1102雪山救助訓練

11年2月5−6日(前夜発)

L:A部さん、SL:Y口さん、メンバー:F川さん、 Y田さん、F川2さん、F浦さん、K林さん、W辺さん、S野さん、自分、(土曜参加)I井さん、S木さん、K嶋さん、K元さん

 行く前に、体調を崩し、風邪気味になりましたが、なんとかかんとか無事問題なく抑えることができ、救助訓練に参加できました。それさえなければ事前にもう少し準備できたのですが、体調を崩すところが自分の実力かも。とりあえず、なんとかお話にはなりました。事前に、ビーコン捜索について講師担当と言われ、現地で、掘り出しと、弱層テスト(一部)も講師担当になりました。

訓練した場所の大まかな位置(赤丸)

2月5日
天気:晴れのち雪
0:30 谷川岳ロープウェイ着(6階にて仮眠)
7:15 ロープウェイ出発
7:30 天神平着・ビーコンチェック

天神平着
 右は白毛門
正面に見えるのは谷川岳
ビーコンチエック

・ビーンチエック(講師:自分)
(1)リーダーが発信、他は受信でメンバー全員が受信できているか? リーダーはきちんと発信できているか?をチエック
(2)リーダーが少し離れたとこに行き、受信モードに切り替える。メンバーは発信モードにし、リーダーの前を通過し、リーダーはメンバーのビーコンがきちんと発信しているか? リーダーはきちんと受信できているか? チエック
必ず(1)→(2)の順番ですること、この順番ですることによって出発時リーダー以外は全員発信モードになっている。リーダーは出発前にきちんと発信モードにする。
8:05 出発

出発

 スキー場の斜面脇を登ったのですが、いきなりの急登。今回講師を担当していることもあって、気はそっちばかりに行っていて、自分の用具チエックとかはおろそかでした。まず、先日のゲレンデスキーでもそうでしたが、片方のビンディングがたるんでいて外れる。調整の仕方を知っているのに、なんかしっくり来ない。これで動揺したのか、浮足立って、体が前のめりになり、悪い時の自分のパターン。前のめりになるので、シールが効かず、シールが効かなければエッジで歩いてしまい。登る距離が短くて良かったです。

なんとかついて行けましたが…
正面には谷川岳

8:45 テン場着

スキー靴を履いて整地

 テント設営に際して、テントを立てる場所をツボ足で雪を踏み固めるのはもちろん、仕上げにスキーを履いて整地したら見違えるようにきれいな床になりました。今までにしたことはある気がしますが、改めて、再確認。

テント設営完了

9:30 訓練開始・弱層テスト
・コンプレッションテストとバーブテスト
 自分が講師となり、バーブテストとコンプレッションテストをしました。まず、木があると積雪に影響があるので木から少し外れた所でテストすること。雪面下に木や大岩等あるとテストの結果がくるってしまうので、ゾンデ棒でそういった物がないかチエックしてから掘った方がベスト。ゾンデ棒で大まかな目印(設計図)をつけておいて、横幅1m、深さ腰ぐらい?の雪の断面を作ります。中央でコンプレッションテストを行い、その右でバーブテストを行います。バーブテストをする理由は、コンプレッションテストが、雪面の上にスコップを置いて上から叩くテストのため、表層に近い部分の弱層がわかりずらいためです。雪の断面中央に、スコップの幅になるよう鉛直にスノーソーで切り込みを入れます。この時スノーソーは両手で持ち、のこぎりを引くような形でするときれいに切れます。

