丹沢・流れの沢

2010年8月21日
単独
天気:曇り

 初めての沢単独行です。
 「やはり山は、自分で判断して正しい行動が取れなければ駄目だよ。ある程度の沢は単独で行った方が、自分の判断力を試せるよ」(鈴蘭山の会の年報より)
といった意見もあり、自分は以前から、単独行に興味があったものの、
実際、行くとなると一人はどうしても不安なので実行に移せませんでした。そんな折、白山書房から「ウォーターウォーキング」という書籍が出ました。通常、沢登りの本には載らないような易しい沢(この本に乗っている沢は難しくても1級、1級上、フリークライミングで例えるなら5.6−5.7だと)が関東近辺について、載っている本です。要は、「沢登りをしてみたいけど、そのための訓練をするのはどうも」という人のための本です。これを読んでいた時、「この本に載っているような沢なら単独で行けるかもしれない」と思い、計画を立てました。

今回行った沢の大まかな図(手書き)

 ウォーターウォーキングの中には、40個ほどの沢が紹介されてますが、その中で「流れの沢」を選んだのは、一度モミソ沢からの下降路にこの沢を使った経験があり、その時、下降に使っても大丈夫だったので、下りられるなら登れるのでは? ということです。7月の中旬位に行く計画を立てたものの、その前に行くと思っていた沢が天気が悪いため中止になり、いくらなんでも単独行をシーズン初にする気はなかったので、その時は中止にしました。その後、3回ほど沢に行って、これなら良いだろうということで単独の計画を出しました。

 (注)沢に単独で行くということは、何かあっても助けてくれる人がいないわけですから、レベルA:連れてってもらう沢、レベルB:同レベルの人と一緒に行ける沢、とすると、レベルBをさらに1ランク落とした沢にすることをお勧め(でなくそうすべきだと)します。
 尚、上記「自分の判断力の確認」以外に、沢単独行を勧める理由は
 たとえ二人で行ったとしても、もう一人が怪我などをしたらその後の判断などは自分がしなければならない
ということがあります。簡単な沢で単独行の経験をしておいた方が、もう一人の人が怪我等をした時でもある点では経験済みの世界だと。二人の山行は行かない? 以前の自分はそうでしたが、最近はそんなことも言ってられないし、3人だと思って現地に行ったら、急きょ一人が来れなくなった、というのはよくある話です。

 今回、装備にロープと、「ハンマー+ハーケン」、一人用ツエルトを入れました。行程の短い沢なので、今回は「持って行かないで考える」よりも「持って行って考える」をしたかった。「無事に帰らなければならない」単独行なので、ロープと一人用ツエルトは仕方ないにしても、いくらなんでも「ハンマー+ハーケン」はちょっと持って行きすぎでした。ロープを使わなければ必要ないし、そのロープも周囲に支点となるような木があれば、特に、「ハンマー+ハーケン」を使うこともない。ロープも持っていくことは悪くはありませんが、8mm30mでなく、8mm20mで十分でした。

7:01 新宿駅発→8:14 渋沢駅着
            8:20 渋沢駅発(バス)→8:32 大倉着
 沢の間の行動ばかり気を取られ、登山道での行動が雑になってしまっていた。20分ほど大倉尾根を登ってしまい、途中で気がつき、問題なく修正できたものの、ミスはミス。あとは何故、20分でなく5分で気がつけなかったか、ということ。
9:10 出発
 大倉尾根に登る人はたくさんいたものの、こちらを登る人は少ない。車道は戸沢山荘まで続く。

