第一回小説大会結果

お題は「感動、なんかいい話」でした。
お題のとおり、感動する話が15作品投稿されました。
投票によってその中から3作品に賞が与えられました!



入選 「宝石」 六分作  投票獲得数10票

*名も無き捨てられ猫の心の宝石が、1人の女の子によってきれいに磨かれる感動物語!

〜宝石〜

 俺は名も無い猫だ。

 捨てられた 猫なんだ。

 飼い主からは「猫ちゃん、猫ちゃん」と呼ばれていた。俺は雄なのにこう言われるのは不愉快だった。
最低でも名前くらい考えてくれてもいいだろうと思えた。
 
前飼われていたのは高級な家だった。食べ物は必ず食べろとしつけるし、外に出る事は出来なかった。
俺は自分の自由を奪われていた。だから俺はいやだった。
小さな女の子がいたのだが、その子が死んでしまうと親は俺を捨てた。親は俺のことが嫌いなのだろう。
女の子の懇願で受け入れただけなのに違いない。あの女の子は優しかったのだが・・・。

ある日気がつけば俺は捨て猫として公園にいた。小さなダンボールに入れられて。
しかもそのダンボールには「この猫 拾ってください」なんてありきたりなことを乱暴な字で書かれている。

 大都会の中にある小さな小さな公園。周りはビルが立ち並び、人の波が押し寄せる。
でもこの公園は違う。ここだけ静かで、時代が変わったようだ。俺も食べ物をとって帰ってきた時にはこういう錯覚に陥る。
時々小さな子供が来、カップルが来る。かれこれこの公園に来てから3,4ヶ月程度経つだろう。俺が捨てられているのはこの公園なのだ。

 俺は捨てられたといってもこの生活に満足している。食べ物は不自由で、自分でとらなければいけないものの、前のように縛られていないのだ。
自由なのだ。そして、俺が死んだとしても、悲しむ人は誰もいないのだ。飼い主がいないということはこういうことでもある。飼い主は泣かせたくない。
俺は一番、このことが嬉しい。まぁ、前のような飼い主では俺が死ねば嬉しそうにするだろうが。


 今日、俺の目の前に前の飼い主に似た女の子が現れた。無邪気な笑顔ではない。真剣なまなざしをしている。
突然。女の子は俺を抱き上げ、抱きしめた。突然引っかくわけにもいかなかったが、俺は暴れた。飼われるのは別に怖くもいやでもない。
でも俺は自分の寿命が残り長くないのを知っていたから。死んでなかせるわけにはいかない。
それから、先の生活が不安だった。前のように縛られた生活なら俺は逃げ出していくだろう。
俺は女の子を見上げた。女の子は目に涙を光らせていた。何故だかわからないが、俺は暴れるのをやめようと感じたのだった。
女の子は食べ物をくれて、見つめてくれた。その目は純粋な…とても綺麗な目をしていた。
 
 彼女は 俺を縛ったりはしなかった。自由にしてくれた。そして 心は 温かかった。俺はこの先の生活に光が差したような気がした。
彼女からは とても暖かい光が溢れ出ていたから。
 
 もし 俺が 死んだとしても 俺は幸せに死ねるだろうから。

 あの日から一年という月日が経った。
 俺は あの日からあの人に飼われてた。そして、あの人から 愛を受けてた。いつでもやさしくしてくれた。いつでも俺に愛情を注いでくれていた。
散歩だって 綱なんてつけなかった。
いつも俺を自由にしてくれたんだ。食べ物も全然不自由しなかった。どんどんくれた。もし残しても 怒ったりしなかった。
そして、あの嫌な過去も消し飛んだ。あの縛られていた過去が。俺にとって苦しめることとなった あの過去が。

 俺の寿命は…残り 長くなかった。
 こんなこと もう 自分でも 分かっていた。
 俺には 心残りは無かった。でも あの子は 最後まで 最後まで 最後まで… 優しかった。
 俺は こんな人が 人間の中にいるなんて 信じられなかった。 でも 俺は 嬉しかったよ。
 汚れた 俺の心の宝石だって あの子が とても とても 綺麗に磨いてくれた。

 俺は もう 天国へ旅立ったけれど 死んだけれど

 絶対に 絶対に… 君の事は 絶対に 忘れないから…。

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準入選 「雑草」 キルア作  投票獲得数7票

*人間に嫌われ、さらに同種の蛇にも嫌われている孤独な蛇、
そんな蛇が蛇の長の言葉で自分自身に勇気を持つ感動物語!