Yさん写真(以下※)
 ありがとうございます
コンプレッションテストをする自分

 中央に、コンプレッションテスト用に切り込みを入れたら、その左に三角柱を切りだすように雪面に鉛直に切り込みを入れ、雪を取り除きます。取り除いたら、コンプレッション四角柱の右の雪を30cmほどスコップですくい取って下からとんとんと叩きます(バーブテスト)。バーブテストの結果特に、明瞭な弱層はありませんでした。コンプレッションテストの後、すくい取った雪の下を先ほどと同様、三角柱を作るように切り込みを入れて雪を取り除きます。次に、コンプレッション四角柱の背面に切り込みを入れて、コンプレッション四角柱完成です。
 雪面の上にスコップを置き、まず手首だけ動かすような形でスコップを叩きます。今回、四角柱に変化ありません。10回叩いて、反応がなければ、次にひじから叩きます。この時、ひじは動かさないで重力で叩くようにした方が良いと(Y口さん)。ひじでも、手首と同様10回叩いて反応がなければ、肩から叩きます。この、手首、ひじ、肩というのも少しは考慮すべきですが、それよりも見なければいけないのは、どんな切れ方をしたかということで
 (極端な話)手首5回でブロックが前に出てこない破断より、肩7回で前に出てくる破断、の方が雪崩の危険性ありのようです。
雪のブロックが前に出てくるような破断は、雪の状態を考える上で重要な要素となります。今回、肩10回をしても見るべき反応はありませんでした。これといった弱層はありません。ちなみに、雪の層を指で触りながらチエックしましたが層は一様でした。
・ルッチブロックテスト
 続いて、Y口さんにより、ルッチブロックテストの実演がなされました。

ストックに接続したスノーソーで雪面に切り込みを入れて行く

切り込みを入れる深さは1.5mくらいだと。
ブロックの上にスキー板を履いた人が乗ります

 続いて隣の斜面で、ルッチブロックにおいて、スノーソーで切り込みを入れる以外のもう一つの方法、「プローブを上の2角に突き刺し、結び目のある長いシュリンゲで引くことによって切って行く」ことが試されました。

プローブを上の2角に突き刺し(赤矢印)、結び目のある長いシュリンゲで引くことによって

 思ったより簡単に、下までシュリンゲを下ろせました。で、考えることは、本当にこれで切れているか、です。確認のため掘ってみました。

問題なく切れていました

 今回の雪はだいぶ掘りやすかったので、春先の固い雪など、いつも通用するかはわかりませんが、とりあえず今回は通用することが示されました。
11:00 午前の部終了

休憩
休憩の時、シールを見たら、シールと板の間に雪が入り込んでいる。悪いのはシール? それとも自分の歩き方?
 とりあえず、今のままだと右、左どちらのシールかわからないので、区別ができるよう帰宅後片方のシールにマジックで印をつけました。

11:30 ビーコン訓練
 講師を担当しました。まず、ビーコンの概要、一口にビーコンといっても、アンテナ数、受信距離、二次雪崩の時の対応(時間が経つと捜索から発信に自動的に変ってしまうものあり)、スイッチの切り方の4点は機種によってそれぞれ違うこと。特に電源の切り方は、複数埋没の時など、必要なので、各自が自分の持っているビーコンの電源の切り方を説明。
 次に、ビーコン捜索において基本的な事
 ・ビーコンを速く動かさない、電波発信間隔は1秒なので、それ以上速く動かしても無意味。
 ・電波曲線は、確かに頭に入れておくことは必要ですが、少しずれた方向にナビすることはあるものの、落ち着けば大丈夫。
 ・クロス十字:最後の絞り込みは、クロス十字法を使って、その時ビーコンの向きを変えないこと
 以上を説明?し、班ごとに分かれて(自分達は、L:F浦さん、メンバーY口さん、Y田さん、K嶋さん、自分の班)ビーコン捜索の訓練。一人がビーコンを雪の中に埋め、それを別の一人が探すという訓練をしました。自分の場合、それほど深く埋まってなかったせいもあり、問題なく捜索できました。

F川パーティーのビーコン訓練の様子
F浦パーティーは、この斜面でビーコン訓練を
ビーコン捜索の様子

13:15 V字コンベア・ベルトメソッド
 この方法が開発されるまではプローブの長さは2.5mでそれ以上の長さは無意味でした、この方法を使うことによって3mのプローブも実際に使えるようになってきたという方法です。まず、平地ではプローブで埋没者を把握した深さの2倍の位置からゾンデに向かって掘り進めて行きます。25度の傾斜があれば、プローブの深さと同じ所から掘り進めて行けばよいです。

注:これは昨年の都学連の写真ですが
 (少し浅い?)

