沢の救助訓練2010

6月5−6日

 行く前にテキストを読み返し、「これなら」と思ったものの、(1)人が見ている場面ですると舞い上がってしまうのと、(2)細かい所まで要領がわかっていないのと、で結果は「こんなはずじゃないのに」でした。それでも、行っただけのことはしましたし、自分の中では昨年より向上したのですが、「行く前」はもうちょっと自分はできると思っていました。
 今回の救助訓練は沢を意識し、沢で実際に使う8mmのロープで訓練が行われました。ベテランの方は全然違ったとおっしゃっていましたが、救助訓練自体に慣れていない自分は、8mmのロープだからといって、あまりわかりませんでした。とはいえ、沢で使う道具で救助訓練をした方が有意義だと思います。
 個人装備はシュリンゲ5本と、カラビナ5枚ですが、それは本当に必要不可欠な枚数であって、それより多い方が作業も楽でした。

L:F川さん、T岡さん、S林さん、K林さん、F浦さん、S野さん、O庭さん、S木さん、MHさん、自分
5日のみ訓練参加:N方さん、I井さん
6日のみ訓練参加:T田さん、A部さん

6月5日
天気:曇り(夕方小雨)

7:52 青梅駅発→8:28 奥多摩駅着
8:35 奥多摩駅発(I井さん車)→9:05 岳稜岩の入口のトイレ
 予定では奥多摩駅からバスでしたが、I井さんが車を出してくれて、一部の人のみ先に車で行ってリーダーの用意した10リットルポリタンに水を入れて運ぶということでした。
9:30 岳稜岩

救助訓練への準備

10:15 訓練開始
 自己脱出(岩場をトップで登っていた人が墜落してしまった、セカンドがビレイを解除し、トップを助けに行くこと):1週間ほど前に行われた都学連講習会で教わったことを実演してくれるはずのT岡さんが、交通渋滞にあってまだ到着していません。急きょ、自分がデモをすることになりました。「復習してきたし、大丈夫だ」でしたが、システムは理解していたものの、自然の岩場でするとなると、当然それなりに注意することがあり、他の方から一つ一つ注意を受け、その度に動揺して…。
 手順として、(1)確保器をセットしてから、(2)手の届く位置にセルフビレイ(メインロープ)、(3)ロープをワンターンさせ(ワンターンさせるカラビナはハーネス左下のループに掛ける)、(4)確保器にロープをぐるぐる巻き(最初はきつく最後は緩く)、念のため最後の巻の部分にロープを通しはみ出た部分をカラビナでメインロープと留めます、(5)確保器よりも上の位置のロープにクレムヘイスト、末端はセルフビレイの支点に掛ける、(6)クレムヘイストが効いていることを確認し、ぐるぐる巻きにしたロープをゆっくり外していく、(7)荷重を確保器からクレムヘイストに移す(8)確保器よりも下の部分のロープで、セルフビレイの支点に8の字結びでセット。(9)ビレイ解除

自己脱出

11:30 懸垂の仮固定(懸垂の途中一時止まって何かしたい時など)
 そもそも自分たちパーティー(S野さん、N方さん、MHさん、自分)(1日目)(メンバーが多いので班ごとに分かれて)が、今回、懸垂下降の仮固定をした場所は、出だしが急で足の置き場がなく、自分が懸垂をする段階でいろいろ注意を言われましたが「違うんです、急な所だからです」なのですが、他の方は少し滑りこそすれ問題なく行っている。なるほど自分の技術はその程度ということです。エイト管でする懸垂下降の仮固定自体は、特に自分にとって特に新しいことはありませんでした。懸垂自体について、改めて「腰で下りるようにして、どちらかというと体がくの字」です。その他、エイト管でなく、半マストで下りる時、仮固定はムンターミュールと教わってきましたが、ロープを解く時に一気に力が加わるので、エイト管と同じようにぐるぐる巻きで良いとのことです。

仮固定のデモをするT岡さん
訓練の風景

12:40 昼食
13:30 (午後の部)搬送法、介助懸垂
 その時に持っている装備で、怪我をした人を下山させる、もしくは安全な場所まで「安定して」移動させなければなりません。誰でも持っている用具ということで、1.ザックを使った搬送法、2.雨具(上)とザックを使った搬送法です。
・ザックを使った搬送法
 これは、実演がされたのみでした。昨年の報告を参照してください。
・雨具(上)とザックを使った搬送法(各自)
 (1)雨具(上)のフードを出しまして、ピッケルホルダーに縛ります。

フードを出しまして、ピッケルホルダーに縛ります

 (2)雨具(上)の手の部分をショルダーベルトに縛ります(右、左両方)。

手の部分をショルダーベッルトに縛ります

 (3)雨具(上)の腰の辺りにある、ポケットに詰め物(人が長時間乗っても痛くないような衣類等・ここでは軍手)をし、それをシュリンゲで(結び方はクローブヒッチで)留めます。これで人を背負う準備ができました。

