索に慣れていない人はどうしてもついていくだけになってしまいますので、自分のビーコンで探すということをやっておいた方が良いと思うので、「各班ごとに埋める役、探す役、を決めて、他の人間はアドバイスする役に徹する」のほうが少し時間がかかりますが良いと思います。当初、二人組になって、片方が埋め、片方が探すを考えましたが、それはそれで、ビーコン捜索に慣れていない人は、戸惑ってしまったり、できる組とできない組の差が大きく開いてしまったりするので、「各班ごとに、埋め役、探し役、アドバイス役」が良いと思います。
(後日談)今回は、参加人数が多く、「ビーコン探索をするとなると広い場所を必要とするため」というのも考えなければいけないようです

5.簡易雪洞

簡易雪洞

 これは、F川さんが手本を実演して終わりました。木の根元は空間が広がっているので、それを利用すれば、簡単に雪洞が掘れること、等が説明されました。

本日の講習終了

 雪山での生活術:テント内では4隅にいるようにすると空間が広く使える、ですが、今回、新人のNカータさんに教えるのを忘れ、Nカータさんはずいぶんとテントからのしずくを受けてしまい、乾かすのに一苦労のようでした。その他、3人のうちライターを持ってきたのは自分のみで、そのライターが家では上手に点いたのが急に点きづらくなって(再度家でやったら問題なく点いた、ちなみにライターを覆っていたビニールは2重、ガスもたっぷり残っています)行く前に試した時は問題なく点いたのに、寒さでつきづらくなっていのだろうか。100円ライターのため? 何回かのトライでなんとか点き、他のパーティーに借りることなく、無事しのげましたが…。
 今回、テントの近くでした「うんこ」を持ちかえろうという運動が、提案され、自分もそれに従いました。リーダーより、手作りの品が提供され、自分も1枚、購入しました。でも、家の中を探したところ、2つの市販されている携帯トイレが出てきたので、実際はそっちを使いました。最近、朝は少し下痢気味で4−5回行くことが多いので、どうなることかと思いましたが、今回、無事1回で済ませる事に成功しました。また、参加者の多くが、自らの体内に保管して持ち帰ったようです。市販の携帯トイレは、2重になっていて、においの漏れはほとんどありませんでした。しかし、帰りの車内で2−3度、おならとは微妙に違う「うんこ」のにおいがして(今となっては何のにおいだったか不明)、激しく動揺した自分は検証することもなく、SAのごみ箱に放り込んでしまいました。

2月5日
【天気】 曇り
【コースタイム】7:50−14:00 雪山救助訓練
14:40 土合駅近くの雪原出発−15:00/15:30 土合駅−15:50 水上IC−18:30 練馬IC

6.ビーコン探索(シュミレーション) 

ビーコン訓練の動画

 前日、行ったビーコン捜索は班ごとに埋めあって、探しあうだけですが、その応用編として、ゾンデ、捜索等を分担しあって行うこと、1台であった発信ビーコンが、2台となった時の場合、深く埋まった時、など追加してビーコン訓練を行いました。

6.掘り出し

リーダー作成の埋没人形を使って

 リーダー作成の埋没人形を使って、昨年も教えたV字法を今年もしました。リーダーの作った埋没人形は良くできていましたが、自分の説明はうまくまとまらず。昨年より
 (1)役割分担
 (2)搬送まで考えると
を意識して話しましたが、皆さんには伝わったでしょうか。役割分担として、先頭に掘る人が疲れるので、先頭に来る人はどんどん交代すること、先頭に掘る人が前のめりで掘るようになるので、後ろの人は、先頭の人の足まわりを掘って、先頭の人が掘りやすく、雪をかきだしやすくすること。「搬送まで考えると」として、掘り出された人間の周りに空間がないと、運べないので、V字のように広がった空間が必要なこと、があります。
 その他、ヒューマンチェインと言っても、最初に教わる人はなんのことだかわからないので、事前に説明すればよかったです。話しながら思い出したのですが、埋没人形の手前側1mを掘って手前側にスライドするので、埋没人形の奥の空間は掘る必要がなかったのでした。もっとわかりやすく教えるにはどうしたらいいか。次回への課題です。あと、今回は埋没人形でしたが実際は人なため、低体温症のことや、スコップで埋没者を傷つけないように等の配慮が必要となります。