 わかりやすいので昨年の都学連の写真を使います。V字コンベアというように、Vの形になるように隊列を組みます。先頭の人はプローブに向かってとにかく掘り進めて行きます。先頭の後ろの人は、先頭の人が掘った雪をさらに後ろにほうるのと、先頭の人が前のめりにならないよう先頭の人の足元を掘ること、いざ埋没者を見つけた時に埋没者を出しやすいよう横に出入り口を広げることにあります。先頭が掘ることに疲れたらトップを交代します。トップは交代交代で、ローテーションしていきます。

試行錯誤あるのみですが
 V字コンベア・ベルトメソッド

 実際に体験してみるといろいろなことがわかるわけですが、
 (1)V字法は5人で掘るのが基本のようですが、鈴蘭で行くと5人で掘るような条件はあまり考えられない。3人パーティーで一人が埋まってという時、二人ではV字の意味があまり…
 (2)プローブに当たったのが本当に人ならいいですが、木の根とか、別のものだと、離れた所から掘っていく意味がない。従来のように、真上から掘り進めて行けば確認しながら掘れる?
 (3)浅く埋まった場合だと、この方法を使わなくても良いのでは?
 等、鈴蘭では、初V字なので疑問が出てきても仕方ない。試行錯誤あるのみです。各パーティーごとに分かれてV字の確認。
14:10 搬送法
 搬送法は、2月3日に行われた都学連の講習を受けた、S木さんとF川さんが講師です。

(1)ツエルトを下に引き、その上にテントマットを敷きます。
(2)マットの上に、雨ブタに衣類など保温の効果があるものを入れて中身を空にしたザックを置きます。
(3)ザックの上に頭が来るよう負傷者(仮定)をのせます(負傷者をのせるのはヒューマンチェインで)
(4)足は動かないよう固定します(負傷した場所等にもよりますが基本的に)
(5)腕も動かないよう固定します、ザックのウエストベルトをを使って固定しておくと便利です
(6)足からマットとツエルトでくるんでいきます。尚、この時、保温効果のあるもので負傷者を包むのが原則ですが今回は省略。まず、足のかかと部分に、カラビナをセット(下の写真参)です。
カラビナをセット
1.カラビナでなくてもシュリンゲ等でも可、ただし雪玉は融けることがあるのでできれば避ける
2.負傷者とツエルトの間に、できるだけ雪面に近くなるようカラビナ(上記、代用可)を入れる
3.ツエルトの外側からカラビナを握ってひねる。
4.インクノットでカラビナを固定、この時インクノットを別の人が準備しておくと作業がしやすい。
4’ 準備しておく人は、インクノットの二重輪が「シュリンゲの結び目」の上にくるようにする。二重輪をカラビナにセットしたら「シュリンゲの結び目」でない方を引く。
(7)かかとの次に、膝、腰とカラビナをセット
(8)腰より下に、左右両方にカラビナがセットできたら、「右の膝シュリンゲと左の腰シュリンゲ」のどちらか片方のシュリンゲに普通のひも結びで結び目を作っておき、その結び目の下にシートベンドで「右の膝シュリンゲと左の腰シュリンゲ」連結(この部分少し自信ない)(参:右写真)
 これを「左の膝と右の腰シュリンゲ」にもする



普通のひも結びで結びを作り、その下にシートベンド
(9)下半身が固定できたら次は上半身です。
 ひじ、肩の所に下半身と同様、カラビナにシュリンゲをセットです。
(10)頭にもカラビナセット
(11)腰のシュリンゲと、肘のシュリンゲを連結
(12)頭と肩はこんな感じで
(13)10mロープがない時、膝のシュリンゲにカラビナを掛けて、搬送
(14)頭のシュリンゲにもシュリンゲを掛ける
(13)(14)を角度を変えて撮ってみました
(15)※10mロープがある場合:ロープをそれぞれカラビナにセットした部分に固定(?)すれば、(13)(14)よりもはるかに安定します。

