その時しかわからない〜慣れたら最後


北方謙三の「擬態」で、
だいたいこんな内容があった気がする。
〜〜何がそんなに気に食わないのか?そんなことは俺自身だってわからない。
あえていえば、この世がこうして存在してることだろうな〜〜

ぱっと聞くと、かなりやばい、恐ろしい発言という気もする。
だが考えれば考えるほど、
ほぼ全ての人が経験する、青年期の”大荒れ心理”さながら、
という気がしてこないだろうか(笑)?
みじめな状態の自分は忘れたい、思い出したくないというのが働いて
容易に思い出せなかったりするが……

10代前半の心理状態で
追い詰められてしまうシチュエーションのひとつに、
――誰かの期待に答えられない、
――期待に答えられないのに過大評価されてしまう、
という状態が考えられるだろう。

”買い被られること”は、
”認めてもらえない”ことよりきつい――

たとえば、
自分は賢くもないし、優しくもないし、強くもない。
自分はひょっとしたら最低かもしれない……
そう思って怯えてるところへ、根拠なく
「あなたは優秀で人格者ですね。期待してます」
なんて言われたら、少なくとも10代前半の人は
大パニックになりかねないだろう。
(もちろん具体的・正当にほめられたり、期待されたときは
誰でも嬉しいことはまちがいないと思います!)

自分はそんなじゃない!
ということを訴えたいがために、
必要以上に悪くふるまったりしてしまうかもしれない。
わざとひねくれて、冷酷な発言・行為を繰り返すかもしれない。
故意に成績を下げたりすることもあるかもしれない。
しまいに、冒頭の台詞みたいに、
一体何が気に食わなかったのかもわからなくなってしまう。

10代の大荒れ心理には、
他にもいろんなシチュエーションが考えられるが、
深い意味のないフレーズ=きわめて微細なケシクズのようなものでも
急所に当たれば、起爆剤になりえる点が共通しているようである。
そして、複雑怪奇な迷路を自分で作って入りこみ、
出口を自ら塞いでしまうことがあるという点も。。。

こんな猛獣心理をどう制覇したか。
まだ制覇しきれてなくとも、
どうすれば”なんとかやっていける”のか?
覚えておけば、自分より若い人が、
同じ所にハマって苦しみ悶えてるときに救えるかもしれない。

忘れてしまえば、
「なんと恐ろしいことを考えるやつだ」と
軽蔑の目を向けるようなことにさえなりかねない。

これを書いていて、The Blue Hearts「ロクデナシ」
フレーズも思い出した。
〜♪痛みははじめのうちだけ 慣れてしまえば大丈夫
そんなこと言えるあなたは ヒットラーにもなれるだろう♪〜

痛みを忘れたり、慣れてしまうことなく、
いつも新鮮に感じてることはとてつもなく難しいが、
とてつもなく大切なことかもしれない。

2005.3.17.Tur


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