7.搬送法
 2日前に、都岳連主催の搬送法(平日夜:2時間ほど)に参加してきました。これまで多くの場面で見ているだけで実際にやっておらず、今回、講習の内容を会にフィードバックということで、自分が講師となって、皆さんに搬送法を教えました。実際、事故が起こった場合はなおさらそうですが、講習とは持っているものが違う条件で搬送法をしなければならないことがほとんどです。自分と言えば、教わったことを伝えるのに精いっぱいで、とても違う条件でうまくいかず、当然と言えば当然なのですが、それでもなんとか形にはなったと思います。これまで搬送法で傷病者の役を務めていただいたK林さんが休会となってしまい、F浦さんに傷病者役を頼みました、うまくいかないところもあったと思うので、傷病者役ありがとうございました。
 都岳連の時のメモは別ページ

説明の都合上昨年の写真もあります(昨)で示しました。

第一段階:

(1)ツエルトを下に引き、その上にテントマットを敷きます。(昨)
(2)マットの上に、雨ブタに衣類など保温の効果があるものを入れて中身を空にしたザックを置きます。(昨)
(3)ザックの上に頭が来るよう負傷者(仮定)をのせます(負傷者をのせるのはヒューマンチェインで)(昨)
(4)足は動かないよう固定します(負傷した場所等にもよりますが基本的に)(昨)
 固定にスリングが使われていますが、テーピングでもかまいません。
(5)腕も動かないよう固定します、ザックのウエストベルトをを使って固定しておくと便利です。

第2段階

アンカー作成
1.カラビナでなくてもシュリンゲ等でも可、ただし雪玉は融けることがあるのでできれば避ける
2.負傷者とツエルトの間に、できるだけ雪面に近くなるようカラビナ(上記、代用可)を入れる
3.ツエルトの外側からカラビナを握ってひねる。
4.インクノットでカラビナを固定、この時インクノットを別の人が準備しておくと作業がしやすい。
4’ 準備しておく人は、インクノットの二重輪が「シュリンゲの結び目」の上にくるようにする。二重輪をカラビナにセットしたら「シュリンゲの結び目」でない方を引く。(昨)

 上記の容量でカラビナをセットしていきます。

@、A→B、C→D、E
(@とA、BとC、DとEの順番はどっちでも良いですが、片方ずつで両方いっぺんにやってはいけません)
の順でカラビナをセットしていきます

なお、
@とA:ひざより少し下
BとC:腰より少し上
DとE:肩の上
の位置です。

Eまでセットし終わったら、ツエルトで負傷者をくるみます。
@とAをスリングで連結します。
事前にスリングを引いて、センター位置を決めて置いて、そこに片方のスリングでカタ結びをします。その結び目に、シートベンドで左右のスリングを連結させます。
B、Cも同様におこないます。
肩のスリングがV字になるように、肩のスリングと、「BとC」のスリングをシートベンドで連結します。スリングが足らない場合は、もう1本追加(たいてい足らない)して作成します。

次に、テールのアンカーを作成します。
Fと、「@とAの結び目」をスリングで連結します。次に、黄線で示したように、「@とA」と「BとC」の結び目をスリングで連結します。

第3段階
 1.10mロープの中間部にループを作り、ループをテールのアンカーにクローブヒッチで固定します。
 2.10mロープを左右のアンカーにクローブヒッチで固定していきます。この時、進行方向のロープが下になるような形で2回アンカーに巻けばクローブヒッチができます。
 3.負傷者の頭部にアンカー作成、次に頭部は呼吸部分のみ開けて、他の部分はツエルトで覆う、視界は見えない方が良い、変に見えると恐怖心をあおってしまう。
 4.2の補助ロープで、頭部のアンカーを固定(補助ロープを使ってのサイドラインの補強)。

補助ロープを使ってのサイドラインの補強
搬送法
A、Bに人を配置、Cで流動分散を作る

第4段階
 膝の部分のアンカーと、テールのアンカー3点(向きが逆の時は、肩の部分と、頭部の部分の3点)から流動分散の支点を取る。
 Cに流動分散を作り、AとBに人を配置する。

ゾンデ−連のために各自一列になって

8.ゾンデ−連
 雪崩に遭った人がビーコンを持っていない場合の捜索法がゾンデ-連で、一列になってゾンデで行方不明者がいないか探していきます。
 「右」の掛け声で、自分の右足手前をゾンデで突き刺し、「左」の掛け声で自分の左足手前をゾンデで突き刺し、「一歩前へ」の掛け声で列が前進します。

ゾンデ−連
Nカータさんのみ、いる位置がずれています

雪山救助訓練終了
おうちへ帰ろう〜♪

【使わなかった装備】共同装備:特になし、個人装備:(結果論として)替え下着、替え靴下、ホイッスル、細引き、ローソク、メタ、医薬品、新聞紙、等

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