車道の脇に群生していたキツネノカミソリ
竜神ノ泉

9:40 竜神ノ泉
 飲料には煮沸を勧めるとのこと。
10:15 新茅山荘
10:30 戸沢山荘・入渓準備

戸沢山荘にて
 赤の→が従来良く登られているルート(水無川本谷、源次郎、セドノ)、薄緑の→流れの沢

 簡単と言われた流れの沢ですが、別の沢に入ってしまったら、簡単も何もないです。行く前から、何が何でも入渓地点はきちんと、と考えていました。ここ戸沢山荘は何度も来たことがある場所です。流れの沢は「戸沢山荘対岸の、本流に対して左から入ってくる沢で、下流を少し行った所に堰堤」ですので、あの水量の少ない沢が流れの沢だろう。本流を別パーティー(3人)が行く。行く所も決まり、沢装備に着替えていたら、山荘の人でしょうか? どこへ行くか声をかけられました。「対岸、左の流れの沢に行く」と言い、持っていたウォーターウォーキングのページのコピーを見せました。その人も、ここら辺の沢はたいてい行っているが流れの沢は行っていないという。ここまで来て、中止にされたくないので、きちんと説明。「モミソ沢の下降路として使ったことがあります。2時間強の沢、堀山の家近くに出る」等話す。尋問無事終了。
11:05 入渓

入渓

 尋問?を無事、対応できたものの、急いで入渓して別の沢に入ってしまったら元も子もない、現に大倉バス停ではきちんと確認しないで、30分ほどの時間のロスをしてしまったではないか。はやる気を抑えて、ゆっくり進む。水量の少ない沢と聞いていたが、出だしがこんな少ないとは、「簡単か?」とも思うが気を引き締めて。入渓して、すぐ堰堤が出てくる。本にあった通りだ。堰堤が4つ連続します。最初の二つは堰堤と言っても高さが50cmくらいの形だけのものです。後の二つの堰堤は、高さ2−3mで、右の階段を通過しなければ登れません。

堰堤のプレートに「流の沢」

 堰堤のプレートに「流の沢」とある、「れ」が抜けているのは何故だかわからないですが、別の沢に入っていない。この沢で良し。

この堰堤は右の梯子を

 堰堤を通過して、いよいよ遡行です。堰堤を越えてしばらくあたりから1.5mの滝辺りまで、沢の両側が70度くらいの土の斜面になっていて、沢幅4〜6mが、続きました。写った写真を見ると、フラッシュがたかれたのでしょうか。明るい沢のように見えますが、薄暗い、薄暗いというのはちょっと違くて、「人気(にんきではなくひとけ)のない沢」これが正しいと思います。流れ着いたごみなどはありましたが、なんか「人が往来していない」雰囲気がありました。堰堤を越えて少し歩いて、最初の滝5mです。

11:16 5mの滝

 5mの滝は、真ん中を水流沿いに行きました。今回滝と言えるのは、三つのみ(5m、8m、2段5m)でしたが、「2段5m」を除き下から見て下部は簡単で上部がややこしそうでした。会山行で行けば、すいすい登ると思うのですが、一人なので登る前にじっくり確認して登ることになります、「上部がややこしく見える」のは自分のルートファイン能力が低いからかもしれません。実際登ったら、難しくなる手前でルートを考えましたが、難なく登れました。

11:26 2段5mの滝

 ウォーターウォーキングの本には、「左のルンゼから巻く」とありますが、直登できそうだったので、下段、上段共に水流の少し右を直登してしまいました。思っていたよりも難しかったですが、一つ一つ確認しながら登れたました。

11:46 2段3m 滝の右の石などは実際には落ちてこなかったものの、落ちるのでは?と怖かったです

 「人が往来していない沢」のせいか、石に体重をかける時も一々不安になりました。「これ、体重掛けたら崩れるのでは?」そう思える、でも崩れませんでした。崩れるように見えただけかもしれませんが、そういう個所は何箇所かありました。
 さてさて、2段3mの位置を遡行図に記入しようとしたら、ボキッとシャーペンの芯が折れ、書けなくなってしまいました。予備の筆記用具がないので、記録はデジカメで撮るしか方法がありません、支沢も一々写真を取ることで記録。(筆記用具も様々な工夫をしなければ)
 普段なら、支沢を2万5千図でチエックできるのですが、この流れの沢は本流の水線が地形図に載っていないような水量の少ない沢なので、本流よりもさらに水量が少ない支沢は沢地形も2万5千図から読み取れません。ガイドブックからの遡行図で現在位置確認。

12:05 右奥が8mの滝

 最初、左側の滝を登るのかと思いましたが、登るのは右奥の滝でした。水流の少し右側を登ったと記憶しています。一つ一つ確実に行けば登れたと。この滝を越えた後は、小滝が続きました。