左の写真は、上と雨具とザックが違ってますが
写真上部にいる人の右足を→の方に持っていく格好でザックと雨具の間に入り)

 (4)ザックと雨具の間に負傷者が(上の写真で写真上部にいる人の右足を→の方に持っていく格好で)ザックと雨具の間に入り、(3)で使用したシュリンゲの末端を、脇の下を通してザック上部のループに通して縛り合わせ、負傷者を固定します。

ザックと雨具の間に負傷者が入り
(負傷者と救助者が別の人に代わってますが)このようにしてザックと雨具を用いて、負傷者を運びます

 負傷者を救助者が持ち上げる時、もし周囲に人がいる場合、他の人は肩などを貸して救助者が負傷者を持ち上げやすくします。
 で、さらに搬送法の応用編として、「背負い搬送(ザック+雨具)、負傷者をビレイ」を見学しました。最初、計画表にこれが書いてあるのを読んだ時は、背負い懸垂とどこが違うの????? でしたが、よくよく調べると下の写真にあるように、背負った状態で搬送者にロープをつけて、傾斜が急な地点など、登りなら上部から少しずつ引き上げ、下りなら上からロープを少しずつ出していく、ということのようです。これは各自行われず、デモのみでした。

背負い搬送(ザック+雨具)、負傷者をビレイ
 イメージ写真

14:30 介助懸垂
 負傷者が足は動くが、手などを負傷していて下降は不可能という時、負傷者のいる所まで下りて行き、負傷者の下降を手伝い(介助)しながら岩場を下降する方法です。(1)負傷者は足は怪我していないので搬送法は使いません。ですが、負傷者と救助者が離れるようでは、危険なので、そのためのシステムを作ります。

システムというほどでもないですが…
 右側のカラビナを救助者のハーネスに、真ん中のカラビナをメインロープ(介助懸垂ではエイト管)に、左のカラビナを負傷者のハーネスに着けます。

 (1)上の写真にあるようなシステムを作り、右側のハーネスを救助者に、真ん中のハーネスをエイト管に着けます(なお、このシステムはディージーチエィンがあった方が簡単に作れますが沢にはディジーチェインを持っていかないということで、あえてシュリンゲと管付カラビナでシステムを作りました)、(2)エイト管とハーネスの間のメインロープにオートブロックを作り、末端は救助者のハーネスに(3)懸垂下降の仮固定の時と同様、メインロープをワンターン(救助者のハーネスには一番上が(1)のカラビナ、次に(2)のオートブロックカラビナ、一番下に(3)のワンターン用カラビナが来ます)

家に帰ってから、再度作ってみました。
 片方の手でオートブロックを操作しながら

 (4)オートブロックを持つ位置は上の写真よりもう少し下の位置でオートブロックの結び目を手前側にスライドするようにして下降していきます。(5)救助者が負傷者に近づいたら、(1)で作ったシステムを負傷者にセットし、救助者は片方の手で負傷者のハーネスの後ろの部分を持ち、もう片方の手でオートブロックを操作しながら下降していきます。

救助者が負傷者に近づいたら
救助者は片方の手で負傷者のハーネスの後ろの部分を持ち、もう片方の手でオートブロックを操作しながら下降していきます

 救助者の役割をするトレーニングも無事終わり、負傷者役になる場面が来ました。負傷者役ということで油断していたら、「手は怪我していますが足はきちんと動かせるという」設定で、懸垂の足の動作はきちんとしなければならないのでした(MHさんすいません)。
16:10 この日の訓練終了
 タ―プを張る、本日の宿泊の準備

F川さんの新兵器? ビニールタ―プは使えるか?
ビール! ビール! その他!
タ―プ村完成です

 焚き火用の薪を取りに行きます。薪が少ないです、未だ自分は薪探しが下手です。この頃少し小雨がぱらつきました。でも、夕立ちになるのでは? と思っていただけにこれくらいですんで良かったです。たまに、釣り師が通ることはありましたが、基本的に自分達の空間でした。

焚き火〜♪
本年も、焚き火の季節が来ました
夜は更けて行く(1)
夜は更けて行く(2)


6月6日
天気 晴れ
 明け方は寒く、雨具に防寒着+シュラフカバー+長袖+半袖でちょうど良かったです。

朝、「F川さんビニールタ―プ」は、無事、使用に耐えられたようです。
お茶を沸かしながら、朝食の準備
一枚くらい、自分の写真を
朝食の準備
朝食の風景

7:25 訓練開始
 ディスタンスブレーキ
 基本的な考え方は、前日行った介助懸垂と同じですが、違うのは人がもう一人(ビレイヤー)いて、救助者の下降を調節し、救助者は、負傷者を助けることに専念できるという点です。介助懸垂の時に使った、オートブロックはここでは使いません、救助者はビレイヤーに、ダウン、ストップ、スロー等声をかけ、下ろすスピードを調節してもらいます(事故者以外に二人以上いないとできない方法です)。