〜雑草〜 


 俺は 何だ・・・。

 俺は 蛇か・・・?
 
 そうか 俺は蛇か・・・。

 人間は皆、俺を有害生物と思っている。俺は存在していては人間の害になるから・・・。生きていてはいけない・・・。
蛇の仲間は皆そう言っている。・・・仲間?仲間なんていない。俺が勝手にそう思っているだけ。皆、同じ蛇なのに。俺を仲間と認めてくれない。
何故だ?何故俺だけ?なにも他の蛇と変わらないじゃないか。

 何が 俺の 何が・・・。

 俺の何が気にくわないんだ・・・。俺はそれをずっと、ずっと、ずっと・・・探していた。
生まれてから、この世に生を受けてからずっとそれを探していたような気がする。
 
 でも、見つからなかった。
 
いくら探しても、いくら探しても、行き着いた先は元の場所。また、普段の生活に戻る。

 そして今がある。

 ずっと俺は一匹で生きてきた。食料も自分で獲り、家も自分で作って、何もかも自分一匹でやってきた。
親の顔は知らない。いや、知っているだろうが、覚えていない。俺が生まれたばかりの時に両親は死んだ。
俺が、目を開けると、そこは、密林の中。独りぼっちの木にぽっかりとあいている小さなあなぐら。

 寂しかった・・・。寂しかったよ・・・。

 
 一匹だけ俺の心をわかってくれる蛇がいた。この辺りの、いわゆる、長。長と呼ばれるその蛇は、俺を労ってくれた。
必死にもがく俺の背中を押してくれた。でも、残りの寿命は少ないという事を、俺も、長も知っていた。

 今日も、長に会いに行った。
 しかし・・・その長は、ねぐらに横たわっていた。俺はすぐ長に駆け寄った。長は苦しそうに呼吸を速めていた。
そして、まるで最後の言葉のようにこう言った。

 お前は、決して出来損ないなんかじゃない。お前は雑草なんかじゃないぞ・・・。神が・・・命をくれた・・・立派な・・・草・・・だ・・・。

 言い終わると・・・俺の目の前で、長は・・・死んだ・・・。

 悲しかった・・・。

 きっと、長は・・・蛇を草に例えて、俺は雑草なんかじゃないと、必要じゃない存在ではないという事を教えてくれたんだ。

 
 それから、俺は、何度も何度も他の蛇に接触を試みた。何度も何度も、けなされた。
それでも俺は諦めなかった。ここで諦めたら、長が、天に昇っていった長が、悲しむだろうから。


 そして、やっと、やっとの思いで、皆、俺を仲間と認めてくれた。

  凄く、凄く、今まで生きてきた中で一番嬉しかった。

        ありがとう、皆・・・。
  
  そして何より、長に感謝している・・・。

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佳作 「1つの命」 コン・フォーコ作  投票獲得数6票

*傷つけられた小鳥が、命を大切にする心優しい一人の男の子によって救われる感動物語

痛い・・・・・・

ぼくは、撃たれてしまった。

エアーガンで撃たれた・・・・・・

遊び半分で、子供に撃たれた・・・・

酷い・・・酷すぎるよ・・・・・

ぼくに、だって命はあるんだよ!

ぼくだって生き物なんだよ!

なんで、遊び半分で撃たれなければならないの?!

ぼくが、何をしたって言うの?!

ぼくは、人間が信じられなくなってきた・・・・・

でも、ぼくは助かった・・・・・・

1人の男の子に救われた

撃たれたぼくを見て

彼は、すぐにぼくの傷を手当してくれた・・・・

どうして、優しくしてくれるのか?

そのとき、彼は独り言でこう言った

『小鳥だって、生きてるんだよね、1つの命なんだよね』

ぼくは、うれしくて、涙が止まらなかった・・・・・

1週間後・・・・

ぼくは、いつものように、彼の家の窓で、彼を見ている。

命を大切にする、心優しい彼を見ている。

彼には、わからないだろうけど、

ぼくは、ここに来るたびに、いつも同じ事を言っている。

『ありがとう、この命大切にするよ』、と言う

この青い空のように、彼の心は、今日も輝いている。

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*トイの感想
みんなの要望に答えて開催した今大会。
おれはあんまり小説とかは好きではないんですが、そんなおれでも感動させてもらいました。
お題が「感動」ということで、全体的に生き物を題材にした作品が多かったです。
まだまだみんな上を目指せそうな感じがしました。