12:15 中央が石積みの堰堤
12:20 二俣(水場?のある)

左の写真の真ん中を拡大(水場)

 水場のある二俣(下の遡行図では1番上の二俣)に到着したものの、最初は水場がどこにあるかわかりませんでした。ちなみに水場の水はほとんど流れていません。水量が左よりも右の方がはるかに多いので、右を行きました。ウォーターウォーキングでは左を紹介しています。
12:30 水枯れる
 左へ行く所を、右に行ったので、、水が枯れて急斜面になってからは、左を意識して進む。登れるが、ずいぶんな急斜面、水場の所で左に行けば良かったか。小さな尾根に出て左を見ると

12:40 左に沢スジ

 明瞭な沢スジ、こっちを登っていればよかったか。その後は踏み跡のようなものが見え、上から人の話し声が聞こえるようになりました。登山道はもう近い。
12:45 登山道

登山道に合流
(合流地点より少し下)→
「崩落場所につき足元注意」の看板

(合流地点より少し上)←
大倉尾根29番

 無事、登山道に合流、「崩落場所につき足元注意」の看板あり、通りがかりの登山者から、「どの沢を登ってきたのですか」聞かれる。「流れの沢です」答える。沢の中では休憩せず登ってきたのでとりあえず、休憩、沢装備などを外す。でも、あまり平らな所でないので、平らな所まで行こう。登山道について一安心なものの、目的地である堀山の家が見当たらない、そういえば他のメンバーとして行く時もツメで登山道に上がった所を正確に把握できていない場合が多い、沢の中の現在地は支沢を目印にだいぶ分かるようになってきたが、今回自分の弱点が明瞭になってしまった。

今回の山行の遡行図

12:55 出発
 平らな所がなかなかなく、天神尾根の分岐まで行ってしまいました。
13:08 天神尾根分岐着・軽い昼食
13:20 天神尾根分岐発
 ウォーターウォーキングに、「下山は天神尾根を下るのが早い」とあったので、天神尾根を下ったものの、それは戸沢山荘に車を停めた場合を言っているのだろうか。いずれにせよ、鵜呑みにしてしまった自分が悪い。天神尾根は急で、危険個所はないものの、2−3人の人しか会いませんでした。
14:15 戸沢山荘

さようなら、流れの沢

15:40 大倉着

今回のルートの大まかな図(2)
 作治小屋からの出ている薄緑のラインが流れの沢です。
 A→B→C→D→E
 E→F→D→C→B→A
とのように進みました

15:55 大倉発(バス)
16:10 渋沢駅着

実際行ってみて、
(1)途中、開けた所がある沢なら話は違いますが、今回のように沢の中にいる間はずっと両側が斜面(ゴルジュというほど狭まってはないにしろ)で、遡行時間も短かったので、沢の中で休憩をせずに(その代わり歩くスピードは、ゆっくりでした)通過しました。「単独なので、ゆっくりと自分の好きな時間、沢に向き合える」など行く前は考えていましたが、そういう沢を意識して選べば別かもしれませんが、全て自分と向き合わねばならないので、「何としてでも無事に」の意識が強くとても「自分の好きな時間」という余裕はなかったです。単独だと、会の人と行くよりも、滝を登る時、ガレ場を登る時など、難しく見え、緊張します。「人と一緒に登る」ゆえの安心感がないです。沢本来の楽しみは、単独でなく、「人と一緒に」だと思います。少なくとも今回だけで単独について判断できるものではないと思います。今回のみで判断するなら単独行は、自分との戦い、ある意味、精神修養? 単独行も、1〜2年に1回くらいならしようと思います。
(2)簡単な沢にしようと思うあまり、あまり登られていない、流れの沢を選んでしまいました。確かに簡単な沢にすべきですが、人の余り登っていない沢は、踏み跡等なく、その点では難しい沢になります。現在の所、ウォーターウォーキングという考えは歴史が浅いので、ウォーターウォーキングに載っている沢は、簡単ですが登られていない可能性が高いです。

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