ディスタンスブレーキ

8:45 ライジングシステム(1/3法)(これまでは負傷者を下ろす方法でしたが、これは上げる方法です)
 「事前に復習していたので、システムわかります」でしたが、自分が理解していたのは事故者が左側に来る場合のみで、事故者が右側に来ると、とたんに????になってしまい。現場で事故が起きた場合、「必ず事故者が左」なんてことはありえない。その他、そもそもタイブロックの使い方を間違っていたり、概略は確かに理解できていたが、実際に人を持ち上げるとなると、「楽に人を上げるコツ」のようなものがちょっと理解していませんでした。訓練を帰ってから、S野さんより、この時のタイブロックの使用により、ロープが傷んでしまったとのこと。今回の訓練の趣旨が「沢に持っていく道具で」だったので滑車でなく、タイブロックを使ったのですが、自分が沢であまりタイブロックを使っていませんでした。持っていく道具をきちんと理解、基本。

(正) (誤)
ローブはタイブロックだけでなく、カラビナにもきちんとかけて使用
ライジングシステム(1/3法)
引き上げている所

 その他、フリクションノットや今回のようなタイブロックを使う時は、きちんと効いているか確認してから、でした。
10:05 渡渉訓練(末端交換三角法)流れの強い川で、川を渡る方法です
 末端交換三角法を教わりました。

Aが左から、右へ川を渡ろうとする時
上流に岩や立木などに支点を取り(良い支点がない場合はボディビレイ)、
Aはカラビナにロープを通して、ロープを両手で握ります。
Bはさらに下流でロープを握り、Aが進むのに合わせてロープを送りだします。Aに何かあった場合、Bが下流に進むことでロープを引き、Aが安全な位置に戻れるようにします。
渡るA(先ほどとは別人ですが…)
Aが川を渡り切りましたら、Bは先ほどの支点を外し、AとBが一直線上になり、渡渉可能な場所に位置します。
一直線上になったロープに、ヌンチャクをかけて、Cが川を渡渉します。
川を渡るCのイメージ写真(渡る向きが逆でした)

(補足1)リーダーよりの指摘:中間者(C)の渡渉において、Aは、対岸のBに対して十分に角度を取るようにする(30度以上)。角度が不十分の場合、中間者が渡渉中に流されると水中鯉のぼり状態になってしまうとのこと。

30度以上角度をつける

 一人を残して、全員が渡り切りましたら、ここで末端の交換という作業をします。残っている一人(B)とします。Bが、ロープの末端を8の字で結び、Aがロープを引くことによって、末端をA側に移動します(末端は水面から上げるように、水の中に入ると水流の抵抗を受けたり、岩に引っかかったりするので)。

Bが、ロープの末端(右図で、赤まる)を8の字で結び
(補足2)ロープがたるんでいると、水中鯉のぼりになってしまう可能性があるため、ピンと張るようにする。そのため、Bはロープをシュリンゲをクレムヘイストによって調節し、ピンと張れるようにする。
末端をA側に移動
末端を移動(イメージ写真)別の理由により下にあまったザイルを

 末端をA側に移動したことにより、

左のように、最初とAとBが入れ替わり、Bが川を渡っている最中に、何かあっても、今度はAが下流に進むことにより、ロープを引き、Bを助けることができます。

以上は浅い所で行ったので、実際問題として深い所で体験しておこうということです。以下、ロープに体重を預けるようにして

深い渡渉の体験(1)
深い渡渉の体験(2)
深い渡渉の体験(3)

 簡単にスクラム渡渉(実演のみ)
11:15 昼食
12:00 模擬救助訓練
 最後に総復習として、模擬救助訓練を、写真を撮る余裕はありませんでした。自分たちパーティーは主に介助懸垂を中心に復習を行いました。途中MHさんより、自分の持っていたカラビナについて、どれくらいまで力が加わっても大丈夫等書かれていないカラビナは使うべきではない、言われてみて確かにそうで「何でこのカラビナを購入したのだろう?」って、購入したのは自分なのに。
 人を救助するというのはなんて大変なことなのだろう。訓練でこんなに大変なのだから、実際はとんでもないだろう。訓練のみで、実際には起こらないように全力を注ぎたい。
13:40 救助訓練終了
14:00 岳稜岩出発
14:30 東日原(バス停)
14:50 東日原発→15:20 奥多摩駅着

 次回沢のレスキューは、「人に教える方の人間」になりたい。「人に教わる沢のレスキュー」は、もうひととおりした。

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