 S木さんとF川さんが実演したのを、見ただけで自分で確認していないので、それほど自信はないですが、以上が怪我をして動けなくなった時の搬送です。春の雪が締まっている時は移動が簡単な分、負傷者が斜面を滑ってしまう恐れがあるので注意必要。逆に、厳冬期の新雪では、わずかな距離を動かすのも一苦労のようです。しかも、訓練とはいえこの作業に1時間かかってしまいました。負傷者が怪我をしているとなると、作業はさらに困難となります。ヘリコプターが止まる場所まで移動すればいい場合もあり、一般論として知っておくべきですが、必ずしもこの方法とも限らないようです。
15:30 講習終了

2月6日
天気:朝のうち晴れ、のち雪
8:15 班全体でやるビーコン捜索
 昨日は、ビーコンを捜索する人は一人でしたが、本日は班全体で捜索し、ヒットした所で担当の人(1回ずつ交代)のみがビーコン捜索、他の人はプローブ、ゾンデ係になるという形でしました。

ゾンデー連
ここに違いない

 電波曲線という言葉がある通り、10m手前くらいで実際ある場所よりも左にビーコンがナビすることがありました。でも、落ち着いて、ビーコンを速く振ることなく対応したら無事、目的地へ行けました。あとは斜面傾度があると、斜面下方にビーコンがナビする傾向があるので、頭の片隅に入れておくと便利のようです。久しぶりにやったゾンデー連で、うろ覚えでやってしまいました。当然と言えば当然ですが、隣の人をよく見ながら声をかける。ゾンデー連以外は、(先日の雪崩講習ではトラブルもあり、ビーコントレが思うように行きませんでしたが)、今回足を引っ張ることなく行えて良かったです。
9:55 休憩
10:05 簡易雪洞作成・講師F川さん
 仮に、「何かのトラブルに巻き込まれて、下山するのが遅れて暗くなってきましたが街にまだ着けず等、至急泊る場所を確保したい」という時、雪の中は外気よりもかなり暖かいです。とはいえ、きちんとした雪洞を掘るには時間がかかりすぎますので、(今回の雪の状態の場合20分ほどで)簡単に作れる簡易雪洞がF川さんの元、紹介されました。まず、ある程度の斜面に生えている木を選びます。斜面のあるというのは、斜面のある方がその傾度の分、雪を掘らなくて済むからです。木の周りは雪が少なく、空間が空いており簡単に深さを稼ぐことができます。

木の根元を斜面の下から掘って行きます。
ある程度の深さまで行ったら、天井を残して、横に掘り進めて行きます。
簡易雪洞出来上がり
ツエルト等あれば、入口をそれでふさぐことにより暖かさも増します。

 これがあれば一晩(天気が悪くて外に出れない時二晩)も泊れること可のようです。捜索隊が来た時、発見されやすいよう、赤布等あると便利です。ガスコンロ等使える広さにするには大変ですが、ローソクの炎さえあれば気分的にも落ち着きますし、メタと金属製の食器があれば暖をとることも可です。
 それでは、各自作ってみましょうということになりました。

K林さん作、簡易雪洞
少し小さすぎたでしょうか? 自分作
都岳連の時はもっとシンプルだったのでそれが頭に残っていて…
A部さん作、簡易雪洞
 このようにツエルトを掛け、雪で固定すると良いようです。
F浦さん作、簡易雪洞
S野さん作、簡易雪洞
※W辺さん作
Y田さん作、簡易雪洞
F川さん作、簡易雪洞
※ F川2さん作

11:30 訓練終了・全体を通して感想・意見等

撤収

12:40 テン場出発
 視界が悪く斜面も急だったので、時折テレマークターンをする程度のアルペン滑り(ほぼボーゲン)で対処しました。田尻沢コースが滑れるというので、途中から田尻沢コースに入りました。この頃から視界も良くなってきて、無事テレマークターンもできるようなってきました。

ゲレンデを滑る
13:25 道路に出る

13:30 駐車場
14:00 閉会式
14:10 谷川岳ロープウェイ出発

訓練した場所の位置(赤丸)

14:35 温泉
15:20 出発

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